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二度目の転生は上手く生きていきたい  作者: 江藤乱世
第一章 ~誕生~
11/79

やっぱり昔の友達はいいものです

二千年前の友達の登場です

 ラビィはまだアルヴァがこの世界に転生して間もない頃に出会った魔物で、アルヴァが一番最初に出会った生き物と呼べるもので、しばらく苦楽を共にしたアルヴァにとってはブラットに次ぐ相棒だった。ラビィが流暢にコミュニケーションがとれるのもそのおかげだった。


「僕だよラビィ。転生してしまって姿は変わってしまったけど、昔一緒に暮らしたハイリだよ」


 ラビィと暮らしていた頃は自身の名前がわからず、前前世の名前を名乗っていた。それ以外の名前を名乗り始めたのは人間と交流を持ち始めたころだった。


『ハイリの名前まで!? 貴様何者だっ!』


 ラビィは警戒心をあらわに威嚇するようにうなり声をあげる。ただ、実際には「キュキュキュッ!」としか聞こえないのだが。


「だから僕は転生したんだ。僕がハイリ本人だよ」


『人間風情が俺の親友を騙るな! 俺の親友が俺に断りもなく転生するはずがない!』


 確かに前世のアルヴァならば、確実に知らせていただろう。しかし、前回の転生は突発的でラビィに知らせる時間はなかったのだ。


「知らせんかったのはごめん。時間がなかったんだ」


『うるさい! 俺の親友を騙る人間が! いつもは追い払うだけだが、お前だけは許さない!』


 その瞬間、ラビィは思いっきり地面を蹴った。


(速い! このままじゃナンガルフさんが危ない!)


 直接見る必要がないのにもかかわらず、思わずアルヴァは警告のため振り返ってしまう。


「ナン――――ッ!」


 至近距離からの攻撃にアルヴァは警告を発しようとするが間に合うわけがなかった。ただ、攻撃されたのはナンガルフではなく、アルヴァ自身だった。

 アルヴァはわき腹に追突され、ラビィが生み出した運動エネルギーを受け取り、そのまま吹き飛んでいく。そして木の幹に激突して静止した。


「アルヴァ様!?」


 ナンガルフの声を聴きながら、アルヴァは考える。


(魔力操作していて良かった。していなければ今ので死んでいてもおかしくなかった)


『その老人を守ろうとしたようだが、俺はもうそいつを狙わない。先に仕留めるべきは強者。先ほどの反応を見る限りお前の方が強い。ならばお前を先に仕留めれば、老人が俺にかなう道理はない』


 自分しか狙わないという宣言にアルヴァは胸をなでおろす。その発言が嘘であるかどうかなどアルヴァは疑わない。ラビィはそのようなことで嘘をつく性格ではないのだ。

 アルヴァは今のラビィのステータスを調べるため、【解析(アナライズ)】を発動させる。




名前     ラビィ

種族     ホーンラビット

レベル    452

体力   34400/34960

魔力    1200/7095

筋力    5143(+1200)

精神力    301


スキル   俊足Ⅼv8




 流石に二千年も生きている魔物だけはあり、そのステータスは想像しているよりも高かった。魔力操作で防御していなければ即死してもおかしくないステータス差だった。しかしそれでも今のアルヴァに対抗できないステータスではない。それよりもアルヴァには気になるものがあった。


『今のは【解析(アナライズ)】か。そんなスキルを持っているとはますます親友のようだな』


 【解析(アナライズ)】がラビィにばれるのは理解していた。なので慌てることなくアルヴァは立ち上がる。傍目にナンガルフが安堵している様子が見えるが、それに反応している余裕はアルヴァにはなかった。


