表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
142/268

131.その後の始末

 一旦、メガフロートまで戻るが、俺の戻るルート上で、先程の船を発見する事が出来なかった。

 来る時は見付けたんだが、ミゲールとやり合っている間に何処かへ流されてしまったようだ。

 広い広い大海原。

 帆もエンジンもある機帆船、そして潮流や潮風の影響もある。

 数十分もあれば、いくらでも移動してしまうだろう。

 それにそもそも、俺が発見した場所が何処かも分かって無いしな。

 闇雲に探した所で、徒労に終わるだろう。

 なので一旦、メガフロートまで戻って、大人しく衛星の受信圏内に収まるのを待つ事にした。


 約5時間後。

 衛星が電波を受信出来る圏内に入った事で、沖を漂流していた船の位置を特定する。

 メガフロートの移動速度では迎えに行くのに少し時間が掛かるので、その船に乗っている二人の生存者とやらを安心させる為に、一旦カード達が食糧を持って飛んで行くようだ。

 軽く睡眠を挟んだ後、無事船と合流する。

 その船に乗っていたのは、二人の少年少女であった。

 男の子がユウで、女の子の方がリンというらしい。


 誰か頼れるような親類は居るかと聞いた所、この二人に、親戚は居ないらしい。

 両親と共にベイシェントで暮らしていたらしいが、その両親も今は――


 ……二人きり、か。


「この船に、置いてはやれないだろうか?」

「良いぞ」


 ……何だよその表情。

 聞いておいて、ポカンとしたまま硬直するエルミア。


「そういうのを拾い上げて留めておく為の、ここだからな」


 何度も言うが、俺一人で生きていくだけなら、こんなメガフロートなんぞ必要無い。

 ここはカード達が、この世界と関わった結果生じた、"責任"を果たす為の場所でもある。

 そしてエルミアは、もうこの世界の住人ではなく、カード達の世界の一部なのだ。

 だったら、そうする事が責任を果たす事だと思うなら、遠慮なくそうすれば良い。



―――――――――――――――――――――――



 漂流船から始まった今回の騒動は、こうして幕引きとなった。


「――探索内容、増えたな」


 目標追加。

 ユウとリンの両親、そしてベイシェントで行方不明になった人達の捜索。


「……それ、見付かると思ってるんですか主人(マスター)?」

「見付からないだろうなあ」


 半目でこっちを見て来るダンタリオン。

 俺も、別に本気で見付かるとは思っていない。

 だが、探す位は良いだろう。

 どうせ、邪神の欠片を探すという行動方針は変わらない。

 色々な場所に行かなければいけないのだから、そのついで、だ。


 食事を済ませ、自室で一息吐く。

 今回の出来事を、振り返る。


 人が居なくなった船。

 崩壊した集落。

 邪神の欠片と、ミゲールという男。


 ハイネ達が見た光景を加味して考える。

 あのミゲールって奴の能力は、驚異的だ。

 空間を飛び越えて、目の前に瞬時に現れる。

 もし、俺がミゲールだったとして、あの状況を作る為にはどう動くか――考える。

 その移動可能な距離がどの程度なのか、というのは最早調べようが無いが――移動出来る距離等によっては、全て説明できる。


 あの集落の人達は、連れ去られたのだ。

 ミゲールが他の人物を連れて移動出来るのなら、あの神出鬼没な能力を加味すれば、不意打ちで痕跡も残さず、人を連れ去る事は十分可能なはずだ。

 連れ去った後は、別動隊なり何なりに預けてしまえば良い。

 そしてたまたま、隠れていたユウとリンだけは、難を逃れた。


 集落を破壊したのは、邪神の欠片だ。

 それが暴れ、人を襲ったせいで、ベイシェントは全滅した。

 そういう、筋書き。

 発見されるのがもう少し遅ければ、雨なんかで痕跡が更に隠蔽され、分かり辛くなり、発見した人達は全て、近くに居た邪神の欠片のせいだと考えただろう。

 船に乗っていた人達も、恐らくそうやって連れ去られた。

 だが、邪神の欠片が壊せたのは集落だけで、沖に流されてしまった船は破壊する事が出来ず、漂流する事になった……


「――って感じで、ミゲールは行動したと思うんだけど、どうだ?」

「……そうですね、矛盾は無いと思います」


 推測であり、正解かどうかは分からないが、ダンタリオンも頷いた。

 しかし、わざわざ隠蔽工作まで働いた上で、大量の人々を連れ去って、何がしたいのかという事までは、分からない。


「ただ、絶対ロクでも無い事だろうなあ」

「そうでしょうね」


 殺さず、わざわざ手間を掛けて連れ去る。

 ……そんな事をする必要がある事……か。

 うーん、俺の頭だと外道路線しか思いつかないぞ。

 人体実験の材料とか。


 正直、生存は絶望的だと思う。

 だがそれを、わざわざ直接口であの二人に伝える必要は無いだろう。

 それは、酷ってもんだ。


 取り敢えず、あの二人はこのメガフロートに置いておく事にしよう。

 どうしたいのかが、あの二人の中で決まるまで。

 そしてそれが定まったなら――可能な限り、その希望に沿えるようにしよう。



―――――――――――――――――――――――



「――マナ数19、か」


 今までカツカツで運用していたマナ数が、急激に増えた。

 かなり持て余すレベルで。


「これだけあれば、かなり自由に行動出来るようになるな」


 勿論、活動するのはカード達なんだが。

 今も盛んに活動中である。

 活動した結果、俺の両腕に絡み付く形でアルトリウスとダンタリオンに挟まれた状態となっている。

 系統の違う美女二人、両手に花。

 それは間違い無いはずなのだが――何故か、隣に居るのは蛇か虎か何かだと思ってしまう。


「取り敢えず主人(マスター)、どれだけマナ数が増えても最低3マナは浮かせておいて下さい。私が主人(マスター)を守りますから」

「これだけ増えたのだから、5マナは用意しておくべきだと思うのです旦那様(マスター)。あと、私が居ればもうダンタリオンは必要無いですから、しばらく座敷牢にでも入れておきましょう」

