「I can't be 2」
なし
波山町役場 職員 折笠 愛(32歳)の場合
波山町役場には、
この人ありき。
いや、この人を語らないで
波山町役場は語れない。
なんだそりゃあ。
総務課「係長」の折笠 愛氏。
名前は、あいちゃん。
あのスポーツ選手ではない。
そして、まさかの男。
しかしながら
愛ちゃんという愛くるおしさからは
ほど遠く。
名ばかりに太っている。
とても太っている。
いやいや
すごく、太っていると表現したほうが
よいだろう。
巨体100kgは
軽く越えている。
ちょっとした相撲取り。
さらに、ありえないことに。
結婚しており、
奥さんは、超美人。
そこは、相撲取りと似ないでよろしい。
町役場への
婚姻届けの提出で
突然、連れてきた奥さん。
聞けば、大学の後輩とのたまう。
役場職員一同、驚愕。
そして
いまだに
語り継がれる
役場の七不思議の一つである。
その折笠先輩が
またでした。。
折笠先輩、
何度この手で、仕事を、事件を起こしてきたのです?
予告もなく
逃げられた。
その感でいっぱい。
師の満面の笑顔とともに、
バスは、中国人、関西方面からの観光客を
満載ですすんでいく。
「そりゃ、そうさ。
こちとら、夢の国への
旅行日程は、半年前から
決まってるってわけさ」
なぜか江戸っ子のように
暗くなった窓にむかって
ひとりつぶやく折笠氏
「これでよかったんだ。」
「さあ、愛子ちゃん。お父さんと
一緒に夢の国で、たのしみまちゅよおお」
やられた。
電話がそもそも怪しかった。
退庁間際のこの時間。
スーパープレミアム
フライデーで、多くの職員が退勤。
その間隙をつかれた。
ふだん、のほほんとしていて
考えてないようで、
悪事については、計算尽くしの折笠先輩。
まさに、やられた。
地団駄を踏むとは、まさにこのこと。
夏休み明けから
3か月ほど準備に準備を重ねてきた
プレゼン。
折笠先輩とともに
準備をしてきたプレゼン。
しかしながら
まあ、言ってみれば
発表者は私で、折笠先輩は
パワーポイントのスライドを進める役。
まあ、一人でもできるのだが
一人よりは、二人の方が
万が一に対応できるし、人数で押せるだろうという
安易な考え。
安心だろうでの配慮。
ぎりぎりまで
言わなかった先輩も
よもや、半年前からの
旅程をかえると家族にも言えず。
私に対しては、
夢の国のことを言い出せずに
いたのであろう。
お調子者の先輩ではあるが
家族思いの折笠先輩。
バリあがる口調ではあったが
これから結局のところ。
家族サービスを
楽しむのだろう。
庶務に急いで聞いたら、
先輩の休暇申請は
なんと1週間。
これから追い込みでの大事な時に
なんたる仕打ち。
「敵前逃亡は、戦時中なら、重罪ですよ」
先輩がよく言うセリフを
そのまま、あなたに返したい。
なし