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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
最終章

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17-36.紫塔の攻防(3)

 サトゥーです。消化試合の気分で残務処理をしていたら、思わぬミスを見つけて修羅場に突入した事があります。ああいうのって見ない振りで放置したら、解決する手間が何倍にもなるので泣く泣く対処するしかないんですよね。




「ま、魔竜が集団で……」


 塔内とは思えない大空洞の向こうから、尖兵魔竜エビル・ドラゴン・ヴァンガードの群れが迫りくる。

 さっきまで一匹の魔竜と激戦を繰り広げていた白銀メンバーや勇者ハヤトの従者達は、魔竜の大群を見て声を震わせている。


「腕が鳴るのです」

「ういうい~?」


 それを見たポチとタマが腕をぐるぐると回した。


「なかなか倒し甲斐のありそうな敵ですね」

「相手に不足はないと告げます」

「はい、頑張ります!」

「ん、殲滅」


 他の黄金メンバーも久々の強敵にやる気十分だ。


「ほ、本当にやるのですか?」

「ええ、私達にお任せください」


 リザが愛用の魔槍ドウマを構える。


 彼女に新しく与えた竜槍はまだ温存するつもりのようだ。

 魔槍ドウマは幾度も改修を加えたとはいえ、竜槍に比べると貫通力も攻撃力も低い。合理的に考えるならば強敵相手なら竜槍一択なのだが、彼女は使い慣れた愛槍を選んでいた。


「わたくしも戦いますわ」

『待て、カリナ殿。我らでは彼女達の足手まといになる』


 バトル・ハイなカリナ嬢はタマやポチに並ぼうとしたが、それを彼女の相棒である「知性ある魔法道具インテリジェンス・アイテム」のラカが止めた。


「皆さんは次の戦いに備えて休憩していてください。ここは彼女達に任せて大丈夫ですよ」


 マップを見る限り、魔竜の群れを突破したら、強敵は魔界門の前にいる数体だけだ。

 そこまではカリナ嬢達が活躍できる場所はたくさんある。


「強化外装、展開!」


 アリサの指令で、黄金メンバーが隣接亜空間に収納してあった強化外装を装備する。

 基本的に外骨格的なSF風のパワードスーツだが、後衛陣はルルの浮遊砲台を改良した追加ユニットと合体している。砲艦や盾艦には及ばないが、塔内で使うには丁度いい。


「≪黄金騎士レッド(アリサ)≫、≪イエロー・ウィング(リュリュ)≫を鳥篭(ケージ)から解放してほしいのです」


 ポチの音声を彼女の黄金鎧が変換する。


「おっけー! 鳥篭(ケージ)解放(リリース)


 アリサの空間魔法で塔内を運搬されていた下級竜リュリュが亜空間から現れた。

 今日のリュリュはポチとお揃いの黄金装備だ。正体はバレバレだが、今更だろう。


「それじゃ、後衛班! 全力全開で行くわよ!」


 アリサが世界樹の杖を魔竜の群れに向ける。

 その動きに合わせて、強化外装に接続された浮遊砲台の支援装置も魔竜の方を向いた。


神話崩壊:劣レッサー・ミソロジー・ダウン

神話封滅:劣レッサー・ミソロジー・エクステンクション


 アリサとヒカルの対魔王用の魔法が発動する。

 閃光が魔竜を吹き飛ばし、少し遅れてやってきた轟音と震動が身体を揺さぶる。

 二人はわざと収束を甘くして効果範囲を広げたようで、大部分の魔竜が効果範囲に入っており、過半数の魔竜が大きなダメージを受けているようだ。


「うっしゃぁああああああああああああああああ!」


 幾つもの光点が消えていくのを目で追っていたら、横でアリサが拳を振り上げて歓喜の叫びを上げた。


「レベルアップしたぞぉおおおおおおおおおおお!」


 ――おおっ、マジか!


