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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第二章 ~旅立ち~
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エリーゼが誘拐されたようです その1

次回に続くので、次の投稿まで待ったほうが良いかもしれません

 借金返済から既に十日が過ぎていた。借金返済からのアルヴァの生活は平穏そのものだった。日中はギルドで受ける依頼は薬草採取や一層や二層の魔物の魔石集めをし、夜になると宿から村に帰る日々。そんな日々を充実した気持ちで送っていた。今日もそんな日常と化した日々と同じように薬草を採取し、ギルドに向かっていた。ちなみにルナは現在、奴隷商であるヨハンの手伝いをするためにアルヴァの元を離れている。

 ギルドに入り、アルヴァはもう慣れた様子で受付に向かう。すると、受付の女性はアルヴァに気づくと誰かを呼び出していた。アルヴァが受付に到着する頃には受付の一つにはメイプルが座っていた。


「メイプルさん、いつもいつもありがとうございます」


「いえいえ。私も仕事なので気にしないで」


 メイプルは借金の件以来、アルヴァ専属の受付の様になっていた。そうしたのはもちろんギルドマスターである。


「ところで今日はどうしました?」


「薬草をとってきました」


 そう言ってアルヴァはとってきた薬草を【道具箱(アイテムボックス)】から取り出していく。傍から見ると虚空から薬草が取り出されているようにしか見えないが、それに気づいているのは近くにいるメイプルだけだ。メイプルがアルヴァの専属に選ばれたのは良くも悪くもアルヴァに慣れているからである。


「いつもいつもありがとうございます。薬草採取は必ず必要なものなんですけど、地味なので受けてくれる人が少ないので」


「最低ランクの冒険者ですからね。地道にやっていくのは当然です」


「私には違和感しかありませんけどね」


 メイプルは苦笑しながら言った。そもそもアルヴァは三十層に到達する実力者だ。ランクにすれば5には届くだろうとメイプルもギルド長も考えている。そんなアルヴァが最低ランクの冒険者が受ける依頼を受けているのがメイプルには信じられないのだ。


「そういえば、ギルド長が感謝してましたよ」


「何のことです?」


 アルヴァにはギルド長に感謝されるような覚えもなく、首を傾げた。


「魔石の件ですよ。大きい魔石だったので高値で売れたって喜んでました」


「そうなんですね」


 アルヴァとしてはあれは小さい方なのだが、それを口にすることはない。


「でも、大きくても回復薬の材料にしてしまえば同じじゃないですか?」


 魔石を回復薬作りに使う場合、特殊な工程で砕いた粉を使うのだが、もちろん大きい魔石の方が作れる量は増える。しかし、それだけでそんなに喜べるものなのかと思い、アルヴァは問いかけた。


「回復薬に使うなんてとんでもない! あれだけ大きな魔石を砕くなんてそんなことしませんよ!」


 メイプルは慌てた様子で否定した。


「あの魔石たちは魔法具の製作に使われるんです。特にもうすぐ学園の入学時期になるので、魔法具を新調しようという貴族が多いため、高値がついたそうですよ」


「入学のために魔法具? なにに使うんですか?」


 学園にはアルヴァも入学するため、入学には魔法具が必要なのかと思い、問いかける。メイプルは一瞬驚いた顔をするが、すぐに笑顔になり、答えた。


「学園では魔法を使う授業もあるから、魔法具である杖を作るんです」


「杖?」


 アルヴァにはなんのことだか分からず、首を傾げた。本格的に説明が必要と察したのか、メイプルが説明を始めた。


「杖は魔法を使う時に使う魔法具で、杖には使われた魔石の大きさに応じて魔法を登録できる数が決まります。登録した魔法は杖を使用すれば魔力さえあれば誰にでも使えるというわけじゃありませんが、適性があれば使えます」


(そんな魔法具、魔王の時にはなかったから、最近できたものなのかな?)


