140."連ディメドラ"
環境上位デッキってやーつ。
デッキをシャッフル、最初の手札である7枚をドロー。
このデッキを使うに当たって、乗り越えなければならない関門が存在する。
その関門がある場所というのは……ゲーム開始時のファーストドロー、そして盾ゾーンをセットする、このタイミングである。
このデッキの代表格としてデッキ名に名が記載されたカード、次元の支配者 ディメンションドラグネーター。
実はこのカード、1枚制限が掛かっているカードなのだ。
……個人的な感想言わせて貰うと、1枚制限の中でも大分禁止寄り、ギリギリ1枚制限のラインを小指で踏んでるからセーフ、みたいな1枚制限って印象があるカードだ。
禁止カードに指定されたカードというのは、公式大会においてデッキに1枚も入れられないが、○枚制限、と指定されているカードに関しては、その枚数まではデッキに入れる事が可能である。
つまりデッキのキーカードであるこの次元の支配者 ディメンションドラグネーター……略称ディメドラは、60枚デッキの中にたった1枚しか存在していない。
越えるべき関門というのは、このディメドラを初手で引く――ではなく、初手で引かない事である。
更に言うのであらば、盾ゾーンの中に存在してもならないし、どちらかと言えば盾ゾーンに埋没する方が最悪である。
手札と違い、盾ゾーンに存在するカードに対して自発的に干渉出来るカードというのは、数が少ないからだ。
初手で引くのもあまり宜しくは無いが、他のカードとの組み合わせ次第では、盾に居るよりマシだと初手に居る事を良しとしたり、妥協したり、そんな感じである。
最初の7枚を確認。
ディメドラ、無し。
デッキに1枚しか存在していないカードを、初手で引き込むのは確率的にはかなり低い現象だからな。
仮に引いても、1度だけならマリガンでデッキに戻せるし、2連続で引く確率ともなれば、それこそソーシャルゲームで高レアを単発で引き当てるような確率になってくる。
だからここはそこまで問題ではない。
考えなきゃいけないのは、ディメドラ以外の手札の部分。
「……マリガンは、無しだ」
ここは、難しい所。
盾に埋没した際に干渉したりするカードなんかを引き込んでおきたいが、それが初手で引けていない。
マリガンも十分有りの判断なのだが……それ以外の手札が、結構良い。
少し悩ましいが、この手札で確定する。
次に、デッキの上から召喚コスト5以下のユニットをめくる。
これに関しては、確定事項。
「異次元ツアーガイドを後衛に出し、盾をセット」
逐次投入ガイドの亜種という事もあり、デッキ構築も比較的似た点がある。
その一つが、このデッキには召喚コスト5以下のユニットが異次元ツアーガイドしか入っていない、という点。
ここは、運に頼る要素は皆無。
そして――盾ゾーンにカードをセット。
こればかりは、やり直しが効かない。
盾のマリガンなんてルールは無いし、そもそも中身を確認出来ていないのにマリガンした所で、それに意味があるのかというのもあるしな。
この5枚の中に、ディメドラが混じっていたらアウト。
その場合、盾のディメドラを何とか別の場所に移動させない限り、連ディメドラデッキは瀕死となる。
そうなったら、逐次投入ガイドギミックで動くけどね。
構築が似るという事は、デッキ構築次第で共存も有り得るという事だからな。
戦力の逐次投入なら、初手で引いたからそれもまた有りだ。
「俺のターン、ドロー」
さて、ドロー出来たという事は先攻か。
ディメドラ、引かない。
でも盾ゾーンに干渉出来るカードを引けた。
ディメドラを引かないのは良し、だが問題は……居るのが盾か、デッキかという点だ。
「――ほぎゃああああぁぁぁぁ!?」
ドローするや否や、何か急に絶叫するツアーガイド。
「何考えて私呼び出したんですか御客様あああぁぁ!? 絶対おかしいですよ! 私ただのツアーガイドであって剣と魔法のファンタジー世界で生きてるんじゃないんですよ!?」
「この世界は剣と魔法のファンタジー世界だぞ」
「確かに……じゃなくて!? 何で毎回毎回呼び出されたら目の前に居るのが戦艦の一団だったりドラゴンだったりヤベー奴等ばっかりなんですか!! 勝てる訳無いでしょおおおぉぉ!?」
「大丈夫、お前も十分ヤベー奴だぞ」
連ディメドラの始動役として死ぬ程猛威を振るったからな。
何でお前規制喰らってないのか理解出来ない……1マナ帯でデッキに干渉出来るって普通にぶっ壊れカードなんだよなぁ。
今回も猛威を振るって貰うぞ。
「リカバリーステップ、メインステップ。マナゾーンにカードをセット、疲弊させて黒マナ1を得る。手札を1枚捨て、異次元ツアーガイドの効果発動。デッキからユニット1体を追放する」
これで、デッキ内容を確認出来る。
この中に、ディメドラが存在しなければ、それ即ち盾ゾーンに埋没しているという事に他ならない。
結果は――
「……俺はデッキから、次元の支配者 ディメンションドラグネーターを追放する」
あっぶね、次のドローがディメドラだったわ……ギリギリセーフ!
