完全なる復讐
誰もが知ってるな某横スクロールアクションから
「クリ子……」
陸軍第一中隊所属三等歩兵クリ太は嘆いた。目の前には、かつて永遠の愛を誓い合ったクリ子の無残な死体。
犯人は分かっていた。鮮血で赤く染まった服を着た中年の男だ。奴を思い出すだけでクリ太の血は沸騰し、艶やかだったその肌も今ではフライパンで炒めたような焦げ茶色に変色していた。
奴はまるでトランポリンでも踏むみたいにクリ子を潰していった。奴はその勢いで遥か頭上へと飛び上がり、クリ子の真後ろにいたクリ太は無傷で済んだというわけだ。
クリ太は許せなかった。そして復讐のために修行し始めた。滝に打たれ、山を駆け、模範演習を繰り返した。
「お前の怒り、半端ねえな」
同僚からそう言われるころ、クリ太は曹長になっていた。所属も変わり、本部を守護する第八中隊の一員として軍務に励んでいた。
それからどれだけの月日が流れたろうか……それでもクリ太の怒りは風化する気配もなかった。それどころか、日に日に報告される戦死の旨を聞き、彼の憎しみは膨らむばかりだった。
いっこくも早く、奴を……!
そしてある日、奴が現れた。
その服はいっそう赤みを増している。
「隊長、ここは俺に」
「……ああ」
睨み合う両者。先に動いたのはクリ太だった。
血の滲むような特訓の末身に付けた、八艘飛びならぬ八ブロック飛び!
クリ子の死、同胞たちの犠牲、そしてあの時力不足だった自身への怒り。全てを込めたクリ太の懇親の蹴りが炸裂する!
「マンマミーア!」
復讐は成功した。背後からは怒涛の歓声が響き、隊長や部下たちがクリ太のもとへと駆け寄る。
クリ太は大きな目いっぱいに涙を浮かべながら、自分が守り抜いた城を見上げた。
「お前、半端ないな!」
同僚たちはそう褒め称えた。
そう、彼の怒りは半端なかったのだ。
この時、クリ太の瞳の奥に復讐の炎がちらついていることを気付く者はいなかった。
クリ子を直接死に追いやった敵はもういない。
だが、そもそも奴と戦う羽目になったのは誰のせいか。
もう一人の元凶がいる場所を見上げて、クリ太は歯を軋ませた。