16-63.パリオン神国、再び(2)
※2018/9/10 誤字修正しました。
サトゥーです。害虫退治は方法を誤ると、かえって害虫の大繁殖を招く事があるとテレビやSNSで誰かが言っていました。重要なのは正しい情報を周知する事ですね。
◇
「あれは都市核の間への入り口かな?」
タマと一緒に影を通って「不死の魔導王」のいる聖堂地下へとやってきた。
無数のアンデッド達が都市核の間へ侵入しようと頑張っており、目的のリッチもその中に交ざっているようだ。
紫色の燐光を纏ったリッチの拳が床を殴る度に、火花のような青い魔力障壁が砕けて飛び散っている。
「アンメイクスィビ!」
オレは舌を噛みそうなリッチの名前を呼んでみたが、リッチは無反応だった。
製作者の「ネモ」という名前を挙げても、結果は変わらない。
ただひたすら、床にある扉らしきモノを殴るだけだ。
どうも、元ホムンクルスのリッチには自我のようなモノがほとんど無いようで、与えられた役目をひたすら実行するマシンのような印象を受けた。
代わりに、アンデッド達の後ろで偉そうに指揮をしていたレイス・ロードが、オレに気付いて赤黒い光を帯びた空洞の瞳で睨め付けてくる。
――ZRWEEEAIYTTTZH!
気持ち悪い絶叫を上げたレイス・ロードが錫杖を振り回しながら突撃してきた。
――おや?
光魔法系の対アンデッド用浄化魔法か聖碑を使おうと思ったのだが、その顔に見覚えがあったので、浄化するのを中断して魔力を帯びたパンチで殴り飛ばしてみた。
AR表示では固有名のないレイス・ロードだったが、その顔は間違いなくパリオン神国の国家元首であるザーザリス法皇その人だ。
たぶんだけど、上級魔族の襲撃で命を落としたのだろう。
殴り飛ばされたレイス・ロードは、茫然とした雰囲気で頬を押さえた後、リッチの傍で作業していた他のゴーストやレイスをオレ達の方にけしかけてくる。
「にんにん~?」
近寄るレイスやゴースト達はタマが青い光を帯びた忍者刀でサクサクと退治してくれた。
『ホムホムはどんな感じ?』
『反応無しだ』
後方で待機していたアリサから空間魔法の「遠話」が入った。
『そっか、だったらさ――』
アリサの言葉が途中で止まる。
『アリサ?』
『――げげっ。ご主人様、飛空艇が――』
「にゅ!」
アリサの言葉の途中で、アクロバティックな動きで無双していたタマが耳を立てる。
最新型の黄金鎧は、兜内部のタマの耳の動きに合わせて兜の猫耳飾りが動くので、とても可愛い。
レーダーの光点の動きは並列思考で確認していたが、魔空船を追跡していたサガ帝国の大型飛空艇が、都市の上空を通過するところのはずだ。
何か飛空艇に問題があったのかとマップを開いたところで、僅かな危機感知の反応と同時に、大きな震動が地下広間に届いた。
天井が割れ、魔空船の先端が飛び出してきてそのまま地面を抉る。
土煙の向こうから飛んでくる破片を、タマが「にんにん」と言いながら蹴散らしてくれた。
ゴーストやレイスは既に滅した後らしい。
オレは乱入者である魔空船の方に向き直ったが、特に対処する必要はなさそうだ。
黒い靄となって消える魔空船の陰から、日本刀のような聖剣を持った勇者メイコが現れる。
前に彼女が使っていた聖剣とは違うが、彼女のユニークスキル「無限武器庫」から取り出したモノに違いない。
『ご主人様! 大丈夫? ねぇってば!』
『オレもタマも大丈夫だよ。そっちも怪我はないか?』
『良かった。こっちは大丈夫よ。後で一緒にお風呂入ったら、見えないところが怪我していないか見てあげ――』
アリサが馬鹿な事を言い出したので、嘆息しつつ通話を切る。
その時、勇者メイコと目があった。
