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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第二章 ~旅立ち~
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エリーゼは目撃するようです

いつの間にか評価が増えてた! ありがとうございます

 エリーゼは目の前の男たちを知っていた。それも悪い評判を、だ。そんな者たちに囲まれている今の状況が和やかに終わるわけがないと察し、恐怖が身体を襲う。


「いつから気付いてたんだ?」


 男はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、アルヴァに問いかけた。


「最初からつけられてるのは知ってましたよ」


 気づいていたなら教えてほしかったとエリーゼは思ったが、そんなことを口にできるような状態ではない。


「アルヴァ、この人たちって……」


 エリーゼは目の前の男から隠れるようにアルヴァの背中に隠れた。エリーゼは自分にはどうにも出来ないことが分かっていた。しかし、だからと言ってアルヴァに隠れたのは何もアルヴァを頼ろうとしたわけではない。ただ、この状況から少しでも逃れようという逃避から来る行動だった。


「いちゃつきやがって。まさか俺たちが世間話をしにきたとでも思ってるのか?」


「そうなってくれると楽だなと思ってるよ」


 アルヴァは男の言葉に肩をすくめた。それを見て、男の顔は厳しくなる。エリーゼはこの状況を悪化させるような挑発するアルヴァの態度に少し怒りを覚えた。


「そんなわけねぇだろ! 貴様のせいで俺たちは王都にいられなくなったんだ!」


 そう言って男はナイフを抜く。合わせるように他の男たちもナイフを抜いた。


「今からでも僕が昨日のことは誤解だったって言いに行きますよ。今からでも一緒に憲兵に話にいきましょうか?」


 エリーゼは昨日アルヴァに何があったのかは知らない。ただ、憲兵という言葉から、なにか揉め事があったことは察した。


「うるせぇ!」


「そんなことしても無駄ですよね? 昨日の件はただのきっかけに過ぎない。あなたたちは今までの行いのせいで王都にいられなくなったんだ。それが僕のせい? 自業自得でしょう?」


 アルヴァの態度は余裕に満ちていた。本当に余裕なのではないかとエリーゼが考えてしまうほどに、アルヴァはまるで日常のように会話していた。


「お前のせいだ! お前さえいなければ今でも俺たちは上手くやってたはずだったんだ!」


「はぁ……もういいです。何を言っても無駄そうなので、一つだけお伝えします」


 このまま相手をするのが面倒になってきたのか、アルヴァはため息をつく。


「この子に手を出すな。そうすれば身の安全だけは保証するから」


 そしてそう忠告すると、アルヴァはナイフを抜いた。それに合わせるように取り囲んでいた男たちは構えた。


「アルヴァ、大丈夫なの?」


 エリーゼは不安そうにアルヴァに問いかける。


「大丈夫。もし危なくなっても君だけは逃げる時間は稼ぐから」


 アルヴァは安心させるためか、笑顔でそういう。しかし、エリーゼはその言葉に逆に不安を覚えた。まるでその言葉は命を賭けても時間を稼ぐと言っているようにしか聞こえなかったからだ。

 そんなエリーゼの不安と関係なく、遂に男の取り巻きの二人がアルヴァに向かって動き出す。それと同時に男も少し遅れて動き出した。二人の取り巻きは真っ直ぐにアルヴァに向かってくるが、アルヴァがまだ構えない。


「死ねぇ!」


 取り巻きの一人がアルヴァに向かってナイフを振り下ろし、もう一人はナイフを突き出す。すると、アルヴァはあっさりとナイフに当たった。


(え!? なんで!?)


 アルヴァが全く回避する素振りもなく、ナイフに当たったことにエリーゼの思考は停止する。しかし、現実の状況は待ってくれない。


「次はお前だ!」


 遅れて動き出していた男はアルヴァに目もくれず、真っ直ぐにエリーゼを狙う。しかし、思考の停止したエリーゼの頭の中にそれを回避しようという考えは浮かばなかった。ただ呆然と横に振りかぶられたナイフを目で追っていた。そして、次の瞬間、男のナイフが振り抜かれた。


