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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
最終章

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17-45.魔神城

※先週お休みしたので、今回は少し長めです。

 サトゥーです。ラスボスが単純に強いだけじゃなくなったのは、コンピューターRPGの差別化のせいだとゲームフリークの友人が言っていました。

 なんとなく納得させられそうになりましたが、攻略法を見つけないと勝てないボスキャラは八岐大蛇の時代からわりとポピュラーだった事を思い出して騙されずに済みました。確かにRPG向きのギミックではあるんですけどね。





「追加は来ないわね?」


 三体の巨大な魔族を倒した靄が消えても、魔神城から新手が上がってくることはなかった。


「ああ、好都合だ」


 魔神城には他の紫幼女達もいるだろうし、流星雨や対神魔法でまるごと殲滅するわけにはいかない。


 ここからはオレ一人で潜入するのが最適だろう。


「一人で行こうなんて考えてないわよね?」

「ダメだよ、イチロー兄ぃ」


 オレの考えを読んだようにアリサとヒカルが釘を刺した。


「ご主人様がお強いのは十分理解しておりますが、連戦で消耗したところに魔神と戦えば後れを取る事があるやもしれません」


 それはどうだろう?


 今なら魔王が相手でも、禿頭のヒーローのようにパンチ一発で倒せてしまう気がする。


「それにご主人様のレベルアップだって魔神の企みかもしれないじゃない」

「――企み?」


 さすがにそれはないと思う。


「もう! 忘れちゃったの?」

「イチロー兄ぃを吸収しようとしていたじゃない」

「そう言えば――」


 そんな事もあったっけ。

 あれから音沙汰無かったし、紫幼女が魔神は神々が用意したダミーで完全体になったと言っていたから、すっかり忘れていたよ。


「主様はもう完全体になったよ?」

「だからって、新たに吸収しないとは言ってないでしょ?」


 紫幼女の言葉にアリサが応じる。

 ここまで大人しかった紫幼女だが、魔神の話題には加わらずにはいられなかったようだ。


「魔神の『穢れ(・・)』を除去するにしても、万全の態勢で当たってほしいんだよ」


 ヒカルの言葉からは「できればそれ自体止めてほしい」というニュアンスを感じた。


「――分かった」


 詰め寄るヒカルとアリサに首肯する。


 レベルアップしたお陰で魔神と戦う事になっても負けない自信があるが、消耗した状態で百戦百勝できると考えるほど慢心していないつもりだ。


 それに今の仲間達なら上級魔族相手に無双できるし、ユニークスキル持ちの上級魔族や魔王が相手でも瞬殺される事はないだろう。


「皆を頼りにさせてもらうよ」

「そう来なくっちゃ!」


 アリサがパチンと指を鳴らし、皆に着席するように促す。


「目標は魔神城の中央! ちまちま戦うのは性に合わないわ! 魔神がいる場所に衝角突撃よ!」


 アリサらしい豪快な作戦だ。

 一番高い建物からは黒ヘドロ並みに濃い瘴気が噴き出ているので区別がつきやすい。


「イエス・アリサ。虚空機関を全開にすると告げます」

「ゼナたん、舷側の小型虚空艦の主機関も全開にして!」

「分かりました! 主機関、全開!」

「ガルーダ、押して」


 慣性制御装置でも消しきれない加速を受けて、大型虚空艦が魔神城の中央へと飛んでいく。


「来る!」

「砲撃」

「『不落守護領地パラディン・ドメイン』の展開を宣言します」


 タマと聖域警備サンクチュアリ・ガードで警戒していたミーアの警告を受け、ナナが新しい障壁を重複展開する。


 光線やミサイルが「不落守護領地パラディン・ドメイン」の作り出す障壁に命中し、火花や爆炎となって散っていく。

 光が散るたびに、慣性制御を超える衝撃がシートを通して伝わってくる。

 それでもユニークスキルで強化された大型虚空艦の防御障壁は強力で、この程度の攻撃なら千発くらいは余裕で防げそうだ。


「ま、まずいわよ」


 散発的だった砲撃が、どんどん勢いを増していく。

 魔神城の固定砲台はさほど多くないが、大砲型魔族や光線砲型魔族はなかなかの数だ。


「す、すっごい砲撃ね」


 その砲数は優に百を超え、ナナも不落守護領地で受けるのではなく、使い捨てのファランクスを併用して回避、あるいは受け流す方針に切り替えていた。

 ルルが砲弾を狙撃し、システィーナ王女が浮遊砲台ゴーレムの弾幕で射線を妨害し、ヒカルの術理魔法やアリサの空間魔法による盾がナナの回避行動を補助する。


 力を温存しろって言われたけど、少しくらいの手出しはいいかな?


