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二人の国   作者: 扇子
始まり
18/26

トルギス市場シリーズ 〈最初のお買い物〉

初めての日常回。


前の話から段落をつけてみました。

あと1つ変化がありますが、それは内緒です。



番外編ですので本編には直接的な関わりはないです。

 トーラニア王国の首都トルギスは、城壁城門付近ではまだ開発途中で何もないが中心部にいくにつれ、建物と人の密度が増してゆく。特に中心街にある大広場おおひろば付近の活気は他とは比べ物にならない。


 大広場から伸びる道のうち、3本の道には週に1度だけ市場ができる。(これはグアニス領でトップ3に入るほどの規模であったが、独立した今は以前よりも商人の出入りが多くなったため、さらに店の数や商品の種類が増えた。)


 人々からはいつの間にかトルギス市場と名づけられた。


 市がある日は他の街から商人が消えたという話からもこのトルギス市場の発展のしようが分かる。


  露店から日用品まで様々な店が立ち並ぶ。どの店も客足が絶えることがなかった。


  中には変わったものを売っている店もある。



  怪しいものや面白いものを売っている、と噂を聞きつけ男は動いた。



「うっわぁ~。すごい人だかり!これは面白そうじゃないか!」



  男は顔の半分を隠すように布を首に巻き、ローブを羽織っている。見た感じみすぼらしいが雰囲気はいろんな意味で只者ではないと感じる。

  もちろん、言動からしてそれは国王ギルスであった。



「へへっ、アランに脱走したのがばれる前にいろいろと見て回らないと・・・。」



  なんとギルスは仕事をサボって遊びに来ていたのだ。


 ―――――――――――――――――――――――――――――

 王の屋敷



  ドンドン ドンドン


「ギルース!おい!ギルス!いないのか!?」

(おかしい。あんな書類に数時間もかからないはずなのに。)



  書類関係をギルスにやらせると居眠りしたりするだろう。

  なるべくギルスのところにはいかないようにしているが、それでも一部はやってもらはないといけない。



「せぇい!」


  バン


  アランは仕方なくドアを蹴破った。


  手荒だがギルスなら問題ない、と思ってのことである。



「おい!いい加減に・・・あ゛?」



  机の上には手がつけられていない山積みの書類と


 ‘行ってきます。探さないでください。ギルス’


 という置き手紙が置かれていた。



「・・・全警備兵出動。市場だ、逃がすな。」



  そう命令して自分は山積みのギルス(・・・)の仕事を消化する。ギルス(・・・)の仕事を・・・。


 ―――――――――――――――――――――――――――――

 トルギス市場 第1区



  屋台を片っ端から味わっていく。

  軍資金はそこらの路地にいるチンピラどもから巻き上げているので尽きることはない。



「う~ん、いいにおいだなぁ。これは・・・うまい、うますぎる!おばちゃん、もう1つちょうだい!」



「はいよー。・・・ところでお兄さん、見慣れない顔だね。旅の人かい?」



(こいつ、王を見慣れない顔だねって言ってくれたよ。僕ってそんなに顔知られてないの!?アランが羨ましい・・・。)



 未だにアランだけが視察のときにいつも「アラン様ー」なんて言われてる。僕のときはそんなに言われない。



 僕は?こっちのやつよりも偉いんだけど?おーい。



「そうそう、旅人。それにしてもいいね、ここの食事は。他にもいろんな店を回っていこうかなと思ってるんだけどおすすめないかな?」



「んー、食べ物関係は第1区に集中してるけど、やっぱり市場といえば買い物よね。第2区はそういう店がいっぱいあるから気になる商品が見つかるかも。おすすめは第3区との間にある発明家の人のお店、変わった商品が置いてあるわ。」



「ありがと、また来るよー。」



「はーい、是非ね。」



 ギルスはさっそく第2区へ向かった。


 ―――――――――――――――――――――――――――――

 先程の屋台



「そういえばさっきの人、どこかで見たことあるような・・・・・誰だったかしら?」



「すみません。」



「あ、はい・・・って警備兵の方!?わっ私が何か・・?」



「いえ、ちょっと人を探しているんですよ。えーっと、アラン様によれば・・・黒髪で眼がオレンジか黄色、顔はぱっとしない馴れ馴れしい男。こんなの見かけませんでした?」



「あら?その人ならさっき来ましたけど。たぶん第2区にいるはずです。」



「本当ですか!?ありがとうございます!では、これで!」



  警備兵はどこかへ去ってしまった。



「あー、発明家のお店に向かったって行った方が良かったかしら?それにしても一体何者なのよ、あの人。」


 ―――――――――――――――――――――――――――――

 トルギス市場 第2区



  むむむ、ここまで来て急に警備兵とかが増えた。

  咄嗟に裏道に隠れ、表の道をこっそり覗く。


(これは・・・アランにばれた。どうしよ。)


