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129."暗躍"のミゲール-3-

 ――この挙動は、さっき見たな。


 コマ落ち映像の如く、唐突に目の前に現れるミゲール!

 その白刃が真っ直ぐに俺に対して伸び――


「アルトリウスの効果発動」

英霊の領域(スピリットガーデン)!」


 白銀の水泡が、俺の身体を包んだ。

 泡など容易く割れてしまいそうだが、この泡はミゲールの刃を見事受け止めてみせる。

 デッキ枚数を犠牲にした、攻撃に対する絶対防御。


「何ッ!?」

「デッキの上から10枚を墓地へ送り、その攻撃を無効にする」


 避ける事も防ぐ事も出来ないタイミングだったのだろう。

 だというのに防がれたからだろうか、驚愕の表情を浮かべるミゲール。

 その攻撃は、もう見た。

 ダイレクトアタック能力である以上、前衛にユニットが居るとか居ないとか、それはもう関係無い。

 俺を狙って来るなら、必ず盾かライフが犠牲になる攻撃だ。

 だから、止める。


 そして、再び動き出す邪神の欠片(1)。

 アルトリウスとのパワーは今は互角だが――相手には、破壊耐性がある。

 対し、アルトリウスにはそれは無い。

 攻撃無効効果こそあるが、それは疑似的な破壊耐性というだけで、攻撃を通しても平然としていられる、破壊耐性とは別物だ。

 相討ちにはならず、これを通せば一方的にアルトリウスだけが破壊される。

 だからこそ防御、なのだが――


 デッキ枚数、危険域。

 序盤に調子に乗ってドローし過ぎたのが原因だ。

 つまり俺のせいな訳だが、じゃあドローしなかったら良いのかと言われるとなぁ……有効札かなり引き込んでるからアレは判断として正解なんだよな。

 アルトリウスの防御効果とドロー加速は二律背反。

 沢山使う癖に使い過ぎるとすぐにデッキ切れで瀕死になる。

 まあ、命削って動く黒文明の基本だからその辺りはバランス感覚、何時もの事だ。


「手札から治癒師 ブエルを捨て、効果発動。このターン1度だけ、アルトリウスを破壊から守る」


 なら、こっちで防御だ。

 一瞬、アルトリウスの背後に、まるで守護霊が降霊したかのように、薄っすらとブエルの姿が見えた。

 聖職者然とした見た目なので、目を閉じて手を組み、祈るようなポーズでそれをしたなら、とても絵になっただろう。

 だがさっき見えた姿は、目元でピースしながら笑顔でウィンクしてた。

 お前もうその服脱げよ。


 何にせよ、手札から耐性付与という優秀なブエルの効果により、このターン限りの破壊耐性をアルトリウスは得た。

 邪神の欠片(1)の前腕と、アルトリウスの刀がせめぎ合う。

 ギリギリと音を立て、地面にヒビが走る。

 強引に切り上げ、邪神の欠片(1)を弾き飛ばすアルトリウス。

 追撃を避けるべく、俺を背後に庇うように飛び、距離を取った。


「――俺のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ。マナゾーンにカードをセット、疲弊させて虹マナ1、黒マナ1、白マナ3を得る」


 何とか、さっきのターンはしのいだが。

 正直、ドローし過ぎてデッキ枚数がヤバい。

 このままだと、デッキが枯渇して負ける。

 ……まあ、それを防ぐ手段を正に今、ドローした訳なんだが。

 使うのは、まだ……だな。

 もう少し、引き付ける。



 1:?????

 2:【速攻】【条件】1タ??に?度【コスト】この???を?????リカバリーステップ??????

 【効果】???????に存在するユニット??を選択し、疲弊させ??????。及び、?????

 3:【永続】【条件】このカードが????????????に戻った時

 【効果】??????までこのユニットは戦闘では破壊されず、??から攻撃する事が出来、??ユニット・プレイヤーを????に選択出来る



 ……ミゲールの効果テキストが、さっきより鮮明に浮かび上がっている。

 完全には浮かび上がってないが――??から攻撃する事が出来、だぁ?

 その後に見えてる単語も併せて、もう3の効果がダイレクトアタック能力の正体だな、そう結論付けて大丈夫だ。

 そう仮定すれば、他のテキスト部分に矛盾も無い。


「虹マナ1、白マナ1を支払い、手札から呪文カード、ウェポンストライクを発動」



 名称:ウェポンストライク

 分類:呪文

 プレイコスト:赤○

 文明:赤

 マナシンボル:赤

 カテゴリ:

 1:【起動】【コスト】自分フィールドに存在する装備呪文を1枚選択し、墓地へ送る

 【効果】相手フィールド上のユニット1体を選択し、破壊する



「アルトリウスに装備されている雲竜紫電を墓地に送り、邪神の欠片(1)を破壊する」


 アルトリウスは剣を……何だその構え。

 槍投げの構えで――雲竜紫電を、ぶん投げた。

 それは邪神の欠片(1)の頭部にぶつかり、砕けて消えた。

 え……勢い良く叩き付けて、結果武器が砕けるとかじゃないの?

 投げるんだ……

 何か今回の戦い、剣がぺたってなったりアルトリウスがぶっ飛んだり、シュールな図多過ぎじゃね?