 空間魔法の物理反射フィジカル・リフレクターで大型虚空艦を包んで、撃ってきた相手に返す。

 残念ながら物理弾は撃ち手まで届かなかったが、光線系はちゃんと反射で届いて光線砲型魔族の多くを屠ってくれた。


「シールド反射はお約束ね! わたしの魔法だとピンポイントで守るのがやっとだからできなかったけど、壮観だわ!」


 アリサがその光景を見てはしゃぐ。


 結構便利だが、大型虚空艦に追従させるのが大変なので、神舞装甲に切り替える。

 これだと覆える面積が限られていて、曲射砲や隙間を狙う狙撃系に対処しきれない。


 素の神舞装甲ほどの強度はいらないから、ちょちょいとコードを変更して――できた。


「マスター、ダメージがなくなったと報告します」

「神舞装甲を少し変えて船を覆ったんだ。こんな感じ――」


 新しく作った魔法――神舞輝鎧でポチを覆う。


「にゅ!」

「ポチが白金色に輝いているのです!」


 神舞装甲は魔神のパーソナルカラーである紫色だったのだが、コード改変した影響か、オレが作った神舞輝鎧は白金色になってしまった。

 たぶん、黄金鎧の上に展開したのと、光線の反射機能を追加したせいだろう。


「これならいけるわ! ご主人様、内側からは攻撃できるの?」

「対神魔法や禁呪以外なら大丈夫だよ」


 さすがに対神魔法や禁呪がすり抜けられるほど、器用な防御障壁にはなっていない。


「十分よ! これならかなり奥までご主人様をエスコートできるわ!」


 アリサが拳を振り上げて宣言する。





 それは良いとして――。


 魔神城上空を飛び回ったお陰で、だいぶ弾幕の密度も減ってきた。


「そろそろ突入できそうかな?」

「イエス・マスター。目標をこのポイントに変更すれば、すぐに強行揚陸が可能だと報告します」


 ナナがメインモニターに映る魔神城の一角にわかりやすい丸を描いた。

 広大な空中庭園のようになっている場所だ。


 まだまだ砲撃が多いけど神舞輝鎧もあるし、なんとかなるだろう。


「よし、手薄そうなそこに突入しよう」

「イエス・マスター、アフターバーナー全開と告げます!」


 ジェット機のアフターバーナーとは仕組みが違うのだが、加速をアップさせるという意味では同じなのでスルーした。


「ほ、砲弾が迫るぅううううううう」


 虚空艦が砲弾の雨をすり抜け、アリサが悲鳴を上げた。

 操艦するナナも、心拍数が上がっている。


「リザ」

「はい――鋼心英雄ヒーロー・ハート!」


 オレの傍らに控えていたリザがユニークスキルで、皆の心に勇気を吹き込んでくれる。


「ひゃっは~?」

