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60.正面突破

長いけど切る場所無いからそのまま投下

 デッキをシャッフル、初期手札の7枚をデッキからドロー。

 マリガン(引きなおし)は……うーん、この手札なら、一応しておくか。

 初期手札をデッキに戻し、改めて7枚ドロー。

 デッキの上から召喚コスト5以下のユニットが出るまでめくる。

 ファーストユニット確定、無法者(バンデット)ビリー。

 無法者(バンデット)ビリーが出て、この手札ならまあ良し、だな。

 その後、デッキの上から裏側のまま5枚の(シールド)を展開。

 デッキから飛び出した、ファーストドローに手を掛ける。


「俺のターン、ドロー。リカバリーステップを経てメインステップへ」



 名称:アンデッドトークン(1)

 分類:ユニット

 プレイコスト:???

 文明:黒

 種族:アンデッド

 性別:不明

 マナシンボル:黒

 パワー:1000



 最初に、トークン判定になっているアンデッドの群れを確認。

 効果は無く、以前と変わらずだ。

 だが、それ以外に一つ。



 名称:ドゥームゲート

 分類:ユニット

 プレイコスト:???

 文明:黒

 種族:ゴーレム

 性別:不明

 マナシンボル:黒

 パワー:3000

 1:【永続】【効果】このユニットは攻撃出来ない

 2:【強制】【条件】このユニットが攻撃対象に選択された時

 【効果】相手フィールドに存在する全てのユニットを破壊する



 背後にある、蔦に覆われた門に対してテキストが浮かび上がる。

 そしてその効果を読んで、リズリアの言っていた言葉が正しかった事を確認する。

 成程成程。

 面倒臭い。


 確かに罠だ。

 しかも、こっちを一撃で壊滅状態にさせてくる凶悪な効果。

 挙句の果てに、1ターンの発動回数制限すら書いてない。

 パワー自体はそこまででもないが、攻撃した時点で効果が発動しているのだから、実質このパワーの数値は飾りである。

 何も考えず、この扉を無理矢理攻撃して破壊しようとしていたら、皆吹き飛んでいたのだろう。

 だが、こちらから何か仕掛けなければ取り敢えずは何も悪さをする事は無いようだ。

 であらば、対処する順番は決まっている。


「マナゾーンにカードをセット、そのまま疲弊させて黒マナ1を得る。そして、無法者(バンデット)ビリーの効果発動」


 効果発動を宣言すると、俺の目の前の空中に、一枚のコインが現れる。

 これがコイントスに使用するコインなのだろうと、手に取る。

 何か、見た事無い紋様だ。

 盾の前で剣が二本交差しており、ライオン? みたいな獣らしきものも見える。

 一体、何のコインなのだろうか?

 でも裏表はちゃんとあるし、コイントスする分には何の問題も無さそうだ。


「コイントスを一回行う。表裏を選択し、当たった場合自分は虹マナ1を得る。外れた場合、自分はデッキの上から20枚を墓地へ送る」


 ごちゃごちゃと装飾が多い面が恐らく表、シンプルな面が裏なのだろう。


「じゃ、表を宣言だ」


 コインを親指で弾き、澄んだ音と共にコインが宙を舞う。

 コインは地面へと転がり――表を出す。

 ほう、当たったか。

 まあラッキーだったな、あんまり期待してなかったからどっちでも良かったんだが。


「俺は虹マナ1を得る、俺はこれでターンエンドだ」


 ターンエンドを宣言する。

 俺の時間(ターン)が終わり、時間が再び流れ出す。


「相手のパワーは1000だ、お前なら十分止められる。阻止しろビリー」

了解(roger)!」


 俺からは、ビリーの背中しか見えない。

 だが、容易に想像出来る。


「YAAAAAAHAAAAAAA!!!!!」


 ――ビリーは今、最高に"キレ"た笑顔を浮かべてるのだろう。


 ホルスターに収められた、回転式拳銃を両手で構える。

 炸裂音が無数に鳴り響く!