 そんなことを考えながら、アルヴァはメイプルの説明の続きを待つ。


「通常、魔法は詠唱なしでは使えませんが、杖は登録できる魔法数に制限はあっても詠唱なしで魔法が使える利点があります。戦いに使うのならそれほどの種類は必要ないので、大人気の魔法具になります」


 魔法なんて無詠唱で使えるだろうとアルヴァは呆れていたが、それが一般的ではないことをアルヴァはナンガルフから「魔法を無詠唱で使える者はごく少数で、全員が賢者と讃えられるほどの実力者です。まぁ、アルヴァ様からすれば一般人と大差ないとは思いますが」と言われて知っていた。


(魔法具に頼りすぎた弊害かな?)


 そんなことを思いながら、説明が終わったと見たアルヴァはメイプルに質問する。


「学園には絶対必要ですか?」


「絶対ではないけど、貴族の方は必ず持ってますね」


 それを聞いたアルヴァは杖を手に入れることを今後の予定に追加した。学園に入学したときに無詠唱魔法を使っても不自然に見えないように保険として持っておきたいと思ったのだ。最も安い杖でも手に入れば、後は構造を理解し、自分で作れるだろうと考えていた。


「わかりました。ありがとうございました」


 アルヴァがそう言うと、メイプルは笑顔で手を振り、アルヴァを見送る。それを確認したアルヴァは同じように手を振り、ギルドを後にした。


(さて、これからどうしようかな?)


 これといってアルヴァには予定がない。これからは自由な時間になる。そこでアルヴァは先ほど気になった杖の魔法具を探しに行くことに決めた。


(だけど、どこにあるんだろう?)


 暇さえあれば王都を見て回っているが、あいにくとそんな店があったという記憶はアルヴァにはない。もう一度ギルドに戻ってメイプルに聞いてこようかと考えた時、突然頭の中でレイの声が響く。


(武器屋で聞いてみれば~?)


 そい言われてアルヴァはふと思い出した人物がいた。おそらくレイもその人物を思い出したから助言したのだろうとアルヴァは考えた。アルヴァは助言の通りに近くの武器屋に向かう。


「ガンダンさん、いますか?」


 ガンダンとは三人の冒険者に絡まれたときに一番に声をかけてきた人物だ。アルヴァの中では親切な人として記憶に残っていた。


「お? あんときの坊主じゃないか。どうした? 武器が必要になったか?」


「いえ、ちょっとこのナイフを見て欲しくて」


 アルヴァはいきなり本題には入らず、腰につけていたナイフをガンダンに差し出した。


「これはひどいな。努力は認めるが、手入れがなっちゃいない」


 ガンダンは顔をしかめながらそういう。それが分かっていたアルヴァは、手入れを頼みたかったのだ。


「僕にはわからないので、お願いできませんか?」


「おう、任せろ。ただ、もらうものはもらうぞ?」


「もちろんです」


 そういってアルヴァは【道具箱(アイテムボックス)】から金貨一枚を取り出す。


「これで足りますか?」


 アルヴァはたまに三十一層の魔石を買い取ってもらっていた。まだ持っているのだが、さすがに大量に出回りすぎると値崩れするということで、少しずつ買い取ってもらえることになっていた。この金貨は二日前に買い取ってもらった時のものだ。


