65.不死の英雄
「下がっていて――と言っても、聞かないんでしょうね」
リズリアからすれば、宿敵と言っても良い相手だ。
そんな相手に、後ろで震えて眺めていろ、なんて通じないだろう。
そもそもさっきまでのレイウッドとの言い合いで、リズリアが滅茶苦茶頭にキてる感じがひしひしと伝わって来るし。
「死んでも、責任なんて取れませんよ?」
「そもそも、私はもう死んでいるのだ。更に言うならば、本当の意味で死ぬのなら、その時はその時だ」
他の何を捨て去ろうとも。
両親の、仲間の、国の仇であるレイウッドを討つ。
今のリズリアは、それだけを頼りに、己を保っている状態だ。
そんな復讐心の塊である相手をなだめすかせるような言葉は、持ち合わせていなかった。
――エルミアの時の出来事を、思い出す。
「死ぬよりも、酷い事になるかもしれませんよ?」
最悪、俺のこの力とやらに絡めとられるかもしれない。
死ぬ事が出来ず、本来の死とはかけ離れた、悪い言い方をするならばそれは――魂の檻。
それは結局、魂が囚われたこの状態となんら変わらぬ、牢獄。
「今の状態よりも、苦しい事などあるか!」
――それも、そうか。
復讐すべき仇、その掌に囚われたままの状態よりも、酷い状態など有り得ない。
死へ逃げる事すら許されない。
それ以上の苦しみなんて、ある訳が無い……か。
―――――俺ならば最悪、それを終わらせる手段もある。
「――どういう状態なのかは、理解出来ませんが。俺と関われば、貴女の憎んでいる相手が行った魔法的効力と同じような状態になりますよ?」
デッキをシャッフル、初期手札の7枚をデッキからドロー。
……マリガンだな、この手札は微妙だ。
再度、引き直す。
だが――この手札も、微妙だ。
悪いとは言わない。
だが、良い手札だとは言い難い。
流れ、というオカルト的発想があるが。
その発想で言うならば、先程の戦いといい、俺の流れは淀んでいる、と言っても良いのかもしれない。
デッキの上から召喚コスト5以下のユニットが出るまでめくる。
ファーストユニット確定、英雄女王 アルトリウス。
姿を現したアルトリウスが、リズリアに対し強く言明する。
「我等と共に戦うというのであらば、旦那様の命は絶対だ。例え自死しろという命令であろうとも、従って貰うぞ」
「構わん! レイウッドさえ殺せるのなら、この身がどうなろうと知った事か!」
激昂し、最早復讐以外目に入らない状態のリズリア。
一応、受け答えする程度には理性が残ってはいるようだが。
……俺の予想だと。
エルミアの時と違い、リズリアに華を持たせてやる……という事は生憎、出来ないとは思う。
名称:屍姫 リズリア
分類:ユニット
プレイコスト:???
文明:黒
性別:女
種族:アンデッド/人間
カテゴリ:
マナシンボル:黒
パワー:2000
1:?????
俺の盤面に、干渉している。
リズリアの姿を捉える。
……効果が、読めない。
以前のエルミアの時のように、効果が読み取れない状態だ。
だが、エルミアとは違い、リズリアの効果欄は一つしか存在していなかった。
エルミアは、三つだった。
どんな効果を持っているかは、分からない。
だが、何個効果を持っているかだけは、現時点でも分かる――という事か。
単純なパワーだけ見れば、エルミアよりも弱い。
そして彼女は人間だが、純粋な人間ではない。
いや、アンデッドであり人間である、という種族の書き方からして、人間であるというよりアンデッドとしての性質が強いのだろう。
更に、謎の効果。
こっちは、デメリット効果でなければ何でも良いか。
……手札はイマイチだが、ファーストユニットは良し、だな。
マリガン前の手札に2枚紛れ込んでいたアルトリウスをデッキに戻す判断が功を奏した、そう考えておこう。
残りはデッキに戻し、再びシャッフル。
その後、デッキの上から裏側のまま5枚の盾を展開。
倒すべき相手を、見定める。
頭に直接書き込まれたかのように、その情報が――
名称:亡国の妄執鬼 レイウッド
分類:ユニット
プレイコスト:???
文明:黒
種族:アンデッド
性別:男
マナシンボル:黒
パワー:3000
1:?????
2:?????
3:?????
4:?????
……何?
カード効果が、分からない……?
