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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第二章 ~旅立ち~
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アルヴァは冒険者になるようです その1

少し長くなったので二つに分けました

 アルヴァは検問所を抜けてからゆっくりと街中を眺めながら歩いていた。


(イリスに何も言わずに来ちゃったけど仕方ないよね。あれ以上貴族に深入りすると何言われるかわからないし。イリス一人の話だったら子どもの妄想ってことで片付くかもしれないし)


 アルヴァはイーステリアについて勝手に年下だと思い込んでいた。それは見た目ではなく、ただ精神的に幼く感じた結果だった。故にアルヴァは今回のことをあまり重要視していないのだ。むしろ自分のやりたいようにやれて少し満足しているくらいだった。


(それより何故偽名なんて名乗ったんだろう? えっと、本名はイーステリア……なんだっけ?)


 アルヴァのかけている眼鏡はある魔法が使えるようにしてある魔法具であり、その魔法とは何年も前に作った【解析(覗きは禁止)】という魔法だ。アルヴァとしては必要ないかと思ったが、「何事も備えるべきです」というナンガルフの言葉と、せっかく創ったのに使わないのはもったいないという理由だけで創られた魔法具だった。アルヴァはイーステリアの名前まで確認しながらその人物が王女だと気づいていない地点で宝の持ち腐れだが。


(ま、どうでもいいかな)


 そして興味ないこととしてイーステリアの名前はとうとう記憶の彼方に消え去ってしまう。アルヴァは名前をあまり記憶しない。それは人に興味がないからではない。前世で魔王をしているときに名前を持っているものの方が少なかったため、覚える習慣がなかったのが原因だった。


(さて、ギルドはどこかな?)


 今までの思考をきれいさっぱり頭の隅に追いやったアルヴァは当初の予定通りギルドに冒険者として登録するために周りを見渡す。しかし、あまりの広さと人の多さに見つけられる自信が徐々になくなっていく。


(うん、諦めて人に聞こう)


 アルヴァはすぐにそう心を決め、近くの少し外観の綺麗な商店らしき建物に入っていく。すると、かなりしゃれてた身綺麗な店員らしき男性がすぐに気づいてアルヴァに近寄ってきたが、どこか困った様子で軽く頭を下げた。それを見てアルヴァは商店だったことに心の中で安堵した。看板がなかったので少し自信がなかったのだ。


「いらっしゃいませ。どうかされましたか?」


 内装をアルヴァが軽く観察すると、そこには商品と思えるものが何もなく、ただ部屋の中央に机とそれを挟むように備え付けられた椅子があるだけだった。もちろん装飾品の類はあるのだが、それは商品には見えない。何を売っているのだと心の中で疑問に思いながら、アルヴァは当初の目的を果たすために口を開く。


「少し道を尋ねたいのですが、よろしいでしょうか?」


 アルヴァの礼儀正しい態度に一瞬驚いた表情を見せた店員らしき男性だったが、すぐに優しい笑みを浮かべた。


「ええ、かまいませんよ。どちらでしょうか?」


 アルヴァがわざわざ周りに歩いている人に尋ねずに立派な商店を選んだ理由は単純に話を聞いてもらえるのかわからないからだった。もちろん親切な人もいるだろう。だが、田舎者丸出しのアルヴァをカモとして金品を巻き上げようとする者がいても不思議はない。もちろんアルヴァが後れを取ることはないが、煩わしいことに違いはなかった。対して大きな商店の店員は教育が行き届いており、騙される心配が少ないのはもちろん、相手に対して態度を変えることはないことが多いことをアルヴァは前世の経験として知っていたのだ。


「冒険者登録するためにギルドを目指しているのです。どこにあるのでしょうか?」


 そう問いかけた時、扉がノックされる音が響く。


「旦那様、よろしいでしょうか?」


 「かまわないよ」という返事を目の前の店員らしき男性が声をかけると、一人の女性が扉から現れた。その女性は使用人なのか黒を基調とした大人しい服装をしており、足首まであるロングスカートをはいている。その手にはティーカップが一つあり、それは机の上に置かれた。


「ありがとう。このお客様のお相手をしたらいただくよ」


「かしこまりました」


 そう言って女性は恭しく頭を下げた。その瞬間、アルヴァはその女性のステータスを確認し、更に目に映ったものがなんであるのか理解し、ぎょっとしてしまった。しかし、女性は問いかける間もなく自分の仕事は終えたとばかりに入ってきた時と同じドアで出て行った。


「驚かれましたか?」


 アルヴァの表情を読み取ったのか、苦笑した表情で店員らしき男性はアルヴァに問いかけた。


「はい」


 アルヴァは隠すことでもないので正直に頷きながら答える。アルヴァの目に映ったもの。それは間違いなく剣だったのだ。それは女性の背中にあるため全体は見えなかったが、柄だけ確認できた。まさか柄だけ持ち歩いていることはないだろう。


