聡子の場合~1
49歳をまもなく迎える同期入社2人。
恋愛なんて縁遠いと思われた2人の出会いを全13話で描きます。
聡子はまぁまぁお酒が好きだ。
でもダイエットをしてからはガバガバ飲むのではなく、ちびりちびり飲むような飲み方に変えた。
良いものを少し味わって飲む。
そういう飲み方に変えた。
ある日どうしても焼き鳥を食べたくなって、美味しいと評判の焼き鳥屋へ久しぶりに行った。
ビールにしようかと思ったが、それは止めて日本酒にし、ちびりちびりとやることにした。
お一人様なのでカウンターだ。
焼き鳥屋では大将が焼くのを見るのもご馳走だ。楽しみながら見て、ゆっくり焼き鳥と日本酒を楽しんだ。
「大将、ハツ2本!」
隣の建設業らしき日焼けのした筋肉質のいい身体の40歳位の男が注文した。
ハツか…そう言えばカロリーはそこそこ低かったなぁ…。今食べてる軟骨もコリコリして大好きだけど、久しぶりにハツも食べたいなぁ…。
「大将、私もハツ2本ちょうだい!」
と頼んだときに隣の男と目が合った。
隣の男はフッと笑った。
あら、日焼けして筋骨隆々でいい男じゃないの。
と聡子は思った。
大将がハツを焼く。
「お待ち!」
と隣の男と聡子と両手に2本ずつ持ったハツをお皿に置いてくれた。
またその時に隣の男と目が合った。
なんとなく「ハツ仲間」か「ハツ同盟」のような連帯感が漂った。
男が先に口を開いた。
「ここのハツ、旨いんだよね」
嬉しそうにちょっと恥ずかしそうに照れて男は言った。
ちょっと昔はやんちゃしてたのかな?というような、ワイルド系の男はハツを口に入れた。
「うん、そう!ここのハツは最高よね」
聡子も完全同意してハツを口に入れた。
そこから男との会話が始まった。
なんのことはない、焼き鳥で好きなのはどれか、とかから始まり、旨い酒はどれだ、といった類いの話だ。
その男は木曜日は必ずここで焼き鳥を食べてビールを2杯飲むのだという。建設業の彼は決して年収が高くなく、でもここの焼き鳥とビールがあと2日頑張ろうという活力になるということだった。
「自分が頑張れるものがあるって幸せね~」と聡子は彼が羨ましくなって心の底から言った。
「私はデブのオバサンになっちゃってさ…これじゃダメだと思ってダイエットしてここまでにしたのよね」
「今丁度いいじゃん」
「ありがと~。でね、ダイエットしてると外食って…カロリー高いし栄養も片寄るからあまり出来なくて。でも焼き鳥は美味しいし比較的低カロリーだし、元気出るから久しぶりに来たの」
とニッコリした。
聡子も沢山飲み食い出来ないし、男もビールは2杯と決めているので、比較的短時間でおあいそとなった。
「じゃあ!」
と別れて楽しい気分で家路についた。
13話を一旦書き上げましたが、ゆっくり見直したいので、1日1~2話のアップにします。ご了承ください。