「足りるかってお前…… 喋り方といい、どこぞの貴族のお坊ちゃんか?」


「違います。田舎の農民ですよ」


「まぁいい。とりあえず金については後だ」


 そういってガンダンはお店の奥に行き、道具を持って戻ってきた。


「ここでやるんですか?」


「火を使う作業じゃないからな」


 そういってガンダンはまずは切れ味の悪いナイフを研ぎ始めた。


「それで金だが、銀貨一枚だ。仕上がりに不満があればその時は相談だな」


 喋りながらもガンダンの研ぐ手には迷いはない。手元を見る目も真剣で、手を抜くつもりなど微塵もないことが雰囲気から感じられた。


「わかりました」


 そういってアルヴァは金貨をしまい、今度は銀貨二枚を取り出した。そして近くの机の上に銀貨一枚を置く。


「あとで相談って言ったはずだが?」


「見ればわかります。あなたはその程度で失敗するような人じゃない」


 アルヴァがそう答えると、「生意気な坊主だ」と呟いた。


「それはそうと、ガンダンさんは―――」


「ガンダンでいい」


 遮られ、一瞬アルヴァは驚くが、すぐに立て直した。


「ガンダンは魔法具の杖について知ってますか?」


「知ってるが、欲しいのか?」


 ガンダンは口角を上げ、にやりと笑った。それが本題なのだと察したのだろう。


「はい。ありますか?」


「あるにはあるが、坊主の魔法適正に合うかどうかはわからんぞ?」


「それでもかまいません」


 アルヴァとしてはそのものよりも構造が分かればいいので、物の良し悪しはどうでもよかった。


「じゃあちょっと待て。手入れが終わったら持ってきてやる」


 そう言われ、やることのなくなったアルヴァは飾られている武器を眺めていく。すると一つだけ豪奢な剣が目に留まった。ほかの剣は飾り気のないものが多いだけに、その剣はこの場では浮いていた。


「ガンダン、この派手な剣はなんですか?」


「それは魔法具だ。俺の作品じゃないが、偶然手に入れてな。まぁ、客寄せを兼ねて飾ってあるんだ」


「手に取ってもいいですか?」


「好きにしろ」


 許可をもらったアルヴァはそっとその剣を手に取る。


(付与されてるのは風魔法か。斬撃を飛ばすような構造か。飛距離は魔力によるけど、この構造だと五メートルくらいかな?)


「あの、これっていくらですか?」


「結構いいものだからな。金貨三十枚くらいだな」


「は?」


(これで金貨三十枚? 三十一層の魔石を三十個分?)


 信じられないものを見たようにアルヴァはその剣を凝視する。


「高いだろ? だが、性能はそれに劣らないものだ」


 それは無理があるだろうと思ったが、自分が常識からずれている自覚はあるため、別のことを質問する。


「じゃあもし、【不滅】を付与した武器があったらどのくらいですか?」


「【不滅】? あぁ、あの《英雄の剣》の拠点か」


 有名な話なのか、ガンダンにはすぐに伝わった。


「もしそんなものがあれば、金貨千枚でも安いくらいだろうな」


 とんでもないなとあり得ない金額に、アルヴァは驚くよりも先に呆れてしまった。【不滅】は確かに価値はあるが、ただ壊れないだけだ。ならばそれだけのお金を出せるなら予備の武器を用意したほうが良いのではないか。アルヴァにはそう思えた。


「そんなものが存在すればだけどな」


 それからもアルヴァは気になったものを見つけてはガンダンに質問していく。その質問にガンダンは嫌がることなく答えていった。そんなたわいのない話をしているうちにガンダンはナイフの手入れを終えた。


「じゃあちょっと待ってろ」


 アルヴァがナイフを受け取りそれを腰に差すと、ガンダンはそう言って店の奥に道具を持って下がる。アルヴァは何を待っていればいいのか分からず、首を傾げた。少ししてガンダンはレイピアの刀身を短くしたような武器を持って戻ってきた。


「これが杖だ」


 そういわれてアルヴァは目的を思い出した。杖について聞くためにここに来たのにも関わらず、ナイフの手入れと色々な会話をするうちに忘れてしまっていたのだ。


「これっていくらですか?」


「金貨五枚は欲しいが、ここじゃ売れるようなものじゃない。金貨三枚ってところか」


 アルヴァはそう言われ、迷わず金貨三枚を取り出した。


「ほんとお前何者なんだ?」


「今はただの冒険者ですよ」


 その言葉にガンダンは何かを諦めたようにため息をついた。そして杖を押し付けるようにアルヴァに手渡す。


「使えなくても文句言うなよ?」


「もちろんです。ありがとうございました」


 解析するのは後だなと思いながら、アルヴァは杖を【道具箱(アイテムボックス)】の中に放り込んだ。その様子をガンダンは気にした様子で見ていたが、問いかけることはなかった。


