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たい育  作者: 鈴神楽
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姉妹愛と同性愛

レズな姉妹? やっぱり出てきた変態女神

 ガーリナ大陸に商人の町、ナニーワ



『そろそろ帰るか?』

 夜の街を歩くヤオの足元に居た白牙が言った。

「そうだね、そろそろ体力を使い果たして、動けなくなってるだろうから」

 ヤオが、頷いて、宿に戻ろうとした時、目の前をもう直ぐ成人くらいの少女と、ヤオより少しだけ大人の感じな少女が駆けてくる。

「待ちやがれ!」

 その後ろから、いかにもヤクザって男達が追ってくる。

「これで、追っていたのがこの町の警邏だったら、凄いね」

 ヤオの言葉に白牙が言う。

『そうだが、無視するのか?』

 ヤオは少し困った顔をする。

「すこしだけ様子見かな?」

 そうしている間にも、少女達は捕まる。

「大人しくしろ!」

「お姉ちゃん! 助けて」

「逃げられると思うなよ!」

「妹には何もしないでください!」

「姉妹そろって、大人にしてやるから安心しろ!」

「妹には手を出させない!」

「生意気言ってるんじゃない」

 ヤクザの男が手を振り上げたとき、ヤオがその手を掴む。

「はいはい、そこまでその子達は、借金のかたか、なんかだったりする?」

 手を掴まれたヤクザが言う。

「うるせー、こいつらは、俺達のところに仕事をしたいと自分でやってきたんだ! 邪魔するな!」

 ヤオはヤクザの腕を掴んだまま言う。

「って言ってるけど、仕事内容は合意してたの? 怖くなって逃げたんだったら、貴女達が悪いよ」

 少女達の姉の方が首を横に振る。

「違います! あたし達は、簡単な奉仕業務だって聞いていました!」

 ヤオが小さく溜息を吐き、足元の白牙が呟く。

『とんだ世間知らずだな、少しヤクザにも同情するぞ』

 ヤオは、手を放して言う。

「お金は払ったの? 払ってないんだったら、追いかけるのに使った苦労は自分の判断ミスだと思って諦めて、帰りなよ」

 解放されたヤクザはナイフを取り出して言う。

「俺達にも面子があるんだよ!」

 突っ込んでくるヤクザのナイフをヤオは指だけで挟みそのままそのヤクザごと投げ捨てて告げる。

「今回は、世の中を舐めてるこの少女達が悪いから見逃してあげようと思ってるんだけど、やるつもり」

 ヤオ自身は、ほんの少し威圧しただけのつもりだったが、ヤクザ達は、蜘蛛の子を散らすように消えていく。

『戦神候補に威圧されたら逃げるしかないな』

 白牙が呟く中、ヤオが、少女達に近付く。

「大丈夫?」

 少女の姉の方が頭を下げる。

「助かりました」

「助かりました」

 妹の方も姉を真似する様に頭を下げる。

 ヤオは、少し大人ぶった態度でいう。

「どこのお嬢様か知らないけど、簡単な仕事なんて無いの。どんな仕事も苦労して働くからお金が貰えるんだよ」

 少女の姉が申し訳なさそうに言う。

「すいませんでした」

「解ればよろしい」

 そう言って歩き出すヤオだったが、何故か少女達がついてくる。

 暫くいったところで白牙が言う。

『少し意外だが頼られているぞ』

 ヤオは溜息を吐いてから振り返り言う。

「お金は、持ってる?」

 首を横に振る少女達に苦い顔をする。

『金の事だけはお前では、対応が出来ないな。あいつに任せるか?』

 ヤオは、手を頭に当てて言う。

「それは、駄目。飢えた狼に羊のお守りをさせるようなもんだよ」

「飢えた狼ってあたしの事?」

 突如現れたのは、海神候補の神名者、金海波であった。

「すいません、もう気力を使い果たしたと思って解放してしまいました」

 人の姿をした、金海波の使徒、金鱗人が申し訳なさそうに頭を下げる。

 ヤオは渋々、金海波を見て言う。

「キンカ、この二人は、お金が無くて困ってるんだけど、エッチな要求しないでお金貸してあげてくれない?」

 金海波は、少女達を見て言う。

「名前は?」

 姉のほうが先に名乗る。

「タチユリって言います。妹は、ネコユリです」

 金海波が嬉しそうな顔をして言う。

「いい名前ね。お金の件は置いておいて、一先ず宿に帰りましょ」

 その笑顔にヤオは、疑いの視線を向け、白牙は、一言。

『絶対、食っちまおうと考えてるな』

 ヤオも否定はしなかった。



 宿に戻り、ネコユリを寝かしつけた後、タチユリが事情を説明した。

「詰り、貴方達のお父さんが貴女を政略結婚させようとしてるのね?」

 金海波の確認に頷くタチユリ。

「はい。理屈では仕方ない事だと解っているんですが、この子を置いて嫁ぐ気になれなくって」

 その顔を見て金海波が断言する。

「それは、貴女がネコユリちゃんを愛してるからよ!」

 普通に頷くタチユリ。

「はい。妹ですから」

 金海波は、大きくタチユリを揺すり言う。

「違うわ、単純な姉妹愛では、無く。さらに進んだ、真実の愛! 貴女は、ネコユリちゃんと別れたくない。今以上に一緒に居たい。そして、何も知らない体に自分の匂いを擦り付けたいと思っているしょう!」

「そんな事ありません!」

 顔を真っ赤にして否定するタチユリを金海波が、ネコユリの方に向かせて言う。

「いいの、何処の馬の骨のとも知らない男が、貴女の大切なネコユリちゃんを汚しても?」

 想像もしたくないと言う顔をしながらタチユリが言う。

「それは、嫌です」

 金海波は、頷き続ける。

「そうなる位だったら貴女の手でネコユリちゃんに大人の階段を昇らせようと思わない?」

 タチユリが唾を飲みこみネコユリを凝視する。

「ネコユリちゃんを貴女だけの物にしたくないの?」

 タチユリが何かを答えようとした時、ヤオの踵落しが金海波を沈黙させる。

「はいはい。馬鹿な誘導に引っかからない。元々、愛情に種類をつけるなんて出来ないし、どっちが偉いって訳じゃない。大切な者を独占したいと思うのは普通の事だよ。何処までが正しい愛情で、どこからが間違った愛情なんて誰にも判断できない。それが出来るのは本人だけ。そこの変態の言葉を無視して、本当の自分の気持ちを考えて動けば良いよ」

