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99.これが"カードゲーマー"の大戦隊 -1-

「異次元ツアーガイドと太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)で、リゼット級護衛艦を攻撃」

「へ?」


 土埃を払っていた手が止まり、あんぐりと口を開けるツアーガイド。


「あの、御客様(マスター)? 私のパワー、知ってますか?」

「1000だよ」

「私、勝てないんですけど?」

「知ってる」


 お前の方が圧倒的にパワー低いからな。


「そんな事したら私、死んじゃうんですけど!?」

「知ってる。でも攻撃しろ」


 構わん、やれ。

 今は少しでもカウンターが欲しいんだ!


「うわーん! ちくしょー! 死んだら化けて出てやるんですからねー!」

「お前等、この戦いでは本当の意味では死なないって聞いたぞ?」


 海に向けて猛然とダッシュするツアーガイド。

 何か見えない壁のようなモノにぶつかり、「ぶへっ」とか言いながらずっこけるツアーガイド。

 ぶつかった場所の空間が、水面の如く揺らいだ。

 鼻を抑えて「おおおおぉぉぉ……」とか唸っている。


太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)の効果発動。ユニットの攻撃宣言時、その攻撃を無効にしてこのカードにカウンターを1つ置く」



 太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ):カウンター数 0→1→2



 自爆同然の攻撃宣言だが、本当にツアーガイドを犬死にさせる訳ではないので当然、太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)の効果で止める訳ですが。

 太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)の第一効果。

 ユニットの攻撃を無効にし、カウンターを乗せる。

 この効果に発動回数制限なんて無いし、更に言うなら敵味方の区別も無い。

 全てのユニットの攻撃を、カウンターへと変換する効果。

 それでいて、発動するかどうかは俺の自由。

 このユニットが出た時点で、通したい攻撃だけ通し、それ以外の全ての攻撃を遮断する。

 攻撃に対する、絶対的な防御が展開されたのだ。

 これから毎ターン、ツアーガイドには攻撃して貰うからな。

 カウンター溜めたいし。


「これで、ターンエンドだ」


 そして、相手ターンへと移る。

 俺をここまで追い詰めた攻撃が、戦闘機トークンを増やす事で更に勢いを増して迫る!

 さっきまでの俺だったら、これでゲームエンドだったな。

 だが。


太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)の効果発動。ユニットの攻撃宣言時、その攻撃を無効にしてこのカードにカウンターを1つ置く」


 爆風、炎熱、飛来する石片、破片。

 その全てが、ツアーガイドや俺にとって致命の一撃となる威力を有する。

 だがそれは、もう俺には届かない!

 周囲一帯の空間が、水面に波紋を立てるが如く揺らぎ、轟音も振動も熱波も、微塵も届かない。

 このユニットは最上級ユニットであるにも関わらず、パワーがたったの1000しかない。

 だがそれでも、このユニットを戦闘破壊する事は決して出来ない。

 これこそが、太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)の誇る防御効果。

 ありとあらゆる、ユニットからの攻撃をシャットアウトする絶対防御能力。


「この効果に発動回数制限なんて無い。その攻撃、全てが無意味所か不利益にしかならない」


 太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)が君臨した時点で、事実上相手ユニットの攻撃は全て封じられる。

 何故ならば、攻撃した所で無効にされ、更にこのカードのアドバンテージ効果のコストに必要なカウンターが溜められてしまうのだ。



 太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ):カウンター数 2→13



 バトルが終了した事で再び訪れる、俺のターン。


「俺のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ。マナゾーンにカードをセットし、そのまま疲弊させて青マナ2と黒マナ1と白マナ1を得る。太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)の効果発動。カウンターを1つ取り除き、俺の墓地から戦力の逐次投入をデッキの一番上に置く。そして更に太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)の効果、カウンターを5つ取り除き、デッキから5枚ドローする。更に太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)の効果、カウンターを5つ取り除き、虹マナ5を得る」


 相手は、太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)が一体どういうカードなのかを知らないのだろう。

 知らないから、あんな無意味所か不利益にしかならない全力攻撃をしてきたのだ。

 だが折角カウンターを頂いたので、有難く使わせて貰おう。


「手札を2枚捨て、再び永続呪文、戦力の逐次投入を発動。そのまま疲弊させ効果発動だ、デッキからユニット1体を召喚する」


 防御は、これで問題無し。

 となれば、次に必要なのは、勝負を決する矛だ。


「――最終兵機神(リーサルマキナ) リアクター・ドラゴンを召喚」


 但し、この効果で呼び出したユニットは腑抜けになる。


「そしてツアーガイドの効果発動。リアクター・ドラゴンを追放する」


 だから、ツアーガイドで効果をリセットする。

 これで2ターン後、最終兵機神(リーサルマキナ) リアクター・ドラゴンが俺の場に完全な状態で帰還する。


「そして、再びツアーガイドと太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)でリゼット級護衛艦を攻撃。太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)の効果でその攻撃を無効にし、ターンエンドだ」

「ぶへぇ」



 太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ):カウンター数 2→4



 ツアーガイドが頭を押さえて蹲っているのを横目に、再び相手にターンを渡す。

 動き出す時間。

 相手にはこちらのカードを破壊する効果がいくつも存在している。

 俺の場の戦力の逐次投入を再び狙って来たようだが――


「その砲撃も、もう俺には届かない」


 太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)が守るのは、ユニットだけに限らない。


太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)の第二効果。俺の場のカードを対象にした相手のカード効果を無効にし、このカードにカウンターを1つ置く」


