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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
最終章

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17-30.インターミッション2

 サトゥーです。嵐の前の静けさという言葉がありますが、災害前の重苦しい静けさって、なんだか好きなんですよね。





「もう! 本当に死んじゃったかと思って心配したんだから!」


 アリサに呼ばれた気がして戻ってきたら、なぜか怒られた。


「それより、皆に怪我はないかい?」


 王都の悲惨な状況からして、魔神かその眷属が襲ってきたのは間違いないだろう。


 いや、ガラス化した爆心地の異様な状況からして――。


「オレの複製体が王都で自爆したのか?」

「そうよ! 本物だと思って、どれだけ焦ったか!」


 皆に心配させた事を詫びつつ、国王や王都の人達が無事に避難を完了している事を確認してほっと息を吐く。


 まったく、王都のど真ん中で自爆させるなんて、神々に会ったら文句の一つも言わないとね。


「とりあえず、人が住めるように復旧しようか――」


 ストレージや魔法を併用しつつ、王都の残骸を回収し、前に異界に複写した建物を残骸の代わりに移設していく。

 中の家具までは再現されていないので、低所得層に限らず、当面生活できるだけの生活用品は支援した方がいいかもしれない。


「……相っ変わらずチートよね」

「あはは、便利だからいいじゃない」


 オレが復興する様子を見て、アリサとヒカルが呆れたような顔で、微妙に失礼な感想を呟いた。


「ミーア、手伝って」

「ん、頑張る」

「興味深いと報告します」


 オレの横ではアーゼさんとミーアが、精霊魔法を使ってオレが移植した木々を根付かせてくれている。木々の根が動くのが面白いのか、ナナが興味津々だ。


 アーゼさんの魔法を見る機会は少ないけど、やっぱり自然を扱わせたらオレよりも巧みだね。


「ご主人様、私達も何かお手伝いできる事はございませんか?」

「なら、寝具や食糧を出すから、指定の場所まで運んでくれるかな?」

「あいあいさ~?」

「ポチの運搬の妙技を見せるのですよ!」

「わ、わたくしも手伝いますわ!」


 ストレージに常備している災害救助用の支援物資を出すと、獣娘達とカリナ嬢が率先して運び始めてくれた。


「私もお手伝いします!」

「すぐに台車を取り出しますね」


 ゼナさんやルルも手伝おうとしてくれたが、二人には他にやってほしい事がある。


「待ってください。ゼナさんは殿下と一緒に、避難した人達に脅威は去ったと報告に行ってください」

「はい、わかりました!」

「ゴーレム隊は置いていかなくて構いませんか?」

「ええ、殿下のゴーレムは避難民を帰還させる時の護衛に使ってください」


 騎士団や兵士達も一緒に避難しているはずだから不要かも知れないけれど、力持ちなゴーレムなら色々と役立つシーンもあるだろうからね。


「ルルとセーラさんは炊き出しの準備をお願いします」

「はい、頑張ります!」

「サトゥーさん、私達二人では人手が足りないので、孤島宮殿の家妖精(ブラウニー)達を手伝いに呼んでも構いませんか?」


 もとよりそのつもりだったので、セーラの申し出に快諾する。


「アリサとヒカルは近隣の都市を回って物資の補充を頼む」

「おっけー!」

「うん、行ってくるよ」


 購入に必要な現金をストレージ内で格納鞄に入れて二人に渡す。


「マスター、護衛兼運搬要員として同行すると告げます」


 アーゼさんとミーアの植樹を見ていたナナが、いつの間にか戻ってきていた。

 丁度良いので頼んでおこう。





「――というわけで、ニンフに連れられたオレとアーゼさんはテニオン神の神域の一つに招かれたんだ」


 復興作業が一段落したので、ルルやブラウニー達が用意してくれた軽食を摘まみながら、オレがテニオン神のニンフに連れられていった後の話をする。


