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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第二章 ~旅立ち~
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アルヴァはダンジョンを攻略するようです

ダンジョンはダンジョンと呼ぶことにしました

 ダンジョン。それはどのようにして生まれたのか、いつから存在するのかもわからない謎の多い場所だ。そもそも誰がダンジョンと呼び始めたのかも定かではない。前世のアルヴァの記憶でさえ、既に古代から存在している場所だった。ダンジョンはアルヴァの記憶では五つしか存在せず、全百層になる。実際は百層に扉はあるのだが、アルヴァには開くことができなかった。階層は下に下がれば下がるほどに広さを増していくが、五十層を過ぎると今度は徐々に狭くなっていく。大雑把な形としては円錐二つを底面ではりつけた様な形だ。十層ごとに環境も異なり、最初の十層は地上と変わらないが、それより下は草原や砂漠、雪原や森林など、様々な環境が存在していた。

 ダンジョンに入ったアルヴァは周りに人がいないことを確認すると、いつものように重力魔法と風魔法を使用し、一気に加速する。ダンジョンの一層は幅広い通路が迷路のようになっており、冒険者を惑わす。しかし、流石に一層は探索されつくしているのか、迷うような冒険者はおらず、地図を持っている者がほとんどだった。アルヴァは地図を持っていなかったが、昔攻略しているため、その記憶通り進んでいた。そしてすぐに階層を降りる階段に到着する。


(良かった。記憶は間違ってなかった)


 自身の記憶に問題ないことに安堵しながら、速度を落とさず走り抜けていく。途中で魔物と遭遇するが、相手などしている時間もなく、ただ横を走り抜けていく。その速度に魔物たちは気づいたとしても、追いかけることはなかった。もちろん冒険者とも遭遇するうえ、戦闘中のパーティとも遭遇したが、通路はある程度の広さがあり、天井の高さも通路の幅ほどあるので、その場合は壁を蹴り、天井付近を飛び越えた。


(何人か驚いてこっちを凝視してたけど、顔を覚えるのは無理かな)


 アルヴァは駆け抜けているため、相手が見る頃には背中しか見えない。よってアルヴァの顔がばれることはなかった。二層、三層、四層とアルヴァは順調に駆け抜けていく。途中、見知った顔を見た気がしたが、いちいち確認する気にもならず、その後も五層、六層と駆け抜け続ける。そして七、八、九層を駆け抜けている頃には、冒険者を見かけることもなくなった。そして、ついに十層に到着する。


(思ったよりも時間はかかってないかな? 帰りは【隧道(トンネル)】使えないけど、これなら十分に往復できる)


 そんなことを考えている間に、十層の次の階層に続く階段の場所に近づいた。しかしそこは、今までとは趣が違っていた。まだ階段は見えないが、アルヴァの目の前には扉が存在していた。


(これが各十層ごとに存在する階層主の部屋。ここを突破しないと次の階には進めない)


 アルヴァは扉を押し、開く。すると中には今まで道中で見た魔物とは違った雰囲気を放つ魔物が奥の階段の前に存在していた。



名前     レッドウルフ

種族     魔物

レベル    30


体力    7000/7000

魔力      80/80

筋力     250

精神力     70

スキル 俊足Lv1



 アルヴァは魔法具で相手のステータスを確認する。元々確認するまでもないとは考えていたが、自分の知っている頃と変わっていなのか確認しておきたかったのだ。幸い、階層主のレベルや体力などは変わっていなかった。


(これなら三十層まで問題ないかな)


 アルヴァはそう確認すると、部屋の中に足を踏み入れる。すると、レッドウルフはアルヴァの存在に気づき、臨戦態勢をとり、うなり声をあげた。


(さて、さっさと終わらせないとね)


 威嚇していたレッドウルフは疾走し、アルヴァに近づく。しかし、アルヴァに動く様子はない。レッドウルフの攻撃は至極簡単で、爪で切り裂くか噛みついて引きちぎるかのどちらかだ。今回は噛みつきを選択したようで、レッドウルフは大きく口を開けた。

 アルヴァはそれを右腕で庇うことで右腕を噛ませる。しかし、レッドウルフの牙は微塵もアルヴァの腕には食い込んでいない。


「ごめんね」


 アルヴァは一言そういうと、ナイフを素早く抜き、レッドウルフの首を切り裂いた。レッドウルフが自分の死を認識する前に首と胴は離れて、そして絶命した。


(さてと、素材はとれるかな?)


