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デスマーチからはじまる異世界狂想曲( web版 )  作者: 愛七ひろ
最終章

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17-2.園遊会(1)

※文字数が8000文字を超えてしまったので、「園遊会」を前編後編の二話に分離しました。


 サトゥーです。親の世代の話だと、結婚式は結婚式会場で豪華なコース料理を振る舞うのが普通だったそうです。

 友人の結婚式で、結婚式場のチャペルで式を挙げて、その後は立食形式のガーデンパーティーで交流を楽しむガーデンウェディングに招かれた事があります。料理こそ豪華なコース料理に比べると見劣りしていましたが、双方の友人や親族が自由に会話できるスタイルはなかなか楽しかったのを覚えています。





「――ふう、ようやく一息つける」


 ようやく挨拶の行列が尽きた。


 私設騎士団の結成式やパレードを終えたオレ達は、式典会場とは別の場所に用意された広大な庭で王家主催の園遊会に主賓として招かれていた。

 園遊会では楽しくお喋りしたり、贅を凝らした軽食を摘まんだり、様々な遊戯を楽しんだりするのだが――。


 オレはそういった事を楽しむ暇もなく、すさまじい数の貴族達からの挨拶を受けていたのだ。


「あはは、主賓はだいたいこんな感じだよ」

「ミトが半分くらい引き受けてくれたお陰で助かったよ」


 ヒカルが分担してくれていなければ、日が落ちるまで挨拶の行列が途切れる事はなかっただろう。


「サトゥーさん、ミトさん、果実水をどうぞ」

「ありがとうございます、ゼナさん」


 オレはゼナさんがくれた上質の葡萄水で渇きを癒やす。


「お肉~?」

「ご主人様の為に丸焼きのお肉をゲットしておいたのですよ」

「ありがとう、二人とも」


 タマやポチと一緒にオーミィ牛の丸焼きを食べに行く途中に、貴族達からの挨拶攻勢を受けてしまったので、オレの代わりにお肉を確保してきてくれたようだ。


 タマとポチの頭を撫でた後、お皿に盛られた焼き肉を受け取る。

 ほどよく焼けたお肉も美味しいが、上に掛けられた甘辛いソースが合っていて、肉の旨みを何倍にも引き出してくれている。実に美味だ。


「キノコ、美味」


 今度はミーアがカラフルなキノコの串焼きを持ってきてくれた。

 なかなか毒々しい色だが、着色されているだけで、普通に食用キノコらしい。


「美味しいよ、ミーア」

「ん」


 ミーアが満足そうにこくりと頷く。


 食べ終わった皿を近くのメイドさんに渡したところで、後ろから声を掛けられた。


「サ――ペンドラゴン伯爵様、騎士団の結成おめでとうございます」


 まだ、挨拶していない人がいたのか――そう思って振り返ると、そこには私設騎士団のメンバーにして、オレが太守を務めるブライトン市の太守代理であるリナ・エムリン子爵令嬢がいた。


 最初に会った時はまだ子供だったけど、今では年齢以上に大人びた雰囲気になっている。


「私のような者まで栄えあるブライダル・ナイツに入れていただいて――その、とても光栄です!」


 リナ嬢は緊張しているのか上手く言葉が出てこないようだ。


「何言っているのよ! リナっちがブライトン市を治めてくれるから、ご主人様もこうして自由に行動できるんだから。『私のような者』なんて卑下しちゃダメよ」


 するりとオレの腕に抱きついてきたアリサが、リナ嬢を窘める。


「ん、偉い」


 反対側の腕に抱きついてきたのはミーアだ。


 こうして同じようなポーズを取ると、アリサの成長具合がわかる。小学生高学年くらいだったアリサも今では中学生くらい――は言い過ぎだけど、それなりに成長しているようだ。