だが結果はどうあれ、デッキ内に生存していた事に変わりはない。
そうなっている確率の方が高いから、こうしてデッキとして存在している訳だが……絶対確実とも、高確率とも言えないからな。
確率的には低いとはいえ、盾埋没はそこそこ有り得るからなぁ。
52分の5という確率は、低いけれど絶対無いと切り捨てるには、余りにも高過ぎる。
さて、ディメドラはデッキ内に生きてたぞ。
つまりそれは、連ディメドラが火を噴くという事に他ならない。
「更に、俺は手札を捨てて異次元ツアーガイドの効果発動……3回起動だ。3枚捨てて、デッキから3体ユニットを追放する」
手札を切り捨て、追放ゾーンを肥やして行く。
なーんでツアーガイドのこの効果、ターン1とか書いて無いんだろうな。
絶対おかしいって。
「そして黒マナ1を使用し、手札から呪文カード、ブラックブーストを発動。手札2枚を捨て、俺の盾ゾーンのカード2枚を選択し、墓地に送る。そして俺は、この効果で墓地へ送ったカード1枚につき、2000ダメージを受けて黒マナ1を得る。俺は黒マナ2を得る代償として、4000のダメージを受ける」
LP10000→6000
盾5枚→3枚
第一ターンから、そこそこ痛いダメージを自発的に喰らう。
盾の枚数も5枚から3枚に減り、そして何より、第一ターンだというのに、このターンで俺は全ての手札を使い切った。
相変わらず豪快過ぎるな、このデッキは。
「俺はこれで、ターンエンドだ」
動き出す時間。
ドラゴンの視線が、こちらへと向いた。
こっちは一般人同然の体力しかない俺とツアーガイドのみ。
飛んで火にいる何とやら、絶好の獲物だと見たのだろう。
爬虫類のような縦の瞳孔がギョロリと動き、その口が開いた。
名称:ファイアードラゴン
分類:ユニット
プレイコスト:???
文明:赤
種族:ドラゴン
性別:女
パワー:5000
1:【永続】【効果】このユニットは1ターンに2回まで破壊されない。
2:【永続】【条件】自分フィールドに他のドラゴン族ユニットが存在する時
【効果】このユニットのパワーはその数×1000アップする。
3:【起動】【条件】1ターンに1度、このユニットを疲弊させる
【効果】相手フィールドのパワー5000以下のユニット1体を破壊する。
名称:レッサードラゴン(1)
分類:ユニット
プレイコスト:???