以前見た、エルミアのカード効果欄と同じような具合で、レイウッドの効果は読み取れない状態になっている。
名称:吸魔の杖
分類:装備呪文
プレイコスト:???
文明:青
カテゴリ:杖
マナシンボル:青
1:?????
2:?????
3:?????
そしてこっちは、レイウッドが装備している装備呪文、か。
こっちもまた、カード効果が読み取れない。
どういう事だ?
もしかして、相手が邪神の欠片でないと読み取る事が出来ないのか?
理由を考えようとするが、それはすぐにやめた。
どうせ今は、効果が分からない。
ならば、考えるだけ無意味だ。
見えない情報を警戒して足を鈍らせる位ならば、俺の考えを真っ直ぐに貫くのみだ。
幸い、パワーだけは分かっている。
相手に惑わされず、自分の動きを叩き付ける
それもまた、カードゲームにおける勝ち筋の一つだ。
――瞬間、浮かび上がるテキスト。
レイウッドの効果欄に、一つのカード効果。
1:【起動】【条件】このユニットを疲弊させる
【効果】このユニットのパワー以下のユニット1体を選択し、破壊する
この能力を、レイウッドが使用したという事か。
対象は――アルトリウス。
トリガー確認、だったら起動だ!
反射的に、それを宣言する。
「アルトリウスの効果発動。デッキの上から10枚を墓地へ送り、その効果を無効」
レイウッドが振るった杖から、迸る雷撃。
床を削り、壁を焦がし、防御出来ないように軌道を無作為に散らしながら、アルトリウスへと迫る。
アルトリウス自身に、その雷撃は降り注ぐが――その破壊力は、アルトリウスの手元へとまるで吸い込まれるように誘導され、そして留まる。
それが対象を指定する効果であらば、アルトリウスには届かない。
……何で、このタイミングでテキストが浮かんだのだろうか?
「そして、相手フィールドのカード1枚を破壊する」
無論、対象はレイウッド。
「魔鏡滅流剣!!」
今回、アルトリウスは特に剣を装備していない。
空手ではあるが、先程雷撃を留めていた片手を、剣を振るような所作で一薙ぎ。
その動作に合わせ、レイウッドの力に自らの力を上乗せした、大破壊がレイウッドに向けられた。
へー、剣を装備してない時はカウンター効果ってそういう風に処理されるのか。
ちょっとした、新しい発見だ。
……邪神の欠片は、最初から全ての効果が見えていた。
だがレイウッドも、レイウッドが持っている杖も、カード効果を読み取る事が出来ない。
やはり、分からん。
アルトリウスによる、カウンター。
それはレイウッドを確かに貫き――倒れない。
「ほう、中々やるじゃありませんか。まあ、効きませんがね」
わざとらしく、肩の埃を払うような動作をして見せるレイウッド。
虚勢ではなく、本当にノーダメージのように見えた。
1:【永続】【条件】カード効果が発動した時
【効果】このカードに吸魔カウンターを1つ乗せる
2:【永続】【効果】装備ユニットのパワーは、このカードに乗っている吸魔カウンターの数×1000アップする
次から次へと。
今度は何だ?
これは……吸魔の杖とかいう、レイウッドの装備している装備呪文の方の効果か。
レイウッドの杖が、強い光を放っている。
アレが、パワーが上昇しているというサインという事か?
待て、じゃあ何か?
さっきの攻防で、もうレイウッドのパワーは2000上昇しているって事か?
