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すべてへ  作者: 気象情報
14/15

暗転(Water vein)

 気がつくと、神社の隅の大きな木の下で眠っていた。

 目を開けると、笑顔で俺を送り出してくれた五人が、俺の顔を覗き込んでいた。


「気がついたか?」


 貴司の声だ。

 我に返って、立ち上がる。


「三時間も経ったのに帰らないし、携帯にも出ないから、みんな心配して来たのよ」


 灰原が途切れ途切れにそう言って、あとはみんな黙ってしまう。



 まるでずっとずっと、夢を見ていたみたいだった。



 でも、何よりみんなの表情が、夢なんかじゃないと教えてくれた。


 澪は確かに、そこにいたんだと。

 澪はもう、俺のそばにはいないんだと。



 さっきこの場で見たすべてと、澪から聞いたすべてを話した。


 貴司と灰原はうつむいていた。

 亮はじっと空を見ていた。

 対馬と未来は静かに、泣いていた。



 誰も俺の話を、疑おうとはしなかった。



 澪はもういない。呪いはきっと、解けたのだろう。

 それは澪が望んでいたことだ。

 でも、最後に呪いがまた誰かを傷つけたことは、疑うべくもない。


 澪は、救われたのだろうか。

 俺は澪を、救えたのだろうか。


 ひと筋だけまた、涙がこぼれた。


 ◆


 どうやって帰り着いたのかよく覚えていないが、気がつくと自分の部屋にいた。

 あふれてくる涙はいたずらに温かく、それは自分をなぐさめているようでもあり、

 でも、あざ笑っているようにも思われた。 

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