山から現れた『海賊』※戦略図 追加
おくれつちまつた。
目標が早くも崩壊。それでも、僕は気にしないつもり!
なぜなら、今度テストがあるので2週間ほど音沙汰ないかもしれないから!
運河には3隻の輸送船が浮いている、ただ浮いている。
ひとつの輸送船はもうすぐ火だるまになるほど燃えていた。
火に包まれた乗組員が一人、二人と運河に落ちる。
ひとつ輸送の船は複数の穴が空いて浸水しているのか傾いていた。
乗組員は運河に飛び込むが誰も助けてはくれない。
ひとつの輸送船には大きな船が横にくっついていた。
大きな船から人が輸送船に乗り込む姿が見える。輸送船にのっていた者はそれを止めようとしているらしいが勢いを抑えられていない。
「凄いよね、アラン。僕たちじゃできない。」
「そう・・だな。俺もここまでとは思ってなかった。」
そして、2隻の輸送船は大きな音をたてながら運河の底に沈んだ。
/2時間前/
「アラン。やつらは船着き場に逃げたみたい。どうしよっか?」
「やはりな。おそらく増援なりなんなり来るんだろうな。一応、準備はしてある。俺たちは見物するだけでいいのさ。」
「え、一般兵だけで攻めさせて自分たちだけは見物ってことー?ひどいやつだねぇー。ソンナヤツダッタトハ・・・。」
「誰がそんなこと言ったんだ。俺はあるところに協力を依頼した。さっき合図をだしてきたからもう少ししたら始まるだろう。戦場を見やすいように運河を見渡すことのできる丘の上に陣を張るぞ。」
「了解了解。なにがあるか教えてくんないんだね・・・ケチ。」
「・・・。」
船着き場
「うぅー、船着き場まで逃げてこれたのはいいけど、船が一隻もないよー。」
「小舟の一隻もないとはどうなっとるんだ!?」
「今の司令官って誰も知らないの?」
グランスタ兵は混乱していた。殺されないように死物狂いで船着き場まで帰ってきたのにまだ船は来ていないどころか一隻もない。今の司令官もだれかわからない。もはや軍ではなく、烏合の衆といってもいいくらいまで弱体化していた。
「ん?小舟が近づいてくるぞ・・・。」
「おい!あの旗はグランスタ王国のものじゃないか!」
「助かった!帰れるぞぉー」
「こちらはグランスタ王国東運河輸送艦隊である!そちらはジルカバン司令の軍であるな。これより3隻の輸送船が入港する。少し離れていろ。」
3隻の輸送船は無事に入港した。
艦隊の提督は敗残兵から事情を聞き、撤退を決意する。
「まさか、このような地で我らの軍が負けたとはな。こちらは1000の兵を引き連れてきたが貴様らの軍に加わったところでトーラニアの軍には敵うまい。撤退だな。」
「申し訳ありません・・・。こちらの司令官、副官 共に行方が知れませんので指揮をとっていただけますか?」
「承知した。では、直ちに動いてもらう。」
丘の上
「あーあ。輸送船に敵が皆 乗りこんじゃうよ。逃がしていいの?アランの言ってた協力者の姿はまだ見えないけど。」
「焦るな、ギルス。ほら、上流の方からなにか見えるだろう?」
船着き場
三番艦と二番艦に500ずつ兵を乗せた、1番艦は残った物資を積み、あとは出港するだけだ。
しかし、そこへ。
『提督!敵船発見、戦艦のようです!旗は赤、海賊です!』
「海賊?ここは運河だぞ!どこの船だ、戦艦ならばトーラニアか?しかし、そこまでの余力はないはず・・・。」
そのとき、遠くから轟音が聞こえた。
数秒すると、まさに出港しようとしていた三番艦の横っ腹に穴を二つ空け、手前に一つの水しぶきをつくった。
「砲撃!?まずい、やつらは最低三門だが、こちらには一門ずつしか砲を積んでいない。しっ、沈められるっ!」
『三番艦、二番艦が撤退しつつ、応戦するもようです!』
「こちらも早くしろ!幸い、やつらの砲弾は火薬が入っていないようだ。こちらは火薬弾を撃て!」
すると、また轟音が響く。
次は二番艦に甲板に一つ、横っ腹に2発命中。
弾は爆ぜた。
二番艦の甲板は吹き飛び、内部も少なくない被害をだした。
「あ・・・。やつらは火薬弾も撃てたのか・・。」
(勝てない、全滅だ。どうすればいい!)
