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たい育  作者: 鈴神楽
24/67

逢引と毛皮

隣国の王子と王女のラブロマンス?

「勝利は何時も虚しい」

 ヤオの言葉に、足元に居る白牙が言う。

『それは、虚しいだろうな、動物と釣った魚を真剣にとりあってればな』

 ヤオが遠くを見て言う。

「生きることって戦いなのよ」

 白牙が諦めきった顔でいう。

『本当に戦いだったら、戦神候補が死にかける理由を聞かせて貰えるか?』

 答えられないヤオの手から、死んだふりをしていた山猫が魚を奪っていく。

「こら待て!」

 追いかけるヤオを見送りながら白牙が溜息を吐く。

『生きる事と戦う事は、違うみたいだな』



「なんとか町に着きました」

 ヤオが背中に背負った荷物を見る。

 そこには、ここに来るまでに狩った熊や虎の毛皮が山の様にある。

「長かった」

 しみじみ言うヤオの足元で白牙が頷く。

『山猫を追っかけて崖から飛び降りた挙句、虎の集団と遭遇し、最悪な事に飢えていた為、死に物狂いに襲ってきたのを撃退した後に、まだ冬眠から覚めるわけない熊に何回も襲われたものな』

 頬をかきヤオが言う。

「戦神候補としての運命だね」

 そして、毛皮を売りに行くヤオであった。



 食堂で、力なく量だけがある野菜スープでカチカチのパンを食べるヤオ。

「予想以上に安かったよ」

 白牙がペット好きのウエイトレスから貰った魚のアラを食べながら言う。

『幾らなんでも安すぎないか?』

 ヤオは、丁寧に皿の底のスープをパンにつけながら言う。

「想像は、出来たよ。幾らなんでもあれだけの虎が飢えているのは、異常なんだよ。多分、軍人も含んだ狩が行われたんだ。その上、成果は、全部軍人が持ち帰った。だから、ここの住人が熊の食料になる物を激減させるほど採ったんだよ」

