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きっと人はそれを『運命』と呼ぶ  作者: 緋風 希望
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休日の過ごし方

八王子方面から都内へと向かう電車に揺られ、澪はボディバックを前面に出し、座席に座りながら目を閉じながら音楽を聞いていた。


仕事の疲れが少し残っているようで気だるさもあるのだが、好みのブランド店が割引セールを開催するらしい。


営業ということもあるのかもしれないが、店長やエリアマネージャーも仲良く接することができ、既に何度か酒の席に着いた中だ。


そこそこ値段も張る服だが、仕事着はスーツである。


外を出歩くときくらいは、ちょっと高めで長持ちしそうなものを新調しておきたいということもあった。


何より、セールの期間にいけるチャンスは、この日くらいしかなかったのだ。


今日くらいはのんびり過ごそう。と澪は思う。


ふと腕時計に目を配ると、視界の端で老婆が見えた。


腰も曲がり、吊革に掴まるのですら一苦労で、足元がふらふらと宙に浮くかのようにしている。


誰も、見えない振りをしているかのようだった。


そこに誰もいないように。


関らないように。


自分たちよりも前の世代があるから、自分いるのだ。


周囲の人を大切にしなさいという祖父母の教えは呪いのようにすら思えるのだが、澪にとって悪い気はしていなかった。


だから、かもしれない。


澪はたまらず席を立ち、何で気づかなかったんだと自分を恥じ、イヤホンを外しながらその老婆の下へ向かうとなるべく自然を装い、老婆へと声をかけた。


「あの、席空きましたからどうぞ?」


「あそこは先程、貴方が座っていらっしゃったのでは?」


「健康のためにも立たせてください」


「お疲れのようですが……」


「こう見えても、まだまだ元気ですよ!」


澪は腕を曲げながら微笑むと、老婆は告げるのだ。


「ありがとう。あなたは優しい方ね」


「いえいえ、とんでもない」


老婆がゆっくりと歩みながら席に座る。


その動作を目に入れた後に、澪は、イヤホンをつけて予定を練り始めた。


仕事のオフには、都内でウィンドウショッピングを楽しんだり、お気に入りのカフェでコーヒーを飲みながら読書したり、勉強したりする。


澪はそれで十分に満足していた。


田舎から出て、都会の喧騒にもまれ。


人の良いところも、悪いところも見えてきた。


そんな環境に慣れ親しみ、数年もすれば自然と、自分が有意義に感じることもできてくる。


無駄使いも抑えていたからこそ、自分に褒美の一つや二つほしくなるのも当たり前のことだ。


今日は少しだけ、散財しようと思う。


窓の外へ目を向ければ、空を隠すように雑居のビルが顔を覗かせ始めた。


その奥に見えるのは、雲一つない快晴。


何かいいことがあるかもしれない。


気に入る服が見つかるだとか、アクセサリーがいいのあるとか。


澪はその景色を眺めながら、どことなく心を躍らせていた。

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