文明:赤
種族:ドラゴン
性別:男
パワー:4000
1:【永続】【効果】このユニットは1ターンに1度だけ破壊されない。
2:【起動】【条件】1ターンに1度、このユニットを疲弊させる
【効果】相手フィールドのパワー4000以下のユニット1体を破壊する。
そのユニット合計、4体。
1体はボスと思わしき、ファイアードラゴンなるユニット。
それ以外にはレッサードラゴンという名称のユニット、それが1~4まで存在していた。
ファイアードラゴンには他のドラゴン族ユニットの数だけパワーを上げる効果があり、今現在のパワーは――9000。
10000にも届きそうな規格外のパワーを有しており、挙句破壊耐性まであるとなれば、苦戦は必至だっただろう。
使ってるデッキがこのインチキデッキじゃ無かったらな。
「――俺に攻撃するって事は、バトルステップって事だよな?」
切り札が有している効果の発動条件。
それが今、満たされた。
「このバトルステップ時、追放ゾーンに存在する次元の支配者 ディメンションドラグネーターの第3効果発動」
名称:次元の支配者 ディメンションドラグネーター(1枚制限)
分類:ユニット
プレイコスト:○○○○○○○○
文明:無
種族:ドラゴン
性別:男
カテゴリ:七天竜
マナシンボル:○
パワー:4000
1:【速攻】【コスト】○○
【効果】フィールドまたは墓地に存在するカード1枚を選択し、追放する
2:【速攻】【効果】自分フィールドのユニット全てを追放する
3:【速攻】【条件】このユニットが追放されているバトルステップ時、このカード名の3の効果は1ターンに1度しか発動できない
【効果】追放されている自分のユニットを可能な限りフィールドに戻す(同名ユニットは1体まで)。この効果を適用した種族:ドラゴン以外のユニットは攻撃出来ず、効果は無効になり、このターンのエンドステップまで自分は種族:ドラゴン以外のカード効果を発動出来ない
「次元の支配者 ディメンションドラグネーター、召喚――尤も、これは正確には召喚では無いんだけどな」
竜は、異界より舞い戻る。
ディメンションドラグネーターが、ではない。
ディメンションドラグネーターも、だ。
この効果は、追放された自身のユニットを可能な限り、フィールドに展開する効果。
次元の支配者 ディメンションドラグネーター!
審炎の支配者 ウルスドラグーン!
海嘯の支配者 フラッドラグーン!
撃滅竜 アジ・ダハーカ!
七 天 竜 降 臨 ! (後、すみっこにツアーガイド)
「――計4体、追放ゾーンからフィールドに帰還する。但しこのターン、俺はドラゴン族ユニット以外のカード効果全てが封じられる」
とはいえ、俺の手札は0なのだから、そもそも手札を使う事は不可能。
精々影響があるとすれば、ツアーガイドが効果を使って逃げられない事か。
……自分の効果が使えない事に気付き、逃げられないという事実を目の前に突き付けられたツアーガイド。
油の切れた機械みたいな挙動で、青褪めた顔をこっちに向けて来る。
大丈夫、お前は後衛に居るから、あいつ等4体が倒されない限り、前衛は七天竜が受け持ってくれる。
あの程度の効果しか持たない奴等じゃ、ウルスドラグーン1体すら抜けないぞ。
更に言うなら、保険の黒マナ2も確保済みだからな。
七天竜、揃い踏み――ではなく、残念ながら神罰の支配者 ジャッジメントドラグレイスと"ゴンさん"はお留守番である。
あいつ等、戦闘力って意味では大した事無いし、特化デッキでこそ輝く効果だからな。
出すならば、単体である程度機能してくれるこいつ等だ。
空に影差す。
天を舞うは、七つ天紡ぐ竜が一体、審炎の支配者。
太陽を背にし、恫喝するが如く、吼えた。
大気が震え、その一喝で、この空間全てを支配した。
誰もが、ウルスドラグーンの偉容から目を離せない。
名称:審炎の支配者 ウルスドラグーン
分類:ユニット
プレイコスト:赤赤赤赤赤○○
文明:赤
種族:ドラゴン
性別:男
カテゴリ:七天竜
マナシンボル:赤
パワー:11000
1:【速攻】【条件】このユニットの攻撃宣言時
【効果】自分のデッキからカテゴリ:ドラゴンの呪文カード1枚を選択し手札に加える
2:【速攻】【コスト】赤
【効果】自分フィールドの種族:ドラゴンのユニット1体を選択し、そのユニットのパワーを3000アップする
3:【速攻】【コスト】赤赤赤
【効果】このユニット以外のフィールドのユニット全てを破壊する
4:【永続】【効果】攻撃回数+2
5:【永続】【効果】相手はこのユニットを攻撃対象に選択しなければならない
攻撃するならば、ウルスドラグーンから、だ。
相手の攻撃宣言時、その攻撃対象はウルスドラグーンを指定しなければならないという、相手への強要効果。
パワー11000という圧倒的数値を持つ、このドラゴンを攻撃しろ。
逆を言えば、バトルで倒される時はウルスドラグーンが一番最初になるという事でもあるが……
11000を超えられないのならば、黙ってそこで萎縮していろ。
デッキから次のドローカードが排出され、再び俺の時間が始まる。
「ドロー」
おっと、これを引くか。
墓地肥やしの手間が省けたな。
「リカバリーステップ、メインステップ。マナゾーンを疲弊させて黒マナ1を得る。ツアーガイドの効果、手札を1枚捨てて、デッキからシューティング・イレイザー・ドラゴンを追放する」
手札が足りないので、残念ながらこのターンはマナゾーンを伸ばす事が出来ない。
もうこうなると、伸ばさなくてもキルルート見えてるから関係無いが。
「黒マナ2を使用し、ディメンションドラグネーターの効果発動。対象は、俺の墓地の呪文カード、異世界からの贈り物だ」
混 沌 潰 滅 閃 !