「カード確認したいから離れろ」


 ……俺を中心として、約50キロの活動限界距離が……恐らく今までの傾向から推測して、正確な数値は測れてないが、約5万2000キロメートルにまで広がっていた。

 活動距離だけ倍々に増える計算なせいか、インフレの仕方がエグい。

 距離によっては大陸の端と端、国を跨げるレベルだ。

 上手い事メガフロートの位置取りが出来れば、二つの国で同時に行動、なんてのも行けるかもしれないな。

 もうこれ、事実上活動距離制限無しだな。


 それと、さっきカード達の会話の節で少し思う所があったので、エルミアとリズリアのカード内容を見ておこうと思った。

 そういえば、エルミアとリズリアは前に見た時は効果欄が読み取れない状態だったし、何か変わってたりしないかな?



 1:【速攻】【条件】1ターンに1度、黒文明のカード効果が発動した時【コスト】このユニットを疲弊させる

 【効果】その効果を無効にし、破壊する

 2:【速攻】【条件】???ードが???存在し、自分?????のユニ????が破壊さ???【コスト】??

 【効果】?????無効にし、?????を??から????

 3:【永続】【効果】?????



 その結果が、コレである。

 効果1の部分は、完全に見えている。

 そして2と3は、先程のミゲールの如く、一部虫食い状態だ。


「……何か、完璧ではないがある程度推測出来る感じになってるな」

「そうなのか? 邪神の欠片を倒せた時、かなり良い動きが出来たとは思ったが……」

「成長した――って、事か?」


 エルミアは、元々はカードじゃなかったしな。

 カード達のように、最初から100%の力を出し切れる訳ではないという事なのだろう。


 ……まだ、全ての効果が分かった訳ではない、けど。

 相手を選ぶが、効果1、普通に強くないか?

 邪神の欠片が黒文明ばかりな事を考えると、エルミアって実は邪神の欠片キラーに成り得るんじゃないか?

 勿論、完璧ではない。

 効果を使わずに、普通に殴って来る相手にはどうしようもないしな。


「――でもこれ……ちょっと待て……エルミアって、単騎でアルトリウス倒せるの……?」


 エルミアのパワーが3000、対し、アルトリウスのパワーが2000。

 素の数値ではエルミアが勝っているが、これはアルトリウスの多彩なカード効果に対してのバランス調整として、パワーが低めに設定されている影響だから仕方ないだろう。

 だからこそ、アルトリウスはその低いパワーを補う為、装備呪文を引っ張って来る効果があるのだが――アレは、"黒文明カード(アルトリウス)の効果が発動"している。

 つまり、エルミアが持つ1の効果のトリガーを引いてしまう。

 アルトリウスの持つ、対象を取る効果に対するカウンター効果も……そもそも、エルミアの効果は、無効にし、破壊する。

 このテキストに、"選択"という文字が記載されていない以上、この効果はアルトリウスを"選択"する効果でもない。


 殴り合えば死、打点を補おうと効果を使えば死。


「……エルミア、お前ってアルトリウスキラーだったんだな」


 何故か、アルトリウスがエルミアに対してツカツカと迫る。

 何かを察したのか、エルミアが逃げ出した。

 追うアルトリウス。


 何を思ったのかは知らんが……逃げ切れエルミア。




 名称:屍姫 リズリア

 分類:ユニット

 プレイコスト:黒○

 文明:黒

 性別:女

 種族:アンデッド/人間

 カテゴリ:

 マナシンボル:黒

 パワー:2000

 1:【速攻】【条件】このユニットが墓地に存在する時【コスト】自分のデッキの上から3枚を墓地へ送る

 【効果】このユニットを墓地から召喚する



 リズリアの効果を見て、むせた。

 心配そうに背中と胸を擦るダンタリオン。

 おう、擦るなら素直に擦れ、何だその指使いは。


 待て……何だ、この超絶効果!?

 条件、軽ッ! コスト、軽ッ!

 その癖、効果は覿面(てきめん)ッ! しかも発動回数制限無し!?


 ――悪用出来そう、ループコンボが出来そう。

 出来るカードあったわ、ループコンボ完成だわ、悪用出来たわ。


「リズリア、お前……エグいな」


 以前見えなかった効果欄、そこに伏せられていた効果は余りにもエゲつなかった。


「……それは一体、どういう意味だ?」


 口をへの字に曲げるリズリア。


「貴女が他のカードとつるむと、大虐殺が発生するって意味です」


 主に無限ドロー、無限マナが発生します。

 相手は死にます。



 ……これ、先攻1ターンとかで達成出来たりしないかなぁ?

 流石に無理か?

 3ターンあればかなりの確率で行けそうだが……



 コンボデッキの脳内構想してたら、隣でダンタリオンがむくれてた。

 今、忙しいんです。

 食事を取れとインペリアルガードに怒られた。

 今、忙しいんです。

 夜も遅いから寝ろとアルトリウスにたしなめられた。

 今、忙しいんです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
コスト軽いエルドリッジ
[良い点] 久しぶりのデュエル回。 あとエミリアの成長。 [気になる点] 1話から読み返して思ったんですけど、邪神の欠片とかそれ以外の敵のコントロール奪った上で、自分フィールドから墓地に送ったらその魂…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