スキル【魔法創造】を使うようです
やっと【魔法創造】の話が書けました。テンポが悪すぎる
狩りを素早く終えたアルヴァは早急に帰宅し、床の上に座り込み、考え事をしていた。ラビィは森で見回りをするということで別れていた。
(さて、【魔法創造】を使いたいわけだけど、これ、本当に大丈夫かなぁ)
スキルの使い方は理解している。頭の中でスキル名を唱えれば発動する。それだけだ。しかし、それを使ったときにどうなるのかが大きな問題だった。
スキルは便利なものほどリスクがあるものが多い。もし【魔法創造】が名前の通りの性能ならばかなり素晴らしい性能ということになる。それは同時にリスクの高さを物語っているのだが。
(問題はスキルを【解析】で見てもリスクが出てこないことだ。それがわかればすぐにでも使いたいんだけど……)
【解析】のスキルはスキルを解析し、その性能さえも詳らかにする。そのスキルでも説明リスクは書かれていなかった。通常ならばそれでリスクはないと考えるところだが、アルヴァはまだ疑っていた。
(【解析】も万能じゃない。出来ないことだってあった。全面的に信用するのはあまり良くない。でも、いつまでも悩んでいても仕方がないのも確かか)
アルヴァはどうしてもラビィと他の人たちが会話して仲良くしてほしいと考えていた。今のアルヴァにとってそれはなによりも優先されることだった。
「さて、気合を入れようか」
アルヴァはわざと声を出し、覚悟を決める。そして、頭の中でスキル名を唱える。
【魔法創造】
アルヴァはルビを無視してスキルを唱える。しかし、スキルが発動したような様子はない。
(これもやっぱりダメかぁ……)
アルヴァは思わず苦笑した。この結果は想像の範囲内だったからだ。
(【解析】がそうだったからそんな気がしてたけど、やっぱりルビは大事なんだなぁ……)
【解析】も中二病のようで恥ずかしかったので一縷の望みをかけて唱えてみたようだ。しかし、結果は悪い方向にアルヴァの予想通りだった。
アルヴァは気持ちも新たにスキルを発動させる。
【魔法創造】
(ぱんぱかぱ〜ん! 祝!【魔法創造】初発動! おめでと〜!)
いきなり頭の中に響き渡った声に、アルヴァの体はびくりとなる。周りを見渡してみるが、もちろん誰もいない。
(誰もいるわけないじゃ〜ん! あたしのことは【魔法創造】の使用を補助する存在って思ってくれれば大丈夫! 使いたい魔法を教えてくれればあたしが組み立てるよ〜)
なるほどとアルヴァは納得する。どのように魔法を創り出すのかと考えていたが、この補助機能にお願いすれば作ってくれるならば分かりやすい。
(なるほどね。こうやって使うのか)
(そそ。あたしはオルテレイションっていうんだけど、長いからレイって呼んで?)
名前があるのかと心の中で思うが、元々よくわからないアルヴァに文句はなかった。
(レイだね、よろしく。ところでさっそくで悪いんだけど、魔物の言葉がわかるようになる魔法を作れる?)
(魔物の言葉? りょうかいりょうかい。じゃ、改変しちゃうよ~)
(改変?)
アルヴァが疑問に思ったまさにその瞬間だった。その疑問が消え去るほどの現象が起きた。
目の前に無数に展開される魔法陣。それが淡く発光し、幾重にも立体的に重なり、部屋の中を満たしていく。その魔方陣に吸い込まれるように幾何学模様のように見える文字が螺旋状に飛び交いながらその魔方陣たちに吸い込まれている。その幻想的な光景にアルヴァは言葉を失っていた。
(魔法改変開始――――――)
そんなアルヴァの頭の中に先ほどまでのテンションとは打って変わって機械的な声でレイが告げる。
(プログラム作成――――――完了
デバック―――――――――――完了
アップロード――――――――完了
魔法名【多言語理解】作成完了しました)
レイの言葉を合図にしたかのように部屋を満たしていた神秘的な光景は消え去った。しかし、アルヴァの心を支配していたのは既に別のものになっていた。人によってはどうでも良いことかもしれないが、アルヴァには聞き逃せない言葉だった。
(【多言語理解】って、もしかしてこのスキルで創ると読みがおかしくなるのか
?)
