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142."堕落"のエスメラルダ-1-

 攻撃を防ぐ。

 反射的に思い浮かべ、手に取ったカード――絶対守護障壁を見て、ふと思う。

 これで、俺と俺のユニットは間違いなく生き残るだろう。

 だが……この街とこの街の人々は? 俺のフィールドに存在するカード扱いになるのだろうか?

 エトランゼのルールで戦っている最中なら、それが目的である以上多分なると思われるが……今の状況だと、少し微妙かもしれない。

 これでも行けそうな気がするが、断言し辛い。


「無垢の大結界、発動」


 なので断言出来る、敵味方問わない無差別全体範囲の永続呪文で対応した。


「あと絶対守護障壁も発動」


 それはそれとしてマナに余裕があるのだから、絶対守護障壁の信頼性は高いので折角なので発動しておく。

 破壊出来ませんダメージ受けません。

 バエルの攻撃と思わしき魔法によって形成された球体が街に落ちるが、無傷。

 安心安全防御カードとしての働きを存分に見せる結果となった。


「というか、バエル戻せないの?」

主人(マスター)が戻せないのであらば、私達でも不可能です」


 成程。

 戻れー……念じても駄目か。

 戻らざるを得ない状況……マナ不足になると強制的に消滅してたな。

 現状のリミットである19マナをオーバーするように無理矢理ユニットの召喚等を試みるが――オーバー、出来ない。

 正確には、ユニットの召喚が出来ない。

 何でだよー、七天竜2体召喚したらあいつ等7マナか8マナなんだから7マナのバエルはもう無理だろうが。

 マナ数多い方が優先とかとしても七天竜の方が上だろ。

 何これ、もしかして俺の7マナがどっか行ってる扱いになってる?


 尚この検証中、僅かな間だけ出していたジャッジメントドラグレイスが、街の瓦礫を街の外へちょっとだけ動かしていた。

 優しい。

 言葉分からんけど案外可愛いなコイツ。


「しょうがない、直接片付けに行くか。ダンタリオン、ちょっとバエルの所まで運んでくれないか?」

「分かりました」




「クックックック……! ハーッハッハッハッハァ!! よくぞ(オレ)の攻撃をしの――」

「呪文発動、退却」


 あ、戻った。

 ってかこれが効いたって事はバエルの耐性機能してなかったな。

 攻撃されない効果受けないという最上級の耐性を持っていたとしても、条件満たさず適用されてなきゃ何の意味も無いな。


「おのれええええぇぇぇぇ!! あの売女めえええぇぇぇぇ!!」


 うわっ、うるせえ。

 手札に戻ったと思ったらすぐに出て来てめっちゃ怒声張り上げてる。

 何がめええだよ羊かよ、猫だわコイツ。

 バエルの肩に乗ってる本体が縄張り争いしてる時の猫みたいな声出してるんだけど。

 というか何でキレてんの? そもそも何で俺に攻撃したの?

 何か待遇気に入らなかった?


 見るからに殺意高そうな攻撃魔法の行使を始めようとするバエル。

 おいこの辺り更地にする気かやめろって。

 でも撃っちゃうバエル。

 遠い遠い、大海原にあった大量の海水が消滅した。


「逃げられると思うなよ――! 貴様は王たるこの(オレ)を舐めた! 最早万死すら生温い!!」


 逃げる? 誰が?

 あ、何か海の向こうから飛んで来た。

 それに気付いた直後、バエルが俺を背に隠すようにして、飛んで来たその何かと相対する。


「――どうやってアタシの"堕落"を解いたのかしらぁ? それに、どうして今度は効かないのかしらぁ?」

「答える義理は無いし、これから死ぬ者に答える意味も無いな」


 バエルが誰かと話してるが、見えない。

 覗こうとしたら、ダンタリオンに止められた。


「……まだお仲間が居たみたいねぇ。アタシとしては旗色も悪いし、ここはお互いに矛を収めた方が得策だと思うんだけどどうかしらぁ?」

「この(オレ)に唾を吐いた挙句、旗色が悪いと自白した相手に容赦する理由が何処にある? 貴様はここで死ね、その肉体欠片一つ残さず消し飛ばしてくれる――!」

「……アタシが本気で()るとなったら――今までの比じゃないって事よ、それでもやる気かい?」


 何か女の声がするから、バエルが話してる相手は女性だと思うのだが、誰?

