14-9.種族の違い
※2015/10/29 誤字修正しました。
※2015/10/19 一部修正しました。
サトゥーです。恋愛と戦争にはルールなんて無い、と大学時代の知り合いが言っていました。少なくとも恋愛に誠実さは必要だよね、と五人の彼女に刺されて入院した彼の病室で思ったものです。
◇
「それじゃいくよ?」
「おっけー、ばっちこーい!」
「はい、お願いします」
美味しい夕食を堪能した後、オレはルルとアリサを防音の利いた実験室に呼び出していた。
もちろん、いかがわしい事をする為じゃなく、二人の「強制」を解除できるか試すためだ。
魔王シズカの「強制」を解除した実績があるし、まず大丈夫だろう。
解除時に魔王シズカが痛がっていたので、今回は事前に痛み止めを与え、叫んでも声が漏れない場所に移動してある。
スキル欄から「強制」を選んで実行する。
「奴隷である必要はない。奴隷契約解除を許可する」
オレがそう命令を伝えると、アリサとルルの周りに赤い茨のようなエフェクトが生まれ、弾けて消える。
同時にアリサとルルが悲鳴を上げてオレにしがみ付いてくる。
やはり、痛み止めくらいでは完全に防げないようだ。
そして小一時間ほど経って――。
「ふぃ~、リセットよりは遥かにマシだったけど、麻酔ナシで神経を抜かれる気分だったわ」
「わ、わたしも、もう、大丈夫です」
二人の涙の跡をハンカチで拭いてやってから、順番に奴隷契約を解除していく。
「頭に巻いたハチマキを解いたみたいな気分ね。頭が軽いけど、何か物足りない感じ」
アリサが首をコキコキと鳴らして感想を口にする。
「そうね、アリサ。ご主人様と繋がっていた確かなものが剥がれたような寂しさが――」
ルルが独白の最中に、オレの視線に気付いて顔を赤らめた。
どうしたんだろう?
「――でも、その代わり、お嫁さんにはなれますね。約束の4年後までにご主人様が手を出したくなるくらいいい女になってみせます!」
ルルが思わず惚れそうな笑顔で、オレに宣言をする。
そういえば昔旅をしていた頃、ルルを励ますために「5年後に相手がいなかったら嫁に貰う」と約束した覚えがある。
「あ! ルルずるい! わたしも! わたしも9年以内に1000人中1001人が振り向くくらい女を磨いてみせる!」
「それじゃ、存在する人の数よりも振り返る人の方が多いじゃないか」
「やーね、お腹の中の赤ちゃんまで振り返るくらいって意味よ」
アリサが冗談で混ぜっ返してくれて良かった。
オレは二人の頭をポンポンと叩いて、回答をうやむやにしたまま、二人を連れて皆の待つリビングへと戻った。
◇
「「「おめでとう!」」」
アリサとルルの「強制」を解除した事を伝えると、リビングにいた皆から語尾違いの祝福の言葉が二人にかけられた。
そこにブラウニー達が静々と台車を押してくる。
「け~き?」
「本当なのです! しかも五段重ねのクイスアスばーじょんなのです」
ポチ、それは「クリスマス」だ。
ブラウニー達が運んできたのは事前に用意しておいた祝賀用のケーキだ。
皆の前に青紅茶が並べられていく。
誕生日ではないが、二人の年齢分の蝋燭に火を付けて吹き消させてやった。
「タマもやりたい~?」
「ポ、ポチも、ふーってしたいのです」
「やる」
「マスター、火を揺らすのがしたいと希望します」
「わ、わたくしもやってみたいですわ」
年少組や恥ずかしそうに言い出したカリナ嬢だけでなく、結局全員で順番に蝋燭の火を消すのをやる事になってしまった。
ブラウニー達がうずうずしていたので誘ってみたが、職務中なので遠慮するとの事だった。
あとで、中サイズのケーキを蝋燭つきで差し入れしてやろう。
◇
「魔王を保護ですか?」
「美人だからって、魔王を囲うなんて節操なさすぎでしょ」
祝賀会の後、アリサとリザを呼び出して魔王を保護した話を伝えた。
実質、緑の牢獄への収監というか監禁なのだが、そう言うと犯罪臭がするので保護と言ってある。
「確かに美人だけど、ルルほどじゃないよ」
