1話 召喚されて
さて、何で俺は異世界に召喚されたばっかなのに騎士達と戦ったりしてるんだろう。
…………何で俺は異世界に召喚されたばっかなのに騎士達と戦ったりしてるんだろう。
(大事な事なので2回言いました。)
しかも俺武器持ってないし無手だし。ちょっと離れた所で観てるよく知らない先輩とか後輩とか教員は何か呆然としてるし、友達は呆れた顔してるし、数人はまさか負けないよな?ってこっちめっちゃ睨んでる…………
まぁ、負ける気なんてまったくしないけどさ。正直、異世界の騎士達が弱すぎて泣きそうなんだけど。身体強化魔法使ってるんだよな。魔法下手なのか?其れとも魔法じゃカバーしきれない程鍛えるのサボってんの?マジで泣きそうなんだけど。幾ら俺があっちの世界で一般的にチートとしか言いようがないレベルの戦闘能力だとしてもおかしいだろ!こんな事ならあっちの世界であの二人と稽古してた方がマシ…………
いや、辞めよう。弱すぎる騎士達の事を考えた後にあの人間辞めて神の領域に足踏み入れてるとしか思えない人達の事考えると全然縮まらない差に絶望しそうだ。ああ、考えると泣けてくる…………
よし、回想しよう。この騎士達と戦う羽目になった理由を思い出して怒りを力に変えて全員ぶっ潰してやる。うん。そうしよう。
「貴方の固有能力は【超強化五感】です!」
超強化五感…………何かハズレな気がするなぁ。ん?3キロ先の針が落ちた音も聞こえる耳、1キロ先の蟻も見える目、犬の2倍以上の嗅覚を持った鼻、微弱な空気の振動も感じる触覚、口にした料理の材料が全て分かり、適切な味の表現ができる味覚…………うん。ハズレではないな。だけど味覚が食レポしろって言ってるようにしか思えないな。
「まぁ、全開にしたらですけどね!今の貴方だと1時間も全開にしてたらぶっ倒れますよ!」
良い笑顔で親指立てながら言わないで欲しいなぁ。
「慣れれば全開にしてられる時間は延びるのか?」
「はい!永遠に全開も可能ですよ!」
永遠に全開は色んな意味で疲れるから止めておこう。
「あ、あと言語問題については自動翻訳能力があるから大丈夫です!質問はありませんか?」
無いな。言語も自動翻訳能力があるから大丈夫だろう。魔力や魔法もある程度扱えるようになったからな。
「無いな。」
「そうですか!じゃあ頑張ってください!」
何故だ何故何処からかそんな馬鹿でかいハンマーを取り出してるんだ!そんなもの食らったら流石に死ぬ!見るに耐え無い肉塊をなりかねない!
「いや、ちょっ、待っ…………ギャァアアああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎」
「ああああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎」
と、取り敢えず死んではいないな。周りがめっちゃこっち見てるけど。
「裕也!どうした!」
そう言いながらこっちに来たのは村雨桔梗。幼少の頃からの付き合いで、姉のような存在だ。俺達が通っていた学校の生徒会長兼女子剣道部部長で、長い黒髪と、整った顔立ち、高校生とは思えないスタイルで他の学校にもファンクラブができ、全校生徒から憧れられる美女である。また、父親は世界的にも有名な財閥の会長で、俺の父親と同じで神の領域に足を踏み入れているとしか思えない人だ。実際彼女も全国大会の個人戦で二連覇する程強い。
「あ、ああ。説明妖精に馬鹿でかいハンマーで叩き潰されると思ったんだ。」
「色んなタイプがいるな説明妖精…………」
他にはどんなタイプがいるんだか…
「起きたばかりで悪いんだが、騎士達が私達の力を見るという名目で行う試合の代表にお前がなった。」
「事後報告⁉︎」
「済まないな。騎士達が余りにもふざけた提案をするから、私が出て全員灰にしてやろうと思ったんだが、止められてな。ならお前が出て全員ぶっ潰してやればいいと思ったんだ。」
一体どんなこと提案したんだ。てか全員灰にするって随分えげつない能力手に入れたなぁ。
「一体どんなこと提案されたんだ?」
「勇者なら多対一で戦っても構わないだろうと言われた。」
…………うん。この人なら怒る。
「分かった。全員ぶっ潰してくる。」
「ふふ、任せたぞ。」
と、意地悪そうに笑う。
…………生徒会のメンバー良い判断したなぁ。
ああそうだ。怒りどころか尚更げんなりしたじゃねえか…………
ああ一周回って苛々してきた。一秒でも速くこいつら潰そう!
目の前にいた騎士が剣を振り上げた瞬間に懐に入り、掌底を食らわして吹き飛ばす。左前方にいた騎士には側頭部に蹴りを叩き込んで気絶させる。結果30秒程で騎士達は一人を除いて全滅した。
地面に転がり、気絶している姿を見て、一人残った騎士は怯えている。その姿を見て呆れつつも気絶させるべく距離を詰める。
「さっさと堕ちて寝てろ!」
「う、うおおおおおおお!」
叫んだところで結果は変わらない。俺は騎士の剣が振り下ろされるよりも速く騎士の鳩尾、首、顔面に蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。吹き飛ばされた騎士は白目を剥いて倒れていた。
直後、
「な、なんだこの状況は!」
と、相当強いと思われる騎士が呆然としながら立っていた。