 アルヴァは消滅するレッドウルフを眺めていたが、残ったのは小さな石一つだった。それは魔石であり、親指の先ほどの大きさの石だった。


(魔石の大きさはやっぱりこれくらいかぁ。やっぱりレベル百は必要かな)


 一応その魔石も回収すると、アルヴァは更に下の階層を目指す。


(さて、何分で行けるかな?)


 魔物の跋扈(ばっこ)するダンジョンを、アルヴァは道を走るかのように疾走する。十一層以降は草原で、通路らしい通路もなく、ただ広い平原が広がっているだけだ。よって目標物もなく、下層への通路を見つけるのは至難だ。しかし、アルヴァには魔力感知がある。


(広範囲感知は本当はよくないんだけどね)


 誰に対して言い訳しているのかわからないが、アルヴァはそう考えながら魔力感知を発動させる。

 【魔力感知】はただ自身の魔力を周囲にいきわたらせ、魔力に触れたものの魔力を感じ取るだけの技術だ。この程度ならば魔物たちも無意識に行っている。しかし、アルヴァの魔力感知はそこからさらに発達させ、放出する魔力濃度を上げることでものの形までも感じ取れるようになっていた。もっとも、その分魔力消費は多くなるのだが。


(あっちか)


 アルヴァは通路らしきくぼみを右前方に見つけ、そちらに進路を修正する。他にも大量の魔物が魔力感知に引っかかったが、全て逃げるように離れていくのをアルヴァは感じ取っていた。


(ね~ね~、なんでそんなに焦ってるの~?)


 草原を疾走していると、スキル【魔法創造】であるレイが不思議そうに問いかけてきた。流石になれたもので、アルヴァはその程度ではもう驚くことはなくなっていた。


(それは時間がないからだよ。わかってるでしょ?)


 レイはアルヴァの記憶を見ることができる。しかし、心が読めるとは違うようで、どのようにアルヴァの記憶を見ているのか、アルヴァにはいまだに謎だった。ただそういうものだと半分諦めているが。


(わかってるけど~……)


 どこか不貞腐れた雰囲気で答えながら、レイは言葉を続ける。


(期限は一週間なんだから、焦る必要ないと思うんだけどな~)


(それはあっちが勝手に決めた期限だ。守ってくれるとは限らない。それに……)


(それに~?)


(あの傲慢な態度が気に入らない)


 エヴェレットは明らかにマーカスやクランを見下した態度をとっていた。その態度にどうしてもアルヴァは我慢ならなかったのだ。


(それで、今から魔石をとってお金を稼ごうってわけ? もしかして、全部返済する気だったり?)


(もちろん)


 そんなことを話しているうちに十一層から降りる階段を見つけ、次の層に移動する。


(だから三十層目指してるんだね。なっとくなっとく。でもじゃあなんでそんなに焦ってるの?)


(今日中に三十層まで往復しないといけないからだよ。ここでは【隧道(トンネル)】使えないから)


 ダンジョンについてはアルヴァにも謎が多い。最下層の扉もそうだが、ダンジョン内では【隧道(トンネル)】などのダンジョン外へ干渉する魔法が使えない。よって帰りもアルヴァは走って帰るしかないのだ。ちなみに帰りにもきっちり階層主との戦闘は待っている。もちろん、復活する周期を過ぎていればだが。


(じゃあじゃあ、階層の床をぶち抜けばいいんじゃない?)