「つまり、セーラやカリナたんくらい美人って事ね?」
なんだろう、アリサがやけに鋭い。
「24歳の長耳族か……もしかして、アーゼたんの身代わり?」
「いや、そんなつもりは全く無いよ」
アリサの邪推をマジメな顔で否定する。
「そうなの? アーゼたんから乗り換えるのかと思った」
「そんなわけないだろ」
言葉を重ねるアリサに肩を竦めて否定する。
「だってさ、いつもだったら、さっきみたいな祝賀会はエルフの里でやってたじゃない?」
「それは――」
アリサのもっともな言葉にオレは返す言葉を詰まらせる。
「何かあったんでしょ? お姉さんに話してみ?」
椅子に腰掛けるオレの横に膝立ちしたアリサが、オレの頭を撫でながら諭すように告げる。
オレは二週間ほど前、王女が婚約者(仮)になった事をアーゼさんに伝えに言ったときの事を思い出す。
◇◇◇◇◆◇◇【二週間前】◆◆◇◆◆◆◆
「サトゥー! 王都の方はもう良いの?」
「はい、問題も片付きましたし、半月くらいしたらまた迷宮都市に拠点を移すつもりです」
オレはそう告げながら、アーゼさんの前に王都のお菓子を並べていく。
最近、王都の貴族達から菓子折りをよく貰うので、その中でも美味しかった物を厳選して持ってきた。
和やかなお茶会が一段落したところで、新しい役職について伝える。
「実は観光省という所で副大臣に任命されまして、随員という形で昔からの友人が数人旅に同行する事になったんです」
「サトゥー、凄いわ! その若さで大臣なんて出世ね!」
アーゼさん、「副」が抜けてます。
「それで、新しい仲間達もここに連れてきたいんですが、いいでしょうか?」
「もちろんよ! サトゥーが認めた人なら好きなだけ連れてきていいわ」
オレの頼みをアーゼさんが、あっさりと許可してくれる。
相変わらず即断即決だ。
室内で砂糖を吐きそうな顔をしているお目付け役のルーアさんも頷いてくれた。
次に来る時はゼナさん達も連れてこよう。
最後に、少々言い難い事をアーゼさんに打ち明ける。
「その随員の一人なのですが、シガ王国の王女様で、なぜか婚約者という形で押し付けられてしまったんですよ」
アーゼさんの目を見つめ、本意じゃないというニュアンスを篭めて話す。
だが、残念ながら、オレの想いは届かなかったらしい。
「まあ! サトゥーのお嫁さんね! サトゥーの子供が生まれたら私にも抱かせてね」
アーゼさんがいつもより高めの声で喜びの声を上げた。
――WHY?
「でもでも、一人だけなの? 一人は嫌――じゃなくて、人族の貴族は沢山お嫁さんを貰うんでしょ? サトゥーなら100人くらいお嫁さんを貰って1000人くらい子供を作れそうね! そしたら一万年くらいはサトゥーの子孫がここに遊びに来てくれるようになるわ! でも、お嫁さんや子供の相手だけじゃなく、10日に1回くらいは――」
いつもと違い、アーゼさんがマシンガンのように言葉を重ねる。
既に3回ほどプロポーズして振られている身としては、このくらい笑って流すべきなのだろうが、思ったよりもアーゼさんの言葉がショックで、彼女の話の後半はほとんど聞こえていなかった。
◆◆◆◆◇◆◆【現在】◇◇◆◇◇◇◇
「はぁああ――」
オレの話を聞き終わったアリサが、自分の額に手を当てて盛大な溜息を吐く。
「あんたバカぁ? 恋人未満の相手にそんな話したら、そういう答えが返ってくるのなんてあたりまえじゃん」
「アリサ――」
「ごめん、リザさん。お小言は後で聞くから、今は言わせて」
アリサの「あんた」発言に横にいたリザが叱ろうとしたが、オレは片手を上げてそれを制止して、アリサに言葉を続けさせた。
「それで、今までどんなに忙しくても、三日とあけずに遊びに行っていたエルフの里にも行かず、毎日定時報告みたいにしていた『遠話』も送らず、向こうからの通話もそっけない言葉で返してたんでしょ?」
ずいぶん詳しい――。
「今日の昼ごろ、アーゼたんから相談の『無限遠話』を貰ったのよ。通話口から涙声で『サトゥーに嫌われた』って言ってたわよ?」
――アーゼさんが?
