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二人の国   作者: 扇子
始まり
11/26

四兄弟、会合す

今年初の投稿。


今年もよろしくお願いします。




従者であるソートと別れ奥に進むと、近衛兵が警備をしている会議室にたどり着いた。


ここに自分を含めた四兄弟が集まるのである。


〈ガチャリ〉


扉のむこうにはもう三人とも椅子に座っていた。


丸い大きな机を囲むようにして椅子が5つ。

(あと一つは誰の席だ?)


「へっ、優秀・・なお兄さんがいらっしゃったぜ。」


それを深く考える時間もなく、次男・ロムが口を開く。


俺は睨みつけるが、相手にしないまま席についた。


「ロム兄さん、こんなところで喧嘩はやめてくださいね。」


仲裁しようとしているのは四男・ヒル、おとなしい性格なので争いは好まんやつだが、王位となるとまた別らしい。


「・・・・・。」


沈黙のまま腕を組み、ドンとしているのは三男・キョウジ。

こいつだけは母上の血を継いでいないが、父上の命令により俺たち兄弟と同格であるため三男ということになっている。


キョウジと協定を結ばざるをえんか・・・。


キョウジ軍を牽制するために北部に置いている軍を回すことができればトーラニアなぞ、わけはない。

しかし、今までよく思っていなかった相手であるために自分のプライドが許さない。


考え事をしていると、ロムから申し出があった。


「兄貴、トーラニアのことだけどな。さっきのお詫びに俺が軍を派遣してやろうか?」


こいつ・・・。


ロムはニヤニヤしながら答えを待っている。


ありがたい申し出であるが、これは受け入れられない。

おそらく、大軍を送ってトーラニアを平定したあとは駐屯して自分の領地にするつもりだろう。

そこから挟み撃ちで元の領土まで侵略して一気に俺のところに来る算段のはず。


「ロム、すまんな。お前の軍は必要ない。」


「いいのか?俺は強力な水軍を持ってるぜ?海から攻めたらイチコロだ。兄貴の水軍は運河に主力があるんだろ?」

(ちっ、今日はやけに落ち着いてやがる。)


「どうにかするに決まっている。詫びはいいからおとなしくしていろ。」


「・・・わーったよ。」


〈ガチャリ〉


誰かが入ってきた、がノックも挨拶もなかった。


「てめーっ!何もんだ!無礼だぞ!」


当然、ロムはキレた。


俺はジルターに言われたように感情を抑える。


『これは失礼しました。無礼をお許しください。私はマラルというもので王宮管理長から今回、家臣団まとめ役をつとめている者です。この会議に王都代表として参加させていただきます。』


「確かマラル、だったかな?王都代表ということは僕たちは王子としてではなく、各方面の領地代表として招かれたわけだ。」


『その通りです。で・す・の・で、この中で一番権威のあるのは私というわけです。しかし、あなた方たちは仮にも王子だ。ある程度の敬意は示させていただきますよ。』


「ちっ、面白くねぇ。で、何のようでこんな内密に俺らを集めたんだ。特に兄貴なんかは今忙しいはずだがな。」


『はい、今回皆様に集まっていただいたのはトーラニアの件とその対応についてのお話をするためです。』


「俺が対応するだけでは不満か?一度負けたとはいえ、まだ十分な戦力はある。」


『しかし、動かしたくても動かせない状態にあるのでは?』


俺は目を見開いた。

ここまではっきりと言ってくるとは思わなかったからだ。


「すると何か?お前が解決策を見いだすとでもいうのか?」


『ふふっ。まぁ、グアニス様のは後にしましょうか。他の領地にも不穏な所があるので。』


「不穏な所?また反乱分子?僕の領地はないだろうけど。」


『いえ、反乱分子は各領地に複数存在するようです。これはまだ推測なのですが以前の反乱の生き残りが潜伏していると思われます。』


「どこにいるかとかは掴めていないのか?」


『残念ながら。しかし、トーラニア王国が誕生したことでそれらの生き残りは繋がりを持とうとするでしょう。打倒グランスタに変わりはないのですから。』


「なるほど、僕たちにはそれが尻尾を見せたときに叩いてほしいと言うことですね。」


「下らん。」


キョウジがこの会議で初めて口を開く。


「どうせ動くんだ。叩くならトーラニアに集めてから一気に叩けばいいではないか。尻尾を見せた連中から叩いていくと、後発の連中が怯えて出てこなくなるはずだ。」


『キョウジ様のお考えは分かりますがこれ以上こちらはトーラニアの規模を大きくしたくないのです。』


「そうだよキョウジ兄さん。これ以上グアニス兄さんの負担を増やしちゃまずいよ。」


「兄上たちも同じ考えか?」


「あたりめーよ。怯えて出てこなくなるならそれでいいじゃねぇか。」

(誰がオメーなんかと同じ意見するかよ)


「そうだな。これ以上、負担が増えるのは回避したい。」

(猛反対したいところだが協定のこともある。言葉を選ばねば。)


『キョウジ様、多数決でいうとこれでよろしいですか?』


「・・・わかった。」




『さて、最後はトーラニアへの対応です。どうされるおつもりで?』


「先ほど言ったように各方面に配備している兵をトーラニアに向ける、それだけだ。」


『やはり誰かと協定を結ばれますかな?』


「・・・キョウジ、キョウジと協定を結ぶつもりである。」

(仕方あるまい)


バンッ


「っ!!」


ロムが机を叩き、立ち上がった。

顔を真っ赤になっている。

自分は断られキョウジが指名されたのだ、屈辱だろう。


「その申し出、謹んでお受けする。」


キョウジはさらっと答えた。

割りと素直で助かったが、何か腑に落ちない。


(何か条件でもつけてくるのか?)と思ったが今のところそのような素振りはない。


『キョウジ様、ご英断です!これでトーラニア王国のことで頭を悩ます心配は無くなりましたな。』


マラルは席をたって俺に近づき、耳もとでささやく。


『どうせなら王都に向けている兵も動かしては?』


その瞬間、背筋に冷たい何かが這ったような気がした。


(やつはなぜ知っている!?)


「なっ、なんのこと・・です?」


『ふふっ、それならいいでしょう。しかし、この進言はお忘れなく。』


こいつは危険だ、俺の直感がそう告げた。


『以上をもちまして会議を終了させていただきます。』



俺は急ぎ足でソートの元に行き、城を出る。


「一体どうされたのですか?顔色がよろしくないようですが・・・。」


ソートが心配しているようだが、今の俺には気が回らない。


(なぜ、情報が漏れている!王都に兵を向けるということは近衛兵団を敵にまわすということ、あれは忠告だ。今、ここで殺されてもおかしくない!)




後日、キョウジより文書が届いた。

そこには、

〈トーラニア王国討伐までの間、グアニス領への手出しはしない〉

〈その代わり、こちらから5000の兵だけ出せてもらう。〉

との内容だった。


もちろん、俺は受け入れた。

今回、四兄弟が出揃いました。

グアニス・ロム・キョウジ・ヒル


登場人物紹介をまた作ろうかなと思っています。

四兄弟の領についても書いて。

(次の話を書いて余裕ができてから作るつもりなので、いつできるかは分かりません。)





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