 背後には壁と門、目の前全てが死霊の群れ。

 最早、狙う意味すら無い。

 目の前に撃てば誰かに当たるという、密集状態。

 すげえな、リアルでゾンビアクションゲーみたいな事やってやがる。

 今は自分のターンではないので、思いっ切りぶっ放してるけどこれは攻撃ではないのだろう。

 単純な自衛だ。

 というか、両手で拳銃構えてるとリロードの邪魔じゃないか?

 ビリーが使ってるのはリボルバーであり、オートマチック拳銃ではない。

 時代設定的には仕方ないのだが、オートマチックと比べてリボルバーは装弾数が少ない。

 その分、弾丸のリロードは頻度が多くなるはずだ。

 スピードローダーという、リボルバー専用の高速リロード手段もあるが、アレも両手じゃなきゃ使えないだろう。


 ……とか、考えてたのだが。

 ビリーは想像すらしてなかったリロードをしやがった。


 弾が、切れた。

 手にしたリボルバーを――捨てた。

 再度ホルスターから、リボルバーを抜く。

 弾が切れたから、またリボルバーを捨て、再度ホルスターへ手を伸ばし――


「おいちょっと待てビリー。お前リボルバー何丁持ってんだよ」

マブダチ(マスター)の力がある状態なら、無尽蔵だ!!」


 良く注視すると、ビリーがホルスターからリボルバーを抜いた時点で、もう次のリボルバーが収められている。

 再装填(リロード)じゃなくて使い捨て(リロード)かよ!

 現実の思考から外れたリロードならそりゃ早いわな!


「手前等雑魚がどれだけ群れようが、俺が居る限りマブダチ(マスター)には指一本触れさせねえ!」


 その宣言通り。

 ビリーはアンデッドの群れを俺に一切近付ける事無く、相手のターンを凌いだ。

 デッキからカードが1枚、飛び出す。


「俺のターン、ドロー。リカバリーステップを経てメインステップへ」


 再び訪れる、俺の時間(ターン)


「マナゾーンにカードをセット、そして1枚を疲弊させて黒マナ1を得る。虹マナ1と黒マナ1を使用、聖騎士 ジャンヌを召喚」

団長(マスター)、御命令を」

「まあ、その前にビリーの効果発動だ、コイントスを一回行う、当たった場合自分は虹マナ1、外れたらデッキの上から20枚を墓地へ送りだ。今度は裏を宣言だ」


 再度コイントスを行い――今度も表が出た。


「外れたか。なら、デッキの上から20枚を墓地送りだ」


 そのまま流れで表って宣言しとけば良かったか。

 だが外れても実質ノーコスト――とは流石に言い難い。

 エトランゼに限らずどんなカードゲームもそうなのだが、デッキ切れ=敗北なのだ。

 20枚ものセルフデッキデスは、かなり痛い。

 墓地が肥えるから墓地を利用するカードが使い易くなるとは言うが、ものには限度がある。

 2回外したらもう40枚だ、デッキは60枚固定で、初手7枚盾5枚の12枚、デッキ枚数は最初から50枚を割っている状態でスタートするのはどんなデッキでも変わらない。

 ライフや盾が無事でも、デッキ枚数で死ぬ危険がグンと近付く。


 ……墓地に落ちた、20枚の内容を確認する。

 1枚落ちたか、だがまだ眠ってる。

 盾に眠ってるパターンが嫌だが、多分デッキな気がする。

 理由は、無い。

 ただの勘だ。


「これでバトルだ、聖騎士 ジャンヌでアンデッドトークンに攻撃だ。ビリーはそのまま待機」


 ジャンヌの足元が爆ぜる。

 余りにも勢い良く踏み込んだ為、地面がその衝撃に耐えられなかったのだ。

 黄金で作った糸かと見紛うような、金髪が靡く。

 鞘から白銀の剣を抜き――


 裂帛の咆哮と共に、一閃。


 どっかの無双ゲーかと言いたくなるような勢いで、死霊の群れが空高く舞い上がり、吹き飛ばされていく。

 これがパワー5000の実力である。

 赤文明相手じゃなきゃ強いんだよ、赤文明相手じゃなきゃ。

 これで先ず、一体。


「俺はこれでターンエンドだ」


 再び動き出す時間。

 押し寄せる、死霊の群れ。


「ビリー!」

「言われなくてもマブダチ(マスター)に近付かせなんてしねえよ!」


 ジャンヌの呼び掛けに、言われるまでも無いと返答を返すビリー。

 再び始まる、弾と火薬の輪舞(ロンド)

