SS:幻の地下帝国
※2015/8/19 誤字修正しました。
※今回はサトゥー視点ではありません。
我輩はチュー太。
偉大なる主が付けてくれた立派な名前がある。
チューチューと、我輩の眷属達が集まってきた。
黒髪の天女様が下賜してくれたチーズスフレを眷属達に配る。
天女様は偉大なる主の家臣で、料理の達人だ。
我輩も一口齧る。
実に美味だ。
この濃厚な旨みに明晰たる我輩の思考が本能に溶けていく。
――チーズは危険だ。
我に返った時には大皿のチーズスフレは消え去っており、満足そうに腹を抱えて眠る眷属達の姿があった。
士気高揚の為の嗜好食品だったのだが……。
まあ良い、美味いものを食べたら眠くなるのは当然だ。
我輩も暫しまどろむとしよう。
◇
偉大なる主様より知性を授けられてから、早くも10日が過ぎた。
我輩と同じ種族へと進化していた三匹の妻達が、幾匹もの子供達を産んでくれた。
このまま賢者鼠の一族を増やすのも良いが、下僕の一族も増やさねばならぬ。
戦いは数なのだ。
この王都の地下に帝国を築き、ご主人様に進呈するのが我輩の使命なのだから!
◇
またしても緑の悪魔に下僕達が狩られてしまった。
地下道のドブ鼠との激戦を制し、地下帝国を築いた我らの地上進出をヤツに阻まれた。
空から舞い降りる悪魔の前では、知性あふれる我輩でもなすすべが無い。
――いや、無かった、だ。
これからは違う。
バサリという羽音に身が竦むが、その後に聞こえたチューという勇ましい声に恐怖が溶ける。
振り返った先に居たのは、我輩の息子達だ。
カラスの背に乗った息子の勇姿に惚れ惚れする。
彼らカラス乗り達が、我が地下帝国の精鋭達だ。
空の機動力を得た我らに抗うものはいないだろう。
◇
――なんたる事だ!
まさか、10羽を超えた屈強なカラス乗り達が易々と撃破されるとは!
このままでは皇帝たる我輩のカリスマ性までが揺らいでしまう。
こんな所で挫折するわけにはいかぬ。
この王都の全てを偉大なる主に捧げねばならんのだ。
チューチュー!
我輩は眷属や奉仕種族達の前で演説を行う。
ぐぬぬ、難しすぎたのか、奉仕種族達だけでなく眷属達まで眠ってしまった。
この一戦に地下帝国の存亡が掛かっているというのに、こいつらはどうにも理解できていないようだ。
巨大カラスの上に、盾持ちと槍持ちの眷属達を乗せ、巨大カラスの背にしつらえた玉座から操舵手に離陸を指示する。
煙突から出発すると、さっそく緑の悪魔が姿を現した。
ぴるぴると音波攻撃をしかけてくる悪魔の攻撃に怯みながらも、勇敢な我らは逃げ出さずに戦場にとどまる。
魔槍サイバシも悪魔には通じず、魔盾ナベブタも悪魔のクチバシを防ぐ事は叶わなかった。
気が付くと、我輩以外の眷属は悪魔によって倒され、我輩の命も時間の問題となっていた。
なんたる事だ。
偉大なる主に作られた我輩がこのような場所で命を落とす事になろうとは!
――ぴるる?!
我輩を爪に捕らえた悪魔が空を見上げて悲鳴を上げる。
――KYEWWROUUUN。
空から降ってきたのは緑の悪魔さえ超える巨大な怪物。
悪魔の前に着地した生き物は悪魔の前に座し、先ほどの我輩と悪魔を逆にしたような構図でそこにあった。
愉快愉快。
我輩の命はここで悪魔と共に潰えるが、帝国は我が子孫達が継承してくれる。
さあ、巨大なる怪物よ。
悪魔を喰らうが良い。
怯える心を尊大な言葉でよろい、我輩は目を閉じて最後の時を待った。
「あれ? どうして幼竜がこんな所に? なんだ、翡翠もいたのか?」
この声は偉大なる主様!
――KYEWWROUUUN。
――ぴぴる! ぴる! ぴる!
なぜか、主様を見て巨大な怪物と悪魔が我輩と同じように歓喜の声を上げる。
お互いに視線を交錯させる我輩達……。
どうやら、こやつらも偉大なる主の下僕であったようだ。
さすがは我輩の偉大なる主様。
この身の全てをかけて、王都を貴方様の下に。
空を支配した緑の悪魔や伝説の竜に似た巨大な怪物と手を組み、全てを支配してみせよう。
しばしの時をお待ちください、我が偉大なる主――サトゥー様。
我が忠誠は永久に、偉大なる御身と共に。
※今日は18時にもう一回更新します。
ポチ視点で「SS:えんそく」、王立学院のエピソードです。
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