戦いは数だよ パート2
遅くなりましたー。
土日に間に合わなかった、ごめんなさい。
しかーし、おかげで大分、内容が分厚くなったので僕的には良かったんじゃあないかなぁって思ってます。
ギルス サイド
ギルスは急に少なくなった敵兵に疑問を感じ、兵を一度下げた。
「なにかしてくると思ってたけど・・なるほど、200程度を残してあとは撤退しようとしているのか。向こうは玉砕覚悟だろうけど、さすがに1500の兵は止められないよ。」
サッと右腕をあげる。
突撃準備の合図だ。こないのならこちらからいかせてもらう。
ソート サイド
村の正面には1500の敵兵が横一列に並び、今にもかかってきそうだ。物見によると後方ではもう少しで敵の包囲を突破して撤退することができるようなので、我々がやつらをひきつけなければならない。
250の勇気ある兵士たちを犬死にさせるつもりはない。
犠牲は責任者の俺の命で十分だ。
「兵隊長。今から俺はやつらに決闘を申し込む。のってくれなかったらそのときはそのときだが、のってくれた場合俺は死ぬまで闘う。お前たちは俺が死んだあと、降伏しろ。別にお前たちが頼りないわけではないが、やつらへの抑止力として今ここにいてもらっているだけだからな。」
「ソート様、この状況で決闘なぞ・・・、我々も十分に戦えます!その気持ちは全員が同じなのです!」
「・・わかってくれ。これはジルカバンを止められなかった俺の責任なんだ。それに時間も稼げる。上官命令といえば、俺を通してくれるか?」
馬にまたがり、村を離れる。右手には槍。
今思うとこの村の位置はやつらにとってとても都合がいい。
左は運河、右はトーラニア内地、正面と後方から挟み撃ちが成功すると右に逃げるしかなくなる(ジルカバンはまんまとはまったわけだが)。村人だって死体や血痕の1つもないのはおかしい。
(まんまとはまったわけか。完敗だ。トーラニア、侮れん。もっとも俺たちが馬鹿だっただけかもしれないが。)
「こちらは軍の責任者、ソートである!そちらに決闘を申し込む!」
ギルス サイド
驚いた。何いってんだろ、あの人。
兵たちが騒いでいる。確かに、今更何を!という感じ。
そうだけど、面白い。受けてやろうじゃない。
上げた手はいつの間にか下がっていた。
「受けよう。千人組隊長じゃなくて、僕自身がでるよ。」
兵たちはざわつくがすぐにサササっと道を開ける。
馬の足をやつに向ける。右手には槍。
「僕の・・オホン、我が名はギルス!その決闘、受けてたつ。
さぁ、かかってきな。」
「ギっギルスだと!?王と同姓同名か?まぁ、いい。決闘を受けていただき感謝する。では、こちらからいかせていただく。」
(王が直接出てくるはずがない!)
両者は槍を構える。
みた感じ、構えはいいね。けっこうなやり手だ。うちの千人組隊長を上回るかもしれない。
タッ
向こうの馬が駆けた。
ふふふ、始まりだ。
ガキィィィィン
両陣営に槍と槍とがぶつかる音が響いた。
ソート サイド
ガキィィィィン
「くっ!」
俺の渾身の一撃をあんなに簡単に止めやがった。
やつは強い、たった一回でわかるほどに。
「はっ!せいっ!でやぁ!」
キンッ!ガッ!ブン!
最後に避けられた。勝てる気がしない。それでも!
「強いね、君。でもまだまだ練習が足りないよ。だんだん焦ってきてる。ちゃんと相手をよくみなきゃ!」
ギルスは思いっきり槍を振る。
(うっ)
ガキィィィィィィィィン ミシミシ
「なっなんだこの力は!?うぐぐっ・・」
重い一撃、槍が軋んでいる。
まともに受けたらすぐに体は真っ二つだ。俺より体は細そうなのにどこにそんな力があるのか。
「よく 止めたね・・。これでも 本気、だしてるんだけどなぁ・・。ぬぬぬ~っ。」
(まだ力をいれることができるのか!?くっ!)