 その弾幕により、死霊の進軍は停止する。

 前衛に活性状態のユニットが存在する限り、相手はプレイヤーを攻撃する事は出来ない。

 そう、"活性状態"のユニットが存在する限り、だ。

 逆に言えば、俺の前衛にユニットが存在していたとしても、全員が疲弊状態では防御に参加する事は出来ない。

 その為、先程攻撃宣言を行い、疲弊状態となったジャンヌは俺に対する防御に参加出来ていない。

 アンデッドの群れに囲まれているが、パワーでは勝っているので負ける事は無い。

 自衛は出来ているが、攻撃に回る余力は無い。

 エトランゼのルールでは、疲弊状態とはそういう風に解釈されているようだ。


 よし、デッキからカードが自然排出された。

 再び、俺のターンが回って来た。


「俺のターン、ドロー。リカバリーステップを経てメインステップへ」


 このリカバリーステップは、疲弊した自分フィールドにあるカードを全て活性状態に戻す処理を行うステップだ。

 マナゾーンは勿論、攻撃して疲弊したユニットも再び活性状態となる。


「マナゾーンにカードをセット、3枚を疲弊させて虹マナ1と黒マナ2を得る。そして虹マナ1を使用し、霊鳥 リッピを召喚」

「ピー!!」


 何だか翼でシャドーボクシングをし始めるリッピ。

 良く分からないがやる気は満々という事か。


「これでバトルだ。ジャンヌとリッピでアンデッドトークンに攻撃」


 再び閃く、ジャンヌの一閃。

 アンデッドの群れが、まるで大砲でもぶち込まれたかのようにバラバラと吹き飛んでいく。

 そんなジャンヌを見て「おっかねー女だなオイ」と呟くビリー。


 その後、リッピがアンデッドトークンへと突撃していく。

 リッピのパワーは1000、アンデッドトークンのパワーも1000である。

 この場合、双方共倒れ。

 相討ち、という事になる。


 一際甲高い鳴き声……悲鳴なのかあれは?

