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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第一章 ~誕生~
16/79

その時は唐突に訪れるようです

前回からかなり間隔があいてしまいました。申し訳ありません。

「とりあえず今日はここまでかな」


 まだ日も高く、いくらでも作業は出来るのだが、アルヴァはいつもこのくらいの時間で終わっていた。


「僕はいつも通り狩りに行くけど、ラビィはどうする?」


 アルヴァは準備運動のために体を動かしながらラビィに問いかける。


『俺はナンガルフのところに行ってくる』


 最近ラビィはアルヴァが狩りについていくことはなかった。決まってナンガルフのところに行くラビィに内心アルヴァは二人が仲良くなったような気がして嬉しかった。


「わかった。気をつけてね。あと、やっと眼鏡ができたから、ナンガルフに渡してくれる?」


 アルヴァはそう言って眼鏡をラビィの目の前に差し出す。


「わかった」


 【解析(アナライズ)】の魔法具が完成したのかとラビィはそれを口にくわえて受け取る。それを確認すると、アルヴァは「お願いね」とラビィの頭を撫で、森の中に入っていった。


(そもそも俺に何を気を付けろって?)


 普通の武器では傷つけられないラビィは、昔と同じように心配してくるアルヴァに嬉しいような可笑しいような感情が浮かび、苦笑した。

 森の中にアルヴァが見えなくなると、ラビィはすぐにナンガルフのところに向かった。




『それで、冒険者の手配はどうなってる?』


 ナンガルフの家を訪れ、椅子の上に座り、机の上に眼鏡を置き、落ち着いたラビィの第一声はそれだった。最近そればかり問いかけてくるラビィに苦笑しながら、ナンガルフは答える。目線はラビィが口にくわえていた眼鏡に向いているが、それについて触れるつもりはない様だ。


「後三日で到着するでしょう。昔のつてを頼って腕前も確かなものを五十人集めました。到着すれば戦力として申し分ないでしょう」


『……だといいんだけどな』


 戦力としてラビィはそれほど期待していなかった。なにしろ相手はラビィ自身よりも更に力を持つ相手なのだ。腕に覚えのある人間が五十人集まろうと、どうにかなるとは思えなかった。

