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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第二章 ~旅立ち~
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アルヴァは換金するようです その1

ダンジョンはあっさり風味で終了です

 ダンジョンを潜るアルヴァは順調に進み続け、気づけば三十階に存在する階層主のいる部屋の扉の前に到着していた。


(さて、ここでの魔石を回収すれば目的達成だ)


 アルヴァはそう思いながら扉に手をかける。そして一気に開け放った。そこに待っていた魔物は体長は三メートルほどぐらいだろうか。二足歩行で足の頭をしており、体は人間のようだ。手には斧が握られており、今部屋に入ってきたアルヴァを睨みつけるように見ている。アルヴァはそんな魔物の事など気にせず、【解析(アナライズ)】を発動させる。




名前     ミノタウロス

種族     魔物

レベル    100


体力    15000/15000

魔力      300/300

筋力     2500

精神力     180

スキル




 十層や二十層でも確認していたので分かっていたが、やはり三十層でもステータスに変化はなく、アルヴァは安堵する。そして今回はナイフを抜くことなく、そのまま拳を構えた。それを確認したミノタウロスは咆哮をあげる。


「ここまで来ると流石にすぐには終わらないから、先手必勝で行かせてもらうよ」


 アルヴァは伝わらないことを理解しながらそう宣言し、地面を蹴る。そして一気にミノタウロスに近づいた。それを見たミノタウロスは斧を振り上げた。そしてアルヴァに向けて振り下ろす。アルヴァはミノタウロスに近づくと左脚で強く地面を踏みしめ、今までの前方へ移動する勢いを回転運動に変え、右脚を振り抜き、振り下ろされた斧を蹴り飛ばした。斧はミノタウロスの手を離れ、宙を舞い、壁に突き刺さった。アルヴァの動きはそこまでに留まらず、右脚で斧を蹴り飛ばした瞬間、更に体を捻り、体を軸に回転し、左脚を振り上げ、かかとでミノタウロスの斧を握っていた腕を蹴り付けた。たったそれだけのことで、ミノタウロスの片腕は根本から千切れ、吹き飛んでいく。ミノタウロスが咆哮をあげるが、アルヴァは既に次の動きに移っていた。


【障壁】


 対物理・対魔法の効果のある防御魔法を空中に展開し、それを振り抜いた左脚で展開した障壁を足場にして飛び上がる。そしてそのまま今度はミノタウロスの(あご)を蹴り上げた。そのあまりの威力にミノタウロスの首は胴体と別れを告げた。


(ま、レベル100だとこの程度だよね)


 自身のステータスの高さに苦笑しながら、アルヴァは消滅していくミノタウロスを眺める。視界の端では吹き飛ばした斧も消滅していた。


(今回は何も残らなかったか。まぁ、階層主が残すのは滅多にないことだし、期待はしてなかったけど)


 消滅したミノタウロスの後に残った魔石をアルヴァは拾い上げる。


(これで良いの〜?)


 レイは直径五センチメートル程の魔石を見て不思議そうに問いかけた。レイの記憶でもミノタウロスの魔石は小さいのだろう。


(マーカスさん達の話を信じるならね)


 まさか嘘をつくこともないだろうとアルヴァは楽観的に考える。


(じゃあ、後四十九個だね)


(まぁ、残りは三十一層で集めるつもりだよ。レベルは60くらいだから、とりあえず余分に集めるつもりだけどね)


(じゃあじゃあ、何か創る?)


(流石にそれだけのためには創らないよ)


 用途が限定的な魔法は創っても使わなくなるので、アルヴァとしてはあまりそういった魔法を作るつもりはなかった。


(え〜!)


 レイは不満そうに声を上げるが、アルヴァはそれに反応せず、更に下の層に駆け出した。それからは一方的な殺戮だった。魔物を魔力感知で察知する度に駆けつけ、魔物の命を奪っていく。まるでゲームのレベル上げのように、淡々とアルヴァはこなしていった。そんな作業を続けること数時間。アルヴァは五十個の魔石を集めていた。それら全ては【道具箱(アイテムボックス)】の中にしまってあった。


(その魔法はあたしが創りたかったのに〜!)


 レイは悔しそうに、体があれば地団駄を踏んでいそうに言う。何度目になるか分からない反応に、アルヴァは呆れていた。


(いい加減諦めてよ)


(あたしが創ってありがたがられたかったの! 何で自力で創っちゃうんだ〜!)