 それと共に、アンデッドの一群とリッピが消えていく。


「リッピが破壊された事で効果発動。無色マナ1を得て、デッキから1枚ドローする」


 リッピは死ぬのが仕事だ、許せ。

 この有能な効果のお蔭で、例えやられても損失は0。


「俺はこれでターンエンドだ」


 アンデッドの集団は、大分数を減らして来た。

 再び防衛に回るビリー。

 攻撃は、通さない。

 パワーで勝り、活性状態をビリーは維持している。

 この状態ならば、特定の効果でも無ければ攻撃は通らない。

 それが、エトランゼのルール。


「俺のターン、ドロー」


 そして回って来る、俺のターン。

 リカバリーステップで、再びマナゾーンのカードとジャンヌが回復する。


「マナゾーンにカードを1枚セット、そしてマナゾーンのカードを3枚疲弊させて虹マナ1と黒マナ2を得る」


 ……チッ、白マナが1足りないか。


「なら、マナ変換だ。虹マナ1と黒マナ1と無色マナ1を使い、手札から豊穣の聖杯を発動」


 ならば、切るまでだ。

 足りないなら作る。


「自分フィールドにカテゴリ:騎士のカードが存在する、よって俺は虹マナ3を得る」


 色拘束2達成、これで撃てる。


「更に虹マナ2と黒マナ1を使用し、手札から繁栄の聖杯を発動。自分フィールドにカテゴリ:騎士のカードが存在する、よって俺は3枚ドロー」


 っと、これをドローするか。

 相手の残りユニット数は――背後のドゥームゲート込みで5体。

 残りマナ数は、4。

 で、残りの手札がコレ、と。

 よし、OKだ。


「なら行くか。虹マナ1を使い、手札から、裁きの天剣(てんけん)を発動」


 現在、前衛でアンデッドを抑え込んでいるビリー、そしてジャンヌを見やり。


「外したら、ゴメン」


 そう、吐き捨てる。

 例えカード達が何と言おうが、行動は変えないが。


 再び眼前に現れる、コイン。

 それを親指で弾き、コインが宙を舞う。


「このカードは、お互いの場にユニットが存在する時に発動出来、コイントスを行う。表なら相手の、裏なら自分の、フィールドに存在するユニット全てを破壊する」


 コストは非常に軽い。

 効果は強烈。

 但し、どっちになるかは未確定。

 裏が出れば、俺の場を守るユニットは全て消滅する。

 そうなれば、残りのアンデッドの群れに俺が直接蹂躙される事になる。


 ――表。


「裁きの剣は、相手フィールドに降り注ぐ」


 曇天。

 その雲を引き裂き、無数に煌めく白銀の光。

 それは、太陽の光を反射して輝く、銀の刃。

 その数は――とても数え切れるモノではない。

 俺の場を避け、幾千、幾万もの剣が天より降り注ぎ、相手のユニット全てを貫き破壊する!

 手足を縫い付け、胴を貫き、首を刎ねる!

 その剣は背後の門にも降り注ぎ、その落下エネルギーを叩き付け、蔦諸共に門を破壊していく。


「表が出るなら、これで相手ユニットは壊滅だ」


 一か八かの博打効果。

 外れれば、こっちのユニットが消し飛ぶ事になる。

 まあ、外れても保険は掛けてあるしな。

 今回は単にラッキーだったって事で。


団長(マスター)、片付きました」

「いーや、まだだ」


 どうせ、これで終わりじゃないんだろう?

 背後を向く。

 既に裁きの天剣(てんけん)により、先程まで道を塞いでいた門は完全に破壊され、城までの道を阻む物は――

 ……何だか、妙な魔法陣みたいなのが空中にふよふよ漂ってるのが見えるし。

 これから進む道の先を、良く注視する。

 注視しながら、歩を進める。

 そして、新たなカードテキストが浮かび上がる。



 名称:呪殺の印

 分類:永続呪文

 プレイコスト:???

 文明:黒

 マナシンボル:黒

 カテゴリ:魔法陣

 1:【速攻】【条件】相手フィールドにユニットが召喚、またはユニットの効果の発動・攻撃宣言を行った時

 【効果】このカードを破壊する

 2:【強制】【条件】このカードが破壊された時

 【効果】相手フィールドに存在する全てのユニットを破壊する



 ……読み終える。

 纏めると、永続呪文ではあるが、実質使い切り系、見えてる罠の類だ。

 いや、見えてるのは俺がカードテキストを読み取れるからか。

 だがその効果は、ユニットに対して強烈な抑止力を掛けるモノだ。

 ユニットが行動すれば発動し、即自壊。

 駆除しようが結果破壊されていれば起爆する、地雷みたいな感じだな。

 というか、このテキストなら何でさっきまでの俺の行動に対し発動しなかったんだろうか?

 単純に、今さっき発動されたのか? それとも、効果範囲外で使えなかったとか?

 以前、フィルヘイムの図書館でエルミアが駆け寄って来た時の事を考えれば、他者が移動、または自分が移動で盤面が変化する事は既に分かっている。

 今回も、そういう事なのだろうか?


 しかも――オイ、幾つ仕掛けてあるんだコレ。

 同名のテキストがやたら見えるんだけど。

 これに一つ一つ対処するのは、ダルい。


「踏み潰す」


 だが、越えられるカード自体は既に手札に引き込んでいるものの、マナが足りてない。

 だったら準備を整えるまで。

 今更ながら、やってる事が押し入り強盗だなこれ。

 いやいや違う、俺はたまたまこの地に迷い込んだ迷子なんです。

 そして何か暴漢が襲って来たから、正当防衛で返り討ちにしただけなんだ。


「俺はこれで、ターンエンド」


 ……しかし、既にアンデッドの群れは蹴散らした後。

 追加が来るかと思ったが、それも無い。

 やがて、180秒が経過し、次の手札が舞い込む。


「俺のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ。マナゾーンにカードを1枚セット、そしてマナゾーンのカードを4枚疲弊させて虹マナ2と黒マナ2を得る。俺はこれでターンエンド」