「ちっ、あんたか――あんたは後よ!」
オレを見つけた勇者メイコが悪態を吐いた後、都市核の間へ通じる床の扉がある方へと歩いていく。
そこには、魔空船激突による激震も無視して、リッチがひたすら魔力障壁を殴り続ける姿があった。
今気付いたが、魔空船に押しつぶされたのか、レイス・ロード――ザーザリス法皇がいなくなっていた。
もしかしたら、幽界に逃げのびたのかもしれないが、この状況だと痕跡を探すのは骨が折れそうだ。
「ユウキ! あんたが言っていた場所があったわ! さっさと来なさい」
勇者メイコが土煙を手で払いながら床にある扉を見下ろし、「無限収納」から取り出したトランシーバーのような形をしたゴツイ通信用魔法道具に向かって叫んだ。
「メイコ、君たちの目的は――」
「邪魔ね」
都市核なのかと問う途中で、勇者メイコが予備動作も殺気なしに、聖刀の間合いの外からリッチを唐竹割りに斬り裂いた。
「にゅ!」
驚くタマを宥めながら、勇者メイコの方を見る。
「なに? あんた達の獲物だった?」
勇者メイコがキッとした顔でオレの方を睨み付けながら噛みついてきた。
「いや、違――」
「なら、いいでしょ」
オレの言葉を途中で遮って話を終わらせた勇者メイコが、先ほど彼女が降りてきた方に視線をやる。
「セイギ、先に行くな! 都市核を支配するのはボクだぞ!」
「あんまり遅いと、俺が先に支配してしまうぞ」
「ミカエル! ボクを抱えて下に降りろ」
「わたしはミェーカです」
「いいから、早く!」
「ずるいぞ! ユウキ!」
騒がしい声の内容からして、勇者セイギと勇者ユウキが来るようだ。
バサリと羽の音がして、翼人の従者に抱かれた勇者ユウキが姿を現した。
もっと暴君な感じの外見を想像していたのだが、中学生としても小柄な感じで、ショートヘアがよく似合う中性的な顔立ちをしている。
「仮面に紫髪? もしかして、君は仮面の勇者ナナシ?」
「はじめまして、勇者ユウキ」
オレは勇者ユウキに首肯しつつ、勇者ユウキに挨拶する。
「ユウキ! 飛ぶなんてずるいぞ!」
勇者セイギが文句を言いながら、「司法国家」シェリファードで会った事のある従者達を連れてやってきた。
「げっ、レベル99? ――ああ、シガ王国の勇者か」
オレを見て一瞬だけ怯んだ勇者セイギが、すぐに称号からオレの素性を察して安堵する。
「ちょっとメイコ! 扉の上に生ゴミ放置するなよ」
「うるさいわね。あんたの従者に片付けさせたらいいでしょ」
勇者ユウキが真っ二つになったリッチの死体を嫌そうに見下ろして、勇者メイコに噛みついている。
「にゅ!」
――危機感知。
勇者メイコや勇者ユウキの方だ。
「逃げて!」
タマが間延びせず警告を発し、勇者メイコが瞬動でその場を離れ、勇者ユウキを抱えた翼人の従者が同じく瞬動で移動する。
「え? なになに?」
状況把握が遅い勇者セイギの傍に縮地で移動し、彼の従者達がいる方向へ投げ飛ばしてやる。
「スライム?」
「違う。あれは――」
従者の翼の陰から、さっきまで自分達がいた場所を見た勇者ユウキの疑問を、勇者メイコが否定する。
「――魔王だ」
勇者メイコの断言がトリガーだったかのように、スライム状だった魔王がリッチの姿へと復元する。
瘴気視を有効にするまでもなく、魔王リッチの周りに漆黒のオーラが蠢いているのが見えた。
AR表示される魔王リッチのレベルは61。
賢者の塔にあった資料だと、ユニークスキルを多く持つ魔王ほど初期レベルが高い傾向があると書かれてあり、ユニークスキルを三つ持つ魔王の場合、最低でもレベル70と書かれてあったが、この魔王を見る限り、あまり信頼できる情報ではなかったようだ。