 タチユリが小さく頷く。



 翌日の朝食の席で金海波が宣言する。

「愛する二人の仲を引き裂く、極悪非道な父親に天罰を食らわす!」

『変な事を言い始めたぞ』

 呆れた顔で白牙が言うとヤオが溜息を吐いてから言う。

「天罰を与えてどうするの?」

 金海波が自信たっぷり答える。

「二人の仲を認めさせるのよ!」

 現状をいまいち飲みこめてないが、姉と離れなくて良いとわかったのかネコユリが嬉しそうに言う。

「本当? キンカのお姉ちゃんがんばって!」

「任しておきなさい」

 胸を張る金海波を無視してヤオがタチユリに言う。

「いきなり政略結婚の話が出てくるって事は、貴女の家は危ないんだね?」

 タチユリは辛そうな顔で頷いた。

「父も悩んだ結果だったと思います」

 そしてその時、宿屋の食堂のドアが開いて、重装備の兵士が入ってくる。

「ここにタチユリお嬢様とネコユリお嬢様を誘拐した誘拐犯が居るはずだ! 大人しく出て来い!」

『予想通りの展開だな、蹴散らすだけだったら金海波だけでも可能だな』

 白牙の言葉に頷くヤオ。

「でも、余計な被害は出したくないね」

 そういって立ち上がるヤオ。

「誘拐犯あつかいするのは、良いけど、強引に連れ戻してもまた家を出るだけだよ。こっちから彼女の家に行くから案内して」

「ふざけるな!」

 怒鳴る兵士に対してヤオが白牙の方に右手を向ける。

『八百刃の神名の元に、我が使徒に力を我が力与えん、白牙』

 ヤオの右掌に『八』が浮かび、白牙が刀に変化する。

 ヤオは、一刀の元に兵士達の鎧だけを切り落とす。

「あちきは、正しい戦いの護り手、八百刃。こんな下らない戦いをあちきは、認めないから、どうしても戦うのだったら排除するよ。それでも戦いを始めるの?」

 兵士達は全員を横に振る。



「それで娘達は、どうしたんだ!」

 タチユリ達の父親、タカラが執務室で怒鳴るとそのドアが開いて金海波が現れる。

「娘さんたちはここよ! でも娘を商売道具にする腐れ外道には、渡せない! ここで成敗してあげる」

 その手に雷を溜め込み始めるがヤオが容赦ない回転蹴りを側頭部に決めて、沈黙させる。

「取敢えず話し合いから始めましょう」

 そしてタチユリとネコユリが現れる。

「お父さん、私は、ネコユリと離れたくありません」

「あたしもお姉ちゃんと一緒に居たい!」

 タカラは、机を叩き言う。

「我侭を言うな! これは、お前達の幸せの為なんだ!」

 その言葉にヤオが首を横に振る。

「本当の幸せなんて解らないよ。それでも、ヤクザに騙されそうになる人には、こんな様な状況が必要だって言うのも確かだよ」

「なんだ、それは?」

 タカラが首を傾げて言うとヤオが肩をすかして言う。

「家出して、仕事しようとした時にヤクザに騙されてエッチな仕事させられそうになったんだよ」

 その言葉にタカラが立ち上がり二人の娘に駆け寄って言う。

「大丈夫か? 変な事はされなかったか?」

 タチユリはヤオを見ながら答える。

「危ない所をヤオさんに助けて貰ったの」

 タカラはヤオに頭を下げる。