「だから僕がそうだって言いてるのに」


 これだけ類似点があっても信じてもらえないとは、過去の自分が信頼されているのかされていないのかアルヴァはよくわからなくなっていた。


『まだそんなことを言っているのか。呆れるな』


 傍目には「モキュモキュ」としか聞こえないため、ナンガルフには全く現状は理解できていない。


「まぁ、信じてもらえるとは思ってないよ。それよりもラビィ、気になってることがあるんだ」


『なんだ?』


「君の魔力は何故消費してるんだい?」


『!』


 ラビィからの驚きの気配を感じ、それは自分の勘違いではないとアルヴァは確信を得る。

 ラビィは魔物だ。魔物は人間とはそもそもの構造が違う。人間は元の世界と同じように物質をベースに作られている。しかし、魔物は魔石という魔素を凝縮した石を核とし、魔素がその周りに(まと)い、身体として存在させている。つまり、魔物は魔素というもので存在しているのだ。それ故に魔物は魔力を失うと魔石を残し完全に消滅してしまう。魔力は体力と同じように魔物に必要なものだ。しかし、ラビィの魔力は明らかに減っていた。ラビィのスキルには魔力を消費するようなスキルがないのにもかかわらずだ。


「僕は魔物が魔力を消費してしまう理由を知ってる。それは何かと戦い攻撃を受けた時と魔石に損傷があった時だ。そしておそらく、ラビィの魔石は損傷してる」


 魔物は通常人間よりも強い。それはレベル差にも関係しているが、もう一つの理由が魔力操作にある。魔物は生来魔力操作を行っている。そうすることで自らの体を強化しているのだ。先ほどのラビィのステータスの筋力に魔力分の補正がかかっていたのはこのためだ。

 当然、魔力操作を行っているときに攻撃を受ければそのダメージ分の魔力を消費する。だからこそ弱い魔物はすぐに倒されるわけだが。


『貴様は本当に人間か? なぜそんなに魔物に詳しい?』


「それは僕は元魔王だからだよ」


 ここまでありえない知識を披露しても疑わし気にアルヴァを見るラビィにアルヴァは苦笑した。


『本当にハイリ……なのか?』


「もちろんだよ。じゃあ、最後にこれをやれば信じてもらえるかな?」


 そういうとアルヴァは掌に魔素を集めだした。そしてそのまま魔素を圧縮していく。これはアルヴァだからこそできる荒業。本来ならば自然にしか起きない現象を人工的に起こす神業。アルヴァは魔王になって数年でこの技を編み出していた。


「アルヴァ様!? 何を!?」


 ナンガルフの驚きをアルヴァは説明が長くなるという理由だけで黙殺する。

 魔素の圧縮は数分間続き、アルヴァの持つ魔力の八割を消費し、それが終わったときアルヴァの掌には魔石が出来上がっていた。


「昔は魔物を狩ったものだったけど、あれから僕でも作れるように練習したんだ」


 魔物も人間も魔物を倒したときに微量に吸収される魔素を取り込むことで存在を強化し、それが蓄積され続けるとレベルアップする。特に魔物は魔石を食べることも出来るため、それによる急激なレベルアップが可能だ。ちなみに人間がそれを行っても吸収効率が悪いため、大したレベルアップにはならない。


「それに、これを食べないと自分の魔力を回復できないでしょう? 信じなくてもいい。とりあえずこれを食べないか?」


『…………本当に信じることはできない。ただ、お前は信用してもいい』


 そう言ってラビィはアルヴァに近づいていく。アルヴァはラビィが食べやすいようにしゃがみこみ、魔石を持った掌を差し出した。それをラビィは口を寄せて口に含むと、噛むことなくそのまま飲み込んだ。


「ありがとう、ラビィ」


 そう言ってアルヴァはラビィの頭を撫でる。ラビィはそれをなされるがまま受け入れていた。

 アルヴァは撫でながらラビィの体内を調べていく。するとアルヴァの予想通り、ラビィの魔石は損傷していた。


(やっぱり傷ついてたか。とりあえず治しておこう)



――――――回復魔法【天使の涙(エンジェル・ドリップ)