 しかし、数が戦力になるのはラビィも理解していた。自身が主力になり、他の人間には牽制をしてもらおうとラビィは考えていた。


「一応手練れを集めました。おかげでわたしの老後の資金はなくなりましたが」


 十分に今も老後だろうと内心ラビィは考えながらも、どう考えてもナンガルフはその言葉を待っている様子なので口には出さなかった。


『それは悪かったな。だが、感謝してる』


 代わりに感謝をナンガルフに伝える。その言葉に一瞬不満そうな顔をしたが、すぐにいつもの微笑みに戻った。


「ラビィ様とアルヴァ様のためならば惜しくはありません」


『本音は?』


「ラビィ様とアルヴァ様がいる限り、不自由する未来が想像できません」


 その答えにラビィは苦笑する。どちらが本音なのかは正直ラビィにはわからなかったが、おそらくどちらも本音なのだろうとラビィは思っていた。


『そういえば、アルヴァからナンガルフに渡してほしいと頼まれたものがある』


「それはもしかして、その眼鏡ですか?」


 気になってはいたのだろう。ナンガルフはすぐに興味深そうに眼鏡を見る。


『【解析(アナライズ)】の魔法具らしいぞ』


「あ……【解析(アナライズ)】ですか。またとんでもないものを……」


 ラビィはナンガルフの驚いたような反応を見て今更だろうと思いながら、机の上に飛び乗り、鼻先で眼鏡をナンガルフの方に押す。


『とりあえず使ってみろ。もしかしたら調節が必要かもしれないからな』


「では、お言葉に甘えて使わせていただきましょう」


 ナンガルフは目を輝かせながら、眼鏡を手に取り、早速身に着ける。


「それで、これはどう使うのですかな?」


『指輪と使い方は同じだ。試しに俺のステータスを見てみるか?』


「よろしいのですか?」


『見られて困るものじゃないからな』


 そう答えると一瞬ナンガルフは考える様子を見せる。しかしそれは気にならないほどの間にしかならない。


「人間の世界では勝手にステータスを見ることは失礼にあたるので、確認させていただきました」


『そうか』


 なぜ今その説明をと一瞬ラビィは訝しんだが、それが自分に対して人間の世界の常識を教えているものだと気づき、それには触れず、ただ一言で答えた。


「それでは失礼しまして――――――っ!」


 そのステータスを見た瞬間、ナンガルフは言葉を失った。


「…………失礼ですが、これは故障していませんか?」


『レベルが450超えてるように見えるなら事実だぞ?』


 今度こそ言葉を失ったのか、ナンガルフはじっとラビィを見つめている。正確にはラビィのステータスを見ているのだろうが。

 それから数分間ナンガルフの反応はなかったが、ラビィは黙ってナンガルフが落ち着くのを待った。


「ラビィ様がお強いのは分かっていましたが、まさかこれほどとは思いませんでした。わたしでは足元にも及びませんね」


『これでも二千年生きてるからな』


 褒められて満更ではないのか、態度はそっけないが、声は少し嬉しそうな声色だった。


「しかし、これほどのステータスの貴方でさえも歯が立たなかった魔物となると、お願いしている方々でも厳しいかもしれません」


『俺も共闘するつもりだから心配するな。それに相手は魔王の側近らしいからな。倒せる可能性があるだけマシだ』


「……その話は初耳ですが?」


 現魔王が表れてまだ二年。今は小規模の衝突があるとはいえ、相手側の動きは小規模なものだった。それを知っていたナンガルフは既に魔王側が軍として機能し始めていることに驚いていた。


『話してないからな。伝えたところでどうにかなったか?』


 全く悪びれることなくラビィは答える。そう言われて確かにとナンガルフは伝えられなかった苛立ちよりも先に、そこまで考えていたことに感心してしまった。

 もしナンガルフが前もってその情報を知っていたとして、その情報をもとに戦力を集めようとしても、必ずのその情報の根拠やどうやって手に入れたものなのかを説明しなければならない可能性が高い。ラビィの存在を信じさせたところで魔物の言うことを信じてもらえるとは考えられない。結局ナンガルフ自身が整えられる戦力はその情報にかかわらず変わらないのだ。


「しかし、わたしの覚悟のためにその情報は前もって教えていただけると嬉しかったですね」


 そこまでわかっていても、一応ナンガルフは苦言を呈した。ラビィの言うことが正論でもそれで納得できるかどうかは別だった。


『尻込みされても困るからな。たが、確かにお前に伝えないのは悪かった。言い訳になるが、誰かと戦うなんでのは久しぶりなんでな』


 あまり悪びれた様子もなく、ラビィはそう口にした。そのいつもと変わらない様子に苦笑した。


「そうですね。長い間お一人だった弊害と思うこととしましょう」


『……お前、意外に根に持つタイプだな』


「いえいえ、そんなことはございません」


 その笑みを見てラビィは諦めたようにため息をつく。その様子を見て、ナンガルフは今回のことを水に流すことにした。


『まぁ、これで俺が知ってることは正真正銘全部だ。隠し事は何もない…………はずだ』


 実は伝えたつもりになっているものがあるのではないのかと頭をよぎったのか、後半に自信のない言葉が続いた。そんな真面目なラビィにナンガルフは今度は優しい微笑みを向ける。


「では、その情報は数日後に来られる方にお伝えしましょう。それで逃げ帰るような方はいても邪魔なだけですからな」


『…………確かにそうだな』


 ナンガルフの厳しい言葉にラビィは一瞬今から来る冒険者をフォローしようかと思ったが、確かにいざその時になって(おく)されると困るなと思い、肯定(こうてい)した。


『本当は来なければいいんだけどな』


 ラビィは心から面倒くさそうにため息をついた。


「はい。ですが、必ず現れるのでしょう?」


『あぁ。そう言って去っていったからな。俺みたいな小物に負けたんだからなおさらだな』


「姿は最弱のホーンラビットですから、それは仕方がないかと」


『まぁ、そうなんだけどな』


 それでもラビィは侮られることが不服なのか、不満そうな声を出す。


「侮ってもらえるのならば、奇襲がしやすいと割り切ってみては?」


『まぁな――――――っ!』


 ラビィはそう答えた瞬間、何かに気づいたように急に立ち上がった。


「どうかされましたか?」


 ナンガルフはラビィのただならぬ様子に気づき、内容を予想しながらもながらも、努めて冷静に問いかけた。


『来たぞ、噂してたやつがな』


「まさか…………もう?」


 ラビィの話では負わせた傷の具合を考えるともう少し後になるはずだったのだ。


『あぁ、俺の感知範囲に入った。お前はこのことをダウに伝えて避難を開始させろ』


「ラビィ様は?」


『援軍は期待できない以上、俺が足止めする。アルヴァには言うなよ?』


「……本当によろしいのですか?」


 少し迷った末、ナンガルフは心配そうにそう問いかけた。アルヴァを危険にさらすことになるが、ラビィと組めば生存率は高くなると思っての助言だった。しかし、ラビィは首を振る。


『今のあいつじゃ絶対勝てる保証もない。俺はあいつに死んで欲しくないからな。まぁ、俺のわがままだから、お前が従う必要はない』


 戦力という意味ではアルヴァは必要不可欠な存在だということはラビィにもわかっていた。ただ、どうしてもラビィにはアルヴァを危険にさらしたくなかったのだ。


「いいえ、わたしも同じ気持ちです」


 そういってナンガルフは頭を下げる。


「では、生き残って二人でアルヴァ様に怒られましょう」


 そしてそう続けた。


『あぁ、そうだな』


 そう答えながらもラビィはそれが不可能に近いことは分かっていた。前回も油断しているところを不意打ちでダメージを前もって与えたがゆえに追い返すことができたのだ。もう油断はしてくれないだろうとラビィは考えていた。そして真っ向勝負をした場合は時間稼ぎができる程度だと分析していた。


『後はよろしく頼む』


 ラビィはそれだけ伝えると蹴破って扉を開け、気配がする方に疾走する。背後でかすかに聞こえたナンガルフの「後で修理費を請求しましょう」という呟きを置き去りにして。

 ラビィは自身の持つスキルの効果、【俊足】の効果もあり、まるで滑るように走り抜ける。村の出入り口を抜け、森の中の道をさらに進んでいく。


(いた!)