上昇倍率が、エグいな。
ユニオンダガーに匹敵するぞこのパワー上昇速度は。
アルトリウスの一撃を受け、本来ならばこれで破壊されるべきだ。
だがレイウッドは倒れておらず、涼しい顔でそこに健在。
自らの攻撃が届かなかった事は、特に驚きもしていないようだ。
「……フン。ならば、コレはどうだ?」
通用しないならば、次の手だとばかりに。
レイウッドが、杖を持っていない片手をスッと、こちらへと向け――
3:【起動】【条件】1ターンに1度
【効果】自分フィールドにアンデッドトークン(黒/不明/アンデッド/1000)3体を召喚する。このターン、自分は攻撃出来ない。
石の床から、ゆらりと立ち上がるアンデッドの群れ。
……この土地に来てから、アンデッドを呼び出していたのはレイウッドで確定と見て良いな。
このテキストが、レイウッドのカード効果欄に浮上していた。
3体を召喚とは言うが、アンデッドトークンは複数体で1体とカウントされている為、実際には何十もの不死者の群れとなっている。
トークン生成効果まであるのか。
呼び出されたのは――亡者。
魂を失い、尚眠れぬ、安らぎ無き肉体。
「やれ」
レイウッドの合図と共に、アンデッドの手がこちらへ伸びる。
死の世界へと引き摺り込もうとでもいうのか。
だがしかし、アルトリウスはそもそもパワーで勝っている以上、その攻撃は届かない……
――というより、俺を中心として、まるでそこで世界が隔絶しているかのように、アンデッドは俺とアルトリウス、そしてリズリアが居る空間へ入る事が出来なかった。
どれだけ手を伸ばそうと、見えない壁に手が叩き付けられるのみ。
訝しむレイウッド。
何故、俺達に対し攻撃が届かないのか、理解出来ないようだった。
まるでアルトリウスの攻撃無効効果のようだが、今回そんなものは使用していない。
何でだろうかと理由を考えたが――
「あ」
……そういえば。
俺、まだドローしてないんだけど。
なのに、あっちは行動してる。
じゃあ俺、今回後攻じゃないか。
「先攻は攻撃出来ないぞ」
先攻は、最初に行動出来る分、アドバンテージが大きくなる。
一方的に先攻が有利になるのを避ける為、エトランゼでは先攻を取ったプレイヤーは第一ターンの攻撃権利を喪失する。
それはエトランゼに限らず、他のカードゲームでも見られる、先攻に対するデメリット。
先攻判定になっている、レイウッドに対してもそのデメリットはしっかり適用されているようだ。
「先攻……? 何だそれは?」
「何かどうも、俺が使っている力はカードゲームの力らしくて。こっちのルールに則ってないとお互いにダメージが入らない……みたいですね」
疑問を口にしたリズリアに対し、その答えを返す。
いや、俺は今までルール無視をロクにしていないから推測だが。
相手がこちらのルールを無視して加えた攻撃に関しては完全に無効化している以上、多分そうだろう。
逆に俺がルールを無視した攻撃をしようとしても、不可能。
実際、以前実験でマナが足りていない状態で呪文を使おうとしても、発動しない事は分かっている。
3:【強制】【条件】自分のエンドステップ時
【効果】このカードに乗っている吸魔カウンターを全て取り除く
今度は、吸魔の杖の効果。
……随分な強化数値だが、そのパワー増強効果は永続するモノではないらしい。
この最後の効果に関しては、単純なデメリットだろう。
これで、装備呪文の方は効果が全て割れたな。
名称:吸魔の杖
分類:装備呪文
プレイコスト:???
文明:青
カテゴリ:杖
マナシンボル:青
1:【永続】【条件】カード効果が発動した時
【効果】このカードに吸魔カウンターを1つ乗せる
2:【永続】【効果】装備ユニットのパワーは、このカードに乗っている吸魔カウンターの数×1000アップする
3:【強制】【条件】自分のエンドステップ時
【効果】このカードに乗っている吸魔カウンターを全て取り除く
読み取れなかった部分が、今は完全に埋まっている。
……もしかして、効果が適用されると浮かび上がるのか?
この吸魔の杖に関しては、単純にレイウッドのパワーを底上げする効果、そう見て良さそうだ。
名称:亡国の妄執鬼 レイウッド
分類:ユニット
プレイコスト:???
文明:黒
種族:アンデッド
性別:男
マナシンボル:黒
パワー:3000
1:【起動】【条件】このユニットを疲弊させる
【効果】このユニットのパワー以下のユニット1体を選択し、破壊する
2:?????
3:【起動】【条件】1ターンに1度
【効果】自分フィールドにアンデッドトークン(黒/不明/アンデッド/1000)3体を召喚する。このターン、自分は攻撃出来ない。
4:?????
……まだ何か、隠し玉を用意してやがるな。
それにしても、以前戦った邪神の欠片とはえらい違いだ。
何故かカード効果を隠された状態になってるし、そもそもカード効果のパワーが違う。
今判明したカード効果だけでも、レイウッドという男はかなり強力である事が分かる。
カード効果の発動という、緩い条件で自身のパワーを上げる。
そして、トークン生成効果。
これで自発的に自分のパワーを上げ、第一効果で敵を破壊する。
その破壊対象は、吸魔の杖込みでパワー4000以下。
カードルールではなく、この世界のルールでもその通りに力が発揮されているならば。
このレイウッドという男、邪神の欠片すら単身で葬れる程の力の持ち主だという事になる。
……腐っても、英雄か。
さて、第二と第四効果は何だ?