 驚いた顔をする白牙。

『戦争準備。それもかなり大規模な物だな』

 ヤオが最後の一欠けらを食べながら言う。

「春前に仕掛ける、最悪の殲滅戦だよ」

 そんな時、軍人が入ってくる。

「酒を出せ!」

 乱暴な物言いに、店員も直ぐに答え、客もそっぽを向く。

 軍人達が、セクハラも平然と行いながら、食事をするのを見て、白牙がテレパシーで声をかけてくる。

『やってきて良いか?』

 ヤオは、無視して席を立つ。

「お姉さん会計をお願いします」

 ウエイトレスが対応しようとするが、軍人達が放さない。

「小娘の飲み食い代くらい俺達が後で立て替えてやるよ。続きしようぜ」

「そんな訳には、行きません」

 必死のウエイトレスの態度を見てヤオが周りの客に小声で尋ねる。

「ちゃんと払うの?」

 客も小声で返す。

「そんなわけないだろう。何時もツケで、取立てにいっても脅されるだけだ」

 ヤオが溜息を吐いてから、軍人達の所に行き答える。

「ちゃんと払わない人に立て替えて貰ったら、あちきがただ飯を食べた事になりますから、少し開放してくれませんか?」

 軍人の一人が立ち上がる。

「なんだと小娘!」

 剣に手をかけるのを見てヤオが呆れた顔をして忠告する。

「いくらあちきでも、剣を抜いたら叩きのめしますよ」

「ふざけるな!」

 軍人が抜刀と共にヤオに斬りかかる。

 結論は、言うまでも無いだろう。



「これで足りますよね?」

 不安げに代金を差し出すヤオにウエイトレスは、手を横に振る。

「そんな御代なんて要りません!」

 ヤオが悲しそうに言う。

「それが出来たら良いんですが、さっきも言ったようにただ飯を食べるわけには、行きませんので」

 ヤオが未練がましくお金を置くと奥で酒を飲んでいた男が来て言う。

「解ってるね、まだ食事出来るかい? 出来るんだったら奢るぜ」

 ヤオが目を輝かせる。

「本当ですか? 実は、毛皮が安く買い叩かれて金欠だったんです」

 男が頷く。

「そうか、こっち来い」

 そして、騒ぎになるが直ぐに軍人の仲間が駆け込んでくる。

「お前だな、我等に逆らう不届き者は!」

 ヤオは、一言。

「やって良いよ」

 いい加減、相手するのに飽きたのか、その一言で済ませる。

 周囲が眉を顰めている間に白牙が虎の姿に変化して、軍人達を半死半生にしていく。

「こっちの卵料理も頼んで良いですか?」

 媚を売るヤオの言葉に、顔を引き攣らせながら男が言う。

「別に良いが、ほっておいて良いのか?」

 ヤオが振り返ると、哀れな軍人の一人が必死に命乞いをしていたが、白牙が無視して爪を振り下ろそうとしていた。

「白牙、そこまで。そこの軍人さんも酒場の喧嘩でこれ以上被害出したら、次の出兵に影響あるよ。それでもやると言うのなら、白牙に基地を襲わせるよ」

「はい!」

 逃げ帰っていく軍人達。

「どうして出兵すると解るんだ?」

 男の質問にヤオは、先ほど白牙にしたのと同じ回答をする。

「殲滅戦になるって言うのは、徹底した狩でも解る。でも、解らないのは、どうしてそこまで戦争をやりたいかだよ」

 男が失笑をする。

「下らない意地の張り合いだよ。こっちの領土に相手の王族が入った、ただそれだけが原因だよ」

 ヤオは、頬を掻きながら言う。

「逢引だったの?」

 男の顔に驚きが浮かぶ。

 ヤオは、苦笑しながら言う。

「自分が後悔しない選択をしなさい。ただし、難しいからって諦めるのだけは、いけない。困難でも自分がもっとも望む結果に向かって動きなさい。それが、あちきの食事のお礼の言葉だよ」

 ヤオが立ち上がり、店を出て行く。



「ダーレム王子、何処に行っていらしたのですか?」

 側近の言葉に、ヤオに食事を奢っていた男、ダーレムが肩を竦めて言う。

「酒を飲みに行っていた」

 側近が驚いた顔をして言う。

「王子、どうかお慎み下さい。一週間もしないうちに敵国に攻め入るのです。いま王子に何かがありましたら、我が軍の士気に関ります!」

 ダーレムが辛辣な目で答える。

「士気を保ちたいのなら、配下の軍人達に好きにさせるな。酒場で喧嘩し、仲間を呼んだ挙句に返り討ちにされたなんて事が広がれば、戦争どころでは、無いぞ」

 側近が言葉を無くす。

 ダーレムが言う。

「世の中には、人知を超える者が居るんだ、気をつけろよ」

 そして自室に戻ると、先程の言葉を思い出す。

「困難でも諦めない道か……」



『この戦い、どっちが勝つ?』

 周囲の地形を見渡せる山の木の上で白牙が質問すると、木の根元で寝床を作っていたヤオが答える。

「多分、こっちの国が負けるよ。始めから勝ち目が薄い戦いだもん」

 白牙が降りてきて質問を続ける。

『どういうことだ、士気もあるし、下準備も十分だ。相手が油断してる所を付けるのだから勝ち目があるだろう』

 ヤオは、毛布を取り出しながら答える。

「あの後、事情を調べたけど、問題の事件は、前の時期の秋に起こったの。なのに、何故かこの時期まで戦わない。理由は、簡単だよ、勝てないから。それでも、下準備等を行い、勝ち目を見つけてなんとか戦争に持ち込むつもりなんだろうけど、世の中そんなに上手く行かない。こっちが準備してるのなんて相手側も気付いている。こっちが攻めたら最後、それを理由に侵略戦争に移行して、地力で負けて、逆に征服されるのがオチだね」