 理不尽に怒られ、アルヴァは苦笑するしかない。【道具箱(アイテムボックス)】は時空魔法であり、魔王時代に自分自身で作り出した魔法の一つだった。空間に穴を開け、そこの空間を固定することで倉庫のような空間を作り出すこの魔法は、別空間に空間を作る性質上、どこにいても出し入れが出来ることが特徴だ。この魔法の開発により、荷物を多く持ち歩かずに済むようになっていた。更にこの魔法の利点は、同じ魔法陣を使用すると、別の人でもその空間から出し入れ出来るという点だった。なので遠く離れていてもすぐに道具の受け渡しができ、魔王時代はブラットと共有していた。ただ、この魔法には欠点があり、空間製作者が死亡すると中身ごと消滅してしまうことだった。現にアルヴァが転生してから前世での空間に繋げようとして、空間作成からになっていたので間違いなかった。


(君には感謝してるよ。ここぞという時に役に立って切り札みたいな感じで)


(そ……そ〜お〜? えへへ……)


 とりあえずレイの機嫌が良くなったので、アルヴァはレイが作成した魔法を発動させる。


隧道(初めの一歩)


 繋がる場所はダンジョンの外ではなく、一階だった。流石に出ていく時も見せた方がいいだろうというアルヴァなりの配慮だった。小さく開けて周りに人がいないことを確認し、アルヴァは大きく開けてそこを素早く通り抜け、すぐに空間を閉じた。誰にも見られていないことを確認したアルヴァは歩いて出口に向かい、ダンジョンを後にする。そしてダンジョンから見えなくなったことを確認すると、一気に加速して門を目指し、そこからはゆっくりとギルドに向かった。

 ギルドはいつものように様々な人が出入りしていた。とりあえず手持ちの魔石を換金するため、薬草のやり取りをした受付に向かう。


「あれ? どうかしました?」


 受付にいたのは初めて見る女性だった。その女性はアルヴァを見て不思議そうに首を傾げた。


「魔石の買取をお願いしにきました」


 アルヴァがそう伝えると、受付の女性は驚いたように目を見開いた。


「まさかダンジョンに行ってきたんですか!?」


「はい。なので換金したいんですけど、どうすれば良いですか?」


 アルヴァは受付の女性の驚きには頓着せず、同じように要件を伝えた。


「それならここで出来ますよ。それとも、依頼として処理しますか? 魔石も常に需要のあるものなので、いつでも依頼が受けられます」


「どちらの方がお得ですか?」


 アルヴァとしては今はただお金が少しでも多く欲しいので、そう尋ねる。受付の女性もアルヴァの心情を察したのか、笑顔で対応する。


「魔石によりますね。小粒なら魔石なら重さで取引できる依頼の方が得ですし、大きなものなら単体で売った方が高値が付きます。ダンジョンの初めの方の魔石なら依頼の方がいいですね」


「この魔石ならどうですか?」


 アルヴァは【道具箱(アイテムボックス)】から素早く一つの魔石を取り出すと、机の上に魔石を置いた。その魔石を見た瞬間、受付の女性が笑顔のまま固まる。アルヴァはそんな受付の女性を見て、固まる人多いなと呑気なことを考えていた。


「はぁ〜〜〜〜!?」


 動き出した受付の女性は立ち上がり、突然奇声を上げた。よく分からない反応にアルヴァは困ったように眉を下げる。


「今どこから……っていうか、この魔石は何ですか!?」


 あまりの声に注目を集めるが、受付の女性にそれを気にする余裕はなかった。


「え? ダンジョンでとってきました」


「そんなのあり得ません! だってこれ、どう見たって二十層の階層主の魔石ですよね!?」


 その声に反応にて、周りがにわかに騒がしくなる。しかし、アルヴァは周りの反応など気にせず答える。


「そうですね。その通りです」


 取り出した魔石は確かに二十層の階層主のものなので頷く。三十一層からの魔物も二十層の階層主と同じだが、一応区別して保管していたのだ。


「か……【鑑定】でも間違いない…… これ、間違いない。レベル60くらいの魔物の魔石です」


 受付の女性は誰に言うでもなく、ほとんど独り言のように言った。


「こんなのどこで手に入れたんですか?」


「だから、ダンジョンです」


「だから! それはあり得ません! あなた、回復魔法使いでしたよね! その上、《英雄の剣》にはほとんどメンバーがいないはずです!」


「そうですね。僕一人で行きましたから」


「回復魔法使いが一人で二十層まで到達!? 無理です! 不可能です!」


 回復魔法使いの評価が低いのは知っていたが、流石にここまで言われ、アルヴァの気分は悪くなり、顔をしかめる。


「まさか…… 何処かから盗んで?」


 それは受付の女性にとっては呟いただけのつもりだったのだろう。しかし、その言葉ははっきりとアルヴァの耳に届いた。


「僕を盗人扱いするってことですか?」


 流石に犯罪者扱いされたことに我慢できなかったのか、アルヴァの視線が鋭くなる。受付の女性は自分の失言に気づいたのか、顔色が悪くなる。


「ち……違うんです! ただ信じられなくて!」


 全く弁明になっていない言葉を受付の女性は口にする。しかし、流石にこれだけで怒るのは大人気ないとアルヴァは考えた。


「では、調べてみてはどうですか? それだけ驚くほどの魔石なら、届出があるはずです」


「その必要はないな」


 受付の女性が答える前に別の方向から男の声が聞こえ、アルヴァはそちらに視線を向けた。そこにはギルドに借金をとりにきた男、エヴェレットがいた。


「必要がないとはどういうことですか?」


 ある意味会いたくない男の登場に、これから起こることをなんとなく察し、アルヴァは心の中でため息をついた。


「それはうちのクランから盗まれたものだ。返してもらおうか」


 エヴェレットはニヤニヤしながら手を差し出す。やはりそう来るかとアルヴァは呆れるしかなかった。


「そうなんですか! やっぱり窃盗だったんですね! 憲兵を呼ばないと!」


 受付の女性はエヴェレットの言葉を一切疑うことなく、周りに伝えるように声を上げた。


(やっぱり……ね)