自分の中に浮かんだ魔法の使用方法と同時に思い浮かんだ魔法名を読み、思わず苦笑する。
(ちなみに効果はスキル【多言語理解】とおんなじだよ~)
(うん、それは分かってる)
既にアルヴァの頭の中には以下の効果が頭の中に浮かんでいた。
【多言語理解】
この世界に存在するありとあらゆる言語、文字を理解できるような効果を与える。ただし、話せるようになるわけではない。
まるっきりスキルと同じ説明にアルヴァは再度苦笑する。
(あとは作らなくていいかな?)
(あ、うん。ありがとう。今は大丈夫だよ)
むしろアルヴァとしてはお試しで創ってみただけなので、この結果は満足だった。少なくともこれでラビィの言葉を誰もが理解できるようになる。
(じゃ、また呼んでね~)
あっさりとレアの気配は頭の中からなくなったことを感じながら、早速アルヴァは行動を開始する。
まずはこの魔法がどれほどの魔力を消費するのかを確認する。
――――――独自魔法【多言語理解】
アルヴァは魔力の消費を感じるが、それはごく軽微で、これならば誰でも使えるだろうということがわかり、ひとまず安堵した。
とにかくこの魔法を使えばナンガルフでもラビィの言葉を理解できる。ただ、本当に理解できるのかは試してみるまでは分からない。しかし、今から試しに行くわけにもいかず、その予定は明日に回すことにする。
その後は母親の手伝いをしてその日は過ごした。
次の日、アルヴァはいつの間にか帰ってきていたラビィとナンガルフを迎えに行き、昨日訪れた森を再度訪れていた。
「始める前にいいですか?」
予定ではここから森の開拓を始めるのだが、アルヴァはどうしても先に魔法を試したかった。
「どうかされましたか?」
「昨日、新しい魔法を作ったんです。ナンガルフさんに使ってもいいですか? もちろん既に危険がないことは確認済みです」
その実験はもちろん自分で行なっていた。
「新しい魔法……ですか。通常は発明するまでに数年、長いものでは数十年かかるものですが、それを一日で行うとは、さすがアルヴァ様です」
自分のスキルが規格外なんですとは言えず、アルヴァは曖昧に笑う。
「問題はありませんが、どんな魔法なのですか?」
「ラビィの声が理解できるようになる魔法です」
『俺の?』
ラビィは不思議そうに首を傾げる。その可愛い仕草に癒されながら、アルヴァは話を続ける。
「さすがにいつまでもナンガルフさんとラビィが話をできないのは寂しいからね」
『俺は別にアルヴァと喋れれば良いけど?』
ラビィにとってはアルヴァ以外は本当にどうでもいいのか、不思議そうにそう言った。
「でも、これからナンガルフさんと過ごしていくんだから、コミュニケーションは大事だよ」
『確かに通じた方がいざという時便利ではあるな』
「わたくしもラビィ様と話してみたく思います」
ナンガルフは好奇心が刺激されたのか、いつものように見える中で、目だけは楽しそうに輝いていた。そんなナンガルフの子供のような一面を見て苦笑しながらも、了承は得られたと魔法の準備を始める。
「準備は良いですか?」
「いつでも問題ありません」
ナンガルフが頭を下げたのを見て、アルヴァは魔法を発動させる。
――――――独自魔法【多言語理解】
見た目的にはアルヴァの前に魔法陣が現れたようにしか見えない。しかし、手応えとして魔法が成功したことをアルヴァは感じていた。
「成功しました。ラビィ、話してみて」
『いきなりそんなこと言われて何を話せっていうんだ?』
「おぉ! 分かります! ラビィ様の言葉が理解できます!」
ナンガルフは興奮したのか、テンション高く言う。
「改めまして、わたくしがナンガルフです」
『お……おう、よろしくな』
ナンガルフのテンションに驚いたのか、若干引き気味にラビィは答えた。
「これは素晴らしい魔法です。しかし、ラビィ様がそのような口調だったとは驚きでしたな」
興奮冷めやらぬ様子でナンガルフは言う。楽しそうなナンガルフを見て、創って良かったとアルヴァは微笑んだ。
「しかしこの魔法はどれくらいの効果時間があるのですかな?」
魔法に永続するものはない。魔法が魔力を消費して使うものである以上、発動を維持する為には相応の魔力が必要になるのだ。