『助けないのか?』

 白牙の質問にヤオは、不思議そうな顔をする。

「どうして? 真っ当な理由も無いのに国民に負担を負わせてまで、自分の意地の為だけに戦う国王軍を助ける必要性が何処にあるの?」

 白牙が笑みを浮かべる。

『だから、助言したのか。お前の予想では、どう動く?』

 ヤオは、横になりながら言う。

「さーね。こればっかりは、本人達の気の持ちようだからね。あちきは、正しい戦いの手助けをするだけだよ」

 そのまま寝入るヤオであった。



 ダーレムは、軍隊を率いて、隣国との境界線に居た。

「ダーレム王子、出陣の号令を」

 側近の言葉にダーレムは、目の前に広がる、自国の倍はある国を見、国王の意地のみで作った自軍を見る。

 一見すれば、十分に戦える兵士たちも張りぼてなのは、自分が一番知っていた。

 最後に今から攻める砦を見る。

 自国を攻めるのに有効な砦、ここが隣国にとっての自国襲撃の要。

 しかし、予想以上の兵力が無いのを物見から報告されていた。

 この時点で、ダーレムには、相手の作戦が解って居た。

 こちらを勢力圏に誘い込み一気に殲滅し、力をなくした所を逆に征服するつもりなのだと。

 そして、苦笑する。

「俺には、あの砦を落すしか選択肢は、ない。例えそれが我が国を滅ぼすことになっても」

「質問、貴方の望みは、何?」

 いきなりのヤオの言葉に、ダーレムの側近は、驚くが、ダーレム自身は、平然と答える。

「国も守りたい。同時に、あの人も手に入れたい。だが、今の俺の力では、どちらも手に入らない。あの人と会っていた俺は、親父に信用が無い。あの砦を落さなければ幽閉される運命が待ってる。国の為を思ったら、ここで撤退して自決でもした方がいいのかもしれないな」

 苦笑するダーレムにヤオが前に出る。

「貴方は、この国が好きなの?」

 ダーレムが頷く。

「ああ、しかし、このままじゃ駄目だ。親父は、小物で、隣国は、強力だ。ここで戦力を温存しても数年のうちに攻め落とされる」

 ヤオがダーレムの目を見て質問する。

「戦い続ける覚悟がある? 結果にあるのは、全てを失うかもしれないし、周りが全て敵になる。それでも戦い続ける覚悟があるのなら、あちきが道を教えてあげる」

 ダーレムが強い笑みを浮かべて答える。

「ある。もしかしたら、あんたがその道筋を教えてくれるかもと期待していた。俺が欲しい修羅道を」

 ヤオが頷き、ダーレムに伝える、ダーレムが国民を救い、大切な女性を得る方法を。



 隣国の王が砦の陥落の報告を聞いたのは、僅か三日後の事であった。

 砦の陥落にも王も側近たちも動揺がない。

 ただ一人、王女のみ、悲しい顔をしていた。

 将軍が笑みを浮かべて言う。

「後は、相手がいい気になって攻めてくるのを待つだけです。こちらが放った間者の報告では、今回の侵攻に全戦力の半分以上がつぎ込まれているそうです。これを壊滅させれば、こちらの侵攻を止める手段は、なくなります」