「ポチ達はカゼになるのですよ!」


 勇気をブーストされたタマとポチが、砲弾の映るモニターの前で目をぐるぐるさせた。

 加減を間違うと、バーサーカーを量産しそうだ。


 眼前に魔神城を守る障壁が迫る。


「――衝撃、備え! 3、2、1、インパクト!」


 ずんっと重い震動と同時に、障壁と衝角が凄まじい火花を上げる。

 どうやら、魔神城の障壁は神舞装甲に似た仕組みが使われているらしい。


「今なら言える! バリアーに勝てるのは――」

「衝角解放、竜牙パイルバンカー起動します」

「――なぬ?!」


 何かのパロディーを叫ぼうとしたアリサのセリフを、ゼナさんの声が遮った。


 竜牙と言っているが、衝角に使われているのは竜の牙そのものではなく、竜牙粉を研磨剤代わりにコーティングしたモノだ。白剣に使われていた鼬帝国の技術を真似てみた。


「抜けた~」

「砕いたのです!」


 それでも「全てを貫く」竜の牙の権能は有効らしく、神舞装甲を貫き砕いてみせた。


「警報! 瘴気が障壁外の128倍です!」

「聖樹石炉に異常発生。出力低下します」

瘴気障壁(マイアズマ・バリア)が過負荷なの! ピンチなのよ! このままだと中和しきれないの。とってもとっても大変よ! 本当なの!」

「サトゥー様、高密度の砲弾や大型噴進弾が接近中です!」


 おっと、ピンチだ。


「た、大変だわ! どうするご主人様!」

「大丈夫だよ」


 ――瘴気障壁(マイアズマ・バリア)、多重展開。


「瘴気密度低下。4倍まで減少」

「ゼナさん」

「はい、『破邪聖者セイント・プレイ』を瘴気障壁(マイアズマ・バリア)に浸透させます」

「聖樹石炉の不調は継続中。このままだと虚空機関と噴射装置が停止してしまいます」

「回避行動が取れないと報告します。各員は不時着に備えるように告げます」

「こうなったら、わたしが全力全開(オーバー・ブースト)付きで虚空艦を転移させるわ!」

「大丈夫、その必要はないよ」


 ここからなら目的地がよく見える。


 ――ユニット配置。


 目的の空中庭園に大型虚空艦を着地させた。





「結局、ご主人様のチートに助けられちゃった」

「そんな事無いよ」


 皆が頑張ってくれたお陰で、消耗らしい消耗をしていない。


「静かだね……」


 モニターから見える大型虚空艦の周りは、薔薇らしき花が植えられた見事な庭が広がっていた。


「マスター、砲撃が止んだと報告します」

「サトゥーさん、聖樹石炉の不具合は継続しています。『瘴気障壁(マイアズマ・バリア)』回路への供給は問題ありませんが、虚空機関を再起動できるほどの出力が出せません」