 ついにアリサが「人類の限界」だと言われているレベル99を突破して、レベル100になったようだ。オレにはない「人の限界を超えし者」という称号が増えている。


 皆が攻撃の手を止めてアリサに祝福を贈る。

 ハヤトの従者達は意味がよく分かっていなかったが、戸惑いながらもアリサに向けて拍手を送っていた。


 当然、魔竜が待ってくれるはずがないので、こっそりと空間魔法の「迷路(ラビリンス)」を発動して時間を稼いでおく。


『限界突破おめでとう、アリサ』

『えへへ~、ありがと。あとは頑張ってご主人様のレベルに追いついてみせるわ』


 それはNEXT経験値的にヘビーそうだ。





「そろそろ出てくるぞ」


 オレ達が戦闘態勢に戻ったあたりで、魔竜達がラビリンスを食い破って出てきた。


「仕留められたのは二割くらいかな?」

「たぶんね」


 彼女達の目的は魔竜の分厚い積層型の防御障壁を砕き、膨大な体力を削る事なので、十分に役目を果たしたと言えるだろう。


「次はルルお姉様の番よ」


 アリサが二番手のルルにバトンタッチする。


『マルチターゲット、ロックオン。バーストモード・レディー』

「飽和攻撃開始します!」


 ルルが強化外装の追加パーツから伸びたトリガーを絞り込む。


 次の瞬間、強化外装や追加パーツに装着された24もの加速砲や魔砲が火を噴く。

 加速陣で超加速された青い聖弾がレーザーのような光跡を残して魔竜の群れに降り注ぎ、魔竜の翼や身体を撃ち抜いて、そのまま床を抉っていく。


 アリサとヒカルが体力を削っていたお陰か、予想より多くの魔竜が倒れた。


「行きます」


 先頭を駆け出したリザの身体を蒼い光が瞬き、仲間達を蒼い光が包む。

 ガルレオン神から貸与されたユニークスキル「鋼心英雄ヒーロー・ハート」だろう。


 もちろん、オレが使った強化魔法も効果を継続中だ。


「突撃、なのです!」

「あいあいさ~」


 リュリュの背に乗ったポチとタマの二人が後に続く。


 それを脅威に感じたのか、魔竜達がブレスの体勢に入った。


ホワイト(ナナ)、防御を!」

「イエス・オレンジ(リザ)。醜くおぞましい魔竜達よ! 私が相手になると宣言します!」


 ナナが挑発スキルを篭めた叫びを上げるのと同時に、彼女の身体を朱色の光が流れ、ユニークスキル「聖盾守護者パラディン・シールド」と機動力のある「御座アブソリュート・スローン」を融合させた「不落守護領地パラディン・ドメイン」を展開した。


 魔竜達の暗紫色をしたブレスが全てを飲み込む濁流のように仲間達へと襲いかかる。


 暗紫色の炎が朱色の光を帯びたナナの防御障壁と激突した。

 行く手を遮られた炎は天井へと巻き上がり、天井を溶岩へと変える。


「なかなかの火力だね」

「そーね。もっとも、ナナの防御の方が上みたいだけど」


 アリサが言うように、天井や床を溶岩へと変えた魔竜の炎も、ユニークスキルで強化されたナナの防御障壁を突破する事はできないようだ。


「炎が凄くて突撃できないのです」

「影からショートカットするる~?」

「それで行きましょう。天井から垂れ下がる鍾乳石の影に出口を作れますか?」

「おふこうす~?」


 タマが忍術で作った影のゲートを潜り、獣娘達とリュリュが魔竜の頭上へと出現した。


「魔竜達は消耗しています。個別に攻撃しますよ」

「あいあいさ~」

「らじゃなのです!」


 落下中のタマの姿が消え、魔竜達の腹の下に落ちた影から現れた。


「隙あり~? 『竜刃喰牙ドラゴニック・イーター』」


 無数に分身した忍者タマが、両手に持った小竜牙剣で魔竜達の腹を無残に斬り裂いた。

 それに気付いた他の魔竜がタマに向けてブレスを吐くが、もうそこにタマはいない。忍者は神出鬼没なのだ。


「アフターバーナー全開」


 加速パーツの噴射口の中で、リザの魔刃砲が発動し、さらなる加速力を生み出した。


竜槍貫牙ドラゴニック・ペネトレイター


 必殺技を発動したリザが凄まじい速度で魔竜の背へと着弾した。

 魔竜の背を折り、腹へと抜ける。


 床が大きく陥没し、衝撃波と土煙がドーナツ状に広がっていく。


 普通なら激突した勢いで怪我をしそうだが、強化外装に施された術理魔法の「慣性制御イナーシャル・コントロール」系の装置が、落下の勢いを水平方向のエネルギーへと変えた。


 瞬動を超える速度を維持したリザが、無防備な腹を向ける魔竜から魔竜へと縫うように貫いていく。


「リザが稲妻なのです」


 天井付近を飛行するポチの位置からだと、ジグザグに魔竜を貫くリザの軌道が稲妻のように見えたのだろう。


「ポチ達も負けていられないのですよ!」


 魔竜達の後方側面に回り込んだポチがリュリュに声を掛ける。


「リュリュ、全速力なのです!」


 ――LYURYURYUUU。


 リュリュの翼下に付けられた大型の加速パーツが超加速を発揮した。

 リザのアフターバーナーにも迫る速度で魔竜との距離を縮める。


竜翼牙突貫ドラゴニック・アクセラレーションなのです!」


 白竜リュリュに掴まり、竜牙剣を構えたポチが強化外装の加速陣を使って突撃し、魔竜を何匹も纏めて串刺しにした。


 周りの魔竜達がブレスを吐こうとポチやリュリュに首を向けた。


「させないよ~?」


 どこからともなく声が聞こえ、魔竜達の首に一つの線が走る。

 少し遅れて、その線から暗紫色の炎が噴き出した。


 ――タマだ。


 忍術で魔竜の影から影へと移動したタマが、魔竜の首を落として回っているようだ。


 その時、オレの背後で魔力が膨れ上がった。


「…… ■ 魔狼王創造クリエート・レッサー・フェンリル


 ミーアの長い詠唱が完了し、対魔王用の疑似精霊レッサー・フェンリルが出現する。


「行って」


 レッサー・フェンリルが獣娘達の攻撃から立ち直りつつある魔竜の残党に向かって突撃する。


「無詠唱ずるい」

「まあ、確かにズルイと思うけど、裏技で無詠唱が使えるようになる『自己確認(セルフ・ステータス)』は自分で覚えられるタイプのスキルじゃないのよ~」


 ――あれ?


