晩秋の新風
また間に合わず・・・・すみません。
今回から季節設定をいれていきたいと思ってます。
大体、日本と同じ四季にしています。
トーラニアに風が吹く
二つの風は進み行く
トーラニアに風が吹く
その風は何処へ
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グランスタで四兄弟が会議を行おうとしていた頃
トーラニア王国 王の屋敷 政務室
「やっと終わった・・・。」
今終わったのは今年の税収の帳簿確認。
俺はこれに半日かけた。
ただの確認で、でだ。
「なんでこんなに訂正があるんだ。それも大事なところにまでミスがある。」
すると、コンコンとドアから聞こえ、帳簿作成者を名乗る出っ歯男が入ってきた。
(入っていいとは言ってないのにな。)
「へへへ、今日はアラン様にお願いしたいことがあって来ました。帳簿はご覧になられましたか?」
「見たが、あれは酷い。半日無駄にした。」
「そのことなんですがね、こちらを・・・」
と言うと出っ歯男は懐から小さな袋を取り出し、目の前の机にそっとのせる。
これは賄賂だ。
目を細めて出っ歯の出っ歯を睨む。
目は合わさない。
「すると何か?これは故意に起こした書類ミス・・・捏造か。」
「へぇ、そうですそうです。私もいろんな方から受け取った以上気を利かせて行動しなければならないんですよ~。それがコレというわけです。書類の件、どうぞよろしくお願い致します。私はこれで・・・。」
出っ歯が帰ろうと背を向ける。
俺はそうさせない。
立ち上がって呼び止める。
「おい、出っ歯。」
「はい?なんで・・ぶばあっ!!」
振り向いた奴の顔面(特に出っ歯)めがけてぶん殴ってやった。
「俺にこんな汚ねぇモンが通用すると思ってんのか!?」
「い゛ぃーっ!!助けて゛ぇ!いっ、いでででで 髪!髪ぃ!」
奴の髪を掴み尋問を始める。
「さぁ、お仲間を教えてもらおうか!」
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数分後
トーラニア王国 王の屋敷別館 ギルス王邸
俺はあの後、奴に洗いざらい喋らしてから牢にぶちこみ、すぐに足をギルスの元へと向けた。
「困ったことになったね。」
「大変な尻尾を掴んでしまった。」
両者は机を挟んで向かい合い、その上に置かれた一枚の紙を見てそう呟いた。
そこには大きな役職の者から軍の小隊長クラスまでおよそ30人の名が書かれている。
「そりゃあこんだけの人数が不正してると書類にもはっきり分かるくらいに影響でるよ。むしろ今まで発覚してないのが不思議なくらいだ。これは僕の人選ミスかな。」
「多くはマカベンの時からの仕事を引き継いでいる奴等だな。これは今までの段階で分からなかった俺の確認ミスかもな。」
二人は顔を見合わせ、
「「はぁ・・・。」」
そしてため息。
「内政官トップのダイ・チュウ・ショウの3人に確認したところ不正はマカベンのときから領主の黙認で横行していたようだ。本人たちは見て見ぬふりをして過ごしていたみたいだが。ショウはこの前、入れ歯を賄賂に渡されたそうだが上手く誤魔化して入れ歯だけ頂いたらしい。」
「へぇ、そんな前から。というか今回までに分かってんなら報告してくれたら良かったのに!」
「証拠がない。ショウの入れ歯だって本人の自演だ、と言われる可能性がある。今回のように俺たちに直接でない限りはな。」
「関係者を処罰するのは簡単だけど2つ問題があるね。」
「確かに。内政官は貴重だぞ。マカベンが人材を集めていたから今があるが、ほぼ腐ってやがる。20人超も一気に消えるとまずい。軍はある程度替えがきくだろうがな。」
「実はそうでもないんだよねー。問題点その二、軍の派閥だよ。今回のに関わっているのは全てあっち側の軍人だ。」
「あっち側?」
「そう。派閥は大きくわけて二つあるのさ。一つは王である僕派、もう一つは老司令官、アドワ派。この前の戦いは一緒に戦ってくれたけど普段は対立してるよ。」
「老司令官?それって病気がちのやつのことか?」
「そうそう。僕もまだあったことないんだ。面会拒否だって。」
「勝手に処罰すると軍が割れる危険があるな。何とかして話をつけた方がいい。」
「そう思って今、使者を送ろうとしています!」
ギルスは使用人を呼びつけ、アドワの元へ行かせた。
そして、
「面会オッケーだってさ!何でだろうね!」
「かなり怪しいが、行くしかないよな・・・。」
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トーラニア王国 アドワ邸
「ようこそ、いらっしゃいました。ギルス王、アラン殿。そちらの椅子にお掛けください。」
ベッドの上には一人の老人、こいつがアドワ軍司令か。
「おじいさん、お話があってきました。」
さすがギルス、初対面でおじいさん呼ばわりするとは。
「分かっておりますよ。この時期ですから恐らく税収の書類関係でしょう。賄賂などがあったのですな。」
(っ!!なんという推理力。こいつは手強いな。)
「はい、はっきり言いますとあなたの派閥の者を処罰したい。」
(どストレートすぎる!馬鹿か?馬鹿なのか?)