「ご主人様、僭越ですが宜しいでしょうか?」
「いいよ」
珍しくリザが色恋沙汰の話に参加してきた。
当然ながらリザには茶化す風でもなく、真剣な顔で自分の見解を語ってくれた。
「ご主人様は人族、アイアリーゼ様はハイエルフです」
「うん、そうだね」
「人族とハイエルフでは子供が残せません」
「知ってるよ」
事実を突きつけられて、少し不機嫌な口調になってしまう。
いったい、リザは何を言いたいんだろう?
「ご主人様やアリサの価値観では違うようですが、種族を問わず、この大陸の一般常識では繁殖が最優先事項になります。長命な妖精族なら猶予期間が長いので、他の種族と恋愛関係になる事もあるようですが、そんな彼らでも適齢期の間に必ず子孫を残します」
「ずいぶん詳しいわね、リザさん」
「はい、ボルエナンで修業している時に、グーヤ師匠がポーア女史にとくとくと語っておられました」
なるほど、エルフ師匠の言葉なら、これはエルフの一般常識でもあるわけだ。
「そして人族は短命です。子孫を残せる期間も短い――」
「つまり、恋愛感情に関係なく、同族での結婚を勧めるって訳ね?」
「――そうです」
リザの言葉をアリサがまとめる。
「だいたいリザさんが言ってくれたけど、ラブコメの主人公みたいにすれ違いでウジウジしてないで、さっさとアーゼたんのトコに行って、ちゅーの一つもして仲直りしてきなさいって事よ」
アリサが男前な発言でオレに発破を掛ける。
「アリサからしたら破局の方が良いんじゃないのか?」
自分のバカさ加減に対するイラつきが、アリサへの棘となって漏れてしまった。
かっこ悪いにも程がある。
口にしてすぐに後悔したが、アリサはそれを鼻で笑って否定した。
「はん! アリサちゃんを舐めないでよね! わたしは人の不幸につけ込むようなハイエナになる気はないわ! 恋をするならライオンのように自分の魅力で奪い取るのよ!」
相変わらず真面目モードのアリサには敵わないよ。
「損な性分だな」
「自覚してるわよ。でも、わたしは常にわたしでありたいの! だから――」
アリサが歳不相応な艶やかな笑みを浮かべ。
「――いつでも、押し倒してくれていいのよ」
とヘタクソなウィンクをパチンと飛ばしてくる。
最後が残念な所も、アリサらしい。
◇
「こんばんは、アーゼさん」
オレがユニット配置でエルフの里の樹上の家に出現すると、テーブルの上に上半身を投げ出していたアーゼさんが、ガバッと顔を上げた。
「ザドゥー!」
「ご、ご無沙汰してます」
涙交じりの声で、アーゼさんがタックルのような激しい抱擁でオレを椅子に押し倒した。
彼女は幼子のようにオレの胸に顔をこすり付けて、名を繰り返し呼び続ける。
「良かった、やっと来てくれたんですね」
ルーアさんが窓を閉めながらバルコニーから部屋に入ってきた。
「アーゼ様が『サトゥーが来ない』『サトゥーに嫌われた』って大変だったんですから」
「すみません」
オレはアーゼさんの髪を撫でながら、ルーアさんの小言に詫びの言葉を返す。
「アーゼさんはオレの事が好き――」
この聞き方は卑怯だ。
オレは途中で言い方を変える。
「オレはアーゼさんが好きです。嫌うなんてありえません。アーゼさんはオレの事が好きですか?」
「もちろん、サトゥーの事は大好きよ」
――大好きよ。大好きよ。大好きよ。
頭の中で幸せな言葉がリフレインする。
このまま3日くらい幸せに浸っていたいが、我慢して話を進める。
「では、オレの伴侶になってくれますか?」
「そ、それはダメよ。サトゥーは人族で私はハイエルフだもの」
やはり、種族の壁がネックか。
「人族ではダメですか?」
「うん、ダメ」
アーゼさんがキッパリと否定する。
「だって、人族とハイエルフじゃ子供ができないもの」
「子供が重要なのですか?」
リザが言っていた話と一致する。
