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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第三章 ~学園~
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試験前にトラブルのようです 後編

前回の続きです

 職員らしき女性に呼ばれたアルヴァは受付に近づいていく。その後に続くようにルナもアルヴァに追従する。遠巻きに先ほどの青年がニタニタ嫌らしい笑みを浮かべながら立っているが、アルヴァは一切気にしなかった。


「測定前に一つお話があります」


 職員らしき女性は困ったような笑みを浮かべたままそう言った。


「話?」


「はい」


 そう頷いた後、職員らしき女性は一拍置いて話し出した。


「平民ではステータスを秘匿にするのが暗黙の了解だとは思いますが、貴族の間ではステータスやスキルは秘匿にされているわけではありません。なのでこの場ではステータスを隠すような準備がありません。それでもよろしいですか?」


 その職員らしき女性の言い方にアルヴァは引っ掛かりを覚えた。


(測定の結果を見れるのはせいぜい数人だ。それなのになぜこの人はたくさんの人にステータスがばれるような言い方なんだ?)


 そもそも職員らしき女性が画面を覆うだけでも覗き見は防止できるのだ。アルヴァが疑問に思うのは当然だった。


(マリナやイリスに隠してもらってもいいけど―――)


 そう考えながらアルヴァはちらりと青年の方を見る。相変わらずニタニタと嫌らしい笑みを浮かべていた。


(どう考えてもあの男の嫌がらせだ。僕のステータスを言いふらそうって魂胆なのかな?)


 そう考えれば職員らしき女性と長々と話していた理由が理解できる。おそらくステータスの話でもめていたのだろうとアルヴァは推測した。


(まぁ、だとしたら僕にとっても好都合だ)


 青年にとっては嫌がらせのつもりなのかもしれないが、アルヴァにとってはそれは願ってもないことだった。


(僕のステータスが広まれば、まさか僕のレベルやステータスを疑う人はいないだろうし)


 ステータスを測定する魔法具ではアルヴァの本当にステータスを調べることはできない。それを知っているからそこアルヴァは安心して測定することができた。


「問題ありません」


 そのアルヴァの答えに一瞬驚いたようだが、すぐにほほ笑んだ。

 職員らしき女性はアルヴァが悩んでいると思っていたのか、アルヴァが黙っていた間、静かに待っていたようだ。


「わかりました。では、こちらに手を置いてください」


 職員らしき女性に促されるままにアルヴァは測定する魔法具の上に手を置いた。




名前     アルヴァ

種族     人間

レベル      5

体力     203/203

魔力      21/21

筋力      66

精神力     44




 表示されたステータスに変化がないことを確認し、そのことに満足しながらも、あるステータスの数値を見てアルヴァはため息をついた。


(筋力の数値はどうすればあがるんだろう? 前世では筋トレしてるとそれなりに上がったのに、今回はそんなに上がらないんだよなぁ。ま、今思い悩んでも仕方ないけど)


 そう考えながら、アルヴァは自分のステータスに苦笑した。


「はっ…… やはり平民は平民か」


 いつの間にかアルヴァのステータスを覗き込んでいた青年は鼻で笑った。


「満足しましたか? 用が済んだから試験に進んではどうですか?」


「平民が俺に指図するな!」


 面倒になってきたアルヴァはそう促したが、相手の機嫌を損ねるだけだった。


「終わった?」


 今まで見守っていたルナは首を傾げながらアルヴァに問いかけた。


「あぁ、終わったよ。ルナも今日試験を受ける? 明日でも構わないけど」


 正直アルヴァとしては今日試験を受けることに反対だった。何しろルナのステータスは―――




 名前     ルナ

 種族     精霊

 レベル    800

 体力   99999/99999

 魔力   77317/77317

 筋力    8979

 精神力   9265


 スキル 不滅



 ―――である。このことが公表されれば騒ぎどころでは済まない。もちろん試験を受ける以上は遅かれ早かればれるのだが、今現在はこの場に貴族しかいないため、ルナを手に入れようと全員動き出すことは目に見えていた。それがアルヴァには面倒だったのだ。