「どんなトコだったの?」

「すごく神秘的で光と緑に溢れた場所だったわ!」


 アリサの質問に、アーゼさんが答える。

 蕩けるような笑顔を見ていると、復興の疲れも吹き飛ぶね。


「精霊界?」

「んー、それは違ったと思う。精霊はいっぱいいたけど、どちらかというと祈りや神力の方が色濃かったから」


 ミーアの言葉に、アーゼさんが首を左右に振る。


 ……精霊界なんてあるのか。

 今度、皆で遊びにいこう。


「そこにあったCTスキャンみたいな光る輪っかがある通路をくぐり抜けた先で、アーゼさんと二人で待機させられていたんだ」


 たぶん、CTスキャンみたいだったあれが、オレの身体の複製を作る為の神器だったのだろう。


「そこでしばらくアーゼさんと綺麗な景色を堪能していたら――」

「堪能していたのは本当に景色?」


 ――するどい。


 堪能していたのは、綺麗な景色に感動するアーゼさんの横顔だ。

 もっとも、そんな事を言うと鉄壁ペアがスクランブルを掛けるので、無表情(ポーカー・フェイス)スキル先生の助けを借りつつ「もちろんさ」と答えておく。


「――とまあ、そんなわけで、アリサの声が聞こえた気がしたから戻ってきたんだよ」


 待機場所には魔神から身を守る為の結界が張られていて閉ざされていたし、ニンフは何度呼んでも無反応だったから、普通に来た道を戻るのではなくユニット配置を使った。


 結界には眷属通信を阻害する効果もあったのか、アリサの言葉はほとんど聞き取れなかったけど、最後の方はなんだか切羽詰まった感じだったから慌てて帰ってきたのだ。


「愛されているね」

「ん」

「ま、まーね」


 アーゼさんに言われて、ミーアがすぐに頷き、アリサは少し照れた感じに肯定した。

 オレに見られているのに気付くと、照れ隠しにプイッと横を向く。


「ヒカル、こっちの状況を詳しく教えてくれるか?」

「うん、イチロー兄ぃがニンフ達と行った後にね――」


 大雑把には何があったか分かっているけれど、もうちょっと詳しく知りたいので、一番知ってそうなヒカルに確認した。

 説明が終盤に進んだところで、セーラがズダンッと立ち上がる。


「サトゥーさん! テニオン様から神託がありました!」


 そこまで言うと、セーラの顔から表情が抜け落ち、彼女の身体に淡い緑色の光が瞬く。


『魔神討伐』『失敗』『想定外』


 セーラの口から同時に幾つもの単語が飛び出す。

 どうやら、複製体を使って魔神を滅ぼせなかったのは、神々にとっても想定外の事態だったらしい。


『保険』『欠片』『自壊因子』


 魔神が取り込んだ「複製体」の残骸に、失敗時の保険として自壊因子を仕込んでおいたって事かな?

 ちょっと分かりにくいけど、神託が繋がった後から精神魔法で繋ぐとセーラの負担が大きそうなので我慢する。


『魔神』『推察』『自壊』


 やがて、魔神は自壊因子を植え付けられた事に気付く、と。


『魔神』『自棄』『警戒』


 魔神が自暴自棄な行動に出るのを警戒しなさいって事だろう。

 まあ、普通に考えてターゲットは七柱の神々だと思う。


『謝罪』『都』『爆心地』


 最後にそう告げて、テニオン神はセーラへの神託を終えた。


 オレが力を失ったセーラに手を差し伸べるより早く、ミーアに指示されたナナがセーラを抱き留めた。オレを見たミーアが、微妙にドヤ顔なのが解せない。


「神様が謝るとは思わなかったわ」

「うん、意外」


 アリサの呟きに、ヒカルが同意する。


「神様からの警告もあった事だし、対魔神対策は今後もしばらく続けるとしようか」


 オレの言葉に仲間達が声を揃えて賛成してくれた。





 それから半年――。


 オレ達は平和な日々を送っている。


 獣娘達はカリナ嬢と一緒に修業の日々だ。

 魔神戦で竜槍ヘイロンを失ったリザの為に、天竜の牙を使った新しい竜槍を用意したのだが、リザが初心に返って魔槍ドウマで己を磨きたいというので、それはストレージに収納したままになっている。