「ああぁぁぁぁぁ!!!」


 叫び声を上げたのはエリーゼを斬りつけようとした男だった。エリーゼは未だに切られた感触がないことに不思議に思う間もなく、叫び声を上げた男の声にびくっとなった。


「忠告したはずだが?」


 エリーゼが驚いて声を発したアルヴァを見た。未だにナイフを突きつけられたままだが、アルヴァは変わらずそこに立っていた。少し雰囲気の変わったアルヴァに、エリーゼは何故か男たち以上の恐怖を感じた。


「なんだこいつ!?」


「ナイフが刺さらない!?」


 エリーゼの位置から見ることは出来ないが、実はナイフは全く刺さっていなかった。なんとか差し込もうと二人の男は力を入れているようだが、変化はなかった。


(ナイフが刺さらない? 確かあまりにステータスの【筋力】が高いと刺さらないって話は聞いたことあるけど、アルヴァはそれほど筋力が高いの?)


 エリーゼが知る由もないが、アルヴァは魔力操作により、魔力を筋力に上乗せしている。そのため、アルヴァは普通の鉄のナイフでは傷つかなくなっていた。もう無駄だと判断したのか、アルヴァを刺そうとしていた男二人は距離を取り、叫び声を上げていた男に近づいた。


「き……貴様! 何をした!」


 今まで叫んでいた男は落ち着いてきたのか、睨みつけるようにアルヴァを見た。男をよく見ると、ナイフを持っていた手が手首からなくなっていた。しかし不思議なことに、そこから血は一滴も出ていない。


「手を切り落としただけだろう?」


 そう言いながらアルヴァはどこにあったのかナイフを握りしめている手を男の前に投げ渡した。


「ふざけるな! お前は一歩も動いてない! 他に仲間がいるのか!」


「それに何故ナイフが刺さらない!? 服の下に何か仕込んでるのか!?」


「何かの魔法具か!? ナイフが刺さらないなんてあり得ない!」


 男たち三人はそうまくし立てる。エリーゼはそんな大混乱する男達を見て、逆に冷静さを取り戻していた。


(確かに普通はあり得ないわ。でも、お母さんが驚いたステータス。もしかして本当にクランの助けになる?)


 エリーゼがそんなことを考えている中、アルヴァは男たちの反応を見てため息をついた。


「どれだけ甘やかされて生きてきた? 問えば答えを得られるなどと、敵が情けをかけるとでも?」


 アルヴァは心底呆れたように再度ため息をついた。その反応が気にくわなかったのか、男たちの表情に怒気が浮かぶ。


「ふざけるな!」


「ハッタリなのは分かってるぞ!」


「貴様のようなガキが本物の冒険者に勝てるわけがない!」


 エリーゼにも彼らの言い分がおかしいことはわかった。そもそも彼らの言う通りハッタリならば、その種を明かせばいい。勝てると思っているならば、さっさと勝ってしまえばいい。つまり彼らの言葉はその種が分からなければ勝てないと思っているということを自ら吐露しているようなものだ。


「黙れ」


 それはそれほど大きくもない、どちらかと言えば小さな一言だった。しかし、その一言で男たちは一斉に静かになる。


「今すぐ決めろ。大人しく憲兵に出頭するか、このまま我を襲い、一生を終えるかを」


 そう問いかけられても男達は先ほどまでのように捲し立てることはなく、顔を青くして立ち尽くしていた。エリーゼは気付かないが、実は先ほどからアルヴァは【威圧】を発動させていた。流石に最大レベルではないようだが。


「う……うあぁぁぁぁあ!」


 突然手を切り落とされた男は切り落とされた手からナイフを拾うと、そのままアルヴァに向かって突進した。


「愚かな」


 アルヴァは突進してきた男の残った手も切り落とす。今回は冷静だったため、エリーゼには何が起こったのか見ることが出来た。


(水の刃を一瞬で生成してる! そんなことが可能なの!?)


