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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第三章 ~学園~
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マリナのたくらみ

マリナ視点になります。物語に影響はありません

 彼女―――マリナ・ランベールは静かに学園の入り口に立ち、学園に入っていく人々を眺めていた。学園とは二千年に一度誕生すると言われる魔王に対抗するために作られた機関で、勇者の発見、育成を目的に作られた機関である。もちろん、魔王が誕生しない期間でも、魔物の脅威は常にあるため、それに対抗する人材を育てる機関として機能していた。なのでこの学園に通う貴族は大体は三男以降の男子が大半だ。しかし、女子が全くいないわけではない。

 学園に通う女子たちの目的はそのほとんどは魔物と戦う力を身につけることではない。その目的は貴族間の繋がりを得るためだ。弱小貴族にとって、身分が上の貴族に会い、繋がりを持つことなど不可能だ。しかし、学園の中では表向きは身分の格差は存在しない。それを利用して日頃近づけない方々と話す機会を作り、そこで気に入られれば、将来の繋がりを得ることも不可能ではない。

 普通の貴族にはそれくらいの目的だが、マリナの場合、もう少し切実だ。それは、マリナの持つスキルが原因だった。マリナの持つ【心眼】というスキルは相手の心を見通す。実際は相手の心全てが見えるわけではないが、詳しい効果など他の貴族には関係なかった。ただ心が分かる。それだけの事実が貴族を混乱させた。

 弱小貴族として生まれたマリナだったが、初めてマリナのスキルが分かった時、周囲の環境は一変した。心を読まれることを恐れ、距離をとる者。その力を利用しようと近づき、取り入ろうとする者。事態を見守り、静観する者。様々な反応に分かれた。ただ幸いだったのが、それら全ての貴族がお互いに牽制(けんせい)しあっていたため、マリナ本人に実害はなかったことだろうか。そうでなければ誘拐されたり殺害されても不思議はなかっただろう。

 しかし、マリナの身を案じた父親は、マリナを学園に送り出すことを決め、こう言った。


「学園で沢山の上級貴族との繋がりを作りなさい。それが必ずマリナの身を守る手助けになる。お前ならば自分の味方を見つけることも難しくないはずだ」


 マリナは狙われている自覚はあったため、父親の言葉に従い、学園に来た。そして今は最初に仲良くなる相手を探しているところだった。


(まずは家の男爵よりは上の伯爵は子爵ぐらいの方がいいでしょうか。その上であまり邪心のない方が理想ですけど、あまり贅沢は言っていられませんね)


 そう考えながらマリナは周りを見渡す。しかし、そこで一つ誤算があった。マリナの存在があまりにも周りに広がっていたため、位の高い者たちの息子、娘たちは誰も近づこうとしなかったのだ。

 そんなことだとは露ほども思わず、マリナは自分の近くを歩く人を吟味していく。そんな中、マリナの目にとんでもないものが飛び込んできた。そのあまりの光景に言葉を失い、マリナはただ立ち尽くす。


(あの方の心の色は一体…… いえ、それよりも頭の上にいるホーンラビットという魔物の心の色。なんと美しいのでしょう。これほど()んだ色は見たことがありません。それに隣の従者の心も奇麗な色です)


 通常魔物はマリナから見ると、心の色が恨みや怒りの色が見える。しかし、マリナの目に映っているホーンラビットの色は慈愛や博愛の色に満ちており、とても同じ魔物には見えなかった。そんな風にマリナが眺めている間にその少年と従者らしき者が近づいてくる。


(わたしを避けない? この方ならもしかして……)


「あ……あの」


 マリナは意を決してその少年に話しかけた。


「私はマリナ・ランベールと申します。失礼ですが、あなたのお名前は?」


 マリナはアルヴァの心に不信感が広がっているのを確認しながら、いつものように挨拶をした。


「僕はアルヴァ。隣にいるのがルナです」


 するとその少年―――アルヴァはにこやかに答え、続いて従者のルナを紹介する。主人が従者の紹介をするなんて珍しいと思いながら、マリナはアルヴァの不信感がなくならないことに少し怯えていた。


「アルヴァ様にルナ様ですね。よろしくお願いいたします」


 それでも表面上は何でもないことのように言葉を続ける。この機を逃したら次はないかもしれないからだ。


「そして頭の上でくつろいでいるのがラビィです」


「モキュッキュ!」


 まるでアルヴァの言葉が分かったように鳴いたラビィにマリナは癒された。そして、何故かラビィの心にも不信感らしき色が小さくあるのを見つけた。


「ラビィ様ですね。よろしくお願いします」


 今までに見たことのないほど澄んだ心を持つ魔物にさえ何かを疑われていることにマリナは怖くなり、嫌われたくない一心で思わず頭を下げた。すると何故かアルヴァとラビィの不信感が増した。


(しまった。今のは失敗でした)


 そもそも魔物に頭を下げる人はいない。人類の敵。それが常識だ。そんな魔物に頭を下げる人間など、何か企んで取り入ろうとしている下心のある人としか思えないのは当然だった。アルヴァとラビィの不信感が増したのは当たり前なのだ。しかしそれ以上にマリナには気になったことがあった。


(ラビィ様はこちらの行動の意味や関係性を理解されている?)


