148.在りし日の欠片~急
新陳代謝によって細胞が入れ替わったので実質初投稿です。
初投稿なので優しくして下さい。
柏木昴は、窮地に立たされていた。
「――デッキ残り、3枚か……」
自身に残されたデッキ枚数を再確認する。
既に盾は全損、身を守るユニットも全て破壊され、ライフも3000と風前の灯火。
対し、相手の場には――星喰龍 アトラクタードラゴン。
ユニット一掃効果に加え、復活能力まで持った、アニメエトランゼにおいてラスボスの用いた絶対的な切り札が存在しており、戦況は絶望的。
昴の手札は0であり、身を守るユニットすら存在しない。
このままでは直接攻撃により昴の敗北は必至。
だが――窮地の中で尚、昴は獰猛な笑みを浮かべた。
昴は、確認出来ないデッキ以外のゾーンを見返した上で、宣言する。
「実はな、まだデッキに残ってんだよ……この状況から一発で逆転出来る、最後の切り札がなぁ!」
「馬鹿な! 手札は既に無く、攻撃も封じられて、アトラクタードラゴンをたった1枚でどうにか出来ると思っているのか!?」
対戦相手も、昴のノリにノってくる。
相手のライフは昴より多い5000、盾も1枚残ってはいるが、それだけ。
既にターン数は10ターンを超えており、マナゾーンの伸びも充分。
もし、このアトラクタードラゴンを超える事が出来れば、昴が逆転勝利する事も有り得る、僅かな差であった。
「今のままじゃ、どうにもならねえな……だが、この追い詰められた状況から逆転勝利してこそ、最ッ高に燃えるってモンだろう!?」
そのカードは、デッキに4枚フル投入されているカード。
だが、墓地を何度確認しても、そのカードが3枚しか存在していない。
既に盾ゾーンのカードが全滅している以上、盾に埋没しているというオチも有り得ない。
それがデッキにまだ残っている事は、確定事項であった。
「今、俺の墓地には七種類の七天竜が存在している! 更に! 七つ天紡ぐ虹彩の階がまだ3枚しか見えていない! 俺が言いたい事が、分かるな!?」
「なんっ……だと……っ!?」
対戦相手は、目を見開く。
昴が口にしたカードが、確かにまだ3枚しか見えていない事に気付いたからだ。
そのカードが、今の状態で発動されたならば、それを阻止する手段が相手には存在していない。
もし、昴がそのカードを引いたならば。
「今の俺の手札には無い、そしてもうそのカードは1枚しかデッキに残って無い。つまり、確率は3分の1! ここでそのカードを引けたら、最ッ高に熱いよなぁ!?」
その時点で――昴の逆転勝利が、確定する。
今の昴に、手札は存在しない。
盾が全て潰され、パワー10000越えのアトラクタードラゴンが相手フィールドに存在する以上、次のターンは残されていない。
今ここで、その逆転のカードを引き当てるしか、昴に勝ち筋はないのだ。
「さぁ行くぜ! 俺のターン! ドロオオオオオォォォォ!!」
デッキの上に手を掛け、気合に満ち満ちた声と共に勢い良く引き抜く!
ただシンプルに、引けば勝ち、引けなければ負け。
そして、ドローしたカードを確認し――
「ハーッハッハッハッハッハァァァ!!」
昴は、高らかに笑い。
「ターンエンド」
「って引けて無いんかーい!」
突如スンッ、と真顔に戻って大人しくターンを終了した。
ノリの良い事に、対戦相手も昴にツッコミを入れてくれた。
勿論ツッコミは手ではなく、アトラクタードラゴンのダイレクトアタックによって行われた。
「そこは引けよお前さぁ! 完ッ全に逆転勝利する流れだったじゃんかぁ!?」
「俺だって引きたかったよ! ああクソッ! デッキの底じゃねえかじゃあもう1ターン猶予あっても間に合ってねえよ! 何で底に沈んでんだよォ!?」
限界ギリギリ、そこから巻き起こる逆転劇――それは残念ながら、不発に終わった。
結果だけ見れば何も出来ずにただ昴が負けただけなのだが……
敗者である昴は頭を抱えながら、大笑いしていた。
とてもとても、楽しそうに。
笑って、いたのだ。
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それは、彼等にとって"翼"であった。
何物でもなく、何者にでもなれる、森羅万象の源流。
その究極の個と呼べる、絶対的な力は時に己に牙を剥きつつも、幾多の勝利を齎してきた。
それは、カードの持つ真の力を解き放ち、蘇らせる導きの力。
夢を、願いを、希望を、理想を、可能性を、在りし日の姿を。
己の描く、「最強の自分」を我が物とする。
不幸と悲劇で塗り潰された今を、幸福と希望の未来へと書き換える。
ある種のご都合主義とも呼べる程の、絶対的な"進化の力"。
その光は、何処へ――
一区切り付いたらとか言ってると何時までも投下しなさそうなので出来てる所まで上げちゃえ。
エタってないよ! 断じてエタってねえからな!