「僕が近くにいれば供給し続けるので魔力が尽きるまでは永続です」
「それは不便ですね。アルヴァ様がいなければ、ラビィ様との会話もままなりません」
「でも、ラビィは僕の近くにいるので、それほど困ることはないと思いますよ? この魔法あんまり魔力消費しませんし」
「しかし、ラビィ様に伝言を頼むときなどに不便ではありませんか?」
「伝言?」
アルヴァはナンガルフの言いたいことが理解できず、首を傾げた。
『あのな、アルヴァ。俺だって何かの役に立ちたいんだ。仕事することくらいあるだろ? その時にナンガルフと意思疎通は重要じゃないのか?』
ラビィはかつての親友の性格を知っているが故にアルヴァが何を理解していないのかが分かっていた。
「なに言ってるんだ。二千年も頑張ってきたラビィに無理はさせられないよ。それにその程度のことなら僕がやるし」
アルヴァはあまり人に頼るということをしない。もちろん自分にできないことを無理してやろうとまではしないが、自分にできることをわざわざ誰かに頼むこともしないのだ。
『だけどな、俺だって何かの役に立ちたい。ペットじゃないんだ。仕事ぐらいさせてくれよ』
ラビィの言葉にその通りだと納得したアルヴァは、どう解決しようかと思考を巡らす。
「アルヴァ様、魔法具を作ってはいかがでしょうか?」
「あ、その手がありましたね」
魔法具はその名が示す通り、魔法と同じ効力を生み出す道具のことだ。魔法陣を動画に刻み、起動する魔力として魔石を設置して使う。元魔王のアルヴァにとって作ることは容易かった。
「でも、形は指輪型にするとしても、材料が手に入りません」
「具体的には何が必要ですか?」
「魔石は自前で用意できますけど、指輪を作る金属です」
魔石は魔力あればいくらでも量産できる。しかし、その他の材料は集めるしかないのだ。
「作るための工房などは必要ないのですか?」
ナンガルフは意外そうにアルヴァに問いかけた。
「金属加工は魔法で済ませるので、火を使っても問題ない場所さえあれば問題ありません」
「そうですか。では、金属はわたくしの方でご用意いたします。明日には手に入ると思われるので、また明日、作っていただけますか?」
「はい。もちろんです」
ラビィやナンガルフのために作るのだ。そんなことは言われるまでもなかった。
【多言語理解】についての話はこれでまとまり、改めて森の開拓作業を開始した。まずは木の伐採からだ。
「二人とも、下がっていてください」
アルヴァはラビィとナンガルフに注意すると、魔法の発動を開始する。
――――――【風刃】
ナンガルフの時に使用した手加減した威力ではなく、正真正銘の本気の【風刃】。不可視の刃が目の前の木々を次々と切り倒し、一瞬にして広場が出来上がった。
「……効率が良いとは思っていましたが、まさかこれほどとは」
ナンガルフの賞賛の言葉にアルヴァは首を傾げた。
「ナンガルフさんも同じ魔法使えますよね?」
同じ魔法を使っているのだから同じことが出来るはずなのだ。アルヴァはナンガルフがなぜ驚いているのかが分からなかった。
「今のが【風刃】なのですか? てっきり別の魔法なのかと。わたくしでは傷をつけるのが限界です」
その言葉に、アルヴァは普通がどの程度のものなのかが気になり始めた。
「ナンガルフさんの魔法は、一般的には普通の威力なのですか?」
「むしろ、威力が高い方だと自負しておりました」
ナンガルフはそう答えながら頭を下げた。
アルヴァにとって今の魔法は別段特別ではない。むしろ魔王時代で考えれば足りないくらいなのだ。一体普通がどれほどなのか、やはりアルヴァには想像できなかった。
(本当に現代の普通ってどの程度なんだろう?)
追々調べなければと思いながら、気持ちを開拓に切り替える。
「とにかく伐採は完了です。形を整えるのは見つけ次第で大丈夫ですよね?」
「それでよろしいかと。まずは木の枝の剪定と、運搬ですね」
「ラビィ、もう少し小さければ運べるかな?」
『このままでも運べるが、引きずることになるな』
「じゃあ、運ぶための台を作らないとだね」
まずは切り倒した木材を運び出すための準備を始める。アルヴァとラビィの活躍により、畑の開拓は急速に進んでいく。
ラビィが現実に欲しい