「虚空機関本体も警告が出ています。メンテナンス用ゴーレムを派遣していますが、修繕には半時間から二時間は掛かる予想です」


 仲間達から虚空艦の現状報告が入る。


「歩兵接近」

「艦載レーダーに感あり。四方から魔族らしき光点が接近します」


 魔族の反応は多いが、どれも下級魔族ばかりだ。


「サトゥー様、ここは私達白銀メンバーに任せて魔神のもとに向かってください」


 システィーナ王女が白銀メンバーを代表してそう提案してきた。


「ですが――」

「大丈夫ですわ! 艦に近寄るザコは私達が殲滅してみせます」

「私も頑張ります!」

「カリナ様やゼナさんの言う通りです。艦は私達に任せてください」

「サトゥー様達が戻るまでに、虚空艦の修理をしておきますわ」

「マスターサトゥー、ナナがいない間の艦の制御は任せて」


 カリナ嬢、ゼナさん、セーラ、システィーナ王女、コアツーが口々に訴える。


 いざとなったらユニット配置で回収可能だし、高濃度瘴気が吹き荒れる外よりは艦内の方が安全なのは言うまでもない。


「わかりました。艦の修復や敵の撃退より、皆さんの安全を最優先してください」


 彼女達だけで対処できない事があったら、すぐにでも緊急報知ボタンを押すようにコアツーに言い含めておく。彼女なら躊躇無くボタンを押してくれるはずだ。


 オレは「瘴気障壁(マイアズマ・バリア)」や「神舞輝鎧」を張り直し、ヒカルを始めとした黄金メンバーと共に艦外へと出撃した。





 ――ZSHEEEZAAAA。

 ――BRRRROSSSSSYE。


 空中庭園には薔薇の怪人や鋏を持った庭師の魔族が行く手を塞いでいた。


「こういうセンス嫌いじゃないわ。でも、あんまり相手にしてあげられないの」


 アリサが空間魔法の「次元斬」で薙ぎ払う。


「一気に駆け抜けますよ!」

「あい!」

「はいなのです!」


 キラキラした光を曳きながら獣娘達が先陣を切る。

 ルルの魔法銃とミーアが精霊魔法で呼び出した小シルフの群れが、獣娘達が蹴散らして作った通路を押し広げ、ヒカルの術理魔法とアリサの空間魔法がその通路を維持する。


「イレギュラー、あそこに門があるよ」


 オレに背負われていた紫幼女が教えてくれる。


 空中庭園のバラ庭園の端に、魔神城の奥へ降りる門があった。

 門の前には門番らしき魔族二体の姿がある。


「リザ!」

「承知!」

「左はポチがやっちゃうのですよ!」


 リザが竜槍で右の魔族を倒し、ポチが竜牙剣で左の魔族を両断する。


 そんなポチの頭上から、門飾りに擬態していた魔族が奇襲を仕掛けた。

 ポチはチラリと見上げるだけで、戦闘態勢に移らない。


「ポチ、上!」

「大丈夫なのです」


 余裕あるポチの言葉に違わず、奇襲を仕掛けた魔族が空中に静止した。

 いや、よく見るとピンク色の細い糸が魔族を絡め取っている。


「にんにん~、わたあめの術~?」


 ピンッと張ったピンク色の糸にタマが指を這わせ、パチンと弾くと同時に奇襲魔族が糸に斬り裂かれ黒い靄となって消えた。


「時代劇のシバキ人みたいな技ね」


 アリサがツッコミを入れる間に、ポチとリザが扉を押し開ける。

 その向こうは幾つもの螺旋階段がある吹き抜けの大広間になっており、悪夢を見そうなほど魔族がひしめき合っていた。


「アリサちゃん、中は敵が一杯みたいだよ」

「わーってるってば。出し惜しみはなしで行くわよ!」

「うん、分かった!」


 アリサの対魔王用「神話崩壊:劣レッサー・ミソロジー・ダウン」とヒカルの「神話封滅:劣レッサー・ミソロジー・エクステンション」が魔族を一網打尽にする。


「――っううう。ここの魔族はレベルアップしやすいのかしら?」

「うん、そうみたい。私のレベルも上がっている」

「ええ? ヒカルたんも眷属になったの?」

「それは無いみたいだけど、レベル100になっているよ」


 魔物が普通の動物よりも経験値が豊富なように、魔界の魔族が普通の魔物よりも経験値が多い事は考えられる。オレのレベルアップも異常だったし、その可能性は高いと思う。

 ヒカルが限界突破した理由は分からないけどさ。


「ならば、私達にも限界突破の可能性があるという事ですね?」