『二番艦沈黙!消火に移っています! あぁっ!!・・火薬に引火したようです。炎は止められる範囲ではありません・・・。』
「まだこちらは撃てんのか!?」
『今、準備終わりました!撃ちます!』
近くから轟音が聞こえた。三番艦が撃ったらしい。
すぐにこちらも撃った。結果は・・・。
『うっ。外しました!弾が届いてません!射程外です!』
「やつらは我々よりも長く精度の高い砲を持っているのか!これではなぶり殺しではないか!」
遠くから轟音が響く。
また、三番艦。今度は火薬弾ではなかったが船の下部に命中。
浸水が始まっているようだ。こうなっては船は助からない。
提督はハッとした。
「・・・なぜこの船は狙われない。一番近い位置にいるのになぜ撃たない。なぜなんだ・・・。」
『敵船!速度を上げました!こちらに向かってきます!』
「なに?・・・まさか!そっ、総員!白兵戦用意!おそらく敵は、敵は乗りこんでくるぞ!砲は射程に入り次第撃て!」
遠くで轟音、しかし一発だけだ。
こちらの甲板の一部が爆ぜた、当たったのは砲がおいてある位置の下部。脅威的な精度である。
「接近を止められるすべがなくなってしまった。終わりだ・・・。」
その後、けりはついた。
一方的な勝利。戦利品は多数の乗組員、そして輸送船一隻。
戦艦とギルスの軍は船着き場に集まった。
「え、あの人たちの代表と僕が対談するの?」
「そうだ、こちらの代表は国王であるお前だからな。」
「面識のあるアランがやればいいのに~っ。」
「ほら、むこうの人が来たぞ。失礼がないようにな。」
「わしがこちらの代表、頭領であるバンキン。ギルス王であるな。わしらははぐれ者の集まり故に敬語をうまく使えぬ。失礼があるかと思うが我慢していただきたい。」
「よい。(えーっと。)バンキンと申したな。アラン王補佐からまだ話はあまり聞いていないのだ。(うーんと。)そちらがどういうものか教えてはくれまいか?」
「分かりもうした。
我々は元はグランスタの下級軍人でした。辺境へ、辺境へと位の低く礼儀のなっていないものはそれ故に左遷されました。
能力などに関わらず位と格式を重んじるようになっていった中央政府に不満を抱いた我々は一斉蜂起を謀りました。しかし、時はまだギラーヌス王が現役の時代、十数万の軍勢では王の近衛兵団には敵わず敗北しました。
敗北した者達はは散り散りになり、討伐され、運良く逃げ切った我ら3000の兵たちは運河の上流にて集落と砦をつくり、再起を謀っていたのであります。
最初のうちは物資が不足するようになったので船をつくって運河で海賊行為を行っていました。そのうち、付近の民のあいだでこう呼ばれるようになりました。
`河賊´もしくは`河寇´と。
最近は山の異民族と結び付き、食料や物資の提供の対価として技術や鉄や鉛などをもらっている。
こうして、戦艦までも生産出来るようになった我らはトーラニア独立の噂を耳にしてアラン殿と話をつけて協力したのです。」
「そうだったのか・・・。協力、感謝する。これからは我々のもとで働いてくれるのか?」
「待て、ギルス。」
「ギルス王の申し出はありがたい。しかし、我らは賊。賊と結びついた国家など民やグランスタの連中に笑われてしまいます。だから、今回の件も偶然上流から降りてきた河賊が物資を狙ってグランスタの船を襲ったとしてほしいのです。しかし今後、トーラニアからの協力要請があった場合は受けさせてもらいます!よろしいですか?」
「そう・・・か。今回はご苦労。これから、頼りにしているぞ。」
ギルスは背を向けて陣地に帰った。
「バンキン。泣いているのか?」
「うう、すいません。アラン殿。男の涙などみっともない・・・。ですが、賊になってより他のもの、ましてや高貴なかたにあそこまでいたわっていただいたことは今までありませんので(ずずっ)。あぁ、命を懸けて我らはトーラニアに尽くします!!」
「その言葉、忘れるなよ・・・。」
アランも陣へと帰っていった。
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数日後
「ソート様、見てください!街です!帰ってきました!」
「おぉ、や・・っと、帰って・・きたのか・・・。」
「ソート様!?しっかりしてください!もうすぐなんですよ!」
「だっ、大丈夫だ・・。荷車を進めろ・・・。報告しなければ・・・。」
この日、グランスタ王国グアニス領に討伐軍の敗北という驚きの知らせが瞬く間に広まった。