 ひょこひょこ覗こうとしたら、割とガチ目にダンタリオンに取り押さえられた。


「……後ろに誰か居るねぇ。一体誰だい?」

「バエル、あの女――以前戦ったあの男と同類と見たけど」

「間違いないだろう。隠し切れん腐臭が漂っているしな――あの女は、邪神の欠片と呼ばれてる者と同種よ」

「ん? ミゲールとかいう奴と同じ?」


 さっきからバエルの背中しか見えないから知らんけど。

 ダンタリオンが取り押さえてくるし。

 華奢な少女に見えるけど、パワー3000あるし、ダンタリオンが本気で俺を抑え付けて来たら抜けられる訳が無い。


「――そう。アイツを()ったのはアンタ達って訳ねぇ。後ろに隠れてるお兄さん、興味あるわねぇ。ちょいと面拝ませちゃくれないかねぇ?」

「失せろビッチ」


 微妙に猫なで声に変わったその女に対し、短く吐き捨てるダンタリオン。


主人(マスター)、あの女は以前戦った邪神の欠片と同類です。先程、バエルが反逆したのもあの女の持つ何らかの能力が原因のようです」

「操られたって事?」

「そうなります」


 操られた……コントロール奪取かな?

 まあバエルも耐性が適用されてなければ普通に破壊効果とか通るしな。


 ――あ、さっき言ってた今度は効かないってそういう事?

 今はダンタリオンが同伴してるので、バエルはカード効果に対する完全耐性得てるからな。


「それだけではないぞ、あの街にドラゴンをけしかけたのもあの女の仕業だ。アンドロマリウスが反応したからな」

「……あいつに何かあったっけ?」

「アンドロマリウスには、悪や不正を暴く力があります。街を襲わせたという"悪意"を感知した、という訳です」


 そんな効果あったのか、俺そんなの知らないぞ。

 そして知らないって事は、カード効果じゃないな。

 多分フレーバーテキスト絡みが実体化で現れたパターンか。


 街を襲った。

 挙句バエルを操り、更に街に追撃を仕掛けた。

 そして、以前戦ったミゲールと同様、人の姿をした――いや、見えてないから知らんけど人の声してるし多分人の姿してるんだろう――邪神の欠片。

 ならば、討たねばならないだろう。


「じゃあ、敵だな」

「あっちは手を出さなければ退くと言っていますが」

「ハッ! そんな言葉を信じるかダンタリオン! 盟約主(マスター)に女にして貰ったと思いきや、中身は青臭い生娘のままか!?」

「そんな訳無いでしょ、一応確認を取っただけよ。それから後で覚えておきなさい」


 何か、険悪だなこいつ等。

 というか、仲が良いカードがそもそもあんまり居なくね?

 エトランゼのユニットって皆ギスギスなの?

 良くて無関心がめっちゃ多い気がする。


「先程は失態を見せたが、これ以上盟約主(マスター)の前で無様は晒さぬ!」

「やる気な所悪いけど、お前等使わないぞ」

「何だとォ!?」


 ……こういうのは、少し卑怯な気がしなくも無いけど。

 事前に得た情報というのは、活かすべきだろう。

 そして活かす場合、残念ながら72魔将は今回落選となりました。

 アレ積むのにシナジー皆無なんで……


「――交戦(エンゲージ)


 俺個人としては、別に怨みも何も無いし、街の人々の仇だとか弔い合戦だとか抜かす程、あの街や人々に思い入れがある訳でも無い。

 邪神の欠片を倒す。

 それが……エルミアに対する俺の償い、だからな。

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