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44.襲撃犯を追って

 ――カード達は、攫われたという村人を助けたいと考えたようだ。

 それがカード達の願いなら、俺もそれに従おう。


 だが、助けるにしても何処へ連れ去られたかが分からなければどうしようもない。


「それなら調べてきたよ」


 ダンタリオンはいとも簡単にそう口にした。

 用意周到な事で。

 何でも村に数名、襲撃犯を生かした状態で捕らえていたらしい。


 何処に逃げたか、何処に潜伏してるのか。

 大体何人位の規模なのか、首謀者は誰なのか。

 そういった必要な情報を、ダンタリオンが全部抜き出してきたそうだ。

 いや、本当反則だわダンタリオンの能力。

 隠し事全部筒抜けじゃねえか。


「……本当に、俺の考えは分からないんだよな?」

「残念だけどね」


 淡々と答えるダンタリオン。

 本当に、俺の心は読まれて無いんだよな? 本当だよな?



 村を襲撃した賊の根城は、何でも周囲を原生林で覆われた洞窟らしい。

 主要な街道と離れている為、人通りが少なく見付かり辛く、踏み込み難い場所だ。

 日中の内に、敵に見付からない程度に離れた位置まで移動する。

 場所も何もかも、ダンタリオンが筒抜けにしてしまったので迷う事も無く一直線であった。

 尚、今回は俺も一緒に移動している。

 村から賊の拠点までは、6.4キロ所では到底足りない程距離が離れていたので、俺も移動しなければカードの活動圏外となってしまうからだ。

 日中は、そこまで動いて一旦夜を待つ。

 だが何もしない訳では無く、偵察としてリッピを向かわせた。

 嫌に目立つ色彩の鳥だが、それでもただの鳥だ。

 これが偵察だなどとは相手も考えないだろうし、見付けてもただの鳥にしか見えない。

 実際、ただの鳥だし。

 ちょっとばかし変な能力持ってるけど。

 リッピが周辺の地形を上空から確認し、時々枝に止まりながら、罠が仕掛けられていないか、危険な地形は無いか。

 そういった必要な情報を確認し、カード達と情報を共有する。

 日没まで念入りに、周辺地形の把握に努める。

 

「今すぐ救助に向かおう!」

「おい待て早まるな」


 夜も更け、さあ時は来たとばかりに逸るガラハッドを制止する。

 そんな馬鹿正直に正面突撃するのであらば、夜まで待った意味がない。


 移動中にザックリ考えてたが、この場合、俺達にとっての勝利って何だ?

 俺達が絶対に死守しなきゃいけない事って何だ?


 人質を取り戻す。

 それが、絶対条件。

 賊の殲滅とか、そんなモノは二の次。

 取り逃がしたら確かに二次災害が起きるかもしれないが、今現状の人質の危機には変えられない。

 殺す気なら、そもそも連れ去らずにその場で殺した方が手間が無い。

 わざわざ連れ去ったって事は、殺す以外の使い道があるから連れ去ったんだ。

 ただ、まあ。その使い道(・・・)とやらはロクでもない事だろうというのは察せられるが。


 人質を救い出さないといけない、と。

 だから、突撃する必要があると。


 果たして本当にそうなのかな?

 人質の救出と賊の殲滅を同時にしたくて、無理矢理括ってない?

