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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第二章 ~旅立ち~
24/79

アルヴァは冒険者になるようです その2

後半になります

「回復魔法使いではいけませんか?」


 そもそも回復魔法()()使えないとは言っていないが、それよりもアルヴァは自分の知らないこの時代の常識があるのだと考え、最初に話しかけてきた冒険者に問いかけた。


「なんだ、そんなことも知らないのか。よっぽど田舎から出てきたらしいな」


 男の言葉に何がおかしいのか男とその周りが笑い声をあげる。確かにこの国の端の方だったので田舎には違いないと思い、その言葉にアルヴァは嘲り(あざけ)の意味が含まれていようと気にならなかった。


「じゃあ教えておいてやる。回復魔法は何の役にも立たないんだよ。回復薬よりも使えない回復魔法使いなんてパーティに入れるだけ無駄だろ? 精々荷物持ちができるくらいだ」


(こいつ、何を言ってるんだ?)


 もちろんアルヴァは回復薬の存在は知っていた。アルヴァも作れるそれは、魔石と数種類の植物や動物の一部を使って作られる薬品で、その使う素材と魔石の量によって回復する度合いが異なる。しかしそれは薬品であるがゆえに使いきりであり、回復魔法に勝るものでないことはアルヴァは知っていた。そもそも回復すると一言に言っても体力を回復するのと傷を回復するのは別物なのだがとアルヴァは内心呆れていた。


「そんな回復魔法を使えるって宣伝したところで、どのパーティもクランも入れねぇよ」


「そうですか」


 周りの反応を見たアルヴァはそれが目の前の男の妄言ではなく、一般認識なのだと理解した。理解したと同時に何故ナンガルフはこのこと教えてくれなかったのかと首を傾げる。実はナンガルフはブラッドからあらゆる魔法について教えられており、回復魔法が使えないものではないと知っていたため伝え忘れてしまったのだが、今のアルヴァは知る由もない。


「あの、登録完了しましたけど……」


 そんなやり取りを聞いていたのかいなかったのか、いつの間にか受付嬢が戻ってきていた。


「ありがとうございます」


 アルヴァとしては絡まれているという認識だったが、有用そうな話だったために反応していたにすぎない。すぐに冒険者の男から受付嬢に意識を移した。


「こちらが冒険者証明になります」


 受付嬢から銀色の金属でできた小さな板のようなものを受け取りながら、アルヴァは問いかける。


「あの、試験はやらなくていいんですか?」


 先ほど受付嬢が冒険者登録時には試験が必要と言っていたことを思い出したのだ。しかし、


「回復魔法使いに試験なんてあるかよ。荷物持ちに試験が必要か?」


 答えたのは受付嬢ではなく、その場から動かない冒険者の男だった。


「そうなんですか?」


 アルヴァは冒険者の男が適当なことを言っているのではないかと思い、受付嬢に確認をとる。すると受付嬢は怯えたような表情で無理やり微笑み、答える。


「回復魔法使いになろうとする人が近年ほぼいないため、試験内容が決まっていません」


 そこまで適当な扱いなのかとこの時代の回復魔法への認識にアルヴァは頭を抱えたくなった。


「おい! せっかく教えてやってるのに無視するな!」


 勝手に話しているだけだろうとアルヴァは呆れるが、冒険者の男にとってはアルヴァに教えているつもりだったらしい。


「あなたに聞いていません。わからないことは受付のお姉さんに聞くので」


 アルヴァとしては気を使ってくれる人に答えてほしいというのが本音だ。誰しも自分を嘲笑うような人から教えてほしいとは思わないだろう。


「てめぇ! 人の親切をなんだと思ってやがる!」


 これが親切ならこの世界には聖人君子で溢れかえっていることになるだろうなとアルヴァは更に呆れる。冒険者の男はアルヴァにとってほぼ無価値と言えるほどどうでもいい存在になり始めていた。


「それはどうもありがとうございました。必要ないのでお引き取りください」


「ふざけてんのか!」


 むしろアルヴァは精一杯丁寧に対応したつもりだったのだが、冒険者の男にとってはそう感じなかったようだ。流石にアルヴァもだんだん鬱陶(うっとう)しく感じてくる。実力行使をしようかどうか悩んだまさにその瞬間だった。


「どうかしたのかい?」


 話に入ってきたのは先ほどアルヴァの魔力感知に反応し、我関せずを貫いた男だった。


「ちっ! なんでもねぇよ!」


 その男を見た途端、冒険者の男はその場から歩き去っていった。


「彼は登録しに来た新人に絡んで冒険者のことを教えてあげると称して金を巻き上げるようなやつでね。本当なら冒険者資格をはく奪しなきゃいけないんだけど、証拠がなかなかそろわなくてね」