黒い顎門が開き、そこからゲーミングビー……虹色の閃光が放たれた。
その閃光は真っ直ぐに俺へ――正確には俺の足元辺りに着弾し、そのまま謎の空間へと飲み込まれて行った。
「異世界からの贈り物が追放された事で効果発動だ、俺は虹マナ3を得る」
先程、ツアーガイドの手札コストとして墓地へ置いた呪文カード。
普通に使うと1マナを使ってただこのカードをデッキに戻すという、デッキ切れを回避出来るだけの大損カード。
それをメインで使う場合もあるが、今回はそっちが目当てではない。
このカードが追放されると、虹マナ3を得る。
ディメドラの効果発動コストは色を問わない2マナを要求するが、発動回数制限は無い。
「更に、黒マナ1と虹マナ1を使用し、ディメンションドラグネーターの効果発動。俺の墓地に存在する2枚目の異世界からの贈り物を追放する」
先程の焼き直し。
再び墓地のカードが追放される。
これで、黒マナ3が虹マナ5に増えた。
手札コストとして捨てたカードも無駄にせず、余すところなく活用する。
「――バトルだ。ウルスドラグーンでレッサードラゴン(1)を攻撃。ウルスドラグーンの攻撃宣言時、効果発動。デッキからタイラントバーストブレスを手札に加える」
下等な竜を睥睨するウルスドラグーン。
まるで嘲笑うかのように、鼻孔から火の粉が僅かに漏れた。
巨大な口が開き、その口腔の奥に光が迸り――
世界が、炎に包まれた。
ちょっ、おい、ちょっと!?
何だこの威力お前これ街が地図から消えるぞ何してんだ爪で攻撃とか加減する手段あるだろお前!?
こんな馬火力ぶちかましたら街の人諸共――おっとー建物無事だぞー?