 ポチやタマも少しずつ成長しているけど、レベルアップによって筋力値が増えすぎた弊害か、普通の獣人よりも成長が緩やかに見える。


 おっと、それより今はリナ嬢にお礼を言わなくては――。


「二人の言う通りです。リナさんのお陰でブライトン市は私やムーノ侯爵の予想以上に発展しています」

「いえ! 私の力じゃありません! エチゴヤ商会の皆さんや文官の皆さんが優秀だったからです」

「それを上手く使いこなしたのが太守代理の功績じゃない! 素直に誇っていいのよ!」


 恐縮するリナ嬢の背中を、アリサが大阪のおばちゃんのようにバンバンと叩いて言う。

 リナ嬢が「本当にそうでしょうか?」と上目遣いの視線で問いかけてきたので、「その通り」という意味を込めて笑顔で頷いてみせた。

 リナ嬢が少し頬を染め、誇らしげな感じで微笑む。


「サトゥー様、私達の晴れ姿も褒めてください」


 ピンク色の髪が特徴のメネア王女が、カリナ嬢の護衛メイドであるエリーナや新人ちゃんを引き連れてやってきた。

 メネア王女の鎧姿は初めて見たが意外に似合っている。


 彼女をメンバーに加えるかは色々と揉めたようだが、カリナ嬢と話が合う数少ない人材という事と、召喚魔法という育て甲斐のあるギフトを持つ事、そして影城があるルモォーク王国の王族という事の合わせ技で、加入が決まった。

 影城は魔神とも関わり合いが深い場所のようなので、今後とも調べに訪れる可能性がありそうだしね。


「ええ、とてもお似合いです。エリーナやトトナも素敵だよ」

「ありがとうございます、サトゥー様」

「えへへ~、照れるっすね」

「あ、ありがとうございます! とっても嬉しいです!」


 リクエスト通りに褒めると三者三様の反応がある。

 それを見た黄金騎士チームや白銀騎士チームの面々も集まってきた。


「マスター、私も褒めてほしいと告げます」

「マしター、僕も~」

「マしター、……私もお願いします」


 オレは仲間達の凜々しくも可愛い鎧姿を順番に褒め、一緒に園遊会を楽しむ。


 仲間達の嗜好が伝わっていたのか、肉料理と甘味が多い。

 リザが「美味です」と勧める肉料理は概ね美味しい。貴族が多く参加する園遊会で、リザ好みの歯が折れそうなほど硬い肉は交ざっていないようだ。

 肉料理で満腹になっては他の料理が楽しめないので、ある程度で切り上げて、ルルお勧めの中華風飲茶やミーア&アリサお勧めの歯が溶けそうなほど甘いスイーツを堪能して回った。





「ハーレムね、サトゥー」


 そんな誤解を招く表現で声を掛けてきたのは、勇者ハヤトの従者だった「天破の魔女」リーングランデ・オーユゴック嬢だ。

 その後ろには大魔法使いでサガ帝国の皇妹メリーエスト嬢もいる。


「――姉様」


 オレの横にいたセーラが嫌そうな顔をする。

 相変わらず彼女は姉のリーングランデ嬢が苦手なようだ。


 リーングランデ嬢の方はセーラが大好きなので、「ただいま、セーラ」と軽い口調で挨拶している。


「リーングランデ様、それにメリーエスト殿下も。サガ帝国の方は落ち着いたのですか?」

「ええ、ペンドラゴン伯爵が貸してくれた高速飛空艇のお陰で、地方都市の太守や有力者の重い腰を上げさせる事ができたわ」


 彼女達二人にも私設騎士団のドレスアーマーを作っていたのだが、サガ帝国の帝都が半壊した件で、リーングランデ嬢と一緒にサガ帝国へ行っていた。

 本来なら、サガ帝国の主流から距離を取っていたメリーエスト皇妹がする仕事ではないのだが、皇帝を始めとした皇族の大半と帝国政府の要人のほとんどを失った状況で、帝都の臣民達が困っているのを放置できなかったようだ。


「あら、お帰りなさい」


 二人に気付いたアリサが話しかけてきた。


「こんなに早く帰ってこられるなら、騎士団の結成式を遅らせれば良かったわね」

「予定ではもっとかかるはずだったもの。仕方ないわ。それに、いつまでも向こうにいると、新皇帝に奉り上げられそうだったから、早く戻ってきたのよ」


 中央の皇族や貴族が激減した事で、都落ちしていた地方の貴族が早くも勢力を増しているそうだ。これからもしばらくは政情不安定な感じらしい。


「向こうから連れ戻しに来るんじゃない?」

「継承権順位は低いけれど、皇族で生きている男子は何人かいるから大丈夫でしょ。むしろ私よりもトリーメヌスを担ぎ出して傀儡皇帝にしようと考える馬鹿者が出てきそうで頭が痛いわ」