  また増えた気がする。

  表の道を歩くのはもう無理だろう。

  時間がたてば裏道も手が回る。



(発明家の店に行ってみたいけど、第2区が一番に警備兵の多い地点となっているのを見るに情報が漏れた可能性が高い。)



「・・・裏口のある寂れた店で難を逃れよう。」



 ついさっき拾った市場の地図を見るとこの近くに喫茶店や宿屋があった。



(ここらは立地条件が悪い。おそらく人があまりいないのはこことここの店だ!)

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 第一候補 喫茶店



「あ。」



  着いた喫茶店の店内はがらんとしていた。


  客はいない。



 が、机も椅子もカウンターもない。


  マスターも従業員も何もなかった。



「あのー、この地図って間違ってるんでしょうか?」



 座り込んだホームレスの人に聞いてみる。



「んんー?あんたこりゃあ、一昨年のじゃねぇか。」



 笑えないオチだよ。まったくさぁ。


 ―――――――――――――――――――――――――――――

 実は本命、という名の第二候補 宿屋



「あ。」



  着いた宿屋もがらんとしていた。


  客はいない。


 が、机も椅子もない。カウンターも・・・これはあった。


  マスターも従業員もいない。



「あぁっ!ここもなのか!?」



  そういえば裏口の扉もなかった。

  開放感のあるのが売りの宿屋と信じたい。



「なんで潰れてんのー!!」



「うちのどこが潰れてるって?」



  なんと、二階から強面のがたいのいい怖いおじさんが降りてきた。宿屋の店主だろう。



「あっ。ごめんなさい。やってたんですか。」



「年中無休だよ、うちは。客か?」



「えっと、その~、ひと休みしたいな~って。」



「そうか・・・。料金は後払いだ。ひと休みなら銅貨15枚程度でいい。二階の1号室で休んでけ。」



「しっ失礼しまーす。」



  階段を上がりきったところで下から物音が聞こえた。誰か来たらしい。


(足音だ!もしかして警備兵かな!?)


  そっと耳をすますと声が聞こえる。



「おっと、この店やってんのか。」



「そうだが。何かようか?」



「いや、人探ししてるんだが。」



 うーわ、僕目当てじゃないか。



「黒髪で眼がオレンジか黄色、顔はぱっとしない馴れ馴れしい男・・・を探しているんだが知ってるか?ホームレスによると、ここらにいるそうなんだ。」



 おい、なんだその特徴の後半は。



 ヤバイぞ。逃げなきゃ・・・って、二階じゃあ逃げ場が!

 飛び降りようにも窓が小さすぎるし・・・・・詰んだ。



「・・・黒髪で眼がオレンジか黄色で顔はぱっとしない馴れ馴れしい男か。」



 ああ、もうちょっと忍んで来るんだった。

 会う人会う人に情報が漏らされてる。



 ごめんなさい、アラン。



「知らねぇなぁ。他をあたってくれ。」



 えっ?



「そう・・・か。」



「第一にこんな潰れてるように見える宿に来るかよ?まぁ、来たら教えてやるよ。」



「わかった。邪魔した。」



 警備兵はすんなりと去った。



「主人!」



 僕は階段を駆け降りた。



「どうして、僕を!?」



「馬鹿野郎、男が逃げてんだ。何か理由があるはずだろう。それは良いことであるのか悪いことであるのか、これを聞かずに差し出す卑怯なやつに俺はなりたくねぇ。」



「主人・・・。」



「それに俺は顔がぱっとしない馴れ馴れしい男を知らん。お前は少なくとも俺よりはカッコイイ顔だぜ?」



「うわ~っ、主人!ありがとう!ありがとうございます!うぅ、主人こそ男の中の男、カッコイイ漢だ~っ。」



「よせやい。さっ、ゆっくり休んでけ。ここはお前の隠れ家だ。逃げている男からは金はとらんでおく。好きなだけいたらいい。」



「あぁ!あなたは今まであった中で一番素晴らしい人だよ!」




 しかし、この状況に僕は油断していた。



「再度失礼しまーす、1つ言い忘れていたことが・・・」



「「あっ」」



 その後、アランはギルスに終始、笑顔のまま対応・・したという。

宿屋の主人は僕がカッコイイと思う漢が書かれています。

ラストシーンといい少し抜けているところがポイントです。

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