明らかに街全部飲み込む大爆焔だったのに、建物は全く壊れてないし、俺も無事だ。
この感じだと街の人も無事なんだろう。
ミサイルでも直撃したかって例えですら控えめな感じだったぞ今の。
でも街が壊れてないというのは、ルールですから……ってそれで良いのだろうか。
あくまでも攻撃したのはレッサードラゴン(1)だから、それ以外を倒す――攻撃していてはルール違反、って事なんだろうな。
逆を返せば、周りへの被害を恐れずに済むって事でもあるか。
「続けて、レッサードラゴン(2)、そしてファイアードラゴンへ、ウルスドラグーンで攻撃。この攻撃時、更にデッキから呪文カード、ドラゴニック・レイジングロアーと竜血の代償を手札に加える」
ウルスドラグーンは、攻撃回数+2を持つ。
常に3回連続攻撃が可能であり、パワー11000という数値も併せ、正にキングオブフィニッシャーとでも言うべき破壊力を有する。
でも耐性は無い。
上からペチッて叩かれたらアッサリ墜ちます。
効果除去にも無力なので、トドメ刺せないと簡単に除去されます。
……あのレッサードラゴンとかいう低位ドラゴンと思わしきこの世界のドラゴンですら、破壊耐性持ってるのに。
強靭なんだか貧弱なんだか良く分からん。
次はディメドラの攻撃なんだが――コイツ、パワー4000しか無いんだよな。
いや、この世界の基準だとそれでも相当強いんだろうが、でもこの派手な見た目とデカい図体の癖に、たったそれっぽっちかよと言いたくなる。
目の前のレッサードラゴン1体に相討ちを取られる程度でしかない。
何ならあっちは破壊耐性があるから一方的に狩られる。
効果がエグ過ぎるから、ゲームバランス調整で意図的にパワー落とされてるんだろうけど……こうして実体化した状態で見ると、納得行かねえ……
せめてパワー7~8000位は無いと見た目的に詐欺だろ。
「虹マナ1を使用し、ウルスドラグーンの効果発動。ディメンションドラグネーターのパワーを3000アップする」
ディメンションドラグネーター:パワー4000→7000
……なので、パワーが足りていない見た目詐欺を詐欺じゃなくする為、ウルスドラグーンの効果で補強する。
「ディメンションドラグネーターで、レッサードラゴン(3)を攻撃」
虹色の閃光が、街は壊れないけど街諸共レッサードラゴンを吹き飛ばしていく。
「撃滅竜 アジ・ダハーカで、ファイアードラゴンを攻撃」
パワー9000?
その程度で、コイツの前に立ちはだかるなど実におこがましい。
名称:撃滅竜 アジ・ダハーカ
分類:ユニット
プレイコスト:黒黒黒黒黒○○○
文明:黒
種族:ドラゴン/悪魔
性別:男
カテゴリ:七天竜
マナシンボル:黒
パワー:12000
1:【強制】【条件】このユニットの攻撃宣言時
【効果】自分のデッキから種族:ドラゴンのユニット1体を選択して墓地へ送る
2:【速攻】【コスト】自分フィールドのユニット1体を生贄に捧げる
【効果】エンドステップまで攻撃回数+1
3:【強制】【条件】このユニットが墓地へ送られた時
【効果】自分の墓地からプレイコスト7以下の黒文明のユニット1体を召喚する
「攻撃宣言時、アジ・ダハーカの効果発動。俺はデッキから雷鳴山の黒竜を墓地へ送る」
破壊耐性により、この一撃で倒れはしないだろうが――アジ・ダハーカの振るった剛腕が、まるで羽虫を叩き落すが如く、ファイアードラゴンを撃墜した。
海面を水切り石の如く跳ねて行き、海に沈んだ。
「フラッドラグーンで、レッサードラゴン(4)を攻撃」
海面からひょっこり覗かせた頭。
他の七天竜と違い、海蛇系の要素が混じっている為か、自己主張の少ない牙が生え揃った口が開き――そこから放たれる群青の水槍が、レッサードラゴンを貫いた。
「そして、この攻撃宣言時にフラッドラグーンの効果発動」
災 海 転 !