 アルヴァに説明してくれているのだろう。我関せずを貫いていた男は説明口調でそういう。


「名乗り忘れていたね。僕はクラン《竜の一撃》のタークネット。よろしく」


「僕はアルヴァです。ありがとうございました」


 アルヴァとしては名乗る意味はなかったが、名乗られた以上は礼儀だと思い、名乗ってから頭を下げる。


「タークネットさんの手を煩わせてしまい、申し訳ありません。本来なら私たち職員の仕事なのですが……」


 受付嬢は申し訳なさそうにタークネットに頭を下げた。その態度はどこか尊敬しているような印象を受ける。その理由を考え、アルヴァは思わずタークネットのステータスを魔法具で覗き見た。




名前     タークネット

種族     人間

レベル     57

体力    9671/9671

魔力     701/701

筋力     321

精神力    213


スキル 剣術Lv3




(弱!)


 思わず声に出しそうになった言葉をアルヴァは無理やり飲み込む。それほどアルヴァにとっては衝撃的なステータスだった。


「ただのお節介だ。気にしなくていいよ。じゃ、僕はこれで」


 本当に冒険者の男を追い払いに来ただけなのか、タークネットは早々に離れていった。


「良かったですね。タークネットさんに助けていただけて」


 受付嬢はアルヴァに向かってそう言う。


(ナンガルフさんが少し強いと言っていたのがわかった気がする。僕が魔王だった時代では考えられないステータスだ)


 ただ、親切な人には変わりないので、アルヴァの中では人柄は好印象だった。


「彼はランク4の冒険者です。彼に追いつけるように依頼を無理ない程度にこなしてください。はじめのうちは分からないことが多いと思うので、何かあったらまた声をかけてください」


 あれでランク4になれるのかと、この時代の基準をまざまざと見せつけられたような気がして、アルヴァは改めて時代は変わったのだと感じていた。


「わかりました。ありがとうございます」


 そんなことは表情には全く出さず、アルヴァは頭を下げて受付を後にした。そして、ギルドの建物から出ていく。すると、待ち構えていたように先ほどの冒険者の男が二人の男を引き連れて立っていた。


「よぉ、待ってたぞ」


 しかし、アルヴァは無言のままそれを無視し、その横を通り過ぎようとする。


「てめぇ!」


 冒険者の男はアルヴァを逃すまいとしたのか、横を通り過ぎようとしたアルヴァの手首をつかんだ。その瞬間だった。


「助けて! 人さらいだ!」


 その言葉を冒険者の男は本当に理解できなかっただろう。しかし、その言葉が目の前のアルヴァから発せられたものであり、客観的に見て自分たちがどう見えるのか理解すればおのずと答えは分かっただろう。何しろアルヴァは知らない人が見れば十歳くらいの子どもにしか見えないのだから。周囲をよく観察すれば憲兵を呼びに走る者、冒険者の男たちを逃がさないようにと些細な抵抗なのか、その場を囲み始めた人などがいた。


「放して! さらわれる!」


 アルヴァは抵抗しているように見せかけつつ、だめ押しとばかりに子どものように叫ぶ。ここにきて冒険者の男たちは自分たちが周りからどう見えているのか理解したのか、慌ててアルヴァの手首を放そうとした。



――――――阻害魔法【感覚麻痺】 時空魔法【空間固定】×4



 しかし、その瞬間にアルヴァの魔法が発動する。阻害魔法により相手のつかんでいる手の感覚を奪い、時空魔法でその場から動けないように三人を固定し、更に手も放せないように固定した。周りにはアルヴァと冒険者の男が引きあっているように見えるかもしれないが、実際は手を中心に遠ざかろうとしているだけである。そのことになると徐々に人も集まってきていた。


「なにやってるっ!」


 アルヴァの叫び声を聞いたのだろう。一人の屈強そうな男が騒ぎの中心であるアルヴァと冒険者の男のところに近づいてきた。憲兵ではない。その手には大きな(つち)が握られている。


「こ……これは違う!」


 冒険者の男はそう叫ぶが、その言葉は余計に疑念を抱かせるだけだった。


「だったらその手を放せ」


 鎚を持つ男は最後の警告とばかりに告げる。しかし、冒険者の男の意思とは関係なく、その手を離すことはかなわない。


「何故か離れないんだ!」


 必死に冒険者の男は弁明するが、それを信じる人間はこの場のどこにもいなかった。


「こっちです!」


 そんなやり取りをしている間に誰かが呼んだのだろう。憲兵らしき兵士が走ってくるのが見えた。それを確認したアルヴァは魔法を解除する。途端に動けるようになった冒険者の男は後ろに転びそうになりながらも、すぐに態勢を整えた。そして脇目も振らずに人垣を割って走り出した。その行動に置いて行かれた二人の男は茫然とするが、すぐにまずいと気づいたのか、冒険者の男と同じように走り出し、そして見えなくなった。