 リザが率先して始めた原始魔法の修業は、古竜大陸の老古竜の手ほどきを得て、幾度か発動に成功するに至ったとの事だ。

 達成したのは、ポチ、リザ、タマの順番だったのが印象的だった。

 なお、カリナ嬢は未だに発動が成功しないそうだ。


 魔法組――ヒカル、アリサ、ミーア、システィーナ王女、ゼナさんの五人は対神魔法のマイナーダウンや付与魔法化を研究し、ある程度の成果を出す事ができた。

 新しい対神魔法の「神殺ノ刃ゴッド・スレイヤー」を行使するには杖艦の補助を必要とし、発動にもアリサとヒカルの協力が必要なほど高コストだ。

 だが、その威力は素晴らしく、実験対象にした上級魔族は神剣で斬られたかのように抵抗なく真っ二つになってしまった。

 こちらも上級魔法や普通の禁呪として使えるレッサー版が現在開発中で、もうすぐ仕上がるはずだ。

 メリーエスト皇女やリーングランデ嬢も、開発に協力してくれていたらしい。


 対神魔法に忌避感を覚えるセーラは、元巫女長で現巫女見習いのリリーと共に、テニオン神の中央神殿へと赴き、破邪の秘儀を学んでいる。

 神々から貸与された権能はそのままなので、何かあっても二人は「隠密隠者ハーミット・ハイド」で生き延びてくれるはずだ。


 エチゴヤ商会の面々は支配人のエルテリーナや筆頭秘書のティファリーザを始め、陰に日向にオレ達のサポートをしてくれている。

 中核メンバーが多忙で開店休業に近いブライダル・ナイツは、ナナを護衛に付けて迷宮でのレベル上げやエチゴヤ商会の護衛任務を主にこなしてもらっている。

 なお、オレが太守を務めているブライトン市の太守代理でもあるリナ嬢は、わりと早い段階でブライトン市に戻り、太守城館と「ブライダル・ナイツ、ブライトン支部」を切り盛りしてくれている。


 そして、最後にルルだが――。


「がんまー線レーザー砲、励起完了――狙い、撃ちます!」


 身体にぴったりフィットするSFな気密服を着たルルが、大型虚空艦の主砲を撃つ。


「やった! 命中しました!」

「おめでとう、ルル」


 照準機器のサポートがあるとはいえ、100キロメートル向こうの岩塊を撃ち抜けるとはさすがだ。


「でも、動かない的相手なのに、5発も外しちゃいました。もっと練習しないといけませんね」

「オレの方でも砲身の精度をもう少し上げられないか研究してみるよ」


 魔神対策が概ね完了したので、虚空の怪生物相手の戦闘手段を模索しているのだが、こちらは思ったよりも広大な空間が壁になりそうだ。


『マスター、エネルギー残量が三割を切りました。魔素補充の為、エーテル流に乗り、採魔翅を展開する事を推奨します』

「わかった、許可する」

『アイアイサー』


 大型虚空艦は人間の乗務員の代わりに、AI――ゴーレムと同種の思考回路を搭載している。

 アリサやヒカルはAIが乗っ取られたら危険だと主張していたが、それは人間が乗っていても同じなので、複数のAIを協調して使う事と、アリサ達が装備するのと同じ対精神魔法対策装備などで対応する事になっている。

 もちろん、人間の乗務員が乗って操縦する事も可能だ。


 ナナが搭乗した時はカリオン神から貸与されたユニークスキル「聖盾守護者パラディン・シールド」と連携して冗談みたいな防御力を誇る。


「ルル、そろそろ地上に戻ろうか?」

「私はもう少し『しみゅれた・・・・・』で練習したいです」


 やる気満々なスナイパー・ルルを虚空船に残し、オレはアーゼさんが待つ孤島宮殿へと戻った。

 なお、アーゼさんもミーアが使う「神話喰狼ミソロジー・イーター」や「魔狼王創造クリエート・レッサー・フェンリル」をマスターしている。

 アーゼさんは生き物を傷付けるのを嫌がったので、レベリングはしていない。





「王都近傍の紫塔から魔物が溢れた?」

「公都近傍の紫塔もです!」

「ブライトン市のリナ様から、紫塔から溢れた魔物と交戦中との報告が入りました。援軍を切望されています」


 孤島宮殿に戻るなり、ブラウニー達が慌ただしく右往左往していた。


「ご主人様、世界中の紫塔でスタンピードみたい!」

「そうみたいだね」


 どうやら、休暇は半年で終わりのようだ。


「総員、戦闘準備!」

「「「はい!」」」「なのです!」


※次回更新は9/8(日)の予定です。


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