 そんな無茶をして、攫われた村人達が人質として有効だって賊に思われたら、人質に使われて即アウトだぞ。

 というか、俺ならそうする。

 そうすりゃ一方的に相手を無力化出来るからな、しない手はない。

 人質を救えたなら、賊を倒す必要は無い。

 賊を殲滅出来るなら、人質を救う必要――は、あるけど。

 でも抵抗が無いんだから実質救わなくとも問題無いに等しい。


 一番最初にしなきゃいけないのは、俺達に人質なんざ意味が無いと相手に"思わせる"事。

 使われたら実際効果抜群なんだが、使われなければ問題無い。

 相手の持ってる致命傷のカード、今使った所で無駄撃ちも良い所だと、そう考えさせて腐らせる。

 カードゲームでも良くあるブラフの手だ。


「それで、他の(・・)作戦は何ですか主人(マスター)?」

「他の作戦か……そうだな、じゃあこんなのはどうだ?」


 最初に考えた作戦が、ダンタリオン含む他のカード達から反対を食らったので、別の作戦を取る事にした。

 最初は夜のうちにアジトに近付いて、空気穴を開けて窒息しないようにした状態で俺を地面に埋める。

 その後、そこをリスポーン地点にして数の暴力で賊を殺し切る戦法を考えたのだが、それを伝えた所、全員が必死な形相で反対したのでボツにした。

 俺というカード達にとって最大の弱点を隠蔽しつつ、実力申し分ない所か英雄おかわりで数の暴力とか、最早止める手段など無い最高の作戦だと思ったのだが、駄目なのか。

 なので、別の方法を取る事にした。

 初動でどっちの作戦にするか、切り替える必要があるけど。

 パターンBは人質にも被害が及ぶから、出来ればそうなっては欲しくない。


 敵に気付かれる可能性があるから、日中にギリギリまで近付き、夜まで待った。

 そして夜の闇に乗じて更に近付く。

 気付かれると不味いから、松明等の光源は使わない。

 俺は夜目が利く訳ではないので、アルトリウスに手を引いて貰って目的地まで徒歩で進む。


「リッピの報告通り、ここだけ少し木々の密度が薄いな。丁度、あの洞窟の入り口から丸見えになる場所です」


 枝葉の天蓋が破れた、開けた小さな空間へと辿り着く。

 ここに近付くと、敵から丸見えになってしまうので、避けるべきポイントだとリッピから報告があった場所だ。

 普通に考えればそうだが、逆に考えてみたのだ。


 ここは、敵にすぐ見つかってしまう。

 ここならば、敵にすぐ見付けて貰える。


「幻影家政婦 インペリアルガード召喚、そして結束の短剣-ユニオンダガーをインペリアルガードに装備。そしてインペリアルガードの効果発動、使用マナ数は余剰分全部、4マナだ」


 幻影を生み出し、五体にインペリアルガードが増殖する。

 俺と本体のインペリアルガードだけ身を隠す。


 その後、この開けた場所で、火を起こす。

 するとどうなる?

 夜中に煌々と燃える火に加え、洞窟からは丸見えの位置。

 非常に目立つだろう。


 当然、敵は確認しに来る。

 というか、それ以外の選択肢が存在しない。

 相手は、後ろめたい事情アリアリの犯罪者だ。

 もしかしたら、自分達を捕えに来た警察や軍の類かもしれない。

 何も知らずにノコノコ近付いてきた、迷える旅人かもしれない。

 色々理由は思い付くが、結局近付いて確認しなければ、正確な情報は分からない。

 火は煌々と燃え、この周囲を照らすが、俺達は隠れているので人影は見えないからな。

 だが、火を点けた誰かがそこにいるのは確実で、実際居る訳だ。


 だから、確認しに来る。絶対に。


 もし、これで確認しに来ないという暴挙に出るのであらば、こちらも暴挙に出る。

 具体的に言うと、延焼させる。

 これがパターンBの作戦だ。

 この森全部を灰にする勢いで、どんどん木々に延焼させて森林火災にしてしまう。

 そうなればもう、炎と煙で相手は脱出以外の選択肢は無いだろう。

 煙に捲かれて死ぬか、洞窟を捨てて逃げ出すか。

 洞窟を捨てるなら、そこに残された人質を無抵抗で救出できる。

 人質を連れて逃げ出すなら、そこに横やりを入れる。

 普通に襲撃するよりも、大火災による混乱中に襲撃した方が成功率は高いだろう。

 カード達も火災による被害を被るが、カード達は死ぬ事は無いのでほぼノーリスクに等しい。

 だがこの方法は、人質も煙による被害を受ける可能性がある。

 無論、助けるつもりだし、ブエルが居るならば死んでさえいなければ助けられると考えている。


 だが、所詮こちらは場当たり対応という作戦とも呼べない作戦だ。

 出来れば、ちゃんと確認しに来て欲しいな。

 相手の心理状況を考えれば、確認しに来ると思いたいが。

 どう転ぶかな?

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