「彼女は特別な事情でここで働いているのです。今は偶然持ち歩いていますが、日頃はあちらの壁に飾ってあります」


 そう言って店員らしき男性が示した先には確かに剣を飾れるような台が置かれていた。


「そうなんですね」


 別にそれに驚いたわけではなく、実際に驚いたのは女性のステータスだったのだが、訂正する気も起きず、アルヴァはそう言った。


「おっとそうでした、ギルドへの道でしたね」


 それから店員らしき男性は話を戻し、アルヴァにここからの道のりを説明していく。


「ご理解いただけましたか?」


「はい、ご丁寧にありがとうございました」


 そう言ってアルヴァは持っていた袋から銀貨を一枚取り出す。そして何も言わずに相手に差し出した。この世界の通貨は銅貨、銀貨、金貨、白金貨が存在する。価値は銅貨二十枚で銀貨一枚、銀貨二十五枚で金貨一枚となる。白金貨は状況により変動するためアルヴァは把握することを放棄していた。平均すると金貨十枚と同価値くらいではあるようだ。

 差し出された銀貨の意味が店員らしき男性には一瞬理解できなかったようだが、すぐにアルヴァが差し出した手を押し戻すような仕草をした。


「そのようなことでお金はいただけません。何かお礼をしたいとお思いなら、今度はお客様としていらしてください」


 アルヴァは銀貨が拒まれたことを意外に感じながらも納得し、袋に戻す。


「わかりました。ところでこのお店は何を扱っているのですか?」


「はい。ここでは奴隷を扱わせていただいております」


 奴隷という単語を聞き、ナンガルフの説明が頭をよぎる。この世界での奴隷は制度化されており、身売奴隷、借金奴隷、犯罪奴隷の三種類に分類され、商店で扱われるのは大体身売奴隷と借金奴隷である。おそらくこの商店もその類にもれないだろうと考えていた。アルヴァとしてはすぐに奴隷を扱っているお店が見つかるのは幸運だった。秘密を厳守し、ともに行動できる仲間は一人は欲しいと考えていたからだ。その役目に奴隷はぴったりだった。


「そうですか。では、いつか利用したいと考えていますので、その時にここに伺っても宜しいですか?」


 だからアルヴァは確認をとる。自分のようなまだ成人して間もないものでも大丈夫なのかと。


「はい。その時はよろしくお願いします」


 アルヴァは言質がとれたことに満足し、改めてお礼を口にすると、教えられた道を進んでいった。道中、先ほど見たことを思い出していた。思い出していたのは女性についてだ。


(彼女は精霊だ。それもかなり力の強い精霊。そうなると何千年も前の品物から生まれたのかな? 前世なら人間に祭られてありがたられるか、下手すると神として拝まれてもおかしくない存在だ。本当になんであんな所にいたんだろう?)


 アルヴァは名前の欄が空欄になっていたことから、精霊の彼女には持ち主がいないことまでは推測できたが、それ以上わかることは何もなかった。それから歩くこと十数分、アルヴァはやっと目的地のギルドに到着することができた。


(さて、まずは登録しないとね)


 アルヴァが一歩中に足を踏み入れると、中は多くの人でにぎわっていた。今から依頼を決めるのか、依頼が張られた掲示板を眺める者、机を囲み、話し合うパーティらしき集団。いろいろな人が行きかう中、アルヴァはふと魔力感知を発動させた。


(さて、どんな反応するかな?)


 素早く回りを観察すると、アルヴァの魔力感知に反応したのは三人だけだった。その三人の反応も様々で、何が起こったのか理解できずに周りをきょろきょろと見渡す者。反応を見せたが我関せずとそのまま気にしないように努めていた者。そして、アルヴァをじっと見つめている者だった。


(気づいたのが三人だし、あんまり強い人がいないなぁ。これならナンガルフさんのほうがよっぽど手ごわい)


 アルヴァは前にナンガルフに自身が一般的にどのくらいの実力なのか聞いたことがあった。その答えは「私は平均より少し上といったところでしょうか」と言っていた。


(予想はしてたことだけど、この時代のレベルは低い。それとも王都だからかな?)


 王都は確かに国の中心であり、クランが本拠地を構えることが多い。しかし、実力者が王都に滞在していることは実は稀だった。それは難易度の高い依頼が王都周辺ではないからだ。王都には騎士が存在するため、街道周辺の魔物はある程度駆逐されているのだ。もちろん全くいないわけではないが、地方はその比ではない。ただ、難易度の高い依頼は最終的に王都に集まってくるため、クランが王都にある理由の一つはそれだった。


(さて、受付はどこかな?)