「おい!はっきりしすぎてるんじゃないか!?」
ギルスはアドワ宛に置いてあったお見舞いの果物を取った。
「そう?よく伝わると思うんだけど・・・」
そう言うとギルスはすっとリンゴを顔の前で持つ、
その瞬間、シュリンと音がしてリンゴの上半分が消し飛んだ。
アドワの手には両刃の剣。
「お見事、歳をとり、衰えたとはいえ私の一閃の軌道を予測するとは。試すような真似をして申し訳ない。」
「で、納得してもらえたかな?」
「・・・私は長年グランスタに忠誠を誓っておりました。しかし、それはマカベン様の領地運営に疑問を感じ揺らぎました。悪政をしく者は処罰す、ギラーヌス王はそう言っておられた。それも守られぬ腐敗した国となったグランスタの辺境に突如現れたのはギルス王、アラン殿でした・・・」
「言いたいことは分かってるよ。対立する派閥を作ったのも僕を試すためであり、腐ってるやつ腐りかけのやつを一点に集める為でもあるわけだ。」
「その通りでございます。私は歳をとりました。もう若いあなたに抗うほど頑固ではありませんのでね。不正を行った者への処罰はどうぞお好きになさってください。」
「たが、不正を行っていないただの軍人はどうする。ギルスに素直に従うとは思えん。」
「それはまだおじいさんの派閥に置いといてよ。そういうやつは無理に言うこと聞かせてもいつか爆発する。だから精一杯溜めておいて安全なところで爆発させたい。」
「承知しました。老い先短い人生ですが可能な限り私が抑えつけましょう。」
その日、不正の発覚が公表された。
関係者は全員、河寇への引き渡し、終身刑などとそれぞれにあった処罰となることが決まった。
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同日
トーラニア王国 アドワ邸
二人の男が廊下を駆け、アドワの部屋へと入る。
「アドワ様!我々の派閥の者だけが特定され処罰を受けたそうだ!これは派閥争いだ!こっちも仕返しを!報復だ!」
「そうです!我らの軍で奇襲をかけこの国を乗っ取りましょう!僕はあんな横暴は許せない!」
二人はそれぞれ千人組の隊長のバンスとルイーで、一度ギルスに完敗した怨みも一緒にと、息を荒げて進言する。
「ならん。」
老司令官は一言だけ口に出す。
「だがこれでは負けを認めている様なものです!」
「そうだ!俺たちは戦えるんだ!グランスタが攻めてきても俺たちがいればどうということはない!」
「ならんっ!!!」
その場は異質な空気に包まれ、二人は動けなくなった。
(うっ、なんという殺気だ。かっ、勝てん。)
(くぅ、ここは退くしか・・・。)
こうして、老司令官派はおとなしく処罰を受け入れた。
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トーラニアに風が吹く
二つの風は混じりあい
トーラニアに風が吹く
光 満ちたる風の行方
この話は当初より予定していたものなんですが、思ったよりも後になってしまいました(話数的に)。
一話一話が短いのは感じています。
機会があればどっかの話を繋げてしまおうかなーと思ってます。