「I can't be 」
「I can't be 」
~ ありえない ~って意味らしいです。
波山町役場 職員 上杉 翔琉(25歳)の場合
電気街からの
長いトンネルを抜け、
地下鉄を降りて地上に向かえば
その街はあった。
自身かねてから
訪れたい
行ってみたいと思っていたが
よもや、
このタイミングでくるとは。
近未来都市。
無機質なビルが連なる。
ビルだけを見ていると
方向感覚がマヒする。
かろうじて
葉を落とした街路樹が
街にあたたかみをあたえている。
いいアクセントだ。
再度、
ビルを見上げる。
しかしながら
ほんとうに
一人で来るとは
思わなかった。
よくまあ、たどりついたものだ。
それは、1週間前に突如、
起こった。
コンペをひかえた
1週間前の金曜日。
スーパープレミアム
フライデー。
首都高。羽田線。
高速バスがのろのろとすすんでいる。
トラック、ミキサー車、タンクローリー。
車の博物館。多種多様な車が並ぶ。
まさに、東京の物流を支える大動脈。
その大動脈も、つまる時がある。
隣のタクシーの客が、すごい勢いで運転手に
詰め寄っている。
さしあたって、会議に間に合うか?
ビジネスマンの関心は
その一点だろう。
はたまた、その隣には、真っ赤な外国車。
あなたしか見てない女子が
芸能人らしきイケメンを見つめている。
週刊誌ネタだ。
大動脈でありながら
いまや、その様子は
人生模様。
おもしろ4車線。
いや6車線。
「さあ、どの車がぬけだすのでありますでしょうか。」
とはいわないが、
ここで、タイミングよく
バスのアナウンス。
「本日は、金曜日。
これから、夕刻にかけて、高速道路の渋滞が
予想されます・・」
知ってるぜ。
みりゃあわかるよ。
言っているそばからの、この渋滞。
苦しいダメ押しか。
おもむろに携帯を取り出す。
どうせ、短い通話だ。
バスの車内だろうが
四の五の言わず電話する。
「あー、上杉。
すまん。すまんのすまんちゃい。
知ってたと思うけど。
おれっち、これから夢の国だから、
あとは、あんたにおまかせ、おまかせ、かせいでおま」
「えっ、なに、なにー、聞こえない、きこえない・・・」
「電波状態がわるううう・・・」
一方的に電話を切る。
若干どころか
かなりのくさい演技的にフェードアウト。
なし