(出来れば少しすごい平民が現れたくらいの噂でとどめたい)


 それがアルヴァの本音だった。


「わたしも今日受ける」


 そんなアルヴァの思いを知ってか知らずかルナは試験に前向きな姿勢を見せた。流石にはっきりとそう答えられてしまってはアルヴァも駄目だとは言えなかった。


「わかった。じゃあ、ルナのステータスは僕が隠すよ。構いませんよね?」


 アルヴァは職員らしき女性にそう問いかける。


「はい、もちろん―――」


「いいわけないだろう」


 職員らしき女性の声を遮るように青年は声を上げる。


「今日は貴族が試験を受けられる日だ。その日に乱入したのだから、こちらの流儀に合わせるのが筋だろう」


 もっともらしいことを青年は口にしているが、彼に決定権があるわけではない。しかし、職員らしき女性が何も言わないところを見ると、ここでも貴族の上下関係は意味を成しているようだ。


(表向きは平等を(うた)っていてもこんなものだよね)


 アルヴァは現状を確認してため息をついた。しかし今回ばかりはアルヴァが折れるわけにはいかなかった。


「これだけやっておいてまだ気が済まないんですか?」


「その言い方だと俺が嫌がらせをしているみたいじゃないか」


 その通りだろうと思ったが、アルヴァが言葉を発する暇もなく青年は言う。


「俺は道理を説いているだけだ。嫌なら明日試験を受ければいい」


「嫌、私は今日受ける」


 青年の言葉にルナが珍しく自己主張をする。アルヴァは珍しく自己主張するルナに首を傾げる。しかし日頃主張しないからこそ、アルヴァはその気持ちを尊重したかった。


(面倒ごとは確定。その後はどうとでもなる……かな?)


 最悪の場合はノーレスの主人にお願いすればどうにかなるかと半ば自棄になりながらアルヴァは自己完結する。


「わかったよ、ルナ。好きにするといい」


 アルヴァが許可を出すと、ルナはほぼ変わらない表情を少し変え、嬉しさを現した。


「主、ありがとう」


 そう言ってルナは職員らしき女性が促す間もなく測定器の上に手を置いた。そして表示されたステータスに職員らしき女性が声も上げずに立ち上がった。青年は嫌らしい笑みを浮かべたまま覗き込み、そしてその姿勢のまま固まった。

 その反応に一人アルヴァはため息をつく。ルナはいまいちわかっていないのか、不思議そうに首を傾げた。


「せ……せ……せ……!?」


 職員らしき女性は驚きのあまり言葉が出ないのか、驚愕の表情のまま同じ音を発している。先に言葉を発したのは青年だった。


「精霊だと!?」


 青年の言葉にざわりと俄かに周りが騒がしくなる。その騒ぎは明らかに驚きを内包していた。


(やっぱりこの大きさの精霊はこの時代でも珍しいのかぁ)