 国王が高笑いをあげて言う。

「小国の王の戦略など我等には、通じない事をその身をもって教えてやるわ!」

「相手を小物と思って油断すると良い事無いよ」

 広間の窓からヤオが声をかける。

 全員が驚く中、ヤオが悠然と国王に向かって歩いていく。

「曲者が!」

 兵士達が一斉にヤオに襲い掛かるが、白牙が虎の姿に戻り、蹴散らす。

 ヤオは、国王の前に巻物を手渡す。

「はい、ダーレム王子からの密書だよ、読んで」

 意外な言葉に国王は、その密書を読んでから地面に叩き付ける。

「馬鹿な、現国王を退位させ、即位するから、我が姫を嫁に寄越せば、同盟を結ばせてやるだと! そんなふざけた要望が飲めるか!」

 ヤオが不思議そうな顔をして言う。

「次の国王の祖父となれば、大きな発言力が持てるし、婚礼に因る同盟だから周囲の国に対する牽制にもなるよ?」

 国王が怒鳴る。

「あの様な小国など、自力だで征服して見せる!」

 ヤオが笑みを浮かべて言う。

「どうやって?」

 その言葉に、国王が即答しようとして戸惑うのを見てヤオが続ける。

「侵攻の要である砦が落とされたんだよ、力技の侵攻なんて上手く行かない。逆に相手の短剣が喉仏に当っているような物だよ」

 国王が感情のままに反論する。

「砦を取り戻せば良い話だ!」

 ヤオが将軍の方を見て言う。

「質問、あの砦を力技で落そうとしたら、どれだけの戦力が必要? 因みに補給と兵士の補充は、多分、あっちの方が良い筈だよ」

 将軍が悔しそうに言う。

「最低でも三倍の戦力が必要だ。あの砦には、それだけの投資を行っている」

 ヤオが言う。

「読みは、良かったと思う。砦だけ侵攻するなんて考えない限り、その後の侵攻が続けば十分に対応出来た。最初から、砦を目的とされたら、どうしようも無い、守りきれない。元々、砦っていうのは、敵の侵攻を食い止める物でしか無いのだから仕方ない話だけどね」

 場の雰囲気を完全に掌握したヤオが言う。

「もう一度考えて、元々王女様とダーレム王子の逢引から始まった一件だもん、二人が婚姻を結び、同盟すれば、両方の面子が守られるよ」

 ざわめく広間、国王が言う。

「この密約の保障は、どうなる?」

 ヤオが国王を見て言う。

「そこだよ、この密約は、ダーレム王子が元国王を退位されられるかどうかに掛かっている。だから、密約を結びしだい、砦からは、最低限の兵士を残し、首都にとって帰る手筈になる。ダーレム王子は、砦に王女を呼び、無事戻ってきた時、婚約を結ぶと言っているよ」

 将軍が探るような視線を向けて言う。

「詰り、姫を、密約を守る人質にしようと言うのだな」

 ヤオが頷く。

「ついでに言えば、ダーレム王子の反抗が失敗した時点で、砦の戦力共に姫を返すって。成功すれば、同盟国が出来て、失敗しても砦が戻り、労せず敵戦力を減らせるそっちには、損失が少ないと思うけど」