 それは今のアルヴァに使える最大回復魔法で、使えばどのような重症でも必ず完全回復する魔法だ。

 魔法をかけ終え、アルヴァはラビィから手を放す。


『ん? 今俺に何かしたか?』


「回復魔法をちょっとね」


『まさか、魔石を治したのか?』


「この魔法で治せるのは前世で経験済みだからね」


 もちろん試したのは前世で魔王をやっていた時だ。


『……早くもハイリなのではと信じたくなってきたぞ』


「信じてくれてもいいんだよ?」


『ふん……』


 不機嫌そうにラビィは鼻を鳴らしたが、アルヴァには照れ隠しのように感じ、ほほ笑んだ。


「アルヴァ様、そろそろご説明いただいても宜しいですか?」


 今まで静観していたナンガルフが一段落したと感じたのか、アルヴァに声をかけながら近づいてくる。


「あ、申し訳ありません。とりあえず和解しました」


「そうですか。それで、ここを開拓する件はいかがなさいますか?」


「それは今からです」


 そもそもアルヴァは何故ラビィがこの森を守っているのかを知らない。それを確認するうえでもアルヴァは確かめずにはいられなかった。


「ラビィ、なぜ君はこの森を守ってるんだ?」


『? あぁ、そうか。ここまで変わってしまってはいかにハイリとはいえ気づくわけもないか』


 ラビィは一瞬不思議そうな反応を見せたが、すぐに思い当たったのか、すぐに話し出した。


『ここは元々親友が住んでいた場所だ。月日の流れで見る影もないがな』


 そう言われ、アルヴァには思い当たる約束があった。


「もしかしてラビィ、僕の家と村を約束通り守ってくれてたのか?」


 アルヴァは前世、自分が初めて作った家を守ってくれるように頼んでいた。それがまさかこの場所だとはアルヴァは露程(つゆほど)も考えていなかった。


『親友の家だがな』


 その素直ではない答えにアルヴァは苦笑しながら、辺りを見渡した。


「ここが僕が住んでいた場所……」


 アルヴァには感慨深くはあるのだが、あまりにも様変わりしているため、感動はほとんどない。


『日々が経つにつれ、村も発展したり衰退したりして場所を徐々に変えたが、俺がこの位置で食い止め続けた。近所のよしみで仕方がないから村を守ったこともあるがな』


 アルヴァには二千年も何故守りが薄い村が残っていたのか疑問だったが、ラビィが守っていたなら納得できた。このステータスならそうそう後れを取ることはないだろうからだ。


「ありがとうね、ラビィ」


 ラビィは『お前のためではない。親友の頼みだからな』と照れ臭そうに答える。


「それでラビィ、ここは開拓してもいいかな?」


『俺は余計なものを排除していただけだ。俺の親友も俺が認めたものならば許してくれるだろう』


 なんとなくラビィは意地になっているだけのような気もするが、アルヴァはそこには触れず、ただラビィの頭を撫でた。


「どうやら話が纏まったようでございますね」


 ラビィの言葉は分かっていないはずなのだが、ナンガルフは完璧なタイミングでアルヴァに声をかけた。


「はい。ラビィの許可は得ました」


「その方はラビィ様というお名前なのですね。初めまして。わたくしはナンガルフと申します」


『俺に名乗るとは殊勝な人間だな。俺はラビィだ。よろしくな』


「ラビィ様はなんと?」


 ナンガルフには「キュッモキュ!」としか聞こえておらず、アルヴァに通訳を頼む。


「ラビィはよろしくと言っています」


「こちらこそよろしくお願いします、ラビィ様」


 ナンガルフはしゃがみ込み、右手を差し出す。するとラビィも右前足をナンガルフの手に乗せる。それをナンガルフはがっちりとつかんだ。


「それでラビィ、これからどうするの?」


 熱い握手を終えたラビィに、アルヴァは声をかける。


『いや、特には決めてないが、それがどうかしたか?』


「一緒に村で暮らさない?」


 アルヴァとしてはここを守る必要がない以上、二千年も一人で頑張っていたラビィを再び一人にしたくなかったのだ。


『魔物など恐れられるだけの存在。無用な混乱を招くだけだ』


「それなら問題ないよ。本来ホーンラビットは危なくない魔物だから、恐れられることはないよ」


「わたくしもそう思います。ホーンラビットをペットに飼う方もおられます。ラビィ様が村を訪れたとしても問題ないでしょう」


 話の流れをアルヴァの言葉だけで察したのか、ナンガルフはアルヴァの援護をする。


『……まぁ、そこまで言うならそうするか』


 ラビィもその言葉に説得されたのか、それとも元々行きたかったが村に迷惑がかかると遠慮していてその言葉は渡りに船だったのかはわからないが、少し考えてすぐに了承した。

 二千年前の親友との生活の始まりに、アルヴァは心躍らせながら、「作業は明日からにしましょう」というナンガルフの言葉に従い、この日は帰路に就いた。

 アルヴァはナンガルフと別れ、家の前に到着するが、中に入ろうかと入り口の前で迷っていた。母親は既に家の中にいるようで、畑には見当たらない。十中八九家にあるだろうとアルヴァは考えていた。