それにしても、この地で再び魔王が現れるという神託はなかったはずだ。
まあ、その前の上級魔族の襲撃も神託で警告されなかったし、思った以上にパリオン神国はパリオン神の不興を買ってしまったらしい。
『ご主人様!』
地上で待機していたアリサから空間魔法の「遠話」が入った。
『精霊達が一斉に逃げ出したってミーアが言ってる!』
『ああ、それはこっちで魔王が生まれたからだろう』
『魔王?! なら、私達もそっちに行くわ』
『いや、来なくていい。ここはあまり広くないから、アリサ達が力を振るいにくいんだ。それにサガ帝国の勇者達がここにいるし、タマと二人でサポートして勝たせるよ』
戦闘狂の勇者メイコが一番レベルが高くて63、広範囲の魔法攻撃を得意とする勇者ユウキはレベル62、索敵が得意な勇者セイギはレベル57で二人より少し低めだ。
連携には不安がありそうな構成だが、オレ達や従者達の支援がある状態で三人がかりなら、レベル61の近接系魔王を倒す事も可能だろう。
『分かったわ! リザさん達も魔空船を倒し終わったみたいだし、一緒に都市部外縁で待機しているわ』
『ああ、こっちの勇者で手に負えなくなったら救援を要請するよ』
まあ、レベル80間近なタマ先生一人でも勝てそうだけどさ。
オレの視線の先で、魔王が両の拳に暗紫色の炎を帯びる。
そして、そのままただのリッチだった時のように、地面を殴りだした。
「おいおい、こっちは無視かよ」
警戒態勢を解いた勇者セイギがぼやく。
従者達から油断しないように注意されて、ふてくされたような顔で自分の聖剣を抜いてブンブンと振る。
「今のうちに倒しましょう――これは私達の獲物よ! あんたは手出ししないでよね」
言葉の途中で勇者メイコがオレ達の方を振り向いて釘を刺してきた。
「メイコ! そんな事を言ってる場合じゃない! なんかヤバいぞ!」
勇者ユウキが警告する。
魔王リッチは地面を殴るだけで勇者達を攻撃する様子はなかったが、問題はその威力だ。
先程までとは桁違いの豪拳が、あっという間に魔力障壁を砕ききり、次の一撃でその下にある扉ごと床を砕いてしまった。
「うわっ、うわああああああああああああ」
扉と同時に、さっき魔空船が激突しても無事だった地下室の分厚い床が砕け、勇者セイギの悲鳴と共に、都市核がある地下空洞へと落下し始めた。
オレはタマを小脇に抱えて天駆で危地を脱し、飛行能力の無い勇者セイギやその従者達を、魔術的な念動力である「理力の手」で持ち上げてやる。
勇者ユウキは翼人従者が抱えて飛び、勇者メイコはマンガやアニメのように落下する岩から岩へと飛び移って移動していたので、そのままスルーしておいた。
アリサ達は既に離脱後だったので問題なさそうだ。
◇
「さすがに放置はまずいかな?」
都市核の間を満たす青い光の中を、魔王リッチが意外に速い足取りで都市核へと向かっている。
AR表示によると、現在の都市核は主がいない状態のようなので、このまま魔王リッチが接触したら、支配権を獲得できそうな状況だ。
「させるかあああああ!」
「ちっ、さっさと始末するんだった」
勇者ユウキや勇者メイコが、それを阻止しようと瞬動を併用して全力疾走しているが、このままだと魔王リッチの方が早く到達できそうだ。
――まあ、オレの方が早いけどさ。
オレは目視のユニット配置で、都市核の傍らに移動する。
『ようこそ、上位領域を支配する偉大な王よ。この地を衛星都市として登録されますか?』
「ああ、登録する」
『登録が完了しました』
ログを確認したが特に称号は増えていないようだ。
「あああああ!」
「ずるいぞ! 勇者ナナシ!」