「この騒ぎは何ですか?」


 ようやく現場に到着した憲兵らしき兵士は誰に問うでもなくそう声を出した。それを聞いたからなのかなんなのかはわからないが、やじ馬で集まっていた人たちが蜘蛛の子を散らすようにいなくなっていった。


「わしが説明しよう」


 誰もが目をそらしいなくなる中、名乗りを上げたのは鎚を持ってきていた屈強そうな男だった。


「ガンダンさん」


 どうやら憲兵と知り合いだったようで、憲兵は大まかな話をガンダンに聞き、表情が険しくなっていく。


「白昼堂々と誘拐ですか。それで、被害者は?」


「ほれ、そこにおるだろ」


 鎚を持った屈強な男であるガンダンは(あご)でアルヴァを示す。丁寧さもかけらもないが、憲兵が気にしていないところを見ると、いつもそういう人のようだ。


「君が誘拐されそうになっていた子供かい? 見ない顔だけど、名前は?」


「申し遅れました。僕はアルヴァと言います。今回は助けていただきありがとうございます」


 アルヴァはそう言って頭を下げる。実際助けなど必要なかったが、思惑通りに事を動かすためには憲兵は必要な存在だったのだ。


「礼儀正しいね。どこかの屋敷や店に奉公しているのかな?」


 子ども相手だからか、憲兵の口調はどこか優しげだった。


「いいえ。僕は冒険者です。と言っても今日登録したばかりですが」


「冒険者? つまり君は成人している?」


 憲兵は不思議そうにアルヴァをまじまじと見た。その表情にはそうは全く見えないと書いてあった。


「はい」


「それなのに誘拐されそうになったのかい?」


「こんな見た目ですから勘違いしたんだと思います」


 そう見えるように仕向けたのはアルヴァだが、そんなことはおくびにも出さずに答える。


「確かに君を見たら子供にしか――――――っと失礼」


「大丈夫ですよ。それより彼らはどうなるんですか?」


 子どもに見られることはいつものことなのでアルヴァは一切気にしなかった。そもそもアルヴァは年齢が精神年齢ではないため、その程度のことを気にする精神構造はしていない。むしろそれを今回のようにうまく使うにはどうすればいいのかを考える始末だ。


「とりあえず聞き込みをしてみないとわからないけど、証言には困らないだろうし、あの冒険者は元々問題行動で有名だから、すぐに捕まるだろう」


「いえ、そういうことではなく、刑罰がどうなるのかなんですけど」


「あぁ、そっちか。それなら犯罪奴隷になるだろうね。流石に未遂とはいえ、公衆の面前で誘拐しようとしたんだ。厳罰は免れないだろうね」


「そうですか。ありがとうございます」


 アルヴァがそう答えると、今度は憲兵からの質問があった。ただそれは心当たりはないかというよくある質問だったため、ギルド内でからまれたことだけを伝える。


「そうか、ありがとう。じゃあ僕はこれで失礼するよ」


 そう言って憲兵は来た時と同じように走り去っていった。


「ガンダンさんもありがとうございました」


 アルヴァは憲兵がいなくなるまで付き合ってくれたガンダンにお礼を言い、頭を下げた。


「ふん。男が軽々しく頭を下げるな」


「男たるもの、受けた恩を蔑ろにすべきではないと僕は考えます」


 アルヴァがそう答えると、ガンダンは嬉しそうに口元を歪めた。


「言うじゃねえか、小僧。まぁ、礼なら今度俺の店にこい。冒険者ならその腰のナイフより大きな武器も必要だろ?」


 そう言ってガンダンが目線で示したのは一軒の建物だった。今の口ぶりから武器屋なのだろうと当たりをつける。


「僕は魔法使いなのであまり使う機会はないと思いますが、必要な時は寄らせてもらいます」


「そうか」


 それ以上ガンダンは何も言わずに自分が示した建物の方に歩いていった。アルヴァもそれで区切りがついたと判断したのか、宿を探すために歩き出した。


(そういえば、僕が魔王の時に使っていた剣はどうなったんだろう?)


 アルヴァとしてはよく使っていた剣なので多少の思い入れはある。おそらくブラットが保管しているとアルヴァは考えているが、実際にどうなのかは想像の域を出ない。


(ナンガルフもブラットからその話は聞いたことないって言ってたし、やっぱりブラットに会わないことには始まらないよなぁ)


 アルヴァとしてはその剣以外を使うつもりは全くない。しばらくは魔法とナイフで過ごすしかないなと自分の中で結論づけると、アルヴァは今日泊まる宿を探し始めた。

アルヴァの性格は絶対主人公向きじゃない

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