『アルヴァとやら、入らないのか?』


 隣にいるラビィが不思議そうに首を傾げた。


「いや、君のことを母さんにどう話そうかなと思って」


『包み隠さず話すしかないだろ? さっさと行くぞ』


 まるで自分の家のようにラビィは扉に近づき、器用に前足を使って扉を開けた。

 開けたものは仕方がないと覚悟を決め、アルヴァは開いた扉をくぐった。


「ただいま」


「おかえりなさい。案内ちゃんと出来た?」


 母親はちらりとアルヴァの足元を見たが、それには触れなかった。


「もちろんだよ。明日から開拓始めるって」


 もちろんやるのはアルヴァなのだが、その事を伝えるつもりはない。


「ところで、その子どうしたの?」


 先程からチラチラ見られていて聞かれるとは思っていたので、アルヴァは予め用意していた答えを口にする。


「森で出会ったんだ。僕に懐いたみたいで、一緒に暮らしていい?」


「でもその子、ホーンラビットよね? 大丈夫?」

 

 母親は魔物であることもホーンラビットのことも知っているようで、心配そうに問いかける。


「大丈夫。ラビィは賢くてこっちの言ってることが分かるみたいなんだ。ラビィ、挨拶して」


『俺はラビィ。母上殿、よろしくお願いします』


 ラビィはそう言って頭を下げる。もちろん母親には「モキュキュ!」としか聞こえていない。


「確かにアルヴァの言ってることが分かるみたいね。分かったわ。飼ってもいいわよ」


 飼ってもいいと言われ、アルヴァは許可を得てうれしく感じだが、それと同時に寂しく感じていた。

 ラビィはアルヴァの親友だ。決してペットではない。しかし母親にはラビィの言葉が伝わらず、意思疎通を図ることはできない。だからペットと思われても仕方がないのだと、アルヴァは自分に言い聞かせた。


「ありがとう。母さん」


 釈然としないものを感じながらもアルヴァはお礼をいう。とにかくこれで一緒に住むことはできるからだ。


「それで、ラビィちゃんはどこで寝るの?」


「僕と一緒に寝るよ。良いよね、ラビィ」


 ラビィはそれに頷く。


「そう、分かったわ。大切にするのよ?」


「もちろんだよ」


 アルヴァにとって相手は二千年前の親友だ。大切にしないわけがない。ただ、その意味は母親とアルヴァとでは微妙に異なっていた。やはり意思疎通は大切だとアルヴァは痛感していた。どうにかしたいのだが、会話を可能にする便利な魔法はない。作ろうとしても数年、下手をすると数十年の開発期間が必要だろう。そこでふと、アルヴァの頭にあるスキルの名前が浮かんだ。



魔法創造(好きに作っちゃえ)



 ふざけた名前のこのスキルを今まで無視してきたが、どう使うのかもわからないスキルだ。一度試しに使ってみようかとアルヴァは思考を巡らす。


「私は畑仕事の続きをやってくるけど、アルヴァはどうするの?」


 ラビィの話は終わったようで、母親はそう言って立ち上がった。


「今度は森に狩りに行ってくるよ」


 森にいたのだからそのまま狩りをしても良かったのだが、それでは心配されるとアルヴァは一度戻ってきたのだ。


「気をつけていくのよ」


 いつものように母親はそういうと、畑仕事に向かう。

 アルヴァも自分の部屋に向かい、仮の準備を始める。


「ラビィはどうする?」


『もちろんいくぞ。お腹すいたからな』


 ラビィは草食なので獣を狩るわけではないが、暇なのだろうとアルヴァは考えた。何か美味しそうな木の実があればいいなと思いながら、狩りの準備を黙々と進めていった。

ナンガルフがずっと黙っていたところやラビィの声を真剣に聞いていたことを想像すると何となくおかしい

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