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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
最終章

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17-28.権能実演

 サトゥーです。いつの間にか周知の言葉になっている単語は多いですが、その原典まで知られているモノはそれほど多くないと思うのです。まあ、現代ならネットの検索エンジンである程度は知る事ができますけどね。





「ここならいいだろう。誰から試す?」


 神々から貸与されたユニークスキルを確認する為に、オレ達は大砂漠をコピーした異界に来ていた。

 この異界は対神魔法の実証実験で壊れないように、補強に補強を重ねてあるので性能実験には丁度良いのだ。


 さすがに暑いので、エアコン完備の大型飛空艇に乗り込んでいる。

 今日はアーゼさんも一緒だ。魔神やザイクーオン神に狙われる彼女を、迂闊に帰すわけにいかないからね。


「マスター、私から行くと報告します」


 ナナが一番手に名乗り出る。


「なら、わたしがテストの相方をするわ。インフェルノと対魔王用の『神話崩壊:劣レッサー・ミソロジー・ダウン』の順でいいかしら?」


 アリサはなかなか過激だ。


「できればインフェルノの前に、弱めの上級火魔法で試してくれ」

「さすがに神様の権能なんだし、大丈夫じゃない? インフェルノならナナの『不落城キャッスル』でも防げるんだし、心配なら神様結界の内側でキャッスルを使えばいいんじゃない?」

「マスター、魔神の攻撃を防げないと意味がないと主張します」


 それもそうか――。


「分かった。オレもナナの傍で待機するよ」


 それなら万が一の場合も安全だ。


 アリサに「ご主人様ってば相変わらず心配性なんだから」と溜め息を吐かれたが、ナナが怪我をするよりはいいのでスルーした。


 オレはナナを連れて砂漠の中央へと移動する。


『準備はいい?』

『もう少し待ってくれ』


戦術輪話タクティカル・トーク」越しの確認に待ったを掛ける。


「ナナ、ユニークスキルを」

「イエス・マスター。ユニークスキル『聖盾守護者パラディン・シールド』を起動すると告げます」


 ナナの体に朱色の光が瞬くと、オレ達の周囲を半径100メートルほどのドームが覆った。


「サイズは変えられるか?」

「イエス・マスター。現在の十分の一から十倍までのサイズに変更可能だと告げます。サイズを小さくすれば防御力が最大三倍に、サイズを最大まで広げれば防御力が半分以下になると報告します」


 その辺の情報はなんとなく分かるらしい。


 その内側に黄金鎧の後期型「不落城キャッスル」を発動させた後で、アリサにGOサインを出した。


『いくわよー、火炎地獄(インフェルノ)


