SS:えんそく
※2015/8/20 誤字修正しました。
※2015/8/20 一部修正しました。
※本日2回目の更新となります。
※今回はポチ視点です。
今日は楽しい遠足なのです。
この遠足が終わったら迷宮都市に帰るから、マブダチやシャテイ達ともお別れなので悲しいのです。
だから、ご主人様やリザが「楽しい思い出を作ってきなさい」って言って、ポチ達を送り出してくれたのです。
「進軍停止! ここで小休止を取る。騎士学舎の上級生は下級生の面倒を見てやれ」
青いおヒゲのヘイチョーさんが大きな声で叫ぶと、マブダチやシャテイ達が地面に座ってぜーぜー言ってる。
「ふぃー、森の中を歩くのがこんなにつらいなんて思わなかったぜ」
「王都育ちはこれだから……」
「ポチさんやタマさんを見てみろよ。ケロっとしてるだろ?」
――ポチ達の事?
なんとなく褒められている空気を感じたので、タマと一緒にシャキーンのポーズを取った。
「おい、一年! 遊んでないで、ちゃんと休憩しろ。このまま夕方まで森の中を歩き続けるんだ。今は少しでも身体を休ませておけ」
上級生のキューチョーさんがポチの頭をポンと叩いて、アドバイスをしてくれた。
――まだまだ大丈夫なのですよ?
そう思ったけど、目が合ったタマが閉じた口元の前で「お口にチャック」のポーズをしたので、ポチも沈黙を守ったのです。
◇
ふかふかの森の土は幾ら歩いても飽きない。
けんけんぱの遊びをしていたら、シンガリをしている上級生のお姉さんに「マジメにしなさい」って怒られた。
――何か変?
ぴくぴくと耳を澄ます。
何も聞こえない。
「ポチ~?」
タマも異変に気が付いたようなのです。
「変なのです」
ポチも気付いているとタマに頷く。
「何が変なのだ、犬人の一年?」
上級生のキューチョーさんが聞いてきたので答える。
「森が静かなのです」
「そりゃ、私達が大人数で移動しているのだから、当然だろう?」
「違うのです。ポチ達を付けねらっていた灰色狼の群れも、森の向こうから見ていた目玉バッタの気配も消えているのです」
ポチがちゃんと説明したのに、上級生のキューチョーさんはポチの頭をポカリと叩いたのです。
「バカな事を言うな――」
バカって言った方がバカなのですよ?
「――そんな群れや魔物がいたら、護衛騎士様や兵長殿が教えてくれるはずだ」
キューチョーさんがもう一度、ポチの頭を叩く。
「痛いのです」
「ぶたれたくなかったら、軽挙妄動は慎め」
キューチョーさんは目元に涙を浮かべながら「この石頭め」と呟いて、ポチを叩いた手をさすさすと撫でる。
「――来る~?」
タマの方が先に気が付いたのです。
さすが忍者!
◇
「兵蟷螂が出たぞ!」
「ちくしょう! 木の洞に潜んでやがった!」
「やばいっ、蟷螂の卵が孵化してるぞ! 小人蟷螂の群れだ!」
「学生は円陣を組んで互いの背を守れ! 防衛に専念し、決して攻勢に出るな!」
魔物退治に飛び出そうとしたら、青いおヒゲのヘイチョーさんからダメって命令がきた。
振り向いたら、タマがいなかった。
「ぴ~ぷ~」
いつの間にか戻ってきていたタマが口笛のマネをする。
――ポチは知っているのです。
タマがこっそり忍者してきた事を。
後ろからこっそり近寄っていた戦蟷螂の気配が消えたから間違いないのです。
「兵長! 雑魚の小人蟷螂は任す!」
「承知いたしました! 我ら10名、たとえここに屍を晒そうとも生徒達は守ってみせます」
死んじゃ、ダメ。
ご主人様がいつも言ってるのです。
「兵3、小57~?」
「兵は3匹だけど、小は59匹なのです。他の子におんぶされているのが2匹いるのです」
タマと一緒に答え合わせ。
敵が少なくて、ポチの腰で小剣が寂しそうなのです。
「もう、ダメだ……」
「騎士8名と兵士16名だけじゃ、勝てっこない」
「上級生8名、下級生16名を入れればもう少しくらい」
ポチやタマが一人ずつでも勝てるのですよ?