「他にあるか?」


 代わりにガンダンはそう口を開く。


「大丈夫です。また手入れをお願いするかもしれませんけど、その時はお願いします」


「金さえもらえればいつでも歓迎だ」


 その答えに満足したアルヴァは、そのままガンダンの店を後にする。そして改めて手入れのされたナイフを眺めながら歩く。


(本当に奇麗になった。切れ味もよさそうだし、頼んでよかった)


 ナイフは父親の形見だ。どんな人だったのか母親の話でしか知らないので思い入れはなかったが、一応形見なので大切にしたいと思っていた。


(早速戻って杖の解析しないと)


 ナイフをしまい、アルヴァは足早にクランに向かう。すると、クランの建物の前に人が集まり、騒がしかった。


(どうしたんだ?)


 訝しみながらアルヴァが近づいていく。そして声をかけると、その場にいた人たちの視線が一斉にアルヴァに集まった。


「アルヴァ君!」


 その人だかりから飛び出すようにワンダが駆け出してくる。目が潤んでおり、何かあったのだとアルヴァはすぐに察した。


「どうしたんですか?」


 状況を知るためにアルヴァは問いかける。


「エリーゼが…… エリーゼがさらわれたの!」


 その答えを聞いた瞬間、アルヴァは状況を理解し、魔力感知で国中を索敵した。目的はもちろんエリーゼを探し出すためだ。


(いた! 遠いが命に別状はなさそうかな)


 そう判断し、アルヴァは少し安堵した。人攫いならば命は大丈夫だろうと気持ちを落ち着かせる。


「大丈夫です。僕が助け出します。居場所も把握しました」


 アルヴァの言葉にワンダは驚きの表情を浮かべた。


「それは本当か!?」


 アルヴァの言葉が聞こえたのか、人ごみの中からマーカスの声が聞こえ、そして人の間から誰かの肩を借りてマーカスは現れた。体は血で汚れており、アルヴァが治したはずの右腕がなくなっていた。何とか止血しているようだが、それでも血があふれ出し、止血した布を赤く染めていた。


「マーカスさん、腕は?」


「エリーゼを守るためには仕方がなかった。賊の二人までは対処できたんだが、最後の一人に破壊された。すまない」


 マーカスはエリーゼが攫われる現場にいたのかとアルヴァは当時の状況を想像する。ひっそりと攫われたのではなく、半ば強引に連れ去ったのかと、その事実にアルヴァの中で怒りがふつふつと湧き上がってきた。


「そんなものはまた治せばいいです。ただ、今はエリーゼのことを優先します」


 そう言いながらアルヴァは腕を失って出血している腕を【治癒(ヒール)】で治す。その現象に気づいた数人が騒ぎ出すが、アルヴァは無視して【魔法創造(好きに作っちゃえ)】を発動させる。


(レイ、お願いがある)


(なになに~?)


 例はいつも通り間の抜けた声で答えた。それでアルヴァは少し落ち着きを取り戻しながら、それでも当初の予定通りレイに問いかける。


(行ったことのない場所に【隧道(トンネル)】のように空間を繋げるような魔法は創れる?)


(出来るかもだけど、それだと世界全部を魔力感知して跳ぶことになるかも? 相対座標はどうしても必要だし)


(だったら、魔力感知で分かった場所に飛ぶことは可能?)


(できるよ~)


(じゃあ、作成お願い)


(オッケー!


 プログラム作成――――――完了


 デバック―――――――――――完了


 アップロード――――――――完了


 魔法名【神出鬼没(逃げられると思うな)】作成完了しました)

さぁ、アルヴァの始動です

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