 そうさせたのもそう組んだのも俺な訳だが。


「そして、アルトリウスの効果発動。装備呪文を装備していない事で、墓地から雲竜紫電を装備する」


 さっきぶん投げてぶっ壊れた、雲竜紫電が再びアルトリウスの手に収まる。

 邪神の欠片(1)の破壊耐性は、一度限り。

 1ターンに2回、破壊すれば突破出来る。


「白マナ2を払い、手札から装備呪文、瞬速の剣をアルトリウスに装備する」



 名称:瞬速の剣

 分類:装備呪文

 プレイコスト:○○

 文明:無

 カテゴリ:剣

 マナシンボル:○

 1:【永続】攻撃回数+1



 攻撃回数+1、以上。

 実に素直でシンプルな効果であり、効果は絶大。

 パワー7000の2回攻撃。

 回りくどい説明抜きに、単純に強い。


「バトル。アルトリウスで邪神の欠片(1)を攻撃」


 先程のウェポンストライクの衝撃からまだ回復しきれていない邪神の欠片。

 その無防備な体躯を、すらりと雲竜紫電の刃が走った。

 ドスンと頭部が地面に転がり、黒い粒子となって爆ぜて消えた。


「その後、アルトリウスでミゲールを攻撃」


 パワーで勝っている以上、これが通れば仕舞い。


 ――これで、終わらないんだろう?


 ミゲールを倒せるだけのパワーを得た、アルトリウスの一閃。

 返す刃がミゲールに届く直前――ミゲールの姿が、消えた。

 攻撃が届く前に、消える。

 伝説の(レジェンダリー)魔法戦隊(マジックアーミー)から受けていた、状況報告と同じだ。

 パワーで勝っていても、その攻撃が、届かない。

 そして、見えた情報も併せて考えれば――



 1:【永続】【効果】?????

 2:【速攻】【条件】1ターンに1度【コスト】このカードを次の自分のリカバリーステップまで追放する

 【効果】相手フィールドに存在するユニット1体を選択し、疲弊させる事が出来る。及び、手札からカテゴリ:邪神の欠片ユニットを1体選択し、フィールドに出す事が出来る

 3:【永続】【条件】このカードが追放ゾーンからフィールドに戻った時

 【効果】ターン終了時までこのユニットは戦闘では破壊されず、後衛から攻撃する事が出来、後衛ユニット・プレイヤーを攻撃対象に選択出来る



 ……ああん?

 つまり効果2と3は連動してて――


「――成程な、もう充分だわ」


 思考の最中、ミゲールの声が背後から響き――振り向くと、目の前の地面から膨れ上がる、黒い光。

 その光の中から、巨大な黒い翼が、姿を現す。



 名称:邪神の欠片(4)

 分類:ユニット

 プレイコスト:???

 文明:黒

 種族:翼鳥/悪魔

 性別:不明

 パワー:8000

 1:【強制】【効果】このユニットは攻撃可能な時、必ず攻撃しなければならない。

 2:【永続】【効果】攻撃回数+2



「後は精々、そいつと遊んでろ――勇者様よぉ?」


 ニィ、と下卑た笑みを浮かべ――ミゲールが、その場から姿を消した。



―――――――――――――――――――――――



 ……間違いない。

 アイツが、あの男が。

 今回現れたっていう――勇者だ。

 容易く邪神の欠片を打倒し、無傷でその場に君臨し続ける。

 俺達にとっての、天敵。

 すぐに逃げる事も出来たが、敢えてその場に留まり、交戦。

 その甲斐あり、能力もある程度把握出来た。

 これだけ間近で見てれば、馬鹿でも分かるってもんだ。


 今回の勇者は"召喚"系の能力者だ。


 その単語を、他ならぬ勇者自身が言っていた。

 これだけ情報を手に入れられれば、この場から逃げた所で、敵前逃亡だ何だとグチグチ言われる事も無いだろう。

 何も見えない、手探りで戦わねばならない、闇に包まれた相手に対し、強烈な閃光をお見舞いしてやった。

 その能力のおおまかな正体、姿形、どれもこれも値千金の情報だ。

 結構な数の手駒を潰す事になっちまったが、それでもお釣りが来る。

 後はこの情報を持ち帰り、俺達全員で今回の勇者を抹殺してやる。

 ……ま、俺はもう矢面に立つ気は無いけどな。

 勇者相手に鍔迫り合いなんて危険な真似、他の"適合者"共にやらせれば良いんだ

 俺が得た能力は、異次元を中継するワープ能力。

 そこに居る間は、どんな奴にも手出しは出来ないし、逃げる速度だって、今居る"適合者"連中の中でもトップレベルだ。

 それが例え、勇者や"魔王"であったとしても、逃げ切ってやる自信はある。

 ましてや、今置いてきた邪神の欠片は、俺が持っている手持ちの中では最強の駒。

 最強ではあるが、相手は勇者だ。

 最後には、倒されるだろう。

 だが、そいつを相手にして、倒して、その後俺を追い掛けて……それで追い付くなんて事は、絶対に有り得ないだろ?


 偵察して、拉致して、闇討ちし、逃げ帰る。

 それだけは、どんな相手だろうが、絶対に負けねえ!

 誰であろうと、俺には指一本触れる事は出来ねえんだよ!!








再転する運命(リバースデスティニー)



 聞こえたのは、聞こえる筈が無い、男の声。

 ここは、俺だけの世界。

 そんな、馬鹿な事がある訳

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