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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第三章 ~学園~
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試験を前にトラブルのようです 前編

後編をお待ちください

 学園内の指定された位置に行くと、そこには人がまばらに存在していた。しかし、一人一人が従者らしき人を連れているため、それなりに人は多い。おかげでルナの存在は目立っていないようだ。代わりにラビィに視線が集まっていたが。


「試験は何をするのかマリナは知ってる?」


「はい。最初は能力測定です。その後は魔法技能や、剣術技能などの実技試験、その後に筆記試験があります。ただ、場所は当日に案内されるそうです」


「マリナがいてよかった。僕だけだと何もわからず進むところだった」


 内容は王都に来た時にイリアという少女に聞いていたが、そこで確認できない情報が得られることはアルヴァにはありがたかった。


「そんな…… 私の方こそ一人にならずに済んでほっとしています」


 そんな会話をしながらアルヴァは先ほどから見えている受付のように机が置かれている場所に向かった。日頃はそこに何もないのだろう。この日のために用意している感が見て取れた。

 受付にはアルヴァも見たことのあるステータスを測定する魔法具が置かれており、一人の職員らしき女性が座っていた。


「あの、学園への入学手続きはここであってますか?」


「はい、そうです。試験を受ける方はどなたですか?」


「僕とこの女性です」


 そう言ってアルヴァはマリナを示す。


「あなたがですか?」


 職員らしき女性は驚いたようにアルヴァとルナを交互に見た。


(この反応は僕のこと子どもだと思ってるのかな?)


 よく見る反応にアルヴァは苦笑しながら答える。


「こう見えても成人しています」


「し、失礼しました。では、ステータスを確認しますので順番にお願いします」


 職員らしき女性は誤魔化すように話を進めた。


「では、私から失礼します」


 立ち位置から近いマリナが先にステータスを測定する。測定する魔法具はアルヴァがギルドで見たものと同じようなものだったが、違う点があった。それは表示画面が誰からも見えるようになっていたことだった。


(ステータスを秘匿にするのは暗黙の了解じゃなかったのか?)


 アルヴァはそんな疑問を持ちながらも貴族には貴族の常識があるのかもしれないとその疑問は口に出さない。ただ、アルヴァが表示画面の見える位置にいるにもかかわらず、マリナは気にした様子はなかった。


「確認しました。マリナ・ランベール様ですね。受付は終わりましたので、次は実技試験になります。ご存じのこととは思いますが、会場はあちらの案内板に従ってください」


 職員らしき女性は手元の書類に何かを記してからアルヴァから見て右側を示した。そこには確かに案内をするための看板が掲げられていた。


「私はアルヴァ様をお待ちしたいと思います」


「そうですか。では、アルヴァ様、お願いします」


「そこの少年」


 アルヴァが魔法具でステータスを測定しようとしたその時、アルヴァに後ろから声がかかった。振り返るとそこには従者らしき男性がおり、その後ろにアルヴァを見下すような視線を向ける青年が立っていた。ふとアルヴァが隣のマリナを見ると、おびえたように俯いていた。何かあるのかと思ったが、アルヴァはまずは相手の出方を伺う。


「我が主が試験を受けられます。そこをどいていただきますか?」


「お断りします」


考えるまでもなかった要求にアルヴァは即答した。まさか拒否されると思っていなかったのか、それともあまりにも即答だったためか、従者らしき男性は驚いた表情のまま数秒固まっていた。


「アルヴァ様……」


 マリナは困惑したような、怯えたような声でアルヴァの名前を呼んだ。その反応にあまり良くないことになりそうだとアルヴァは内心ため息をついた。ただ、わかっていても拒否しただろうが。


