旅立ちの日に
彼は私が最も弱っている時を狙って訪れる
彼はこの世で私が最も嫌う訪問者
私は彼を入れ揚げたくないのに
彼は鍵を持っている
心ではなく涙腺の堰を開ける言葉だ
彼は銃剣を持っている
金と暴力という名の
私は仕方なく彼を敷地に入れる
彼の為だけの納屋
私はここに彼の為の調度品を
「発生させる」
弱さ 間違い あどけなさ 告白 恭順 尊敬 勇気
模造品の数々
これらさえあれば
勝手に犯して
時間が過ぎれば出ていく
彼は薄々気づいたのだろうか
模造品つまりは幻影を
それは遠い遠い昔の
美化された
幻想
やがて私が戦車を持つようになった時
先に「ありがとう」は言っておこうと思う
彼の偽善と自己陶酔がなければ
私は私たり得なかったのだから
その後
大砲をぶっ放そう
考えず 感じず 信じず
そして
涙腺の鍵を回収しようと思う