 既にそのカードは手札に来ているのに。

 発動する為のマナが足りない。

 やっぱこの色拘束キツいわ。

 白マナ生めるカードが手札に有れば良かったんだが、今その条件を満たすのはこのカードだけ、か。


 ターンエンドを宣言するが、相手からの行動が来ない。


「なあ、マブダチ(マスター)よぉ。何でこんな所で足止めてんだ? この先に進むんだろ? もう行っちまえば良いじゃねえか」

「いや、駄目です。見えてる罠を対処手段無しで踏む気は無いです」


 そんな、ビリーの疑問に答えながら、何もしてこない相手のターンを待つ。

 対処カードを引かなければいけないというなら、引けるかどうかが不確定だから、相手が何か余計な手を講じる前に速攻で倒すという名目で強引に動く事も考えるが。

 対抗手段は、既に手元に舞い込んでいる。

 再度、180秒。

 訪れる、俺のターン。


「俺のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ。マナゾーンにカードを1枚セット、そしてマナゾーンのカードを5枚疲弊させて虹マナ3と黒マナ2を得る」


 これで到達、白マナ5!


「虹マナ5を使用し、手札からカウンター呪文、絶対守護障壁を発動」


 白き輝きが地面から間欠泉の如く噴き出す!

 その光は俺と、ビリー、ジャンヌを飲み込み、その体に光の膜を形成する。


「このターンのエンドステップまで、このカード以外の自分フィールドのカードの効果は全て無効となり、他のカード効果を受けず、自分のユニットは戦闘で破壊されず、自分が受ける全てのダメージは0となり、マナゾーン・盾ゾーンのカードも破壊されない」


 このターンのエンドステップまで。

 つまり、時間切れか俺がターンエンドするまでこの効果は続く。

 この間に、地雷原そのものである正面入り口を踏破する。


「よし、移動だ。突っ込むぞビリー、ジャンヌ」

「了解!」

「あ、じゃあ失礼しますね団長(マスター)


 片手には剣を握っているので、もう片方の腕。

 米俵でも担ぎ上げるかのような感じで、ジャンヌの肩に背負い上げられた俺。

 ビリーじゃなくてジャンヌが持ち上げるのは、単純に彼女のパワーの方が強いからだろう。

 ……というか、俺、女性に担ぎ上げられてばっかだな。


 目の前に広がるのは、魔法で作られた地雷原。

 駆け抜ける為に、そこに足を踏み入れる。

 直後、爆風が巻き起こる!

 起爆して来たか、だが無意味だ。

 どれだけ破壊効果を発動させようが、既に絶対守護障壁の効果は適用済みだ。

 戦闘では破壊されず、他の一切の効果を受け付けない。

 俺のフィールドは、エトランゼ界でも最強クラスの防御が既に展開されている。

 発動した時点で、そのターンは死なないと言っても過言ではない。

 1ターン限りだが、その1ターンに限って言えば絶対的な信頼を寄せて良い。

 というか、召喚や攻撃宣言行ってる訳じゃないのに爆発してるな。

 もしかしてアレか? 俺達がこうして足を踏み入れているのが召喚されたとか攻撃宣言してるとかそういう判定になってるって事か?

 無理矢理、カード効果として辻褄を合わせてるのか? 良く分からん。

 ま、破壊されないから何の意味も無いんだがな。


 城の入り口に辿り着き、先程走り抜けた正面入り口へと振り向く。

 あれだけの規模の爆発が起きたにも関わらず、地面は綺麗なままだ。

 地面が捲き上がってクレーター状になっててもおかしくなさそうなものだが、それはまぁ、魔法的なモノだからそうならないとかそういう事なのだろう。


 門を越え、罠を仕掛けられた正面通路を強行突破し、巨大な扉の前に辿り着く。

 ここに罠はあるのか?