オレが都市核を掌握したのを知った勇者ユウキと勇者セイギが非難の声を上げた。
魔王リッチは既に手遅れなのも気にせず、こちらへ向かってくる。
「二人とも! 魔王を倒すのが先でしょ!」
勇者メイコが青い光を帯びながらそう叫んで、魔王リッチに背後から斬りかかる。
前回と異なり、レベル差がほとんど無いにも拘らず、勇者メイコの斬撃は一太刀で魔王リッチの首を刎ね飛ばした。
首は勢いよく転がっていったものの、魔王リッチの胴体は頭部を失った首から鮮血を噴水のように噴き出しながらも、歩みを続ける。
弱い魔王かと思ったけど、なかなかしぶといようだ。
「さっさとくたばれ!」
勇者メイコが横薙ぎの斬撃で魔王リッチの片足を斬り飛ばした。
地面に倒れた魔王リッチだったが、今度は両手で這いながらも都市核を目指す。
「気味悪い……セイギでもメイコでもいいから、このキモいのをなんとかしてよ」
勇者ユウキが遠くから叫ぶ。
「俺がやる!」
勇者セイギが転びそうになりながら、地面を這う魔王リッチに駆け寄る。
地面がでこぼこだから、瞬動スキルが低くて上手く使えないようだ。
「いくぞぉおおおおお!」
助走を付けた勇者セイギが青い光を帯びながら、魔王リッチ目がけて跳躍した。
「――<断罪の剣>」
勇者セイギの持つ剣が、彼のユニークスキルの力を帯びて眩いばかりに青く輝く。
普通なら先に聖句を使って聖剣の力を引き出すはずだが、彼はそれを忘れているようだ。
「滅びろ、魔王ぉおおおおおおおおおお!」
魔王リッチの背に突き立てられた聖剣は、刀身の半ばまで深く刺さり、次の瞬間、青い炎で魔王リッチの身体を焼き尽くしていく。
魔王リッチの胴体は激しく痙攣して暴れ、勇者セイギを吹き飛ばしたが、黒い靄となって燃え尽きるまで聖剣が抜ける事はなかった。
「ずいぶん、あっけなかったわね」
前に剣魔王と激戦を行なった勇者メイコが、納得いかない顔で呟く。
「――変だ」
魔王を倒したのに、「神の欠片」が現れない。
レーダーに赤い光点が増えた。周りが魔王の血で赤く染まっているせいか、赤い光点が見分けにくい。床が青い光を帯びているので、光点も血も紫色に見えてしまう。
「何が変だって言うの――」
勇者メイコが魔王リッチの足を拾い上げて、青い残り火に投げ込む。
「メイコ! 後ろに飛べ!」
空中にあった魔王の足から紫色の粘液が噴き上がり、一瞬で魔王リッチの姿へと戻る。
そういえば「無限再生」と「無限増殖」ってユニークスキルを持っていたっけ。
「粉砕無双」の力を帯びた魔王リッチの拳を、勇者メイコが「無敵の機動」で避ける。
魔王リッチの拳は空気を砕き、風系魔法のようなイオン臭を帯びた颶風を生む。
「うわああああああああああああ」
暴風に巻き込まれた勇者セイギが悲鳴を上げて地面を転がっていく。
勇者ユウキを翼下に守った従者が瓦礫を受けて死にそうだったので、術理魔法系の防御障壁を張っておく。
さっきまでは勇者達を無視していた魔王リッチだったが、さすがに一度瀕死状態にされては無視を決め込む事ができなかったようだ。
巨大な火球――勇者ユウキが放った「豪炎球」が勇者メイコの傍を通過する。
「危ないでしょ!」
勇者メイコの向こうで爆発した豪炎球が炎と熱をまき散らし、勇者メイコの髪を荒々しく乱す。
「援護だよ!」
さらに二発目の豪炎球が、魔王リッチではなく勇者メイコに向けて放たれた。
勇者メイコが避けた豪炎球は、炎の中から現れた二体目の魔王リッチに激突して、炎の向こうに吹き飛ばす。
先ほどの二発の豪炎球は、頭部から再生した魔王リッチを狙ったモノだったらしい。
「余計なお世話だわ!」
勇者メイコの剣が魔王を斬り裂くたびに、新たな魔王が増えている。