 紅蓮の業火が砂漠に広がり、一瞬でオレ達を呑み込む。


 インフェルノの炎が聖盾守護者パラディン・シールドのドームに接触すると、ドームの表面にカリオン神の聖印を中央にあしらった半透明の盾が現れた。


「マスター、前面の防御力が跳ね上がったと報告します」


 見た目通り、シールド部分で防ぐのが得意らしい。

 やがて、アリサのインフェルノが消える。


『アリサ、次は三方向から中級の火弾を撃ち込んでくれ』

『おっけー、豪火弾ブラスト・ショット


 三方向から飛んできた強力な火弾が、聖盾守護者パラディン・シールドのドームを焼く。


「マスター、シールドが現れないと告げます」

「一定以上の攻撃の時だけ現れるみたいだね」


 続けてアリサの上級火魔法で二方向から攻撃してもらったら、ちゃんとシールドが二方向に出た。


「二つの場合、防御力が下がったようだと報告します」


 なるほど、あの盾はドームの防御障壁の密度を変化させて出現するもののようだ。


「近接武器は竜牙剣だろうと防げるみたいだね」


 竜牙剣で突くと盾模様の表面がパリパリと剥がれていくが、そのたびに内側に新しい盾が現れる感じだ。


 魔神が使っていた神舞装甲の仕組みと似ている。

 あの魔法はカリオン神の「聖盾守護者パラディン・シールド」を模して作られたのかもしれない。


「マスター、長時間の防御は不能だと報告します」


 ナナが言うとおり、竜牙剣などの竜牙武器を防げるのは10秒ほどのようだ。

 それを過ぎると、聖盾守護者パラディン・シールドのドームが揺らぎ、最終的に崩壊してしまった。

 まあ、それでも「全てを貫く竜の牙」を合計10秒も防げれば上等だろう。


「ナナ、聖盾守護者パラディン・シールドの重ね掛けはできるかい?」

「イエス・マスター」


 重ね掛けは三枚までいけるようだ。


『アリサ、やってくれ!』


 概ね特性が分かったので、最終チェックを行う。

 オレも自分の黄金鎧を着込み、「不落城キャッスル」や使い捨ての防御盾ファランクスを発動できるように準備しておく。


『ちゃんと防いでよ! 神話崩壊:劣レッサー・ミソロジー・ダウン


 対魔王用の「神話崩壊」が炸裂する。


 聖盾守護者パラディン・シールドは一瞬だけ「神話崩壊」を防いだが、あっという間に砕け散り、二枚目にもヒビが入って余波が三枚目に届いてしまった。


 オレの「神話崩壊(ミソロジー・ダウン)」を防いで砕けたカリオン神の神理盾に比べると、かなり弱めのユニークスキルみたいだ。

 まあ、最強の手札を貸し出したりはしないよね。


「マスター、試したい事があると告げます。許可を」

聖盾守護者パラディン・シールドの使用回数は大丈夫かい?」

「あと二回くらいは問題ないと告げます」


 検証を続けて分かった事だが、安全に「聖盾守護者パラディン・シールド」を使えるのは六回ほど、その後は一時間に一回分ずつ回数が復活する感じだった。


「実験開始を告げます」


 ナナが「不落城キャッスル」を発動し――。


 ――おおっ。


 キャッスルの多重障壁に朱が差したと思ったら、一気に朱色に染まった。


「実験成功。『不落城キャッスル』と『聖盾守護者パラディン・シールド』を合成し、『不落守護城パラディン・キャッスル』の生成に成功したと報告します」

「すごいな……」


 まさか、そんな技ができるとは思わなかった。


 漫画やラノベだと普通にあるが、実際にそれを成し遂げる事ができたのは、ナナの柔軟な思考のお陰だろう。たぶん、オレだと常識に邪魔されてできなかったと思う。


「マスター、アリサに評価用の攻撃を頼みたいと懇願します」

「そうだね。インフェルノから試すかい?」

神話崩壊(ミソロジー・ダウン)をお願いします」


 ナナが確信を持った顔で言う。


「わかった。『――アリサ、頼む』」


 後半は戦術輪話越しにアリサにGOサインを出す。


 オレは先ほどの準備をしつつ、アリサの「神話崩壊:劣レッサー・ミソロジー・ダウン」が着弾するのを待つ。

 轟音と震動がビリビリと周囲を揺らす。


 だが、着弾した神話崩壊はパラディン・キャッスルの表層を何枚か剥がす事に成功したが、効果が切れる最後まで、朱色の防御障壁を貫く事ができなかった。


『おう、ぐれいと~?』

『すごく凄いのです!』

『ん、強固』


 仲間達が歓声を上げる。


『もの凄いわね。もしかしたら、杖艦を使った本物の「神話崩壊(ミソロジー・ダウン)」でも防げるんじゃない?』


 さすがにそれはどうだろう?


 レッサーじゃない方は隣接する複数次元を丸ごと破壊するから、パラディン・キャッスルでも防げないと思う。

 相殺するのが限界じゃないだろうか?


「マスター、トライしますかと尋ねます」


 ナナが無表情な顔にわくわくした雰囲気を纏うが、さすがに危険すぎるので、パラディン・キャッスルを多重展開できるか、展開後に本人だけが脱出できるかのいずれかが可能にならない限り試すべきではないと思う。