 名称:ドゥームゲート

 分類:ユニット

 プレイコスト:???

 文明:黒

 種族:ゴーレム

 性別:不明

 マナシンボル:黒

 パワー:3000

 1:【永続】【効果】このユニットは攻撃出来ない

 2:【強制】【条件】このユニットが攻撃対象に選択された時

 【効果】相手フィールドに存在する全てのユニットを破壊する



 罠も潜り抜けてふーやれやれ、って安心した所でこれを踏ませる気だったんだな。

 あれ? 扉が開かない。

 鍵が掛かってるのか、じゃあ蹴破ろう。

 そして蹴破ろうとしたのが攻撃対象に選択したって判定になって――と、いった所か。

 意地の悪い事だ。


「バトルだ、この入り口(ドゥームゲート)を斬り捨てろジャンヌ」


 俺を降ろしたジャンヌが、目の前の巨大な金属製の扉に向けて剣を振り下ろす!

 直後、扉から強烈な白い光が放たれる!

 多分、この光が何らかの破壊的な要素をもたらすのだろう。

 だが、絶対守護障壁の効果が適用済みだ。

 ジャンヌによって、攻撃対象に選択された。

 そしてジャンヌとビリーが本来ならばまとめて破壊されるのだが、その効果は受けない。

 このドゥームゲートは、相手ユニットを破壊する事で疑似的な戦闘耐性を得ているのだろう。

 だがこの効果は破壊するだけであって、攻撃を止めるという効果ではない。

 破壊されなければ、そのまま戦闘は続行となる。

 そうなれば、残るのはパワー3000のユニットだけ。

 ビリーでは無理だが、ジャンヌのパワーでならば、押し切れる。


 振り下ろした剣が、扉を斬り破る!

 切り裂いた扉が音を立てながら崩落し、光が収まっていく。

 いや、実を言うとさっきから白い光が眩しくて目の前が見えなかったから、多分そうなんだろうなという推測なんだが。

 実際、光が収まったらバラバラになった扉が地面に転がってたし。


 扉の奥には、大理石の床に赤い絨毯の敷き詰められた、綺麗な大広間と回廊が広がっている。

 先には中庭らしきモノも見え、そちらは外の光景と違い、雑草の類は見当たらない。

 そして中庭の景色を邪魔しないように、両脇に上層へと昇る為の階段が取り付けられている。


 ……周囲を見渡すが、この大広間や階段なんかには特に何か仕掛けられていたりはしないようだ。

 そして、180秒が経過する。

 俺のターン……と、行きたいのだが。

 デッキからカードが出てこないし、俺を守る盾やマナゾーンのカードも消滅してしまった。


 ――さっきまでは、俺が破壊するべきカードがあった。

 呪殺の印とかいう、入り口にプカプカ浮かんでいた魔法陣があって、アレを壊すという目的があったから、相手が何もしてこなくてもゲームを続行出来た……という事か?

 だが今は、破壊するカードも倒すべき敵も見当たらない。

 戦うべき相手が居ないのに、戦闘を継続する事は出来ないという事か。

 ライフも盾も減ってないから、ややデッキ枚数が心許ないものの、出来れば続行したかったのだが、出来ないのであらばしょうがないし、理由も理解出来なくは無い。

 戦う相手が目の前に居ないのにカードを展開出来るなら、事前に盤面を整え、マナゾーンを増やし、手札を多数抱え込んだ状態にしてから、戦闘に入ってしまえば良いのだから。

 流石にそれは、卑怯過ぎるだろう。

 そんな事が許されるなら、交戦直後に勝利出来るぞ。


 さて、これからどうするかな。

 真っ直ぐ行くか、横道に行くか、それとも階段を登るか。

 それに対し、相手はどう出るかな?


 まあ、臨機応変に淡々と対応していくか。

 今回、初動は余り良いとは言えなかったけど、何とか対処出来てるしな。

デッキの回転がイマイチな状態での戦いも書きたかった

そしてイマイチな回転だからターン数が掛かる

そのせいで文字数が増えるという……

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