河賊と異民族 その①
もう今度から日曜日投稿にします。
間に合わぬ・・・。
「おぉ!ようこそいらっしゃいました!どうも、案内役のジッドです。バンキン様は今、お留守ですので私が。」
僕は今、運河と接する山の麓の河賊の本拠地に来ている。
ほんとはアランも来る予定だったんだけど、ソゥとかいう人のために向こうで留まるそうだ。
「ありがとう。しかし、凄いね。ここらの地形をうまく利用している。そこの洞窟に船を隠してるんだろ?」
指を指した先にはとてつもなく大きな洞窟がある。ここからは中は見えないがドックやらで設備はばっちりらしい。
「はい。ここに逃げてきたときは驚きました。なにせ船を数隻隠せるほど大きく広い洞窟、周囲には木々が立ち並び隠密性があり、山には数千人を分けて生活できる台地がいくつかありましたので。今まで何故このような地が見つかっていなかったのかが不思議なくらいです。」
「そりゃね。時たまに異民族が山から降りてきて荒らし回るんだ、そんな地を誰も注目しないよ。君たちはどうしたんだい?」
「彼らは物資を求めていたのです。我々はここにたどり着くまでにもいろいろと行動していたので物質に困っていませんでした。なので我々がそれを回すと、なんと!安全の保障だけでなく、大砲やら鉄などの情報や現物を渡してくれたのですよ!」
僕もそれは不思議だった。なぜ、異民族がそこまでの技術を持っていなかったのか、知られていなかったのか。
「そこ。噂では異民族というのは言葉が通じなくて野蛮で僕らより劣る奴らだと聞いてるんだけど、変だよね。大砲なんかも見た限りグランスタのモノよりも性能が良かった。まるで僕らの方が技術的に劣ってるじゃないか。」
「はぁ。我々も詳しくは分かっていないのですが、彼らの言葉は確かに意味不明です。でも、彼らの中には我々の言葉を理解しているものがいまして、それで。彼らによると大砲などの技術は何代も前から受け継がれてきたものだそうです。」
「へぇー。おっと、忘れてた。今日はなんで僕と一緒に精鋭200の兵をだしてくれって言ったんだ?」
これは出発前に急に伝令が来て言われた。
「はい、異民族の問題なのですが・・・。現在、異民族は3勢力あります。そのうち二つが手を組み、残り一方の異民族の鉱山を奪おうと争っているのです。我々はここと位置の近い山脈南部の勢力であるそれを応援していますが、山地での戦いは我々には明らか不利です。そこで増援を、ということなんです。」
これは・・面白くなってきた!
「そっか、了解。で、異民族の規模は?地形は?」
「あっ。今、地図をお持ちします!」
ジッドは地図と駒を用意し、机に広げる。
「地形は山の麓であるここから見たものしかありませんのでこちらで。えー、ここから地図上で上に少し行ったところに、我々の最大の生活拠点である台地から北北東の方向にありますのが味方の異民族の本拠地です。そこから、はるか北西にあるのが敵本拠地で、その中間点にその鉱山があります。」
人が住めるところがそんなに。意外と山ばっかじゃないんだな。
「山をいくつも越えて行かなければならないのか、キツイなぁ。今の兵力は?」
「3つの台地と2つの軍事拠点に兵を残していますので動いているのは3500人中、1500ほど。正確な数字はわかりませんが異民族は2000かと。報告では相手は2000~3000が2つ、だそうです。」
少数民族かと思ったが兵がそんなにいるんじゃ、結構規模が大きいかもしれない。
河賊たちは隠れつつ、よくそれだけの兵を維持してくれたよ。
「多いな。戦いは数だっていうのに、これじゃ。」
僕の理論が正しくなくなるじゃないか!
「我々は陣形などで戦術的には有利だと思われますが、いつ襲われてもおかしくない危険な状態です。」
異民族は陣形を知らないとみえる。
「今の配置はどうなのさ。」
「鉱山付近の平地にて待機中です。味方の異民族は鉱山で待ち構えているようですが。」
山の上で待ち構えるのは下策だなぁ。囲まれたら終わりだよ?
「敵は。」
「はい。まだ捕捉しておりません。ただ、少し前に起こった小競合いの際は何処からともなく現れては山に消える。このような独特の戦法で痛い目にあい、周囲には毒を出す地帯や複雑な地形もあり、迂闊に後を追うこともできませんでした。」
やはりグランスタやトーラニアの地とは全く違うな。
僕は地図を畳む。
「うーん。まずはここらに残っている兵を集めて。僕の連れてきたのと合わせて800でいい。まずは異民族本拠地へと向かう。」
さて、この状況をこれからどうするかな。
はい、始まりました。
異民族と河賊とギルスの戦い。
今回は短めですが、これはあと2話ほど続くつもりです。