 ソルトリック第一王子の話だと、彼の長男の第一夫人候補で故サガ皇帝の長女であるトリーメヌス皇女は、故国の帝都を襲ったゴブ王による大災害を聞いて寝込んでいるそうだ。

 両親や兄弟の多くが亡くなっているのだから無理もない。


 まあ、それはメリーエスト皇妹も同じか。


「メリー、そんな先の話より、祝辞が先よ」


 リーングランデ嬢が頭を押さえるメリーエスト皇妹の肩を叩く。


「サトゥー、騎士団結成おめでとう」

「そうでしたね。おめでとうございます、ペンドラゴン伯爵」

「ありがとうございます」


 二人の祝辞に礼を言う。


「ねぇねぇ、二人のドレスアーマーも届いているけど、着替えてくる?」

「そうね――周知しておいた方が良さそうだし着替えさせていただくわ。リーンはどう?」

「メリーが着替えるなら一緒に行くわ」


 アリサの提案に二人が首肯する。


「ここでサトゥーの愛人の一人だと周知しておけば、無駄な縁談を持ってくる親戚も減るでしょ」


 リーングランデ嬢が冗談めかした口調でそんな事を口にした。


「愛人ではなく私設騎士団のメンバーですよ」


 大事な事なので、ちゃんと訂正しておく。


「そうだったわね。団員、団員」


 サトゥーは仕方ないわね、とでも言いたそうな顔は止めてください。





「メリーエスト殿下、サガ帝国の方はどのような状況なのでしょう?」

「混乱はしていましたけれど、帝都を襲った魔王達や『ゴブリンの魔王』が当代の勇者達に倒されたという話のお陰で、帝都以外の都市は落ち着きを取り戻しつつありました」


 問いかけるシスティーナ王女に、ドレスアーマーを着たメリーエスト皇妹が答える。


「それもこれも、勇者ナナシや黄金騎士団のお陰です。ありがとうございます」


 メリーエスト皇妹がヒカルやオレ達を見回した後、そう言って皇族女性の最敬礼をした。

 周りに余人がいないとはいえ、遠巻きにしている人達からざわめきが起こる。


 どうやら、彼女達もオレ達が勇者ナナシと黄金騎士団の正体だと気付いてしまったようだ。


「私達じゃなくて、勇者ナナシや黄金騎士団にお礼を言わなきゃ」

「そうですね。今度会った時に言っておきます」


 ヒカルの言葉に、メリーエスト皇妹が素直に頷いた。


「それに、帝都の魔王討伐じゃ、勇者セイギと勇者ユウキも活躍したって聞いたわよ」

「ええ、私達が帝都に寄った時も、文句を言いながら瓦礫の撤去や臣民の慰撫を頑張ってたわ」


 実にあの二人らしい。


「帝都はやっぱ大変そうだった?」

「ええ、被害は大きかったですけど、瓦礫の下敷きになった人達は残っていないようですし、大きな瓦礫も撤去されていましたから、数年もあれば復興できるでしょう」


 帝都を去る時に、そのへんはやっておいた。

 オレなら半日仕事で済むけど、普通にやったら結構大変だからね。


「それにしても……」


 リーングランデ嬢が赤ワインのグラスを空けてから、思い出したように呟く。


「初代勇者が倒した『ゴブリンの魔王』が復活してたなんてね」

「ええ……三大魔王が相次いで復活するなんて、『世界の終焉』が始まったみたいで嫌ですわね」


 メリーエスト皇妹が不穏なワードを口にした。

 そういう危険なフラグは実現しそうなので止めてください。



※次回更新は2/17(日)の予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 三大魔王を全て討伐した勇者ナナシは、真の勇者の三冠勇者だね? ロリコン勇者の未練嫁は、中途半端すぎる。 鞍替えするほど割り切れず、サトゥーを盾に使いたいだけ? モヤモヤするね。 先々代色…
[気になる点] ムーノ家メイドの『新人ちゃん』は、ムーノ市でトルマの乗っていた馬車に撥ねられ、瀕死の重傷を負っていたところをサトゥーに助けられた名前不明の少女(95話参照)で、ペンドラゴン村から行儀見…
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