「タマ頑張るぅ~?」

「ポチだって頑張るのですよ!」

「ん、本気。■■■■■■■……」


 獣娘達が気合いを入れ、ミーアがガルーダ召喚を始めた。


「マスター、敵の補充だと告げます」

「狙い――撃ちます!」


 このままここでレベルアップを図る考えが脳裏を過ぎったが、敵地のただ中である事を思い出して余計な色気を出すのを控えた。


「魔神はどっちだい?」

「えーっと……あれ! あのリボンを巻いてある螺旋階段だよ!」


 紫幼女は螺旋階段を見回したあと、一つの螺旋階段を指さした。

 彼女達が普段使っている螺旋階段には、迷子防止にリボンが巻いてあるらしい。


 オレ達はうじゃうじゃと現れる魔族の群れを蹴散らし、ときおり現れる影の番兵やユニークスキル持ちの上級魔族と死闘を繰り広げながら魔神城の深部へと向かった。





「――強いわね」

「魔将軍ジェネラルは別格だって(あるじ)様が言っていたよ」


 魔神の居室まであと少しの場所で、オレ達は魔王をも凌ぐ強敵と対峙していた。

 ジェネラルに加え、次々に補充される魔騎士アベンジャー達、攻撃の通じにくい影の番兵を相手に仲間達が苦戦している。


「ここはオレが――」

「待って! ここまで来たんだから、イチロー兄ぃは最後まで力を温存して」


 オレがストレージから鞘に収まった神剣を取り出し一歩踏み出したが、それをヒカルが制止する。


「そうよ、ご主人様!」


 アリサがアベンジャーを対神魔法で蹴散らしながら言う。


「ここはわたし達に任せて先に行って!」


 爆発の逆光を背負って言うアリサが格好いい。

 相変わらず男前な幼女だ。


「くぅううっ。一度このセリフを言ってみたかったのよ!」

「アリサちゃん、ずるい! そのセリフは私が言いたかったのに!」


 全身で喜びを表すアリサと本気で悔しがるヒカルが酷い。

 こんな激戦でも彼女達はマイペースだ。


「分かった。ここは任せる。絶対に大きな怪我はしないようにね」


 オレはそう言い含めて、ジェネラルの守る扉をユニット配置ですり抜けた。





『ここまで侵入者が来るとはジェネラルは何をしているデアルカ』

『まったく王である我らが手を出す必要があるとは困ったものデアル』


 トランプに描かれていそうな王様風の装いをした巨大な魔族が、四つの玉座から立ち上がる。


 魔王以外にも王がいるらしい。


「魔神の居室じゃなかったのか?」

「うん、キング達はいつもは他の階にいるはずだよ?」


『裏切り者は貴様デアルか!』

『魔神様をお守りするために、フロアを挿入しておいて正解だったのデアル』


 紫幼女がキングと呼んだデアルな魔族達は、いずれもレベル三五〇。ジェネラルと同様に戦闘向きのユニークスキルを持ち、影の番兵と同種のマントや鎧で武装している。


 レベルアップ前の・・・・・・・オレだったら(・・・・・・・)苦戦したかもしれない。


『『『『来るデアル、イレギュラー』』』』


 声を揃えたキング達が鷹揚に招く。


「それじゃお言葉に甘えて――」


 称号を神殺しに変え、縮地よりも速くキングの足下に飛び込み、閃駆より速くキングを脳天まで漆黒の神剣で斬り裂いた。

 二つに裂かれたキングが、黒い靄となって神剣に吸い込まれる。


『『『なんだとデアル?!』』』


 キング達が驚く。


>「神足通」スキルを得た。

>称号「魔族王殺し」を得た。


 おっと、縮地や閃駆の上位版を手に入れたみたいだ。

 スキルポイントが使い切れないほどあるし、スキル最大までポイントを割り振って有効化(アクティベート)しておこう。


 オレは神剣を納め、歩いて魔神の居室へ向かう。


「イレギュラー、まだキングが残っているよ?」

「大丈夫。もうチェックメイトだ」


 小脇に抱えた紫幼女に告げる。


『『『我らを一柱倒しただけで、勝ったつもりか?!』』』


 残り三体のキング達が激高してこちらに踏み出した。


 次の瞬間、残り三体のキング達が真っ二つになって消滅した。

 神足通のテストがてら、歩き出す前にキング達を斬っておいたのだ。


 アリサやヒカルなら、こんな時に「お前達はもう死んでいる」とでも言ったかな?