「貴様、俺が誰だかわかってるんだろうな」


 従者の後ろでアルヴァを見下していた青年は少し(いら)立った声でそう言った。


「名乗りもしない方は存じ上げません」


 アルヴァの答えが気に喰わなかったのか、青年は怒りをあらわにした。


「貴様! 従者の分際で!」


「従者ではありません。僕が試験を受けに来ました」


「は! そんな身なりで貴族だと? 家の程度が知れるな」


「貴族ではないので」


「なに?」


 アルヴァの答えに青年の勢いは一気になくなり、困惑した表情になる。青年だけではない。職員らしき女性もマリナも同様に驚きの表情をしていた。

 困惑していた青年だったが、すぐにその表情は嘲りのものに変わった。


「はっ! 平民の分際で今日試験に受けに来るとはな。平民は日にちを数えられないほど能がないのか?」


 青年の言葉に周りから嘲笑の笑いが広がっていく。


「僕が受けに来ちゃダメでしたか?」


 なんとなく察したアルヴァだったが、一応念のために職員らしき女性に問いかけた。


「はい。今日は貴族様の試験日です。人数の都合上、二日に分けて執り行われます」


 それだけが理由ではないのは明白だったが、アルヴァはそこには触れなかった。


「わかったらとっとと帰れ! 俺に対する態度が不問にしてやる。ありがたく思え」


 アルヴァに恥をかかせたことで満足したのか、青年は嬉しそうにそう言った。


「でも、これには今日が指定されていましたけど?」


 そう言ってアルヴァは(あらかじ)め渡されていた書類を職員らしき女性に渡した。アルヴァは平民の試験が明日だということはルナが受けるために知っていた。しかし、書類には確かに今日が指定されていたのだ。


「これは……」


 職員らしき女性は驚いたようにその書類を受け取ると、しっかりと内容を確認していった。


「この書類、あなたは勇者の村から来た方ですね」


「名前は分からないですけど、昔勇者が生まれた村のことなら間違いありません」


 アルヴァがそう答えると、周りが騒がしくなる。ただ、驚いているというよりは面白がっている雰囲気を感じるが。


「私も本当に名前を知っているわけではないので構いませんよ。勇者の村っていうのは王都での呼び名です」


「なるほど」


 律儀に教えてくれた職員らしき女性にアルヴァは相槌(あいづち)で答える。


「この書類ですが、試験日の記入が間違っていました。こちらの不手際です。申し訳ありませんでした」


 そう言って職員らしき女性は自分のミスでもないのに頭を下げた。


「大丈夫です。気にしないでください」


(これってまさかビールトの嫌がらせじゃないよね?)


 村にいたころに悪い意味でお世話になった厄介な相手の顔を思い出しながらアルヴァは心の中で苦笑した。大いにあり得ることだったが、確認する(すべ)はない。


「じゃあ、明日改めで出直してきます」


 今日に執着する気のないアルヴァはそう提案する。


「しかし、こちらの不手際なので、そのままお返しするというのも……」


「隣のルナも明日受けるので、ついでに来ますよ」


「でしたら、お二人が今日受ければいいですよ。一人ぐらい変わりません」


 いい考えとばかりに職員らしき女性はそう提案するが、すぐにしまったといったように顔を歪めた。アルヴァとしてもこのまま帰った方が穏便に話がついたので良かったのだが、そうはいかないのかとため息をついた。


「話は終わったようだな。どけ」


 青年は律儀に話が終わるのを待っていたのか、そう言う。先ほどアルヴァに恥をかかせて機嫌がいいことも作用したのだろう。


「……どうぞ」


 ここで意地になっても良かったが、流石に面倒になってきたアルヴァは素直に青年に譲った。「最初から素直にそうしておけばいいものを……」と青年は人を見下したような態度のまま、アルヴァを押しのけるようにして魔法具の前に立った。

 アルヴァはその態度にため息をつくと、そこから少し離れた位置に移動した。


「なんか変なことになって申し訳ないです」


 ずっと怯えた様子のマリナにアルヴァはそう声をかけた。


「え……えっと、大丈夫です。相手が彼じゃ仕方がありません」


「そんなに有名なんですか?」


「はい。お父様が伯爵という地位もありますけど、そのお父様がドラゴン部隊の団長ということの方が大きい理由でしょう」


(ドラゴン騎士か)


 それはアルヴァが魔王時代でもいた者たちで、竜種に乗り、戦場を駆け抜ける者たちのことだ。空からの攻撃はもとより、ドラゴンの攻撃力も強力だった。

 アルヴァが昔のことを思い出していると、マリナは言いにくそうに切り出す。


「それはそうと、アルヴァ様は平民でいらしたのですね」


「はい、そうなんです」


 アルヴァは思考を停止し、マリナに答える。


「平民なのに従者を連れているのですか?」


 マリナは不思議そうにルナを見ながら言った。


「従者に見えるのは服装のせいでしょうか。お店で働いている制服のままなので、そう見えるのかもしれません」


 ルナが着ているのはヨハンという奴隷商人のところで働いているときに着ているもので、ルナはそれを私服のようにいつも着用していた。


「私もてっきりアルヴァ様は貴族だとばかり思っていました」


 マリナはそう言って微笑んでいたが、その表情はどこか困ったような雰囲気があった。


「平民でがっかりしましたか?」


「いいえ。そんなことはありません」


 そう答えながらもマリナが更に困った表情になる。流石のアルヴァもその表情を見れば、何か事情があることは察することができた。


(マリナは自分のスキルが有名だって言ってたし、もしかして地方の貴族との純粋な繋がりが欲しかったのかな?)