バキィッ 「やっ、槍が・・・!?」
「もらったよ。」
ズシャァ ソートの体をギルスの槍が縦に切り裂く
ソートは馬から崩れ落ちた。
ギルス・サイド
斬った、と思ったけど相手は死なない程度の傷を負っただけ。
「痛いよね。運よく致命傷は避けてるみたいだけど、とどめはさせてもらうよ。君の残った兵たちも降伏するなら手は出さない。それをお望みなんでしょ?」
「あ・・あぁ。うぅ・・兵をたの・・む。」
ソートは気を失った。
「大丈夫、わかって・・『うおおおおーっ!!敵を殲滅せよぉぉ!』・・げっ、かかってきた。」
敵がこちらにむかってくる。
さすがに200以上を一人ではさばけない。
(囲まれたら終わりだなぁ。さっさと戻るか。)
「ソート、だったね。部下のおかけで助かったその命、大切にしなよ。」
(僕の1500の部隊から逃げきることができたらだけど。)
時間を少しさかのぼり決闘前
「兵隊長どの!ソート様をこのままいかせてよろしいのですか!我々はただ見ているだけなんて・・・」
「いかせてよいわけはないだろう。しかしソート様の命令を無下にすることはできん。軍である以上、上官命令は絶対なのだ。」
「ならば、私は軍をやめます。これなら問題はないでしょう。個人であの方を助けにいく。」
「スル!!・・・いや、いい考えかもしれん、助けにいけないこのジレンマをなくすためには。皆は同じ意見・・なのか。」
「私は軍に入ってからあの方にはお世話になっております!」
それに 俺も僕も私も と声が上がる。
「・・・わかった。では、我々は今から、グランスタ王国から離反する!しかし、正面にはこれから我々の驚異となるかもしれん敵がいる。グランスタ軍の将校が決闘をおこなっているようだが関係ない!正面の敵を殲滅せよ!」
おおおーっ!!!
「それと、スル。お前は軍に残れ。」
「えっ、なぜです!?私も戦わせてください!」
「お前はこの中で一番若く、未来がある。それに我々が軍を抜けた今、ソート・・様をお助けするものが必要だ。お前が国へ送り届けるのだ。さぁ、行け。お前の安全は命にかけて守る。」
「兵隊長どの・・・、わかりました。その任務、必ずこなして見せます!お元気で!」
スルは馬を全力疾走させ、ソートのもとへと急ぐ。
「我々もいくぞ!」
およそ250の兵士、いや 元兵士たちは前へと進む。
ギルスは自軍のもとへと戻り、突撃を指示した。
(ソート君、残念だけど君の軍はあくまで抵抗するようだ。降伏は認められないな。)
1500の兵は数にまかせ、包み込む様にして敵を潰そうとする。
しかし、包み込めない。
250の猛者は狂ったように剣を振る。目があっただけでおじけづく、そんな迫力で奮戦する。
腕が半分に、足が動かなくても剣は振るう。
「ソート様!早くこちらへ!」
スルはソートを見つけると自分の馬に乗せ、川の方向へと逃げる。もちろんそんなものをギルスの軍が見逃すはずはない。
「おい!一人で逃げようとしてるやつがいるぞ!チャンスだ、殺せ~っ!」
50程がこちらに気づいた。
「弓を用意してやつを・・うげぇっ!?」
兵隊長たちが嵐のようにそいつらを蹴散らした。
「スル!いけーぃ!! ( はっ) ぐはぁっ! ぬ、ぬぅぅん!!」 パキッ
兵隊長は横から槍で突かれたようだが、槍の持ち主を引き寄せて首の骨をへし折る。
スルは止まらず、走り抜けた。
その間、いくつもの仲間の悲鳴が聞こえるがスルは1度も振り返らなかった。
5分ほど走ると川が見えた、ボロい小舟が1隻だけ放置されている。
「いっいけるか?乗るしかないのか・・。」
馬を乗り捨て、小舟に乗る。
辛うじて舟は川に浮かび、対岸へと進む。
しばらくすると周囲には霧がたちこみはじめた。
逃げるのにはおあつらえ向きの気候である。
「ううっ ス・・スル?こ・・こは?なにが・・・あった。」
ソートは目を開け周りを見る。
(霧が深いな、舟の上?運河か?)
傷は応急措置程度ですまされている。
(動かない方がいいか。まだ傷口は塞がっていないようだ。)
「ソート様!気がつかれましたか!ここは小舟の上です。グランスタ王国の帰路についています。あっ、増援が来るはずですのでそちらに向かいましょうか?」
妙に喋る。スル、お前はそこまでおしゃべりではないはずだ。
「スル、なにがあった。」
「つっ・・・、兵隊長ら249名が軍を裏切り!それを察知した私がソート様をいち早く保護し、ここまで逃げてきました!裏切り者たちはトーラニア軍と衝突!その後は不明です!」
「・・・そうか。スル、ご苦労だったな。」
「(!!) ううっ・・ううぅ・・・」
スルは後ろを向いた。
肩がよく揺れている。
(うんと泣けばいい。お前が泣いてくれねば俺が・・)
ソートは限界の目を拭い、そしてとじる。
すると、どこからかなにか聞こえてきた。
ザザァ ザザァ
「はっ!!スル!伏せろ!」
「えっ?あっ、はい!」
泣き面のままスルは慌てて伏せる。
(何だ?上流からなにか来る。くそ!霧が濃くて見えない!)