「いや、止めておこう。後で機動力のある『御座アブソリュート・スローン』や大型飛空艇が展開した『不落城キャッスル』と合成できないか試しておいてくれ」

「イエス・マスター」


 とりあえず、ナナが貸与されたユニークスキルの実証実験はこんなものでいいだろう。

 魔神と正面切って戦うのは無理でも、初撃を防ぐ事くらいは可能になったと考えていいはずだ。





「セーラが消えたのです!」

「むぅ」


 セーラがテニオン神から貸与されたユニークスキル「隠密隠者ハーミット・ハイド」を使うと碧色の光に包まれた直後、彼女の姿が仲間達の前から消えたらしい・・・


 レーダーやマップからもセーラの光点が消えている。

 マーカー情報によると、「マップの存在しない」場所にいるようだ。


「どこに行ったのかしら?」

「ゼナ、あなたの風魔法でも分かりませんか?」

「試してみます。■■■……」

「わたしも空間魔法で調べてみる」

「精霊魔法」

「それじゃ、私もやってみようかな?」


 ゼナさんの風魔法、アリサの空間魔法、ミーアの精霊魔法、ヒカルの術理魔法で索敵したが、セーラを見つけ出す事は叶わなかった。

 言い出しっぺのシスティーナ王女も土魔法で索敵したが、先の四人同様にセーラを見つけられなかったようだ。


「タマ、あなたにも分かりませんか?」

「にゅ~? いるけどいない~?」


 リザに問われたタマが、眉をループしそうなくらいしかめて身体ごと首を傾げる。

 セーラがいる事自体は分かるが、どこにいるか分からない感じだろうか?


 仲間達の魔術に加えて、タマの探知をも惑わせたのだから、「隠密隠者ハーミット・ハイド」の性能はなかなか大したものだ。


 ――おや?


 半透明のセーラ(・・・・・・・)が笑いを堪えながら、抜き足差し足でオレの前にやってくる。

 そのままキスしてこようとしたので、唇を人差し指で阻止しておいた。


 アーゼさんの前で誤解を招きそうな危険なイタズラは止めてほしい。


「いたのです!」


 どうやら、セーラの認識阻害が解除されたようだ。


 オレが触れたからか、セーラが驚いて集中が途切れたからかは分からない。


「むぅ、ぎるてぃ!」

「ちょっと! イタズラするならお菓子をあげるわよ!」


 アリサ、落ち着け。


「どうやって見破ったんですか?」

「どうも幻術の(たぐ)いは通じない体質みたいです」


 セーラの質問に答える。


 最初からセーラの姿が半透明で見えていたんだよね。

 それでも意識を逸らすとしばらく場所が分からないくらいだったから、普通の幻術よりも高性能だと思う。


 まあ、でも十分な性能があると言えるだろう。

 魔素迷彩みたいに魔力をバカ食いする事も、制御が綱渡りみたいに難しいわけでもないみたいだしね。


「何回くらい使えそうかわかる?」

「一日に五回くらいですね。一度使えば集中が乱れない限り、鐘一つ分くらいは継続すると思います」


 アリサの問いにセーラが答える。


 後の検証で分かった事だが、効果は彼女自身だけでなく発動時に彼女が意識した相手にも及ぶようだ。その場合、一緒に認識阻害効果を及ぼし合った者達は、互いの姿が見えるらしい。





「これが神の力ですか……」


 蒼い光に包まれたリザが、勇ましい表情で呟いた。

 彼女に貸与されたのはガルレオン神の「鋼心英雄ヒーロー・ハート」だ。


「それじゃ、試しに行くよ」


 オレの「威圧」スキルでもリザは怯まない。


「けっこう凄いね」


 今度は殺気を篭めて威圧を使う。


 ――おっ、リザの表情に揺らぎが見える。


 精神魔法の「怯懦カウアダス」や「恐怖フィアー」なんかの魔法を重ねてみた。


「さ、さすがはご主人様です」


 リザが荒い息を吐いて脂汗を流していた。

 でも、これだけ耐えられれば十分だろう。


「きゅう」

「ぽち~?」

「ポ、ポチちゃん!」


 声の方を振り向くと、興味本位で顔を出したポチが目を回して気絶していた。

 オレは慌てて威圧や魔法を解除する。


 好奇心は猫を殺すというが、好奇心に負けたのは猫人のタマではなく犬人のポチだったようだ。


 なお、リザのユニークスキルは一定範囲内にいる味方にも効果があるらしい。

 発動時に効果範囲内にいないといけないのは、目を回したポチを見れば自明だろう。


 アクティブスキルではあるが、使用回数の制限は今のところ感じないらしい。

 ギアスや精神支配系の魔法にも効果があるようだし、魔神に睨まれて動けなくなる事態は回避できそうだ。





「なんだか、薄気味悪い洞窟ね」

「ここは迷宮です」


 不安そうなアーゼさんにそう答える。


 オレ達は場所をデジマ島の夢幻迷宮に変えて、ミーアがウリオン神から貸与されたユニークスキル「聖域警備サンクチュアリ・ガード」とゼナさんがヘラルオン神から貸与されたユニークスキル「破邪聖者セイント・プレイ」の確認を行なっている。