「もちろんよ! サトゥーの子供なら、絶対に世界を豊かにしてくれるわ。だから、サトゥーはいっぱい子供を残さないとダメなの。だって、それが創造主様の願いなんだもん」
元の世界の一神教のように、アーゼさんを創った創造主は「産めよ、増やせよ、地に満ちよ」と似たような言葉をこの世界に派遣した神々に指示したらしい。
「それがアーゼさん以外の女の人の子でも、ですか?」
「え? だって……。私はサトゥーの子を産んであげられないもの。仕方ないじゃない」
良かった。
どうやら、同族なら子供を産んでもいいくらいには想ってくれているらしい。
「それに人族は寿命が短いけど、子孫は先祖に似るわ。1000人も子供がいたら、中にはサトゥーみたいな子も生まれてくるかもしれない。永い永い時の果てで、サトゥーそっくりの子供に会える可能性があるなんて素敵じゃない?」
延命方法の多いこの世界でも、1億歳のアーゼさんと同じ時間を生きるのは難しそうだ。
だけど……。
「それで嫁100人とか言い出したんですね」
「……うん、それにサトゥーが他の女の子のものになるのは嫌だけど、お嫁さんが沢山いたら私が一人くらい混ざっていても邪険にされないもの」
――健気だ。
アーゼさん、押し倒していいですか?
「邪険になんてしませんよ。本当に嫁が100人できたとしても、ここに通うのは止めませんよ。アーゼさんが拒否しない限りね」
最後の言葉は冗談の笑いを混ぜて誤解させないように注意する。
それにしても、本妻に浮気許可を貰った旦那の気分だ。
もっとも、その許可を使う気はないけどさ。
「和解したみたいで良かったです」
「ルーアさんにもご心配をおかけしたようですみません」
お茶のカップを置くルーアさんに、詫びの言葉を告げる。
◇
「――エルフの結婚観ですか?」
「ええ、後学までに。話しにくいようでしたら結構ですけど」
今回のようなトラブルは相互理解不足が元になると学んだので、さっそくルーアさんに話を伺ってみた。
「そうですね、人によってかなり違いますけど、だいたい気が合う者同士で100年くらい恋人期間を経て『子作りの契約』を結びます。人族で言う結婚ですね。その契約までは褥を共にする事はありません」
さすがエルフ。100年もピュアな恋人同士で過ごすとは……。
「契約を結んでだいたい数十年から長くても100年くらいまでの間に子供が生まれ、その子供が成人するまで夫婦で育てます。子供が独り立ちしたら大抵の夫婦は契約を完了し、元の個人に戻ります。大抵のエルフは生涯の間に2、3人の子供を成しますが、両親が同じ人は稀ですね」
ドライな関係かと思ったが、実際は契約を完了しても数百年は同居したままとの事だ。
エルフ達に家名がなく、「●●と▲▲の子、■■」のような名乗りをするのも、この慣習のせいらしい。
「1000歳くらいまでに子供を作らないと、氏族会議で無理やり相手をあてがわれますが、ここ5000年くらいの間はそんな事はないそうです」
「ルーアはそろそろ危ないんじゃない?」
「私は若いから、まだまだ大丈夫です。ええ、大丈夫ですとも」
未婚な事をアーゼさんに突っ込まれたルーアさんが涼しい顔で答える。
少しだけルーアさんの横顔に焦りが見えるのは気のせいだろうか?
――待てよ。
「アーゼさん達ハイエルフも100万年くらいで結婚しろとか言われるんですか?」
「無いわよ? 私達ハイエルフは同族同士でも子供が作れるけど、欠員が出た時は世界樹が複製を作るから、よっぽどの物好き以外で結婚する人はいないわ」
「そうなんですか」
ちょっと、ホッとしながら、青紅茶のカップを傾ける。
「だって、私達ハイエルフは神々が伴侶を得られない時のお相手だもの」
アーゼさんが、事も無げに重要事項を告げる。
「神の伴侶ですか?」
「うん、今のところ、子を成すほど神々に力が余ってないから、必要とされるのはもっと先の時代の話だと思うけどね」
なら、よからぬ事を考えないように、男神の所に遊びに行って力を削いでこようかな?
