王子と古い仕掛け
四つ子王宮シリーズ第二段
ヤオが、マッガレー王国の動向を見守っている時、四つ子は、バールズ王国でのんびりしていた。
「こんな生活してていいのかな?」
最高級の朝食が運ばれる様をみてトーウが戸惑っているとホークが言う。
「別に良いじゃん、うち等って偉いんだから」
セーイが首を横に振り、肩に乗る小猫モードの百爪が言う。
『偉いのは、ママだって言ってるよ』
ホークは、笑みを浮かべて言う。
「それをいうんだったら、パリンスたちだって、本人たちは、偉くないのに沢山の従者居るでしょ? 親が偉いって事は、偉いって事なのよ」
トーウが反論する。
「パリンス達の場合、いずれ王様になる可能性があるからだよ。あちき達は、代行者であっても、後継者じゃないよ」
その言葉に何故かセーイのご飯を食べるのを手伝っていた第一王女のマリセスが言う。
「代行者だって十分偉いわよ。神の代行者として、王様より高い地位にあるって言っても良いわよ」
ナーンが研究所に行くので体力が必要と大量の肉を食べながら言う。
「でも、ママって神名者だよ?」
「八百刃様は、特別ですよ。神すら滅ぼす、ホープワールド最強の存在ですから」
マリセスの侍女マリアがフォローを入れる。
そんな中、第二王子パリンスが言う。
「トーウ、一緒に探検しようぜ」
トーウは、呆れたって顔をして言う。
「自分の城を探検して面白いの?」
パリンスが指を振って言う。
「宮殿には、昔の王様の隠した仕掛けが残っているから面白いんだ。この間も謎の地下通路が出てきたんだ」
トーウが少し考えてから言う。
「セーイと一緒で良いなら行く」
パリンスは、頷いた。
「何でお前まで居るんだ?」
パリンスの言葉に、幼馴染のアリアンスが答える。
「パリンスだけだと、トーウ様達に失礼があるかもしれないじゃない」
「別に気にしませんよ」
トーウの気楽な言葉にパリンスが言う。
「だから、別に無理についてくる必要は、無いぞ」
アリアンスが顔を赤くしながら言う。
「パリンスは、社交辞令って言葉知らないの。とにかくついていくわ」
小さく溜息を吐くパリンスであった。
こうして、子供達だけの王宮探検が始まったのだが、セーイは、気付いていた、回りに城の兵士達が配置されている事を。
大人に見守られながらの探検だが、子供達には、楽しかった。
「面白い仕掛けがいっぱいあるのね」
トーウが感心するがパリンスが笑いながら言う。
「でも大半が有効に使われてないんだから無駄な労力だったんだぜ」
楽しげに話す二人を寂しそうに見るアリアンス。
セーイの肩に乗る百爪がテレパシーでトーウに忠告する。
『アリアンスも話に混ぜてあげなよ』
トーウが頷き言う。
「アリアンスは、どう思う?」
いきなり話を振られてアリアンスは、戸惑いながら言う。
「トーウ様が言うとおりだと思います」
パリンスが舌打ちする。
「お前な、そんな事を聞いていないだろ。やっぱり帰れよ」
アリアンスは、目に涙を溜めながら怒鳴る。
「パリンスの馬鹿!」
そのまま駆け出す。
「馬鹿だと!」
こっちまで怒り出すのを見てトーウが達観した顔で言う。
「子供ね」
「お前だって子供だろ!」
パリンスが叫んだ時、セーイがトーウの腕を引っ張る。
「何?」
百爪がパリンスにも聞こえる様に言う。
『アリアンスが古いトラップに引っ掛ったよ。助けに行かないとって言ってる』
パリンスが駆け出す。
「あの馬鹿!」
そんなパリンスを見て肩をすくめるトーウ。
「結局、大切にしてるんだねー」
『ところで、あいつは、何処に行くつもりなんだ?』
百爪の突っ込みにトーウが遠い目をして言う。
「きっと、海に向って走ってるんだよ」
そんなトーウを必死に引っ張るセーイ。
『偶然にも、同じトラップに嵌ってるらしいぞ』
「愛の奇跡って事だね。行こうか」
トーウ達もアリアンスの所に向う。
「どうしてこんな事になったんだろう」
アリアンスは、独り泣いていた。
彼女の目の前では、逃げ出して地下に住み着いた人工魔獣の失敗作が牙をむいていた。
「でも、もういいか、パリンスには、トーウ様達が居るんだから」
覚悟して目を瞑るアリアンス。
「アリアンスに手を出すな!」
飛びけりをかますパリンス。
「……パリンス」
アリアンスの前に立ちパリンスが言う。
「早く逃げろ!」
アリアンスがパリンスにしがみ付き言う。
「駄目、パリンスこそ逃げて!」
「馬鹿、男が女を護るのは、当然の事だ!」
パリンスが強がるが、その膝が震えている。
お互いにかばい合うパンリスとアリアンス。
『西刃の名の下に、我が刀に化せ、百爪』
セーイの呪文で、百爪が刀に変化し、哀れな人工魔獣達を滅ぼして行く。
「ピンチに現れるってパターン過ぎるかな?」
トーウの言葉に刀のままで百爪が言う。
『トーウが、とぼけた事を言ってなかったら、もう少し早く到着していたよ』
「結局、あの二人って相思相愛って事?」
夕食の席でホークが質問すると、トーウが苦笑しながら言う。
「これからみたいだよ」
その横では、パリンスとアリアンスが痴話喧嘩を続けるのであった。