 ただ、目撃したからといってそのまま信じられるかどうかは別の話だが。

 アルヴァはそのまま男を風魔法で吹き飛ばし、意識を刈り取った。


「お前たちはどうする?」


 アルヴァは向かってこなかった二人に問いかける。


「じ…自首させてくれ」


「命だけは…」


 二人の男は(ひざまず)き、首を垂れて命乞いをする。その様子を見て、アルヴァは納得したのか、【威圧】を解除した。


「あ……ありがとうございます!」


 男二人は一人はそそくさと倒れた男に、もう一人は両手を回収していく。エリーゼには【威圧】が感じとれていないため、男たちの態度が口先だけで実はすきを窺っているだけではないかと警戒していたが、男たちにそんな素振りはなかった。


「待って」


 二人の男がこちらに背を向けたその時、アルヴァが突然呼び止めた。エリーゼはその行動が理解できず、問いかけるようにアルヴァを見た。理解できなかったのはエリーゼだけではないようで、男二人は恐る恐るといった感じで振り返る。


「な……なんだ?」


「まさか、ここまで来て気が変わったとかないよな?」


 男二人は命の危機を感じており、今すぐにでもこの場から去りたかった。今担いでいる男も持っていきたくはないが、生きている以上、置いていくと後で憲兵に問われたときに面倒だと思ったからに過ぎない。


「警戒しなくていいよ。ただその両手、治しておこうと思って」


 そう言いながらアルヴァは近づいていく。


「治す?」


 男二人は思わずお互いの顔を見合わせた。出血していない原因は不明だが、切り落とされた手が戻るなど聞いたこともなかったのだ。


「いいから、切断面に手を合わせてください」


 説明が面倒だったのか、アルヴァは男二人に促す。とにかく逃げたい二人は反論することもなく、言われた通りにまずは右手を近づける。すると、そこに淡い光がともり、その光がなくなると手は完全にくっついていた。


(なにあれ!? まさか回復魔法! そんな強力な魔法、聞いたことない! そもそもあいつ、何種類の魔法使えるのよ!)


 既にアルヴァは二種類の魔法を使用できるとエリーゼは確認している。それだけでも驚異的なことなのだが、立て続けに起きた理解できない現象に、エリーゼの思考はうまく働かない。


(魔法で一番種類が使えたのって王国の最高魔法士の三種類じゃなかった? ううん、そんなことよりあの回復魔法の方が問題? もっと以前にあいつのステータスどうなってるの!?)


 エリーゼが自分の混乱に拍車をかけている間に、アルヴァは男の左を元通りに回復し終えていた。


「これで問題なく動くはずです。ただ、このことは他言無用でお願いします」


 アルヴァの言葉に二人の男は勢いよく何度も頭を縦に動かした。関わったらまずい。男二人の意見は完全に一致していた。アルヴァはその反応を見届けると立ち上がり、エリーゼの方に戻ってくる。男たちはそのまま王都の出入り門に向かって歩いていった。


「お待たせ……って、どうかした?」


 余程エリーゼがぼうっとした顔をしていたのだろう。アルヴァは不思議そうにエリーゼの顔を覗き込んだ。エリーゼは慌ててアルヴァから少し距離をとる。


「な……なんでもない! というかあんた、どうなってるのよ!」


 もう何を問いかけていいのかわからず、エリーゼは叫ぶように言った。しかし、アルヴァはその疑問に不思議そうに首を傾げる。


「ナイフのこと? それとも、魔法のこと? どちらのことでもクランに入ったら説明するよ」


 自分の能力を言いふらすような人はいない。それが良しとされているならば、【解析】されても失礼だと思う人はいないだろう。なのでアルヴァの言い分は正しい。しかし、エリーゼは納得できなかった。それでもここで詰めようなことはしなかった。


「わかったわ。じゃあ、クランに戻りましょ」


「あれ? 薬草採取は?」


 そもそもここには薬草を集めに来たのだ。その目的が終わらなければクランに入れないため、アルヴァとしては先ほどまでの出来事よりも重要だった。


「さっきまでの採取分で充分よ。むしろあの実力でクランに入れないとかない」


 すぐにでも今のことを知りたいエリーゼはアルヴァの手を取る。


「とにかく戻るわよ」


 そう言ってエリーゼはアルヴァの手を引き、出入り門に向かって歩き出す。アルヴァもそれに抵抗するわけにはいかず、一緒に歩き出した。


「絶対にクランについたら教えてもらうわよ?」


「わかってるよ」


 あまりに必死な様子のエリーゼにアルヴァは苦笑して答える。こうしてアルヴァは初めての依頼をよくわからない形で終えるのだった。

エリーゼは一般感覚枠

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