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49ersの恋愛ばなし  作者: 由起
5/13

久美子の場合~2

49歳をまもなく迎える同期入社2人。

恋愛なんて縁遠いと思われた2人の出会いを全13話で描きます。

男性はこの定食屋近くの不動産屋の経営者だった。決して大きくは無いが、従業員はアルバイト含めて3人いる。


男性は久美子が数年間ずっと博物館通いをしていることに気付いていた。久美子は自分に興味がなかった為に他の人を見ることもなかったが、ダイエットして化粧したり自分に目を向けるようになった為に男性に気付いた…というのが真相だ。


「最近お洒落になりましたよね」

と男性に言われて久美子は驚いた。久美子が驚いたので男性はちょっとしまったという顔をした。


「あ、先輩に教わってダイエットしたら、色々欲が出ちゃって(笑」

と久美子が頭を掻き、照れながら話すと男性はホッとした顔になった。

「いいことがあれば土曜日に1人で博物館には行きませんよ~(笑」


「お仲間ですか。私も独りもんですよ」

「そうなんですか?」

「人の縁ばかり取り持って、結局自分は独りもんですよ(笑」


男性は焼き鯖定食を手早く食べ終わり、

「じゃ、また!」

と去っていった。


久美子は本当は早食いだが、恭子先輩の言い付け通りさばの味噌煮をゆっくり噛んで食べ終わって店を出た。


翌月また博物館へ行った。

ゆっくり見て、また刀剣エリアへ行った。


(…あの男の人と会ったら挨拶すべきなのかな…でも聖域を汚すような気もするし…)

と悩みつつエリアに行ったが、男性はいなかった。


良かった…とホッとし、久美子は毎月恒例の刀剣を堪能して帰った。


翌月の第2土曜日は残念ながらマンションの火災報知器点検が午前中にあり、いつもの時間に出掛けられなかった。


残念ながらも少しホッとした自分もいた。

そこでちょっと趣向を変えて、閉館前の時間に行った。


夕方に刀剣を見るのもなかなかいい、と久美子は思った。でもやはり朝の凛とした空気の方がより良かった。


久美子は閉館まで居て、それからゆっくり御徒町駅へと歩いて行った。


せっかく夕暮れを歩くなら…と住宅街や細道等も通ってみた。少し大きめの道路に出たとき、横を営業車が通り過ぎ、少し向こうの店舗の横の駐車場に停まった。


件の男性が降りてきた。


久美子は奇遇さに驚いてじっと見てしまった。

すると男性が久美子に気付き、彼もまた驚いて久美子を見た。


久美子は驚きながらも歩みを緩めなかったため、車の方へ近付く形となった。


「こんにちは。珍しい時間にこの辺りを歩いておられるんですね」

男性はちょっと営業スマイルで挨拶してきた。


「マンションの点検があって、いつもの時間に行けなかったんです」

「そうでしたか」

「会社、こちらだったんですね」

「そうなんですよ」


そこへ店舗の中から社員が出て来て「社長、お電話です」と呼びに来た。


「お仕事中にお邪魔してしまってすみません」

「いやいや、こちらこそ」


久美子は別れてまた散策に戻った。


次の第2土曜日は暑い8月だったがいつもの時間に行った。


じっくり見ている内に刀剣の世界に入り込んでいた。さて、とエリアを出ようとすると男性が声を掛けてきた。


「今日はいつもの時間ですね」


久美子は不意を突かれて驚いた。

「習慣なので…」と答えるのが精一杯だった。


「どうです、この後ちょっと暑いけど散策に付き合いませんか?いいお店を見付けましてね」


人懐っこい顔で男性は言った。刀剣を見詰める戦国武将とは全く違う姿だった。


久美子は喪女だ。父親と親戚以外で男性と2人で歩いたことすら無い。遡れば小学校の時くらいはあったかもしれない。


でも人懐っこい顔を向けられ、思わず「あ、はい!」と答えてしまった。


(はいって言っちゃった…)


男性は笑顔で「じゃあ、行きましょうか!」と出口の方へ向かおうとした。久美子はついていった。


「今日はお休みなんですか?」

ふと久美子が気付いて尋ねた。


「お盆休みですよ」

と男性がにこやかに答えた。

「でもお店に忘れ物しましてね。お店に寄る前はここへ来るのが習慣なので来てしまいました」

「なので食事の後にちょっとお店にも寄らせてください」


男性が連れて行ってくれたのはイタリアンのお店で、パスタもあるが家庭料理中心のお店だった。いい感じのお店に久美子はわくわくした。


「いいお店ですね」


何を喋っていいのかわからなかったが、このせりふだけは素直に出た。


「いつも面倒くさくて定食屋へ行くんですが、あなたが散策されてるのを見て私も散策してみようかなと思いましてね。そしたらこのお店を見つけた、という次第で」


男性はさすが自営業という感じで、久美子に会話のスピードや話題を合わせてくれた。久美子は比較的リラックスして話すことが出来た。


「お休みは土日なんですか?」

男性が尋ねた。


「はい、土日祝日…ですね」

「残業とかも多いんですか?」

「ある時と無い時がありますね。水曜日は定時退社の日なのでほぼ残業は無いんですが」

「あ~定時退社の日!最近多いみたいですね」


リラックスして話しながら食べる食事は、1人で気楽に食べる食事よりは気を遣ったが、男性の柔らかい雰囲気のお陰で楽しく過ごせた。


13話を一旦書き上げましたが、ゆっくり見直したいので、1日1~2話のアップにします。ご了承ください。

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