 ぱっと見た限り受付は三種類存在していた。しかし、それぞれが何の業務を行っているのかを示すものは何もなかった。この世界の習字率は決して高くない。そもそも字を覚えさせる環境が整っていないのだから無理もない話なのだが。なのでこの世界に文字を使った案内板はほぼないのだ。


(聞くのがやっぱり手っ取り早いよね)


 アルヴァが適当な人はいないかと周りを観察すると、先ほど魔力感知に気づいた人が未だにじっとこちらを見ていることに気づいた。何か用があるのかとアルヴァも目線を向けるが、いつまで経っても行動を起こす様子はなかった。なので仕方なくアルヴァは自分でこちらを観察している人物に近づいていく。じっとアルヴァを見ていた人物は一瞬びくっとしたが、逃げることなくその場に留まっていた。


「すみません。少し聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」


 アルヴァをじっと見ていたのは男だった。ただ、冒険者にしては気の弱そうな顔をしており、魔力感知からしてもアルヴァには実力者とは思えなかった。


「え? あ、うん、大丈夫。何か用?」


 アルヴァが近づいてきていたのが見えていたのにもかかわらず、男は話しかけられたことに驚いたようだった。


「冒険者はどこで登録すればいいですか?」


「あ、それならあっちの受付に行くといい。軽い試験もあるから、ちゃんと話を聞くといいよ」


「なるほど。助言までありがとうございます」


 アルヴァは軽く頭を下げると、男に背をむけ、男の示したカウンターに向かっていく。アルヴァは背を向けていたので気づかなかったが、男はアルヴァが離れていくのを確認すると、体の力を抜き、心から安堵していた。男はじっとアルヴァを見つめていたのではなかった。ただ驚きのあまり放心していただけだ。そんなこととは知らず、アルヴァは受付らしいカウンターに近づくと、受付嬢らしき女性に声をかけた。


「あの、冒険者登録はこちらですか?」


「はい、そうですよ。登録ですか?」


 受付嬢は一瞬驚いた表情をしながらも明らかな営業スマイルを浮かべた。


「はい」


「では、登録料は銀貨一枚になります。そしてこちらに必要事項をご記入ください。字は書けますか?」


「大丈夫です」


 事前にナンガルフから得た情報通りだったことに安堵しつつ、アルヴァは銀貨一枚を差し出し、受付嬢から差し出された書類に目線を落とす。差し出された書類には書く欄が二つしかなかった。名前は問題ないが、もう一つの項目にアルヴァは首を傾げる。


(職業?)


 その聞いたことのない項目にアルヴァは何を書けばいいのか少し悩む。


「どうかしましたか?」


 そんなアルヴァの困っている様子を見て取ったのか、受付嬢はアルヴァに声をかける。


「あの、職業って何ですか?」


 そもそも職業って冒険者じゃないのかと思いながら、アルヴァは素直に質問した。


「職業というのは自分の得意なことだと理解していただければ大丈夫です」


 そう言って受付嬢は説明を始めた。


「ほとんどの方は剣士や斥候と書きますけど、中には魔法が使える人もいますから、そういう人が自分の特技を伝えるために書く欄ですね。あとから変えることも出来るけど、登録時に一応書いてもらうことになってます。一応魔法を使う方とそうでない方は試験が違いますよ?」


 そんな適当でいいのかとアルヴァは呆れながら、そもそもギルド自体が来る人拒まずだから仕方ないのかと考え直した。


「なるほど。ありがとうございます」


 そして、職業欄に最も得意とする魔法を職業にして書き込んだ。書き込んだ職業は『回復魔法使い』。実はアルヴァはナンガルフに魔法士の分類について聞いていた。人々はその人物が使える魔法について一定以上の評価を得た時、魔法士に付随するように頭につけて呼ぶようになる。それに倣い、魔法士でないものも得意な魔法があるときは魔法士でないものも魔法使いとして名乗ることが多いと。なのでアルヴァはこの職業がおかしいものではないとわかっていた――――――はずだった。


「え……?」


 職業欄を見た瞬間、受付嬢は明らかに動揺し、どこか憐れむような視線をアルヴァに向けた。


「本当にこれでいいんですか? 職業はギルドカードに書かれますよ?」


「何か問題でもありますか?」


 アルヴァは反応の意味をどう解釈すればいいのかわからず、問いかえした。


「い……いえ、このまま手続きしますのでちょっと待っててください」


 そう言って受付嬢は奥に引っ込んでいった。


「おいお前、職業になんて書いたんだ?」


 受付嬢の反応を見ていたのか、一人の冒険者がアルヴァに話しかけてきた。


「回復魔法使いですけど?」


 アルヴァがそう答えた瞬間、冒険者の表情は驚きに変わり、そしてすぐに人を馬鹿にしたような嘲笑を浮かべた。


「お前、回復魔法しか使えないのか!」


 まるで喧伝するようにその冒険者は大声でそう言った。その声はその場にいた多くの人に届いたのか、様々な反応を見せる。しかし多くは目の前の男のような嘲笑か、憐みの目線だった。アルヴァはその反応の意味が分からず、ただただ首をかしげるしかなかった。

次回、アルヴァ馬鹿にされるをお送りします笑

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