その事に気が付いたシャテーが「ポチさんやタマさんなら」って言いかけたところで、キューチョーさんに叱られた。
「一年! 兵長殿の指示を忘れたの? 今の私達にできるのは足手まといにならない事だけよ!」
――ぴりぴりしてて怖いのです。
「先輩! キシュレシガルザ姉妹のご助力を仰ぐべきです」
キューチョーさんが怖い目でこっちをギロって睨んできた。
ポチは何か怒られる事したですか?
「ふん、ミスリルの探索者が全て強い訳ではない。荷運び役がなんの役に立つ」
荷運び?
「ポチは荷運び得意なのですよ?」
「だ、そうだ。一年は黙って座っていろ」
ご主人様にも「ポチは力持ちだね」って褒められた事あるのです
「で、でも、このままじゃ!」
「騎士を目指すなら、上官の命令は絶対だ! 今、手を出すなら、騎士学舎を放校される覚悟でいろ!」
ケルテンのお姫様がキューチョーさんに叱られてしょぼんってする。
「学生! すまん! そちらに小人蟷螂が5匹向かった! 兵を回す余裕がない。応援を送るまでの間、お前達で生き延びてくれ!」
――獲物?
タマと目を合わせて頷く。
そして、タマと一緒に飛び出そうとしたら、キューチョーさんにキッと睨まれた。
「下級生は円陣のままだ! アッゾ、オルソ、ウルツ、エフナの4名は小人蟷螂と一対一で時間を稼げ。大丈夫、お前らならできる! 他の者は私に続け! 一匹ずつ順番に減らしていくぞ!」
――出番無し?
残念なのです。
◇
小人蟷螂の小さな鎌が上級生の足を斬り裂いた。
血が出てすごく痛そうなのです。
「ポチ・キシュレシガルザ卿、そしてタマ・キシュレシガルザ卿」
ケルテンのお姫様がマジメな顔でポチとタマを見た。
「ケルテン侯爵家六女デュモリナの名においてお願いいたします。先輩や国軍の方々を救ってください」
ポチも助けたいけど、命令は絶対なのです。
「上官命令は絶対~?」
タマも同じみたい。
「そこを曲げてお願いいたします。責は全て私が負います。ですから、どうか――」
お姫様の目から涙が……。
「頼むよ、ポチ。学院を追い出されるなら、俺も一緒に追い出されるからさ」
「お願いしやす、ポチの姉御にタマの姉御! 自分もお供しますから!」
マブダチとシャテーも一緒にお願いしてきた。
――ここは決断の時なのです。
アリサが言っていたのです。
ギをみてザルソバは勇気なのです。
ポチは皆を助けて、ご主人様から叱られるのです。
お肉抜き3日は地獄の日々だけど、マブダチやシャテーの頼みは断れないのです。
「ポチ、やろ~?」
「はいなのです」
タマが一緒なら、無敵でサイキョーなのです。
「沢山のはタマに任せたのです」
「あいあいさ~」
ポチは大きめの兵蟷螂を倒すのです。
「うおっ、ポチさんが消えた?」
「タマさんもいない――あそこだ!」
「タマさんが沢山?」
後ろから聞こえてくる声は、すぐに戦いの音に埋もれる。
「なんだ? 小さいのがいるぞ!」
「新手の敵か?!」
「赤い光?!」
「まさか魔剣か?」
今日の装備は小剣「タケミツ・ソード」だから魔剣じゃない。
妖精鞄もお屋敷においてきた。
でも、大丈夫。
兵蟷螂は柔らかいから。
「さすが、魔剣だ。あの硬い兵蟷螂の首を一撃で斬り裂いたぞ」
騎士の人が驚いてるけど、魔剣を使っているのは騎士の一番偉い人だけ。ポチは違う。
二匹目の蟷螂の鎌を掻い潜り、足をズンバラリンって斬る。
傾いた体を駆け上がって、後ろ首をドシュッって刺して終了。
最後に、木の上に隠れていた暗殺蟷螂に向かって、じゃ~んぷあんどすぷらっしゅ。
緑の血がドバッと広がる。
ポチは幹を蹴って安全圏に。
もう、タコに墨を掛けられて泣いていたポチじゃないのです。
◇
ちょっとしたトラブルもあったけど、野営地でタマの獲ってきた猪肉でばーべきゅーしたり、火炎虫を倒してきゃんぷふぁいやーしたりして、とっても楽しい遠足だったのです。
今度はご主人様や皆も一緒に遊びに来たいのです。
※補足するまでもないと思いますが、ポチが言い間違えたのは「義を見てせざるは勇無きなり」です。
※2015/8/20 上級生との会話を追加。
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