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たい育  作者: 鈴神楽
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神の石と偽の偽者

偽の偽者って本物?

 センータ大陸の北部の森林にヤオが居た。

「森は、良いよね、食料に困らないから」

 嬉しそうにもいだばかり果実を頬張るヤオ。

『食料の確保で一機一様する神名者は、お前だけだろうな?』

 白牙の毎度の愚痴を無視しながらヤオが進んでいると、不思議な集団に遭遇した。

『あれは、なんだ?』

 白牙の言葉に、ヤオが頬を掻きながら言う。

「多分、八百刃の使徒を装うための仮装だと思うよ」

 ヤオが言ったように、服装のあちらこちらにヤオが昔、仮決めしたマークをつけて、はったりが強そうな服装に着替えていた。

 そんな中、知的な雰囲気の賢者服の男性が言う。

「やはり、八百刃役を立てるべきでは、ないだろうか?」

 それを聞いて剣を持った傭兵の雰囲気を持っている男性が言う。

「それを誰がやるって言うんだ、テーキ? 八百刃様の使徒を装うのだって恐れ多いって言うのによ」

 それを聞いて賢者風の男性、テーキが言う。

「しかしラーテ、居るのと居ないのでは、効果は、まるで違いますよ」

 舌打ちをしながら傭兵らしき男性、ラーテが言う。

「とにかく俺達は、やだぞ。やるんだったら、お前が何とかしろ」

 悩みだすテーキのローブの腰の所を引っ張ってヤオが言う。

「お兄さん達は、何で八百刃の使徒のふりをしようとしているの?」

 その言葉にラーテが驚く。

「お前、どこからやってきた!」

 それに対してヤオは、獣道すらない方向を指差して言う。

「あっちから、果物が多そうな場所を選んで進んできた」

 呆れた顔をするテーキ。

「あちらと言えば、ついこの間まで大きな戦いがあった場所では、ありませんか。よく貴女みたいな子供一人で旅が出来ましたね?」

 ヤオが平然と答える。

「ずっと旅をしてるからね。それより、どうしてなの?」

 それを聞いてテーキが言う。

「それは、ですね。ここから少し行ったところに広大な平原を国境とした二つの小国が存在します。山と森林が多く、鉱山と狩猟を主産業とするマターギ王国と川が流れ平野部が多く、農耕を主産業とするノーフ王国ですが、この両国の不仲は、有名なのです」

 ラーテが続ける。

「今は、お前が来た方で起こっていた大戦を警戒する為、両国とも大人しかったが、大戦も沈静化して、戦いを再開しそうな雰囲気なんだよ」

 すると、近くに居た、苦労知らずそうな少年が言う。

「しかし、小国である我々が争い合っても何の解決にもなりません」

 それに同意するように料理もろくにした事もなさそうな少女が言う。

「そうです。お互い手を取り合って共栄共存の道を模索すべきなのです」

 二人が手を取り合うのを見てヤオが言う。

「詰り、そこの二人がその両国の王子王女で、好き合ってるけど、国が喧嘩してると結婚出来ないから、仲直りさせようとしてるわけね」

 慌てて言う王子王女。

「そんな事は、関係ありません。あくまで国の為を思っての事です」

「そうです。戦争になれば苦しむのは、罪の無い国民です」

 それに対してヤオが言う。

「それじゃあ、結婚する気は、ないし、お互いは、好きあってもいないの?」

 すると王女が王子を見、王子が恥ずかしそうに頬を掻く。

「そこの王子様がたの恋愛ごっこは、置いておいて、実際問題、戦争になれば困るのは、確かに国民なんだ。その主原因が意味不明な長方形の石なんだからな」

 ラーテの言葉にヤオが手を上げる。

「その長方形の石って何?」

「国境になる平原の中央に位置する大型の石で、どの様な道具を使っても傷一つつけることが出来ないことから、神の石と呼ばれています」

 テーキの回答に白牙が言う。

『おい、そんな物が実在するのか?』

 ヤオは、軽く、問題の平原の方を確認して答える。

『神々の世代交代の際に敗れた大地系の神の体の一部って感じだね。まあ、人間には、傷一つ付けられなくって当然だよ』

 そんな会話がされているとは、露ほども知らずテーキが続ける。

「その様な、益体も無い物の為に戦争を再開させることは、間違っています。そこで我々が、第三勢力となって、その石を取り上げて、和解をさせようと考えているのです」

 それを聞いてヤオが言う。

「なるほどね。その為にはったりとして、八百刃って訳ね。その八百刃を和解が決まるまでだったら、あちきがやるよ。その代わり、ギャラは、貰うよ」

 それを聞いてラーテが嫌そうに言う。

「お前みたいな小娘が八百刃様を演じるのか?」

 テーキが苦笑しながら言う。

「八百刃を演じるなんて度胸がある人間がそうそう居るとは、思えません。お願いします」

 こうしてヤオは、八百刃の役を演じることになったのであった。



 そして、話は、進んでいく。

 最初に王子の招待と言う事でテーキ達は、マターギの国王に会う。

「その娘があの八百刃様だというのか?」

 するとテーキが仰々しく頷いて言う。

「はい。偉大なりし、正しき戦いの守り手、八百刃様でございます。八百刃様は、あの神の石を取り合って戦うことを認めておりません。どうしても戦うというのなら、我ら使徒の力で止めよと命じられています」