 今の反応はそうとしか考えられなかった。そうでもなければマリナが頭を下げて不信感が増すわけがないのだ。


「それで、僕に何か用ですか?」


 マリナがこれからどうすればいいのか迷っていると、アルヴァが不信感を隠すことなく問いかけてきた。


「用というほどではないのですが、一緒に試験を受ける方を探していたのです。一人では寂しいので」


「他にもたくさんいるようですけど」


 隠すべきではないと考えたマリナは正直に答える。


「不審がられるのは当然のことと思います。しかし、仮に私が他の方に声をかけても相手にもされないでしょう」


「どうして?」


 その問いに答えることを決意していたマリナだったが、それでも一瞬躊躇(ためら)ってしまった。知られれば、一緒に行くことはないだろうことは想像に難くないからだ。それでもこれ以上不信感を増すよりはいいとマリナは話し出した。


「私のスキルに問題があるんです」


 マリナはそこで一呼吸を置き、心を決める。


「私のスキルは回復魔法、重力魔法、時空魔法、心眼の四つになります」


 そのスキルにアルヴァは次の言葉を待つように頷いた。不思議なことにアルヴァの心には驚きはあったが、軽蔑や落胆の色はなかった。


(不思議な人。この使えないスキルを聞いて驚き以外に何もないなんて)


 マリナは少し心が軽くなるのを感じながら、続きを話す。


「驚きなのも無理もありません。回復魔法、重力魔法、時空魔法。これらのスキルが使えないものであることは周知の事実なのですから」


「使えない?」


 使えないと言う言葉に不思議そうにアルヴァが首をかしげたのを見て、マリナは補足する。


「はい。回復魔法はもちろん、重力魔法や時空魔法は失われてしまった魔法です。スキルがあったところでそれでは使うことはできません」


 そんな事情も知らないなんてもしかしてかなり田舎の貴族なのだろうかと少し話しかけたことを後悔しながら、話を続けた。


「そういうわけで、私に近づいてくる貴族は余程のもの好きか、私の持つスキル【心眼】目当ての方だけです」


「なるほど、納得しました。でも、それじゃあなぜ僕に声をかけたんですか?」


 これ以上不信感の色が広がらないように正直に答える。


「それは私のスキル、【心眼】であなたを見たからです」


 そういってマリナはラビィに視線を向けた。そしてアルヴァにと言うよりはラビィに聞かせるように答える。


「ラビィ様の『色』は本当に綺麗です。魔物とは思えないほどに。それが理由です」


「色?」


 スキル【心眼】の効果を知らないようで、アルヴァは首を傾げた。


「はい。正確に言うと色ではないのですが、そう表現するのが一番近いかなと思いましてそう言うことにしています。心が読めるわけではなく、心の状態がわかるスキルです」


「そんなに話していいんですか?」


 アルヴァの問いかけが不信感ではなく純粋な疑問によるものだったことにマリナは心の中で安堵した。


「私のスキルは有名なので構いません」


 純粋なラビィ様に不信感を持たれるのがつらいと正直に答えるわけにはいかず、マリナは表向きの理由で答えた。その答えが良かったのかどうかは分からない。ただその言葉の後にアルヴァとラビィの不信感がとても小さくなった。


「まぁ、こちらもわからないことばかりなので、そういうことなら一緒に行きましょう。二人とも良いよね?」


「ありがとうございます」


 マリナはラビィまでも頷いてくれたことに嬉しくなり、お礼をする。そして四人は一緒に試験会場に向かうのだった。しかし、


(確かに認められたことは純粋にうれしです。しかしこれでは当初の目的としては弱いですね。まぁ、繋がりが出来ただけ良かったですけど)


 マリナはそんなことを思いながら、三人にばれないように苦笑した。

 その後、アルヴァが平民と分かり大いに落胆したマリナだったが、その後に現れたイーステリアによってその意見は百八十度変わることになるのは言うまでもない。

名前がついているのは大体重要人物か、仕方なくつけるしかなかった人たちです

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