そもそも、どうしてアルトリウスの効果を受けて、破壊されていないんだ?
その隠れてるカード効果部分が、何らかの破壊耐性……か?
恐らく、カード効果の2か4はアルトリウスの破壊効果を耐えられる、何らかの効果なんだろう。
何も見えない、最初と比べれば一気に視界が開けたな。
少なくとも、既に見えている場所に関しては踏む気は無い。
「俺のターン、ドロー」
デッキから飛び出したカードを、引き抜く。
やはり、今回は俺が後攻の判定のようだ。
後攻ならば、最初から攻撃に移れるな。
「メインステップ、マナゾーンにカードをセット、そしてアルトリウスの効果発動。デッキから装備呪文、受け流しの短剣-パリーイング・ダガーをアルトリウスに装備」
名称:受け流しの短剣-パリーイング・ダガー
分類:装備呪文
プレイコスト:○○○
文明:無
カテゴリ:剣
マナシンボル:○
1:【永続】【効果】装備ユニットのパワーは2000アップする。
2:【永続】【効果】装備ユニットは、1ターンに1度だけ戦闘・効果では破壊されない。
「剣よ来たれ!」
アルトリウスの手に、一振りの短剣が握られた。
それは剣とは名ばかりの、盾と言った方が良い、防御的な短剣。
斬るのではなく受け止めるのが目的であり、その刃は厚みがあり、切れ味もそこまで良く無い。
とまあ、そんな感じだが、見た目なんかはどうでも良い。
肝心なのは性能だ。
ユニオンダガーは攻撃性能が高いが、こっちは攻防一体のバランス型だ。
まだレイウッドが何か隠し玉を持っているのならば、様子見も兼ねてこちらの方が良いだろう。
戦況に応じて、装備する剣の種類を切り換えられる。
これこそが、アルトリウスというカードの強み。
「――貴様、何をした?」
ふと、耳に届いた声。
その声は他でもない、レイウッドの物であった。
「あれ? まだ、俺のターンなんですけど、時間は止まらないんですか?」
「何を訳の分からない事を――!」
その場に縫い付けられたかのように、動かないレイウッド。
時間のカウントは、進んでいる。
でも、俺のターン中は俺や俺のユニット以外は動けないんじゃなかったのか?
少なくとも、今まで邪神の欠片と戦った時等ではそうなっていたはずだ。
何かまだ、俺が思い違いをしているのか?
だがしかし、敵意を見せている割には、レイウッドは動く様子が見られない。
無防備に突っ立っている俺に対し、攻撃するような素振りすら見せない。
このカードゲームをプレイする力に関しては、まだ分かり切っていない何らかの法則があるのかもしれない。
――さて、装備させる呪文は選択を終えたのだが。
デッキをシャッフルする前に、せねばならない事がある。
それは何かと言うと……デッキ内容の確認である。
ゲーム開始後、一番最初にデッキ内を参照する効果を使用した際に、プレイヤーが必ず取る行動の一つである。
強制ではないが、普通はやる、所謂セオリーと呼ばれるモノだ。
通常、自分はデッキの中を自由に確認する事は出来ない。
確認出来るのは、何らかのデッキ参照を要する処理が発生した場合に限る。
なので今回は、アルトリウスの効果でデッキを見る事が出来るので、デッキ内を確認しておく。
プレイヤーは、自分のデッキにどのカードが何枚入っているか、それを把握しているのだ。
完璧に一枚たりとも間違えずに把握している人も居れば、若干細部が曖昧な人も居る。
だがそれでも、キーカードをデッキに何枚入れているか、それすら把握していない人はほぼ皆無と言って良い。
これは別に俺に限らず、全てのカードゲーマーが最低限持ち合わせているモノだ。
エトランゼというカードゲームでは、ゲーム中にデッキを確認する意味がある。
自分の手札は全て見えている。
自分のフィールドを見る。
そして最後に、自分のデッキを確認する。
これをする事で、見える事が一つだけあるのだ。
――それは、盾ゾーンの内容である。
盾ゾーンもデッキ同様、プレイヤーの自由意思で確認する事は出来ない場所である。
常時裏面であり、何らかのカード効果処理を伴わなければ、内容は分からない。
だが一度でも、プレイヤーがデッキを見れば話は変わって来る。
例えば、霊鳥 リッピをデッキに4枚投入していたとしよう。
フィールドを確認し、手札を確認する。
そしてデッキを見て、その総合計が仮に、3枚しか無かった。