 それを聞いて、胡散臭そうにヤオを見てマターギ国王が言う。

「神名者の干渉などで我々が引き下がるとおもうな。必ずや、勝ち、神の石を手に入れる」



 次に王女の招待でノーフの女王に会う。

「最初に言っておく、我は、八百刃など胡乱な存在を信じぬ」

 いきなりの言葉にもテーキは、怯まない。

「ノーフ女王陛下が、どの様に思われようが、我ら八百刃様の使徒は、今度の戦いを止めて見せます」

 それを聞いてノーフ女王が告げる。

「好きにすれば良い。しかし、我らは、決してあの神の石を諦めぬ」

 こうして、ものの見事に交渉は、失敗した。



 テーキ達は、問題の神の石が見える高台に陣を敷いていた。

「それでこれからどうするの?」

 ヤオの質問にテーキが言う。

「本当の勝負は、開戦直後です。その時は、頼みますよ」

 それを聞いてラーテが頷く。

「なれないこんな仮装と違って、戦いは、本業だ、任せておけ」

 着々と各陣営が開戦への準備を進めていった。



 そして、マターギとノーフの両方の軍隊が神の石が鎮座する平原で相対した。

「今回こそ、我らが勝利し、神の石を手に入れる!」

 マターギ国王がそう宣言するとノーフ女王も高らかに告げる。

「神の石は、我らノーフにこそ相応しい。それが解らぬ蛮族を打ち倒してやろう!」

 両軍の兵士が闘志をむき出しにする中、ラーテの部隊は、両軍に気付かれないように移動をしていた。

 開戦を告げるラッパの音と共に両軍が平原でぶつかり合う。

 その中、ラーテ達が行動を開始した。

 マターギ国王とノーフ女王が居る本陣に奇襲をしかけたのだ。

 その様子を見ていたヤオが言う。

「本当の戦争に慣れた大国だったら通じない手だね?」

 テーキが頷く。

「所詮は、マターギ、ノーフ両国は、お互い正面から戦うしかしらない小国です。そんな小国同士が争った所で大国に漬け込まれる隙を作るだけです」

 ラーテの奇襲が成功し、この戦いは、休戦を余儀なくされた。

 八百刃の名の下に王子と王女の婚約と共に両国の和解が成立する事になる。



 そんな王子と王女を祝う式典が問題の平原で開かれる中、上座に居たヤオが席を立ち、テーキの前に行く。

「言うとおりにしたよ、和解も済んだから約束通りギャラ頂戴!」

 それを聞いたラーテが飲んでいたお酒を噴出して言う。

「お前、何を考えてるんだ!」

 ラーテに胸倉を掴まれてもヤオを見てノーフ女王が言う。

「やはりそうであったか」

 しかし、大して気にした様子もみせない。

 マターギ国王も気にした様子も見せずに言う。

「最初から信じていなかった。お前等が戦いに勝った。それが真実だ」

 それを見てテーキが苦笑する。

「それじゃあ、ヤオさんは、別に居ても居なくても良かったって事ですね」

 ラーテがヤオをおろして言う。

「余計な出費があった分、損したぜ」

 ヤオは、そんな周りの反応など気にせずテーキに手を差し出す。

「効果は、ともかく約束は、約束なんだからギャラを頂戴!」

 テーキは、頷いて懐からお金が入った小袋を取り出してヤオに渡す。

「ありがとうございました」

 それを受け取るとヤオが問題の神の石の所に歩きながら言う。

「因みにあの石は、もう要らないよね?」

 それには、多少未練がありそうなマターギ国王とノーフ女王だがテーキが断言する。

「そうですね。しかし、処分も出来そうもありませんね」

 するとヤオは、白牙に右手を向ける。

『八百刃の神名の元に、我が使徒に力を我が力与えん、白牙』

 ヤオの右掌に『八』の文字が浮かび、白牙が刀に変化し、ヤオは、その一振りで人間が傷一つ付けられなかった神の石を真二つにし、両手を広げる。

『八百刃の神名の元に、我が使徒を召喚せん、天道龍、大地蛇』

 ヤオの左掌に『百』の文字が浮かび、天に巨大な龍、天道龍が、地に大地の様な蛇、大地蛇が現れる。

「運んで」

 その言葉に答え、巨大な神の石は、天道龍と大地蛇によってそれぞれ国の王城の傍に運ばれる。

 ヤオは、振り返り言う。

「あちきの名の下で和解したから、その記念だよ。それじゃあ、あちきは、次の戦いの場所にいかないといかないから」

 そのまま、去っていくヤオであった。

「八百刃様は、実在したというのか?」

 冷や汗を拭うマターギ国王。

「世の中、信じられない事があるものね」

 驚きを隠せないノーフ女王。

 しかし、一番衝撃が大きかったのは、八百刃の使徒を名乗ったテーキ達であった。

「私は、なんてとんでもない御方の名前を利用していたんだ」

 テーキが腰を抜かし、ラーテが自分の手を見て言う。

「俺、八百刃様の胸倉に掴みかかってしまったぞ!」

 一斉に周りの部下達が引いていくのであった。

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