暗転(Water vein)
気がつくと、神社の隅の大きな木の下で眠っていた。
目を開けると、笑顔で俺を送り出してくれた五人が、俺の顔を覗き込んでいた。
「気がついたか?」
貴司の声だ。
我に返って、立ち上がる。
「三時間も経ったのに帰らないし、携帯にも出ないから、みんな心配して来たのよ」
灰原が途切れ途切れにそう言って、あとはみんな黙ってしまう。
まるでずっとずっと、夢を見ていたみたいだった。
でも、何よりみんなの表情が、夢なんかじゃないと教えてくれた。
澪は確かに、そこにいたんだと。
澪はもう、俺のそばにはいないんだと。
さっきこの場で見たすべてと、澪から聞いたすべてを話した。
貴司と灰原はうつむいていた。
亮はじっと空を見ていた。
対馬と未来は静かに、泣いていた。
誰も俺の話を、疑おうとはしなかった。
澪はもういない。呪いはきっと、解けたのだろう。
それは澪が望んでいたことだ。
でも、最後に呪いがまた誰かを傷つけたことは、疑うべくもない。
澪は、救われたのだろうか。
俺は澪を、救えたのだろうか。
ひと筋だけまた、涙がこぼれた。
◆
どうやって帰り着いたのかよく覚えていないが、気がつくと自分の部屋にいた。
あふれてくる涙はいたずらに温かく、それは自分をなぐさめているようでもあり、
でも、あざ笑っているようにも思われた。