「娘を助けて貰って感謝する」

 それに対してヤオが言う。

「だったら感謝の気持ちとして一つお願いを聞いて欲しいんだけど」

 タカラが渋い顔をする。

「娘の結婚を止めろと言うのですか?」

 ヤオは首を横に振って言う。

「違うよ、結果としてはそうなるけど、あちきのお願いは、娘さんを一人前にしてから家を出してあげて欲しいの。今のまま他所の家に行っても苦労するだけ、貴方が一人前だと確信できるまで父親である貴方が鍛えてあげてほしいの。そうしないと折角助けたのが無駄になるからね」

 タカラとタチユリが視線を合わせる。

「お父さん、私は自分が無知な事を知りました。だから色んな事を知りたいです」

「私も甘やかせ過ぎたのかもしれないな。確かにそこのお嬢さんが言うとおり、今のまま他の家に嫁がせても苦労するだけだな」

 そして、結婚話は無くなった。



「大体、政略結婚しなければお店が危ないって話は何処行ったの?」

 不貞腐れて文句を言う金海波にヤオがお茶を啜りながら答える。

「ピンチだったのは本当だけど、自分の努力でどうにかなると思ってたんでしょうけど、その為に娘に苦労かけるくらいなら、もっと金持ちの家に嫁がせた方が良いと考えてたんだよ。父親って言うのは、必要以上に娘を大切にするからね」

「だったら、タチユリちゃんとネコユリちゃんの愛はどうなるの!」

 金海波の言葉にヤオが苦笑する。

「愛し方に間違いは無いけど、愛するという事と相手に依存する事って別なんだよ。あの二人は、甘やかされすぎて姉妹以外に確かな物が無かった。だから必要以上に相手を必要にした。それにね、去り際にタチユリさんが言ってた」

『ネコユリが大切だって気持ちは変わらないと思います。しかし、今回は、ネコユリを何度も泣かせました。それでは、駄目何です。傍に居られなくても良いから、ネコユリに笑顔で居て欲しいのです』

 そうタチユリは笑顔で言ったのを伝えるヤオ。

『お前みたいに即物的に肉体関係を求める奴ばかりではないんだ』

 白牙の止めの一言に金海波が切れた。

「どうせ、あたしは、色情狂ですよ! こうなったらここで襲ってやる!」

「変態、止めて!」

 ヤオが、周りに人が多い為に力を出せないのを良いことに、脱がしに入る金海波であった。

「おいおい、レズの絡みだぜ!」

「相手の子なんて本当に小さいじゃないか!」

 ギャラリーが出来て、一層力を出し辛くなったヤオの上着を脱がす金海波。

「観念しなさい!」

 その様子を見ていたギャラリーの一人が呟く。

「つるぺたの幼児体型じゃ見ても面白くないな」

 その一言がヤオの動きを止めた。

 次の瞬間、金海波が飛び退く。

『あちきは、つるぺたじゃないもん!』

 物理的な攻撃力まで高まった声が、ギャラリーと逃げ切れなかった金海波を弾き飛ばした。

 服を調えながら不機嫌そうにヤオが言う。

「回収よろしく」

 大きな溜息を吐いて金鱗人が頷き、男の群れに潰された主の下に向かうのであった。

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