その場合、最後の1枚は盾ゾーンに存在する……という事だ。
当然の話だ。
手札にもフィールドにもデッキにも、墓地にも追放ゾーンにも存在しないカードが存在する場所は、もう消去法で盾ゾーンしか残っていないのだから。
――盾ゾーンのカードが分かったから、どうだと言うのだ。
そんな事を抜かす奴は、カードゲームを嗜んでいる者達の中には存在しないと言い切っても良い。
非公開領域の情報が、タダ同然で手に入れられるのだ。
ルールにも反していないのだから、全てのプレイヤーが当然のように行って当然だ。
盾ゾーンのカードは、何らかのカード効果や、相手の攻撃に対する防御札として使わない限り、手札やフィールドに移動する事は無い。
仮にこのデッキ参照で、デッキ内に存在しなければならない1枚のカードが、消え失せていたとしよう。
その場合、必須カードが盾に埋まっている事になり、その事実を知らないまま行動していては、死を招きかねない。
盾の内容というのは、二手三手先を踏まえたプレイングの指針となる、値千金の情報なのだ。
――さて、今回の盾はというと……
……アドバンテージ源の霊鳥 リッピがデッキに2枚しかねえ。
手札に来なかったのは有難いが、盾に埋没しやがったなアイツ……
これで、アルトリウスの墓地肥やしによるマナブースト性能半減が確定した訳だ。
だが、それ以外の3枚は朗報と言って良い。
天罰の火、絶対守護障壁、深緑の裁きが1枚ずつデッキから消えていた。
これらはカウンター呪文であり、盾ゾーンから手札に加わる時、ノーコストで発動出来る。
天罰の火と深緑の裁きが、相手ユニット殲滅効果。
絶対守護障壁が最高峰の防御札であり、この3枚が盾ゾーンに存在するという事実が判明したのはデカい。
これならば、敢えて相手の攻撃を盾で受けに行く選択も十分取れる。
5分の3の確率で、カウンター呪文発動である。
なら、防御軽視の攻撃重視行動もアリ、だ。
リッピは知らん。
アイツは今回、デッキに居なかった。
そういう事だ。
「アルトリウスで、レイウッドを攻撃――」
バトルに入り、攻撃を宣言する。
アルトリウスの装備効果を利用した事で、レイウッドのパワーは3000から4000へと上がっている。
だが、アルトリウスのパワーも、受け流しの短剣-パリーイング・ダガーにより2000上昇し、4000とイーブン。
同じパワー同士であらば――相討ちだ。
このままバトルすれば、アルトリウスも倒れる事になる。
だが、相討ちで構わない。
レイウッドを倒す事が、俺達にとっての勝利だ。
4:【永続】【条件】自分フィールドに他のアンデッド族ユニットが存在する時
【効果】このユニットは攻撃対象にならない
「――出来ないだと?」
レイウッドの、第四効果。
それは、攻撃対象選択不可。
今、相手フィールドにはアンデッドトークンが存在している。
あれらを全て倒さない限り、レイウッドに攻撃は届かない。
「だったら、そっちを攻撃だ」
攻撃宣言を行うと同時に、先程から身動きを封じられていたレイウッドの身体も再び動き出した。
邪神の欠片との戦いの時も、バトルステップに移ると時間が動き始めていたし、相手が停止するのはドローからメインまでなのだろう。
レイウッドへの攻撃を阻む、アンデッドの群れ。
その一角へ攻撃対象を変更し、アルトリウスの一閃で葬り去る。
その刃は、レイウッドへは届かない。
相討ちとはいうが、パリーイング・ダガーを装備したアルトリウスは一度だけ破壊されないから、一方的な破壊ではあるが――まあ、攻撃対象に出来ないなら何の意味も無い。
「どうやら、当てが外れたようだな」
「まあ、そうだな。攻撃限定阻害効果なんか隠してやがったか」
「何を言っているのかは知らんが……足が震えているぞ? 勇ましく吐き捨てておきながらそのザマか」
嘲るような口調で笑う、レイウッド。
レイウッドに指摘され――気付く。
手足が、震えている。
手足だけではない、全身が震える。
思考には何の問題も無いようだが――身体が、言う事を聞かない。
身体が、重い。
「旦那様? どうかしたのですか?」
「いや、何でもない。俺はこれで、ターンエンドだ」
手札を取り落とす訳でも無い。
思考が鈍っている訳でもない。
なら、何も問題は無い。
頭と手が動くなら、カードはプレイ出来るからな。