 このさっきから置かれているカウンター。

 これは、防御を受け持った事で乗せられている為、乗る都度デメリットが課せられるのかと考えがちだが――違う。


 太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)は、攻撃と効果を吸収(・・)しているのだ。


 そして、カウンターというコストさえあれば、太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)は凶悪極まりないコントロール能力を発揮する。

 カウンターを取り除き、破壊を無効。

 そしてドロー加速、マナ増強、フィールド除去に回収まで。

 出来ぬ事はほぼ無いと言って良い。

 8マナ青拘束という、青文明デッキでなければ使えないようなカード故に、その効果もまた青文明らしさが非常に強く表れている。

 パワー自体は1000しかないが、このユニットが相手ユニットと直接殴り合う事は無いので、このパワーも実質無意味。

 攻撃に参加出来ないというのが唯一のデメリットとでも言うべきだが――これだけのボードコントロール性能を有しているならば、些細な問題にしか過ぎない。


 太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)により、攻撃封鎖、最終防壁、アドバンテージ獲得源を得た。

 一番重要だからこそ、いの一番でフィールドに呼び寄せた。

 生き延びる為、延命手段を用いて辿り着いた――このユニットこそが、逐次投入ガイドにおける、絶対防衛ライン。

 そして、二番目以降に呼び出されたユニット達に求められるのはただ一つだ。

 太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)が唯一持たない――圧倒的、殲滅力。



 太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ):カウンター数 4→14



「俺のターン、ドロー。リカバリーステップ、メインステップ。マナゾーンにカードをセットし、そのまま疲弊させて青マナ2と黒マナ1と白マナ2を得る。太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)の効果発動。カウンターを10個取り除き、10枚ドロー。そして白マナ1を使い、手札から呪文カード、裁きの天剣を発動」


 コイントスを行い、成功すれば相手フィールドのユニットを殲滅する呪文。

 リゼット級護衛艦の効果が邪魔で、そのままでは通らない。

 掲げた手元の裁きの天剣を抉る、何らかの衝撃波。

 それを受けた途端、手元のカードが粉砕されていった。

 これが、無効化効果って事か。

 案の定、一度目の発動を阻害された。


 なら、2枚目は防げるか?


「2枚目の裁きの天剣を発動――コイントスを行い、表なら相手ユニット全てを破壊だ。そしてこの効果に連鎖し、ツアーガイドの効果発動。自身を追放する」


 ツアーガイドが追放ゾーンへと移動し――コインが宙を舞う。


 砂浜に転がり、示したのは――裏。


 全体破壊の剣が降り注ぐのは相手ではなく、俺のフィールドとなった。

 チッ、今回は外したか。

 まあ、あわよくばラッキーパンチでさっさと終わらないかなってだけだからな。

 以前は適当ぶっぱで使った裁きの天剣だが、本来の使い方はこういうモノだ。

 1マナでフィールドのユニット全てを破壊。

 これだけ聞くと実にぶっ壊れカードなのだが、その破壊される方向が自分か相手か、コイントスで決まってしまうのが唯一の欠点だ。

 手札1枚を使い、1マナを使って、自分が展開した御自慢のユニット達が消し飛んだら笑い話も良い所だ。

 だから、これを搭載するデッキは選ばれる。

 そして逐次投入ガイドとは、その選ばれたデッキの一つだ。

 当たればラッキーは全てのデッキ共通だが、外れた場合のリスクマネジメントが出来ているデッキだからだ。


太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ)の効果。カウンターを1つ取り除く事で破壊を免れる。そして、異次元ツアーガイドは自身の効果で追放される事で破壊を回避」



 太古の(エンシェント)超魔導都市(スペリオルシティ):カウンター数 4→3



 ツアーガイド以外は、自身が有している破壊耐性により裁きの天剣の破壊効果を防ぐ。

 そしてツアーガイドは、自身の効果でフィールドを離れてしまうのだ。

 フィールド上のユニット全てを破壊するとは言うが、もうフィールドに居ないユニットを破壊する事なんか出来ない。

 そして、破壊効果処理が終わった後に何でもないかのようにしれっと、リカバリーステップに戻って来る訳だ。


 ……ツアーガイド、やっぱズルいな。

 プレイヤー死すともツアーガイド死せず、の異名は伊達じゃねえわ。

 この追放ゾーンに退避する効果、一切発動タイミング問わないからな。

 破壊効果だろうが戦闘破壊されそうになろうが、ツアーガイドに危害が及ぶならとっとと消える。

 効果が速攻分類なせいで、相手の行動見てからノーコストで退避とかいう完全後出しじゃんけん状態。

 まあ、攻撃されたタイミングでツアーガイドが消えて、他にユニットが居ないならこっちへの直撃コースになる訳ですが。

 実際、さっきまでそうなってたしな。

出したマナが次のターンに持ち越せるルールでも、普通ならマナゾーンを溜めて4ターン目でやっと出せるのが8マナという領域。

カードゲーム知識に乏しいと「まだ相手を1体も倒してないじゃないか」みたいな感想で止まるだろうが、カードゲームある程度やってる人ならば、今回やってる内容は滅茶苦茶えげつない事してるというのが良く分かる……


自軍のカードが1枚も減って無いにも関わらず絶望的な状況に追い込まれる、たまに良くある。

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