 もしかしたら、夢幻迷宮で「自己確認」スキルの「祝福の宝珠」を作れるんじゃないだろうか?

 ぬか喜びさせてもかわいそうだし、魔界門を封印した後で夢幻迷宮まで確認しに行ってからミーアに教えてあげよう。


 黄金メンバーが魔竜の群れを殲滅するのを見守りつつ、オレはそんな事を考える余裕があった。





「ひゃっはー、なのです!」

「首刈り~?」


 尖兵魔竜エビル・ドラゴン・ヴァンガードの群れを殲滅したオレ達は、ポチとタマを先頭に魔界門へと繋がる螺旋通路を進んでいる。

 最初は現れた尖兵達を取り合いをする感じだったが、今では魔竜や尖兵奇形竜ミュータント・ドラゴン・ヴァンガードを黄金メンバーが担当し、マンティコアやヒュドラなんかの中堅尖兵達を白銀メンバーやハヤトの従者達が担当する形で落ち着いた。


 オレは皆が消耗した魔力の補充とナビゲーションの担当だ。


不落守護城パラディン・キャッスルと告げます!」


 横合いの通路から噴き出てきたブレスを、ナナの防御障壁が防いだ。


「ご主人様、メタリック鱗が出たわ!」


 アリサが言うように、ナナが防いだブレスの主はメタリックな鱗をした魔竜の一種だ。


 使徒魔竜エビル・ドラゴン・アポスルという名称で、暗紫色のオーラを纏っている。

 初めはユニークスキル持ちかと構えたのだが、殺しても何度か復活する程度の相手だったので、特に問題はなかった。

 今も獣娘達が嬉々として必殺技を叩き込んでいるところだ。


 それはいいのだが――。


「また、何も無いところから現れたの?」


 ヒカルの質問に首肯する。


 さっきの使徒魔竜は突然レーダーに現れた。

 魔素迷彩スキルかと思ったが、使徒魔竜にそんなスキルはない。


『アリサ、このあたりの空間を調査してみてくれないか?』

『おっけー、空間魔法のプロフェッショナル、スーパー・アリサちゃんにお任せよ!』


 空間がそこかしこで歪んでいるのは分かっているのだが、その原因がよく分からない。


『この奥に魔界への門があるのよね?』

『ああ、こんな感じだ』


 オレは眷属通信でマップ情報を送る。

 簡単な映像イメージなら送れるみたいなんだよね。


『やっぱそうね。根っこは門よ。途切れまくってるから分かりにくいけど、こことかここを繋いでいけば、ほら』


 確かにアリサが指摘した部分を補完すれば、門から伸びた植物の根のような形で歪みが広がっているのが分かる。


「聞いて」


 ミーアがオレの服を引っ張る。


 ――ん?


 藍色の光がミーアの輪郭で瞬いている。

 ウリオン神から貸与されたユニークスキル、聖域警備サンクチュアリ・ガードを使ったようだ。


「この先、危険」


 ミーアがそう言った瞬間、何が危険なのか脳裏に伝わってきた。

 聖域警備が持つ「邪悪の接近を察知し、周知する力」によるモノだろう。


「これは……」


 シガ王国の王都で「魔神の落とし子」と対峙した時のような気配を感じる。

 最近だと、ザイクーオン神が「魔神より取り上げた禁忌の力」を使った時に似ている。


 気配の根源は空間の歪みの根元と一致する。


「門は思ったよりもヤバそうだ」


 ――とはいえ魔界への門を放置して帰るわけにもいかない。


「ここからは警戒を強めて行こう」


 オレは勘の鋭いタマとミーアの聖域警備、さらにアリサの空間魔法とゼナさんの風魔法で警戒を強めつつ通路を前進する。


「やっぱり、どんどん濃くなるか……」


 通路を進む程に魔神の落とし子の気配が濃くなり、魔竜がどんどん強くなっていく。

 空間の歪みが酷くなってきて、壁から魔竜の頭や尻尾なんかの身体の一部が生えている場所まであった。

 門までもう少しだが、安全の為に仲間達は外に出した方がいいかもしれない。


「ナナシ様!」


 さっきまで傷付いた白銀メンバーを癒やしていたセーラが、オレを呼ぶ。


「テニオン神から神託がありました!」


 また、何か厄介事らしい。


「ま、魔界が人界に侵蝕してきているそうです! このままだと魔界と人界が融合してしまうかもしれないとテニオン様が!」


 おっと、それはちょっとピンチかもしれない。

※次回更新は10/20(日)の予定です。


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[気になる点] なんでサトゥーには人の限界を超えし者の称号ないんでしょう? サトゥーは人じゃないって事、確定って考えていいんかな?
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