もっとも、増殖や再生するたびに劣化するようで、レベルが50ほどの魔王も混ざっているようだ。
「手伝おうか?」
「いらない! これは私達の獲物よ!」
オレの提案を勇者メイコが即答で断った。
「セイギ! さっきのをもう一度!」
「無理! あれは一度使ったらしばらく使えないんだ」
「使えないわね!」
口論しながらも、勇者メイコが魔王リッチの攻撃を避ける。
さすがに敵を増殖させたくないようで、それ以上の攻撃は控えているようだ。
一部の再生魔王リッチが都市核の方に歩き出したので、タマと二人でその前に立ち塞がり、勇者達の方へと投げ飛ばしておく。
なおも向かってくる魔王リッチは、タマの忍術「影縫い」で移動を封じる。
それを見た勇者ユウキが何か言っていたが、戦闘音が激しすぎてよく聞こえなかった。
『ご主人様、そっちに魔法の絨毯に乗った馬鹿が向かったわ。リザさん達に回収させる?』
『いや、そっちはタマに頼むよ』
『にゅ?』
『いいかな?』
『あいあいさ~』
オレが忍術で繋いだ影にタマが飛び込む。
魔法の絨毯に乗った神殿関係者達の目的はわからないけど、魔王退治が終わるまでは邪魔なので遠くに行っていてもらおう。
『それでそっちの状況は? 勇者達は魔王を倒せそう?』
『それなんだけどさ――』
オレは戦闘経過をアリサに伝える。
『それで今は四体の魔王相手にメイコが回避盾をしてるわけね』
アリサが呆れたように言う。
『ねえ、魔王って、どのくらいの小ささまで再生できるのかしら?』
『さあ?』
オレはアリサのリクエストで、空間魔法の「次元斬」で魔王リッチの指先を落としてみた。
『指先くらいのサイズでも再生するみたいだよ』
「何してんのよ! 私を殺したいの?!」
勇者メイコが本気で怒ったので、オレが増やした五体目の魔王リッチを術理魔法の透明な結界で包んで隔離した。
魔王が結界を砕こうとするので、魔王が破壊するよりも早く結界を重ねていく。
魔王を殺せるレベルの攻撃魔法は余波が大きいので、引き寄せた結界に手を添え、多重結界の内側に無数の聖刃を出して魔王を処分する。
中で無限増殖されたら嫌なので、勇者セイギの攻撃を真似て、みじん切りになった魔王の破片を聖なる光で焼き払った。
>「聖炎」スキルを得た。
>称号「聖炎使い」を得た。
>称号「魔を滅する者」を得た。
おっと、久々に新しいスキルだ。
「ま、魔王を一瞬で?」
「なんなのあいつ! 訳わかんない!」
「あ、あれもユニークスキルなんだよ……き、きっとそうだ!」
オレが魔王を倒したのを見た勇者達が、動揺した口調で叫ぶ。
勇者メイコには少し言いたい事があったが、戦闘中なので特に反論する事なく彼らを見守る。
『ね、ねえ、ご主人様? 最初にメイコが魔王の首を斬ったって言ってたわよね?』
『ああ、なかなかスプラッタな光景だったよ』
思い出すのも嫌なくらい血みどろだった。
『クローンってさ、血や髪の毛からでもできたよね?』
アリサが唐突な話題を出す。
――いや、言いたい事が分かった。
『だったらさ、血から魔王が復活したりしないのかな?』
アリサの言葉の正しさを証明するように、レーダー一面を赤い光が満たした。
一斉に地面から隆起した暗紫色の光を帯びた粘液が、無数の魔王リッチへと変わっていく。
その多くはレベル50程度だったが、100体を超える再生魔王を勇者達三人だけで対処するのは不可能だろう。
『皆、そろそろ黄金騎士団の出番みたいだ』
オレは「理力の手」で勇者達を確保しつつ、空間魔法の「戦術輪話」で仲間達に呼びかけた。
※次回更新は、9/16(日) の予定です。