 そしてついにラビィは敵を視界にとらえた。

 四足歩行のその獣は、全身銀色にも見える白い体毛で覆われ、口元には鋭い牙が四本覗いている。一見犬のようでもあるが、熊をも超える体躯の獣を犬とは呼べないだろう。ラビィなど一飲みに出来そうなほどの大きさだが、それでもラビィは構わず走りる。


『ほう? 今度は正面からとは、なめられたものだな』


 人間が聞けば「ぐるうぅぅぅ」とうなっているようにしか聞こえないが、ラビィには相手が何を言っているのかしっかりと理解できていた。魔物同士では意思疎通に問題が生じることはない。ラビィは減速し、四足歩行の獣の前に停まった。


『不意打ちしたら、くらってくれたのか?』


『くらうわけがないだろう? 前回の屈辱、忘れるわけがない』


 そう言いながらも四足歩行の獣は嬉しそうに口角を上げる。


『しかしそれも今日で終わりだ。貴様の命を終わらせることでな』


『そう簡単にやられると思うのか?』


『魔王の側近である我に、二度の敗北など許されん!』


 四足歩行の獣はそう言いながら右前足を振り上げ、ラビィを踏みつぶそうとする。しかし、そんな大ぶりな攻撃が当たるわけもなく、自慢の俊足で左側に跳び、回避した。


『ちょこまかと鬱陶(うっとう)しい!』


『体が小さなことの数少ない利点だ』


そう言いながらラビィは近くの木を足場にし、四足歩行の獣に向かって跳ぶ。そして四足歩行の獣の頭を横から蹴りつける。


『グゥッ! くそ!』


(このくらいの加速じゃ大したダメージにはならないか)


 ラビィは相手の反応を見て、そう判断する。確かに痛がってはいるしイライラしているようだが、それだけだ。


『相変わらず速いな』


 そう言いながらも四足歩行の獣には余裕が見えた。確かにダメージはあるだろう。元の体力からすれば微々たるものでしかない。


『お前の大きさからすれば、俺は小さな羽虫と同じだ。叩き潰すのも大変そうだな』


 とりあえず時間稼ぎが出来そうなことにラビィは安堵する。しかし、ラビィには一つ気になることがあった。


(なぜこいつは焦らない? こいつの目的は村の人間の全滅。ならこいつにとって最悪なのは時間稼ぎをされ、村の人間全員に逃げられることだ。だったらここで俺の相手をしている暇はないはず)


『あぁ、そうだな』


 四足歩行の獣はそう同意しながら獰猛に笑った。


『だが、羽虫をたたき潰すのが難しければ、罠にはめれば良いだけのことだ!』


 その瞬間、四足歩行の獣は大きく口を開ける。そしてそこに急速に炎が発生する。


『なっ!』


 突然の魔法使用にラビィは狼狽(ろうばい)した。前回追い詰めた時にも使用しなかったため、使えないと思い込んでいたのだ。しかしすぐに切り替え、その魔法の炎を警戒した。だが、それが失敗であることをラビィはすぐに知ることになる。

 ラビィが避けるために足に力を入れた瞬間、炎弾が発射される。しかしその方向は発射される瞬間にラビィから逸れ、別の方向に向けられた。


『どこに――――――っ!』


 問いかけようと口を開いたラビィだが、着弾した爆発音を聞いて言葉を失った。何をされたのかを一瞬で理解したのだ。


『貴様! 村に向かって!』


 そう、炎弾は村の方角に向かって放たれていた。もし最初から炎弾をはじくつもりでいれば間に合っていた事実に、ラビィは悔しさから奥歯をかみしめた。


『羽虫は罠にかけるに限ると言っただろう?』


 四足歩行の獣は優越感からか嘲笑(ちょうしょう)を浮かべる。ラビィが村を見捨てれば何の問題もない。気にせず攻撃を続ければ四足歩行の獣が村を狙い続ける限り、倒すことすら可能となるだろう。そして討伐すればこの先村が襲われることなく、ある程度の人間は生き残れるだろう。しかし、ラビィにそんな選択肢は思い浮かびもしない。だからラビィは魔法をいつでもはじけるように、相手の動きを注視するのだった。

主人公はラビィではないかと最近考え始めました

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