 事態の成り行きを見守っているアルヴァはそんな益体もないことを考えながら現実逃避をする。


「なるほど、なんでそんな似つかわしくない剣を背負っているのかと思えばそれが本体だったか……」


 青年は欲に塗れた瞳でルナを見ている。その視線が余程不快だったのか、ルナにしては珍しく表情に感情がありありと現れていた。


「良し! 平民、その精霊を俺に寄こせ」


「は?」


 アルヴァはそのあまりにもふざけた提案に思わず素の反応を返した。しかし、青年はそんなことが気にならないほど舞い上がっていた。


「平民風情に使われるより、俺のような由緒正しい血筋のものが使ってこそ、その精霊も喜ぶというもの」


「ふざけるのも大概にしていただけますか?」


 アルヴァは自分のことを高貴と信じて疑わないその態度にイライラしていた。


「貴様にその精霊はもったいない。さっさと寄こせ」


 その言葉にアルヴァはため息をついた。もう何を言っても無駄。そう判断したのだ。


「私は主のもの。貴方程度が扱えると思ってるの?」


 代わりにルナが答えた。


「精霊よ。持ち主である平民に逆らえないのですね。俺がその平民の魔の手から解放して差し上げます。もうしばらくの辛抱です」


 その答えにルナは更に嫌そうな表情になる。そしてその表情の中には苛立ちもあった。


「我が主を愚弄するか?」


 ルナは背中から剣を抜き、それを自分の前の床に突き刺す。それだけで床が少し陥没した。その音に反応し、先ほどまで騒がしかった周りが一気に静かになる。


「言葉には気をつけろ、下郎」


 あまりの迫力に恐怖したのか、青年は腰につけていた杖のようなものを抜いた。その反応はなかなか様になっていた。


(あれは確か魔法具だったかな? そういえば調べるの忘れてた)


 アルヴァはそんな緊張感のある場面でも通常運転だった。


「へ……平民! やめさせろ!」


「ルナ、やりすぎだよ」


 アルヴァは青年の言うことを聞いたわけではなく、本当にやりすぎと思っていたため、ルナを諫めた。


「ごめんなさい」


 アルヴァの言葉にルナは素直に従い、剣を背中に戻した。そのことに安堵したのか、青年は杖を腰に戻し、先ほどまでの嫌らしい笑みを顔に張り付けた。


「ようやく素直に俺の言うことを聞く気になったか。最初から素直に俺の言葉に従っていればいいものを」


 何を勘違いしたのか、青年はそう(のたま)う。


「ならば素直に俺にその精霊を寄こせ」


 あんな目にあっても青年は諦めなのか、今度はアルヴァに標的を絞って詰め寄る。ルナに歯向かうだけの度胸は彼にはないようだった。


「なんだ、もしかして金か? 本当に平民というのは卑しいな」


「お金の問題じゃありません」


「嘘をつくな。お前ら平民は何かあれば金、金、金。働きもしないくせにそればかりだ」


 じゃあお前は働いているのかと思わずアルヴァは口に仕掛けたが、面倒になることは目に見えていたのでその言葉を飲み込む。反論のないアルヴァに気をよくしたのか、青年の笑みが強くなる。そして標的はアルヴァの頭の上で(くつろ)ぐ存在へと移った。


「そもそもそんな汚らしい魔物をこの場に連れてくる地点でその―――!」


 その言葉を聞いた瞬間、アルヴァは一瞬【威圧】を放った。それはアルヴァからすれば少し頭に血が上り、漏れてしまった程度のものだった。しかし、青年にとってはそれは尋常ではない気配であり、命の危機を感じるほどだった。


(殺される!?)


 そう判断した青年は即座に杖を抜き、魔法をほぼ反射的に発動させる。見る人が見ればその技能に称賛を贈るだろう程に、青年の動きは洗練されていた。


(動きはいい。ただ、あんな魔法具に頼っている地点で少し遅い)


 アルヴァの頭の上で寛いでいたラビィはそう評価し、余裕でアルヴァの頭を足場に横に跳んだ。それによりアルヴァが逃げ遅れるが、ラビィは心配していなかった。なぜなら炎弾程度ならば、常時行っている魔力操作によるステータスで受けきれるからだ。

 ラビィの考えた通り、アルヴァは魔法で受けることはなく、その体で炎弾を受け止めた。しかし、


(は?)


 ラビィはおろか、ルナも青年も職員らしき女性、はてはその場にいる誰もが止まった。炎弾はアルヴァに命中し、そのままアルヴァは数メートル吹き飛び、数回跳ねた後、ぐったりと動かなくなってしまったのだ。その光景に誰もが言葉を失い、ただ吹き飛んでいったアルヴァを眺めている。そんな中、静かにアルヴァの周りの床を真っ赤な何かが広がり始めていた。

アルヴァが魔法を防ぐと思った人はいるのだろうか?

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