 暗がりが怖いのか、不安そうなアーゼさんが腕に掴まってくれるのが素敵だ。

 不埒な考え――照明を落としたり、不気味な効果音を出したり、怪しい影をちらつかせたりして怯えさせようなんていうのは、なんとか思いとどまった。


 なお、反対側の手はアリサとミーアが壮絶な取り合いをしており、オレの肩にはポチが乗っかり、さらにポチの上にタマが肩車しているというトーテムポールのような状態になっていて、なかなかカオスだ。


「ゼナたん、前からゴブが来るわよ」

破邪聖者セイント・プレイを発動します!」


 目を閉じたゼナさんが祈ると、橙色の光が彼女の身体の表面を流れる。

 次の瞬間、ゼナさんから溢れた神々(こうごう)しい光が、周囲を目映く照らす。


「ろすと~?」

「小鬼さんが消えちゃったのです」


 タマとポチがデミゴブリンがいた地面をツンツンと(つつ)く。

 弱い魔物だと蒸発してしまうようだ。


『マスター! 迷宮の魔物が地下に向かって逃げ出しました。マスターのいる地上付近に危険な存在が現れたかもしれません』


 迷宮を管理する迷宮核(ダンジョン・コア)から通信が届いた。


 どうやら、騒がせてしまったようだ。

 オレはコアに詫びを告げ、しばらく検証で騒がせる事を承諾してもらった。


「次、私」


 藍色の光がミーアの体表を流れると、ミーアの瞳に藍色の光が宿る。


「全方位邪悪」


 ツインテールの髪を揺らして右に左に頭を振り、ミーアがポソリと呟いた。


 ミーアの「聖域警備サンクチュアリ・ガード」は邪悪な存在を検知し、それを仲間に周知するユニークスキルだ。

 どうやら、迷宮は存在自体が邪悪らしい。


 オレ達は移動しながら検証を続ける。


「にゅ!」

「あの岩陰」


「天井の凹み」

「にゅにゅ!」


 検証の為、斥候翅蛇や迷彩蜥蜴などが潜む場所を回ってみたが、ミーアはタマやオレのレーダーと同等のスペックでそれらを見抜いてみせた。


 タマに匹敵するなんて、かなりの高性能だ。


「セーラたんの認識阻害は分かるのかしら?」

「むぅ、邪悪のみ」


 どうやら分からないらしい。


「セーラたん、ちょっと」


 アリサに耳打ちされたセーラが「隠密隠者ハーミット・ハイド」を再使用し、ニマニマ笑顔でオレに歩み寄る。


「邪悪!」


 ミーアの杖がぽこんっとセーラの頭を打つ。


「見つかってしまいました」

「どうやら、邪な考えがあれば『聖域警備サンクチュアリ・ガード』で見つけられるみたいね」

「邪悪なんて失礼です。私は純粋に親愛の情を――」

「ごめんごめん。純粋、理解」


 セーラの抗議をアリサがミーアみたいな短文で雑な感じに流す。


「ゴーレムでも怯えるんですね」


 ゼナさんの「破邪聖者セイント・プレイ」は精神攻撃の効かないゴーレムにも効果があるようだ。

 ナナをマネして風魔法に「破邪聖者セイント・プレイ」の力を乗せられないか試していたが、残念ながら一度も成功しなかった。

 やはり、柔軟過ぎるくらい柔軟な思考が必要なようだ。


「ゼナさん、疲れはありませんか?」

「はい、大丈夫です!」


 ゼナさんが力こぶを作るポーズで元気さをアピールする。

 彼女のユニークスキルも、リザと同様に回数制限がないも同然のようだ。


 オレ達はユニット配置でセリビーラの迷宮に行き、レベル50級の「区画の主(エリア・マスター)」に対して使ってもらったが、問題なく怯えさせる事ができた。

 行動不能にはならなかったが、明らかに隙が増えたので使い途は多そうだ。





「こんなにノンビリしていていいのかしら?」


 孤島宮殿の庭園で、アーゼさんが不安そうに呟く。


 神々のバックドアを警戒して孤島宮殿以外を仮拠点にする事も考えたのだが、そもそもパリオン神の欠片を持つヒカルと魔神の欠片を持つアリサとテニオンの巫女であるセーラがいた時点で、今更感が強いので気にしない事にしたのだ。