「サトゥーさん、怖い笑顔になっていますよ?」
「すみません、ちょっとバカな事を考えていました」
オレは首を振って危険な考えを脳裏から追い出し、アーゼさん達とお祝いケーキのお裾分けに舌鼓を打った。
◇
後で亜神モードのアーゼさんに尋ねてみたところ――。
『神がハイエルフと子を作る事は可能ですが、事実上ありません』
「どうしてでしょう?」
『神が子を作るときは自らの神格を切り分けて子に与えます。同格の相手でなければ、成した子には失った力に釣り合わないほど弱い力しか宿らないのです』
なるほど、本当に予備的な扱いみたいだ。
神に反旗を翻す必要がなくなって、少しホッとする。
ついでなので、少し気になっていた事を尋ねてみる。
「人が神あるいはハイエルフになる事は可能ですか?」
オレの質問にアーゼさんが柔らかく微笑んだ。
『サトゥー、その質問の意味は嬉しく思いますが、昇神を目指してはなりません』
「どうしてでしょう?」
『今までこの世界の英雄や賢者が幾万人も昇神を目指しましたが、只の一人も神の位に届いた者はいないのです』
「絶対に不可能なのですか?」
本当に不可能なら「昇神」という言葉自体がないはずだ。
『創造主の世界にいた時の記憶では、3例ほど神の座に届いた者がいたそうです。ただし、30億年以上の間で3例だけだと聞きおよんでいます。短命な人族にはとても勧められません』
そんなに分の悪い話だったのか……。
『上位の神によって最初から神として作られた者や、神格を分け与えられて亜神となった者を除けば、奇跡という言葉が陳腐に聞こえるほどの狭き門なのです』
もしかして、「神の欠片」を身に宿していたら、亜神扱いなのかな?
そう希望が湧いたので、尋ねてみる。
『そうですね、力を暴走させて常命の理から外れた魔王は亜神の末席にあると言えるでしょう。ですが、それは壊れかけの粗悪品に過ぎません。残念ながら「神の欠片」自体に神格はあっても、それを宿す者に神格はないのです。サトゥー、自らに「神の欠片」を取り込んで暴走させるような自暴自棄に陥ってはなりませんよ』
「はい、そんな自殺願望はありません」
結婚はゴールじゃなくて、幸せなイチャラブ生活のスタートだからね。
結婚後の生活に支障があるなら、そんな手段を取る意味がない。
「昇神の為の修行方法を教えてほしいとお願いしてもダメですよね?」
オレの往生際の悪い問いに、亜神モードのアーゼさんが押し黙る。
『教えてあげても構いません』
「本当ですか!」
意外な言葉に間髪を容れずに食いつく。
我ながら余裕がない事だ。
『ただし、条件があります』
「どんな条件でもクリアしてみせます!」
今のオレなら、大抵の難問をクリアできるはずだ。
『ならば、まず同族の娘に合計100人の子を産ませてみせなさい』
「――え?」
『もちろん、無理やりはダメですよ?』
「それが条件なのですか?」
『そうです。神を目指すなら、その前に人族としての、生き物としての務めを果たしなさい』
どうやら冗談ではなく、本気で言っているらしい。
『そして見事、神の位に至り、私を娶りに来てください。その時はサトゥーの望み通り、あなたの妻として子を成しましょう』
神々しい笑みを浮かべる亜神アーゼさんに「必ず」と約束を交わした。
◇
さて、先ほど「必ず」と約束を交わしたが、今のところ前提条件の「100人の子を産ませろ指令」を実行する気はない。
だいたい、相手の女性にも失礼だしね。
オレとしては猶予期間中に神の座に至る方法を探しだしてみせるつもりだ。
せっかく世界各地を巡る旅に出たことだし、その旅の間に見つけられるんじゃないかと予感している。
万が一、王女との婚姻期限までに見つからなかったら、その時は覚悟を決めるしかないだろう。
例のアンノウンな幼女に尋ねたら教えてくれそうだが、その選択肢はバッドエンドへの直行フラグな気がするので選びたくない。
だから、期限一杯までは正攻法で足掻こうと思う。
さて、そろそろ飛空艇が王都に到着する頃だし、気分転換に禁書庫で読書としゃれ込もうかな?
※次回更新は 10/25(日) の予定です。
※2015/10/19 アーゼさん亜神モードの口調を修正しました。