 レイはさらりと物騒なことを進言する。しかし、アルヴァの反応は驚きも何もなく、いつも通りだ。


(それやると万が一人がいたら大変だし、ダンジョンも修復に時間がかかるからダメかな)


 決して無理とは言わないアルヴァの考えに驚く人間はあいにくとここにはいなかった。非常識なスキルと人間は聞く人が聞けば卒倒しそうな内容の会話を続けていく。


(じゃあじゃあ、この階層の魔物を殲滅させて一つに加工するのはどう?)


(それも万が一、人工物だとばれない保証がない。結局、レベル百くらいの魔物を大量に狩った方が安全だし、早いよ)


 魔石の融合は同種の魔物であれば可能だ。しかし、いくらダンジョン内だとはいえ、常に同種の魔物に遭遇するわけではない。その手間と時間を考えれば、三十層まで直接向かった方が楽だった。


(じゃあじゃあ、あたしを使ってダンジョンから出る魔法創るのは?)


 その言葉を聞いた瞬間、アルヴァは今まで動かしていた足を止めた。


(魔法を……創る?)


(そうだよ~。もしかして忘れてたわけじゃないよね~?)


 正直失念していたのだが、ここで素直に答えるのはまずいとアルヴァは見られているわけでもないのに愛想笑いを浮かべた。私の存在意義が~とレイは不貞腐れているが、アルヴァとしてはどう反応すればいいのか困るだけだ。


(じゃあ、早速創ってもらっていい? 【隧道(トンネル)】と同じ感じで出口は指定できると嬉しい)


(はいは~い! 久しぶりだから張り切っていっちゃうよ~!)


 最後に魔法を創ったのは二年前なので、確かに久しぶりだとアルヴァも思った。そもそも【魔法創造】のスキルは破格の性能だが、今のアルヴァにとってあまり必要なものではなかった。確かに獣の魔物、ガルザムに襲われたときには救われたが、それはそれ。今のアルヴァにかかればあの時のガルザムならばほかに手の打ちようはある。魔法に関しても前世であらかた必要な魔法は研究し終えており、今更使いたい魔法などなかなか思いつかないのが現状だった。


(それでもまだまだ頼ることはあるんだなぁ)


 そう考え、アルヴァはしみじみと頷く。


(どうかした~?)


(君は頼りになるって思ってたんだ)


 本心からの言葉と分かったのか、レイは(えへへ……)と照れくさそうな反応を示す。


(褒められたから、さらに張り切っていくよ~!)


 そうレイが気合を入れると、一番初めに【魔法創造】を発動させたときのように、多重な魔法陣が展開される。その演出にアルヴァは苦笑するしかない。


(プログラム作成――――――完了

 デバック―――――――――――完了

 アップロード――――――――完了

 魔法名【隧道(初めの一歩)】作成完了しました)


 そして、作成が終わるといつものように何事もなかったかのように魔法陣は消えた。


(いつものことだけど、展開された魔法陣の意味が読み取れないのは不思議だなぁ)


 まったく意味のない魔法陣かと思ったこともあったが、不思議なことに同じ魔法陣を発動させ、魔法を使おうとすると大量の何か(・・)を消費し、発動が中断されるのだ。命の危機を感じたため、それ以来試していない。レイいわく(あたしって特殊だから)といい、全く答えになっていなかったが。


(発動できるってことは、意味が読み取れるってことだ。なのに理解できないってどういうことなんだろう?)


(ねぇねぇ、使わないの~?)


 そう言われ、アルヴァは思考を中断し、今作られた魔法を発動させる。魔力消費は少し【隧道(トンネル)】より増えたが、使い分ければ問題ない範囲だった。


(ありがとう、レイ)


(どういたしまして~)


 これでアルヴァは帰り道の心配はなくなったが急がなくてもいいという意味ではないと、先ほどと同じように疾走を再開した。(あたしが作った意味は~?)とレイが呆れているが、アルヴァの性分をわかっているのかそれ以上何も言わなかった。

 和やかな空気のまま、アルヴァのダンジョン攻略は進む。ちなみに現在十二層の魔物の平均レベルは二十五であり、決して安全地帯などではないのだが、アルヴァに挑もうという魔物は一匹も現れなかった。

毎回レイの創るスキルの名前には気を使います

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