 そんなことを考えながらも自分にはどうにもできない問題だと深く問いかけることはなかった。


「アルヴァ様?」


 そんな時、その声はアルヴァの左側から聞こえた。しかし、この貴族が集まる場に知り合いがいるわけがないとアルヴァは同名の誰かだと決めつけ、無反応を貫く。


「アルヴァ様ですよね?」


 その声は先ほどより近づき、声の主はアルヴァの目の前に立っていた。その人物の両脇には騎士らしき鎧を着込んだ二人が立っていた。

 流石に他人じゃないと思ったアルヴァはその人物に意識を向ける。


「あれ? 君は確か……イリス?」


 目の前に現れたのはイリスだった。流石に王都まで一緒に旅をし、偽名を名乗っていた相手を忘れることはなかった。隣にいるマリナは「イリス?」と言って首を傾げていた。


「貴様! なんと無礼な口の利き方だ!」


「よいのです。黙っていてください」


 騎士が一瞬怒りを露わにしたが、イリスこと本名イーステリアの一言で沈黙した。そして、改めてアルヴァに向かって微笑む。


「お久しぶりです。あの時は偽名しか名乗れなかったことをお許しください」


 そう言ってイーステリアは頭を下げた。偽名と知っていたアルヴァは反応に困ってとりあえず首を傾げた。


「わたくしの本当の名はイーステリア・アノウンと言います。ですが、今まで通りイリスとお呼びください」


 そう言ってイーステリアは奇麗なお辞儀をして見せた。


「わかったよ、イリス」


 アルヴァがそう答えると、イーステリアは嬉しそうに表情をほころばせた。


「ありがとうございます。ところでそちらの方々は?」


 イーステリアそう言って、マリナ、ルナ、ラビィの順に視線をめぐらせた。


「も……申し遅れました。私はマリナ・ランベールと申します。以後お見知りいただければ幸いです」


「私はルナ」


「それで、僕の頭の上でくつろいでるのがラビィです」


「マリナはどうしてアルヴァ様とご一緒に?」


 イリスこと本名イーステリアは不思議そうに問いかけた。


「偶然入り口で一緒になったんだ。イリスこそ学園に入るなんて言ってなかったよね?」


「はい。ですが、アルヴァ様にお会いしたくて受けることにしました」


 そう言ってイーステリアはほほ笑んだ。しかしその答えにアルヴァは首を傾げる。


「僕に会いに?」


「はい。なにしろまだ正式にお礼が出来ていませんから」


「気にしなくていいのに」


「そういうわけにはまいりません。それではわたくしの気が済みません」


「まぁ、気が向いたらね」


「はい。強制をしては恩人に失礼ですから」


 イーステリアは満足そうに頷いてそう言った。


「ところでイリスは能力測定した?」


「まだですが、アルヴァ様は?」


「まだだよ。そうだ。終わったらマリナと一緒に試験を受けるんだけど、イリスも一緒にどう?」


「よろしいのですか?」


 そう言ってイーステリアはルナとマリナに視線を送った。


「ルナとマリナはどう?」


「問題ない」


「むしろ、ご一緒していただけたら嬉しく思います」


 ルナはいつも通りに、マリナは先ほどまでより更に緊張した様子で答えた。


「そういうわけだから、イリスの能力測定が終わるまで待ってるよ」


「はい、ありがとうございます」


 そんなことをしているうちに先ほどの青年が受付から離れていった。やけに長く受付の職員らしき女性と話していたようだが、アルヴァにとってはどうでもよかった。


「アルヴァ君、お待たせしました!」


 アルヴァに気を使ったのか、職員らしき女性は少し離れた場所にいるアルヴァに聞こえるように呼んだ。ただ、呼び方が変わったことに気づいたアルヴァは苦笑していたが。


「じゃあ、僕は先に終わらせてきますね」


 そう言ってアルヴァはその場にイーステリアとマリナを残し、改めて受付に向かった。

このまま何事もなく終わるはずもなく……

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