ザザザァ ザザザァ
うっすらとギリギリ姿がみえる距離になるとその正体が判明した。大きな影、少し離れたところを通っているものの大きさはよくわかる。
(大型船!大砲・・を積んでいる?あれは戦艦とでもいうのか!?トーラニアの水軍か?いや、さすがにそこまで余力はないはず。あれは一体・・・。)
大型船(戦艦?)はこちらに気づかずに通りすぎていった。
「ソ、ソート様今のは・・?」
「わからない。ただ、下流に向かっていた。もしかすると、もしかするかもしれん。増援の方向ではなく、対岸へ向かえ。俺は寝る。」
「はぁ、ソート様がおっしゃるのならそうします。」
ギルス・サイド
「ここの敵は殲滅したね?まさか、250の敵に手こずるとはねぇ。アラン、やっぱり数のほうが大事かな。っとアランはいないんだった。そこの君、どう思う?」
「はっ、今回こちらも最後に200ほどの犠牲がでております。ですので、ある程度の質は求めるべきかと。」
「そう思うかい?まぁ、それは人それぞれだ。ところで向こうの戦況は?」
「敵の敗残兵は包囲を破り、船着き場のほうに逃げたようです。その過程で敵は1000程失っているので、残りは1000と思われます。現在、そちらの兵たちには態勢を立て直させていますが追撃いたしますか?」
「いや、いいよ。アランが楽しみにしとけって言ってたからほっとこう。船着き場周辺を見渡せる丘があったでしょ?そこに兵は布陣しておこうか。」
「はっ、それでよろしいのでしたら。」
トーラニア 内地
「はぁ、はぁ、はひーーっ。歩けん!誰か手を貸せ!」
「ジルカバン様、辛抱してください。山をひとつ越えなければ逃げることなぞ出来ませんぞ。」
「ちくしょうー、山登るのに馬をおいてこなけりゃよかったぜ。山を越えれば迂回して船着き場までいけるんだな?」
「はい、間違いなく。あっ、山道です!まともな道がありますよ!これにしたがっていけば山を越えられるはずです。」
「5人の俺様の従者たちよ、よく俺様についてきてくれた!感謝するぞ。助かった日には親父に頼んで恩賞をやろう。」
「ははは、楽しみにしておりますぞ。」
「おや?あれは地元の方ではないか?ちょうどいい、あとどのくらいかかるか尋ねてまいります」
「もし、ここらの方かな?よろしければ我々に麓まであとどれほどか教えてほしいのだが・・。」
「いいですよ、ちょいとお待ちください。ツレがおりますので。」
口元がニヤリとつり上がるのを従者は見逃した。
実はこの老人はここらの者ではない。
「おーい、でてきなさいー。尋ね人だぞー。」
「「「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」」」
「えっ、うっうわぁぁ!ぐえっ」
草むらから10人程、竹槍をもった村人がでてきた。
そう、運河近くににあった村の村人である。
道を尋ねた従者は最初の犠牲者になった。
「なっ!お前たち我々をグランスタのものと知ってのことか!」
「しってますよぉ~。でも、アラン様が村を提供して、落武者狩りに参加するかわりに王都近郊に住まわせてくださるなので。」
「ひぃっ」「死にたかねぇーよー」「ぎゃーっ」「お助けー」
「おっお前たち、何処へ行く!俺様を守れ!逃げるな!」
バタバタと従者は散り、その場にはジルカバンが残った。
「うーん?なかなか位の高そうな方が残っとりますなぁ。やつを狩れば、我々の村もこれで安泰じゃのぅ。へっへっへ。」
村人たちは竹槍をジルカバンに向ける。
「やっやめろ!俺様はぁーーっまだっ死ぬときじゃないんだよ!ソートに!ソートのやつに復讐するために!俺様はまだ死ねないんだよぉーーーーっ!!」
「おまえたち、遠慮入らんよ。」
「うっ うっ うわぁぁぁぁぁ(ズシュリ)かはっ」
グシュッ グシュッ
トーラニア王国の、運河の方面から内地へ向かうこのルウム山道。その道は5人の血で所々赤く染まった。特に1ヵ所だけは数ヵ月たっても赤いままだったという。
運河の上流というのは山脈と接している部分のところってことにしています(脳内設定)。
トーラニアが運河と接している部分が少ないので地理的には考えにくいかもしれませんが結構ながーいです。
山脈じゃないところにも山はあります。