名称:海嘯の支配者 フラッドラグーン
分類:ユニット
プレイコスト:青青青青青青○○
文明:青
性別:女
種族:ドラゴン/水棲
カテゴリ:七天竜
マナシンボル:青
パワー:8000
1:【永続】【条件】自分フィールドにこのユニット以外のユニットが存在しない時
【効果】このユニットの1の効果以外の効果は無効になる
2:【速攻】【条件】1ターンに1度
【効果】以下の効果から1つを選び、適用する
・自分または相手の墓地のカードを全てデッキに戻しシャッフルする。この効果で戻した枚数と同じ枚数、戻したプレイヤーのデッキの上から墓地へ送る
・自分または相手の手札を全てデッキに戻しシャッフルする。この効果で戻した枚数と同じ枚数、戻したプレイヤーはデッキからドローする
・自分または相手の盾を全てデッキに戻しシャッフルする。この効果で戻した枚数と同じ枚数、戻したプレイヤーはデッキの上から盾ゾーンにセットする
3:【速攻】【コスト】このユニットを生贄に捧げる
【効果】自分または相手のマナゾーンのカードを全てデッキに戻しシャッフルする。この効果で戻した枚数と同じ枚数、戻したプレイヤーはデッキの上からカードをマナゾーンに活性状態で置く
4:【強制】【条件】このユニットの攻撃宣言時
【効果】海嘯の支配者 フラッドラグーン以外のフィールドに存在する全てのユニットは、疲弊状態なら活性状態になり、活性状態なら疲弊状態になる
津波と渦潮を足して割らなかったような、暴力的な激流がフィールド全てを飲み込んでいく。
その波濤に飲まれ揉まれ、ファイアードラゴンとレッサードラゴンが押し流され、打ち据えられる。
だが逆に、俺の場の七天竜達にはその水流は癒しの力となって降り注ぎ、疲弊した肉体に活力が蘇っていく。
「――ウルスドラグーン、アジ・ダハーカ、ディメンションドラグネーターを疲弊状態から活性状態へ。そしてファイアードラゴンとレッサードラゴン4体は活性状態から疲弊状態へ変更する」
ヤベー臭いしかしない、フラッドラグーンの最終効果。
そして実際ヤバい。
攻撃を終えたユニットは疲弊状態になる。
疲弊しているから、攻撃出来ないし、防御にも参加出来ない。
だがこのターン攻撃していたとしても、疲弊していないならまだ攻撃は出来るのだ。
「ウルスドラグーン、アジ・ダハーカ、ディメンションドラグネーターでレッサードラゴン(1)、(2)、(3)を攻撃。攻撃時、ウルスドラグーンの効果で2枚目の竜血の代償を手札に加える」
フラッドラグーンの効果によって得た、追加攻撃回数を使用して再び暴れ回る七天竜達。
ここが地獄か。
ツアーガイドが俺の隣で古い少女漫画みたいな顔して白目剥いてる。
破壊耐性を消費していたレッサードラゴンは、2回目の攻撃を耐える事は出来ず、息絶えた。
「――ディメンションドラグネーター、効果発動、そして更に効果発動」
ベルクライムにある意味地獄絵図を作り上げた、七天竜。
その姿が、忽然と消えた。
あとツアーガイドも一緒に消えた。
「俺の場のユニット全てを追放する。そして、追放ゾーンからディメンションドラグネーターの効果で、再びフィールドへ呼び戻す」
空が割けた。
虹色が渦巻く空間が開かれ、そこから現れるは、ドラゴンの軍勢。
ウルスドラグーン、アジ・ダハーカ、ディメンションドラグネーター、フラッドラグーン、そして先程追加で追放された、シューティング・イレイザー・ドラゴン。
あとオマケでツアーガイド。
「一度追放ゾーンを経由した為、先程得ていたディメンションドラグネーターのパワー上昇効果は消滅する」
一度フィールドから離れたユニットは、そのカードが持っている情報を失う。
そのルールにより、折角上がったディメドラのパワーは元に戻った。
疲弊状態も、元に戻った。
「――ウルスドラグーン、アジ・ダハーカ、フラッドラグーン、シューティング・イレイザー・ドラゴンで、ファイアードラゴンとレッサードラゴン(4)を攻撃」
実はまだアジ・ダハーカの効果使って無いから、まだ攻撃回数増やせるんだが……はいはいオーバーキルオーバーキル。
怒涛の11連続攻撃。
この世界のドラゴンに、異世界のドラゴンの力を見せ付ける形で、あっさりと戦いは終わった。
やっぱ"連ディメドラ"デッキ滅んで良いわ!
何だこのクソゲーデッキ!
1ターン目からやって良い攻撃回数じゃねえぞこれ!
そりゃプレイヤーも減ってエトランゼの黒歴史に名を刻みもするわ!
ウルスドラグーンでバトル抑制と打点補助、ディメンションドラグネーターで回避及び疲弊リセット及び除去、フラッドラグーンで相手の妨害及び攻撃回数追加、アジ・ダハーカは駄目押しと全体除去を喰らった際のリカバリー担当。
これだけでも十分過ぎるのにシューティング・イレイザー・ドラゴンと雷鳴山の黒竜は一体どんな効果を持っているんだ……?
伝説の魔法戦隊「……あれ? 出番……」




