14-21.雪の王国(2)SS
※2015/12/19 誤字修正しました。
※今回はモブ視点のオマケSSです。
私はキウォーク王国の北西にある雪崩村のピピネ。
シガ王国から来る行商人のポンさんは、この国の事を雪と樹氷の王国なんて呼ぶけど、寒くて貧しいだけの小さな国だ。
隣のコゲォーク王国とは仲が悪くて、数年おきに戦争をしている。
私のお祖父ちゃんも、お父さんも、お兄ちゃんも兵隊として連れていかれて帰ってこなかった。
「お姉ちゃん、狩りなんてダメだよ」
「そうだよ、ピピネ。一人で狩りなんて出かけたら、雪豹に喰われちまうよ」
「ごめんね、吹雪がやんだ今しか無いの」
妹や祖母が引き留めるが、私に選択肢はない。
すきま風の吹き込むこの家には、短い春に摘んだ山菜の漬け物どころか、干し肉も干し魚も雪野菜さえも残っていない。
ヤクを飼っていた頃ならミルクを貰えたけど、二年も続く長い冬の間に全て処分してしまった。
この三日間、水しか飲んでいない身体からは力が抜けはじめている。
今のうちに何か食料を手に入れないと、遅かれ早かれ餓死は免れない。
雪兎なんて贅沢は言わない。
霧虫や栗鼠、雪の下の雑草でもいいから、何か採ってこないと。
凍り付いた扉を蹴り開け、私は雪の中に足を踏み出した。
――シロ、しろ、白。
いつもの光景の中、遠くに見えるキウォーク山を目印に進む。
「樹氷草だ」
この草は食べられないが「れんせー」に使うとかで、行商人のポンさんが高く買ってくれる。
ポンさんが来る春まで生きていられたら、保存食と交換してもらおう。
私は思わぬ収穫物に、運が良いと笑みを漏らす。
この運を生かして、何か食べられるものを見つけなきゃ。
――ユキ、ゆき、雪。
かんじきを履いていても、粉のように柔らかい新雪は私の足を呑み込んで、なけなしの体力を奪っていく。
雪の向こうに、小さな白い影が動くのが見えた。
もしかして、雪兎?
今日の私は本当に運が良いみたいだ。
私は期待を込めて、背中の短弓を手に取る。
ドサリと音がして、近くの木から雪が落ちた。
――バカ! 雪兎が逃げたらどうするのよ!
私は悪態を吐きながら、短弓に矢をつがえた。
白い影が見えた場所で、雪が跳ね上がる。
――逃がさない!
反射的に駆けだした私の視界に映ったのは、白い雪の中に見えたピンク色の三角形。
跳ね上げられて舞い散る雪と白い靄のような湯気が、ピンクの周りを揺らめく。
――ヤバイ。
そう気がついた時は、もう手遅れだった。
雪の中から身を起こしたのは、雪色の獣。
それも雪豹すらエサにする、雪原の覇者――噴進狼。
雪崩のような音を立てて背後の雪を吹き飛ばし、瞬き一つの間に目の前に現れた。
――PHYUSWYURUUUUUU。
生暖かく臭い息が私の顔に吹き付けられる。
鋭い白い牙から垂れた滴が、雪に深い跡を残した。
――ああ、私はここで終わる。
妹やお祖母ちゃんを残して逝くのは心配だけど、この苦しみだけの生から逃れられるなら、それも悪くない。
そんな諦めの心も、顔の上に落ちてきた温かい涎で吹き飛んだ。
――死にたくない、シニタクナイ、しにたくない!
「だ、誰か、助けてぇええええええええ!」
「はい、なのです」
――え?
※次回更新は 12/20(日) の予定です。
※活動報告にデスマ6巻「なろう特典SS」をアップしてあるので、宜しかったらご覧下さい。