 問題があれば別の拠点なんてすぐに作れるしね。


「大丈夫ですよ。ボルエナンの森は代わりの方が見てくれているんでしょう?」

「それはそうなんだけど……」


 テニオン神が上位者権限で眠っていたハイエルフを叩き起こしたので、アーゼさんがここにいても世界樹の管理は大丈夫だ。

 一日に何回かはアーゼさんの様子を見に巫女ルーアさんがやってくるしね。


「それにしても、もう10日も経つわよ。神々や魔神からはなんのリアクションもないの?」


 アリサの問いに首肯する。


 接触しやすいように、毎日王都邸に顔を出しているが、今のところどちらからも接触はない。

 人の世の混乱も一時期ほどではないが、未だに七柱の神々を信じる信じないで言い争いが絶えないらしい。中には魔神に帰依する者も少なくないようだ。


「気長に待つよ」


 昼間は仲間達の修業やユニークスキルを使いこなす練習に付き合い、夜は皆を寝かしつけてから魔神に通用する手段を増やす事に尽力している。


 魔神に通用しなかった「竜破剣ドラゴン・スレイヤー」に対神魔法のコードを流用して強化する事や、ナナの「聖盾守護者パラディン・シールド」を見本に神舞装甲もどきの開発も進めている。

 例の黒い槍や神剣もどきの方は、良いアイデアがなくて改良を進めていない。


「ご主人様、ティファさんが来たわよ」

「クロ様」


 エチゴヤ商会のティファリーザが、オレの横に座るアーゼさんを見て表情を固まらせる。

 前に紹介したのに、まだハイエルフであるアーゼさんに慣れないようだ。


「ご注文のプラチナや各種素材をお持ちいたしました」

「ありがとう。仕事が早くて助かるよ」


 希少素材が多いのに二日で揃うとは思わなかった。


「いえ、仕事ですから」


 なんだか、ティファリーザの表情が硬い。

 何か悩みでもあるなら聞いてやりたいところだが、今は時間が足りないので、フォローはアリサに頼んでおこう。


「サトゥー、それは何に使うの?」

「作業用ゴーレムや制御装置の材料ですよ」


 虚空にある造船ドックで使うヤツだ。


「運搬~?」

「ポチは荷運びのプロなのですよ」


 タマとポチが荷物を虚空へ繋がるゲートへと運んでくれる。


「巨大ロボや合体ロボはまだ?」

「アリサ、古い。時代はリアル系だよ」

「何言っているのよ、スーパーロボや合体には浪漫があるわ!」


 アリサとヒカルが馬鹿な事を議論しだした。

 悪いがロボを作る気はない。少なくとも、今の作業が終わるまでは。


「にゅ!」

「サトゥーさん!」


 王都のチェックに行っていたタマとゼナさんが戻ってきた。

 どうやら、何か見つけたようだ。


 オレは二人に導かれて王都邸へと向かう。


「大丈夫だ。これは魔神じゃない」


 オレは王都邸のエントランスに浮かぶ光――ニンフを見上げながら、タマとゼナさんを下がらせる。


 どうやら、魔神の再襲撃より先に、複製体の作製準備の方が整ったようだ。


『我が(あるじ)であらせられるテニオン女神様からの召喚である。頭を垂れて疾く参れ』


 ニンフは相変わらず尊大だ。


 オレはゲートから集まった仲間達に手を振って、ニンフの作ったゲートへと飛び込んだ。

※次回更新は8/25(日)の予定です。


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ISBN:9784040761442



― 新着の感想 ―
[一言] >テニオン神が上位者権限で眠っていたハイエルフを叩き起こした 叩き起こされたハイエルフがぼやくSSを読んでみたいです。 休暇中に出社を命じられたことがあるかもしれないサトゥーなら共感があ…
[一言] 対神「竜破剣ドラゴン・スレイヤー」名は神斷閃(閃光みたい速いて神を分斷する)というてすヒヒヒハハハ
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