 受付の女性の発言にアルヴァの目がゆっくりと細くなっていく。周りの対応にアルヴァは面倒になりつつあった。


「憲兵を呼ぶには及ばない。俺はその魔石が返ってくれば騒ぎ立てはしない」


「盗んだ覚えはありませんが、ちなみに盗まれたという証拠は?」


 アルヴァはおそらく意味はないだろうと思いながらそう問いかけた。


「先程ダンジョンに潜っていた者たちが俺に報告してくれてな。やっとの思いで倒した階層主の魔石が盗まれたっていうから、売られるならここだと見張ってたんだ。案の定お前が現れたわけだ」


(既に仕込み済みってことなんだろうなぁ……)


 ここで何を言っても既に対処された後だろうとアルヴァはため息をつく。これだけ自信満々なのだから、口裏は既にあわされた後だろうことは十分に予想できた。


「つまり、盗まれた魔石は一つってことですか?」


「あぁ、その二十層の魔石一つだ。だから早くそれをよこせ」


 だんだん態度が露骨にアルヴァを見下したような傲慢な態度になっていくエヴェレットに呆れながら、アルヴァは魔石を手渡す。


「確かに受け取った。君が賢い人物でよかったよ」


「こちらの方の寛大さに感謝しなさい! 本来なら冒険者資格を失い、憲兵に捕まり厳罰だったんですよ!」


「その話はもういいので、別の受付の方を呼んでください」


 既にアルヴァはエヴェレットも受付の女性も相手にするのが面倒になり、そういう。そもそもこちらの話を聞く気がない人と話すつもりはアルヴァにはなかった。


「もう用はないでしょ。これ以上醜態をさらす前に帰ったら?」


 最初の態度はどこへやら、受付の女性は面倒くさそうな表情でアルヴァに蔑みの視線を向けている。それを無視し、アルヴァは周りを見渡すが、視界に入るのはエヴェレットの嫌らしい笑みと、周りからの迷惑そうな視線だった。しかし、そんな中でギルドの二階から一人の男が気だるそうに現れた。


「何の騒ぎだ?」


 その男は今でも冒険者と言っても遜色(そんしょく)ないほどの肉体で、逞しい筋肉をしていた。ただ、表情からはやる気が微塵も感じられなかった。


「ギルド長! ちょうどいいところに来ました!」


 受付の女性は面倒くさそうな表情から一転、嬉しそうな表情になる。


「この冒険者なのですが―――」


 受付の女性は今までにあったことを主観たっぷりに語る。完全にアルヴァを窃盗犯扱いした物言いに、既にアルヴァは何も感じなかった。


「おいお前」


 ギルド長と呼ばれた男はアルヴァの前に立つ。


「本当に盗んだのか?」


「いいえ。僕は潔白です」


「嘘です! 現に非を認めて魔石を渡したじゃない!」


 受付の女性の態度にギルド長は面倒くさそうに顔を歪めるが、何も言わない。


「争うのが面倒なので渡しただけです。どうせ誰も僕の言葉なんて信じないでしょう?」


 その言葉に受付の女性は何も言わなかった。その沈黙はあの場でアルヴァが無実を主張したとしても、信じることはないだろうということを認めているに他ならない。


「そもそも俺はエヴェレットのクランの実力で二十層の階層主を討伐できるかが疑問だな」


 そう言ってギルド長はエヴェレットに視線を向ける。しかしエヴェレットは肩をすくめただけで、何も言わなかった。


「だが、お前が討伐したと言い張るよりは現実味があるのは分かるな?」


「はい。ですからその件に関してはもういいです。魔石も渡しましたし、とりあえず窃盗犯扱いされないなら文句はありません」


「ほう……」


 ギルド長はアルヴァの言葉にやる気のない表情は変わらなかったが、目の奥に少しやる気が見えるようになった。


「それじゃあ、お前は何でまだここにいるんだ?」


「別の受付の女性を呼んでもらえるように頼んでいました。流石にこの人では気分が悪いので」


「なるほどな。おい! 受付に出れる奴いるか!」


 ギルド長の大声がギルド内に響き渡る。すると、奥から一人の女性が姿を現した。


「ギルド長、どうかしましたか? あれ? アルヴァ君?」


 現れたのは冒険者登録の時の受付してくれた女性だった。

アルヴァにとっては大体の出来事が些事です

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