 人気漫画の決めゼリフを脳裏に思い出しながら、オレ達は魔神の居室へと足を踏み入れた。





「凄い瘴気濃度だ」


 濃くなりすぎた瘴気――いや、神気の気配があるから、これは穢れだ。

 カリオン神に教えてもらった「瘴気障壁(マイアズマ・バリア)」がなかったら、ザイクーオン神達みたいに穢れに飲み込まれていたかもしれない。


 障壁で処理しきれない穢れを神剣で吸い込みながら、魔神の居室を進む。居室と言っても、国立競技場の何倍も広い。


「――いた」


 居室を飾る幾本もの柱の向こうに魔神を見つけた。


 けだるげに玉座に腰掛け、少し離れた場所にはぐったりとして動かない紫幼女達がひとかたまりになっている。

 不思議な事に、紫幼女達の周りには「穢れ」がない。

 彼女達の中央に浮かぶ虹色の光を帯びた真珠質の大鎌が守っているようだ。


 歩み寄るオレに気付いた魔神が顔を上げた。

 彼のパーソナルカラーである紫色が、穢れに侵蝕されて漆黒に近い色になっている。シガ王国の王都を襲った「魔神の落とし子」と同じ色だ。


 その瞳がオレを見据える。


「竜神め、新たな鈴木一郎を呼んだか……」


 穢れに侵蝕され、口を開くのも億劫そうだ。

 出会って即戦闘っていう最悪のシチュエーションも考えていたけど、わりと穏便に済ませられそうだ。


「だが、俺は既に完全体。もはや貴様は不要だ」

「不要で結構。もとから合体する気はないよ」


 身の危険がないのは重畳だ。


「ずいぶん辛そうじゃないか。穢れを祓ってあげるよ」

「ふん、余計なお世話だ。この程度、不完全な貴様などに手伝ってもらわずとも、自分でなんとかしてみせる」


 前よりも狂気を感じる笑みを浮かべ、オレを睥睨した。

 かなり無理をしているらしく、黒い鱗が浮いた顔に脂汗を流している。


「悪いけど、神々からのオーダーなんだ。力ずくでも『穢れ』を祓わせてもらうよ」


 今のオレならできると思う。


 荒事になるのを覚悟して、背負っていた紫幼女を短距離転移で他の紫幼女の上に退避させる。


「――笑止」


 魔神が目を紫色に輝かせた途端、身体がずっしりと重くなった。

 さきほどまで全能感に満ちていた身体が、今は病気の時のように言う事を利かない。


仮初(かりそ)めの力を失った感想を言ってみろ」


 ――失った?


 ステータスをAR表示して、魔神の言葉の意味を知った。

 レベルが1になっている。スキル欄も魔法欄も全て消えて初期状態になっている。


「何を驚く? 世界にレベル・システムを敷設したのは、この俺だ」


 魔神が優越感に浸った顔で腕を伸ばす。


「無力さを噛みしめて――死ね」


 暗紫色の光を最後に、オレの意識は途絶えた。

※次回「サトゥー死す」の更新は1/5(日)の予定です。

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ISBN:9784040761442



― 新着の感想 ―
しかし偽物取り込んでなれる完全体ってなんなんだろうな。 とりあえず亜神から神に格が上がったって事なんかね?つまり七神と同レベルの存在になったと。 …ぜんぜん大した事無さそうな気がしてくるな?
[気になる点] スキルを失ったのに何故会話が成立するんだ? シガ国語スキルとか翻訳魔法も使えなくなるはずでは?
[一言] 鈴木一郎を召喚していたのは、竜神! 謎の幼女のことかな? 最近出てこないけど……、残留思念、ダリウシイが燃え尽きたのかな? その竜神は初っ端にサトゥーの肥やしになっているのだが、舐めプ……す…
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