 側近達が国王の顔を見る。

 そして王女が国王に縋りつく。

「あの人の元に嫁がせてください。きっと双方の繁栄の助けになってみせます!」

 国王が怒りを堪える顔をすると、側近の一人が傍により、耳打ちすると、笑顔になって言う。

「了解した、娘を嫁に出そう」

「ありがとう。お父様!」

 王女が感涙す。



「ダーレム!」

「エメリア!」

 ダーレムと隣国の王女、エメリアが抱き合う。

「こっからが、勝負だよ。はっきり言って、元々国王の臣下を率いて行くんだから寝首をかかれて当然。下手したら敵陣のど真ん中で独りになる可能性だってあるんだよ」

 ヤオの野暮な突っ込みにダーレムが力強く言う。

「それでも、これが国を救う唯一の方法だ。エメリア、すまないが待っていてくれ。絶対に戻ってくる」

「私は、ずっと待ってます!」

 涙ながらに誓うエメリア。

 そして、出撃するダーレムを見送り、涙するエメリア。

 そんな二人を見ながら白牙が言う。

『後は、あの男次第か?』

 ヤオがダーレムの出撃したほうと逆の方を見て言う。

「それだったら、あちきが残ってる訳無いでしょうが」



 ダーレムの出撃から三日が経った夜、それが行われた。

 砦への夜襲である。

 エメリアの父親の差し金である。

 最低限の兵しか残して居ない砦は、容易に落ちると思われていた。

 勝利を確信していた将軍の前にヤオが現れる。

「密約を破るの?」

 将軍が刃を向けて言う。

「あの様な小物との密約など、意味は、無い! 王女様を救い出し、このまま敵国を征服するまでだ!」

 ヤオは、大きく溜息を吐いて、両手を大地に向ける。

 ヤオの右掌に『八』、左掌に『百』が浮かぶ。

『八百刃の神名の元に、我が使徒を召喚せん、大地蛇』

 大地が鳴動して、天まで届きそうな大蛇が出てくる。

『八百刃様、ご命令を』

 ヤオは、一言だけ命令をする。

「約定を破るって偉そうにしている奴に思い知らせてあげて」

 大地蛇が将軍を見る。

『お前等が、約定を破る愚か者どもか?』

 兵士達がすぐさま逃げ出す。

 将軍は、最後の意地でその場にとどまるが、全身から冷や汗を垂らして何も言えないで居る。

「この国の国王が約定を無視したみたい」

 ヤオの一言に大地蛇が了承する。

『了解しました。いまこの国を滅ぼします』

 大地蛇の鳴動が、地震を呼ぶ。

 将軍が頭を地面につけて哀願する。

「どうか、どうかお許し下さい! 正しき戦いの守り手、八百刃様とは、知らなかったのです」

 ヤオが指を鳴らすと大地蛇の鳴動を止める。

「三日だけ時間を上げる、そちらの誠意を見せなよ。もしも、誠意が感じられなかったり、間違っていた場合は、覚悟しなよ」

 飛んで帰っていく将軍を見送るヤオであった。



「八百刃様とは、知らず、ご無礼の数々申し訳ありません」

 国王を退位させて戻ってきたダーレムがヤオの前で平伏する。

「別に気にしてない。ところでエメリアさん、貴女のお父さんは、どんな誠意を見せると思う?」

 複雑な顔をしてエメリアが答える。

「金銀財宝を持ってくるでしょう」

 ヤオは、こちらに向かってくる一団を見ながらダーレムに言う。

「あちきが求めてる誠意がそんなもんだと思う?」

 ダーレムが少し考えてから答える。

「ならば合致した物にしてみせます」

 そう言ってダーレムがエメリアを連れて砦を出て、財宝を運ぶ、将軍の前に出て言う。

「結納の運搬、ご苦労であった。その量こそ、私と妃の結婚を祝う、義父の心と判断して宜しいな」

 戸惑う将軍にエメリアが言う。

「八百刃様が求めるのは、約定の遂行のみ。お父様が約定を守る意思を見せる事こそ、八百刃様が求める誠意だと、ちゃんと理解されていたのですね?」

 将軍が驚いた顔をしていると、ヤオが現れて言う。

「これだけの結納だもん、それ相応の結納返しが必要じゃない?」

 ダーレムが頷く。

「その様で、私の方からは、この砦を持って、結納返しとさせて頂こう」



 こうして、ダーレムとエメリアの結婚は、両国の同盟の証として、周囲の国々の国賓を招えた一大式典とされ、この両国が、二人の息子によって統一され、末永く繁栄することとなるのであった。



『ところで聞いていいか?』

 白牙の言葉に、ヤオは、大きく溜息を吐いて答える。

「今は、あんまり喋る気力が無いんだけど」

 白牙が、ヤオの後ろにある毛皮の山をみて問う。

『それをどうするつもりだったんだ?』

 ヤオが悲しそうな顔をして言う。

「待ちの時間があったから、今後の旅費の足しにと狩をして集めておいたんだけど。出兵が取りやめ、同盟国になれば大量の毛皮が市場に出回って、市場価値が皆無に成る事を忘れていたの」

 白牙が呆れた顔をしながら白牙が言う。

「他の国に行ってから売れば旅費になるから諦めろ。食料が尽きる前に次の町に行くぞ」

 空腹なヤオを引っ張り、旅を続ける白牙であった。

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